965 / 1,278
第六章 【二つの世界】
6-192 違和感2
しおりを挟む「あの……ステイビルさんは今どこに?」
「ステイビル……」
「……さん?」
エレーナとソフィーネの二人は、ハルナの頭越しに顔を見合わせた。
二人には自分たちが知っているハルナのようだが、何かどこかが自分たちの知っている今までとは違うハルナであるように感じていた。
だが、それが何によって違和感を感じているのかまでははっきりと判っていなかったが、いまのハルナの問いかけに対し、エレーナがとりあえず答えるとソフィーネに頷いて答えた。
「あ……あのね、いまステイビル王は……準備中なの」
「準備?なんの??」
「攻撃の……よ。グラキース山の麓に立てこもっているキャスメルおう……いやキャスメルを制圧するためのね」
ハルナはエレーナの言葉に知っているような状況が、頭の中に入ってくる……が、所々自分が知っているものと違う箇所があり、それがいつまでも自分の中で飲み込めないでいた。
エレーナもその話に対してのハルナからの反応を待っているのか、黙ったままハルナの顔を見つめている。
それは決して焦らせているものでもなく、相手と話し合うための雰囲気を用意してハルナの言葉を待っていた。
それに気付いたハルナは、今の段階で自分が感じているおかしな内容を、エレーナに問いかけてみた。
「えっと……ステイビル王子が……グラキース山に立てこもってるキャスメル王子……ね、まさかナルメルさんやイナさんたちも?」
「そうよ……それにキャスメル王子じゃないのよ?」
「王子……じゃない?……ちょっとまって、どういうこと!?」
ハルナはその事実に驚き、食い掛り気味にエレーナに迫っていく。
自分の知っている世界と所々が異なることに、一体何が起きたのかを知るために。
それよりもエレーナたちが、ハルナに感じていた違和感を解消するために、ハルナに優しく問いかけた。
「あのね……ちょっと落ち着いて、ハルナ。あなたちょっと昨日までと全然違うじゃない?一体何があったの?」
「わ、私……違う場所に……ううん、同じ場所なんだけどを……違うところに」
ハルナは、サヤと自分の身の上に起きたことをエレーナに説明しようとした。しかし、何から話していいか分からず、うまく伝えられるかどうかも。さらには、信じてもらえるかどうかもわからないし、目の前のエレーナも自分の知っているエレーナではない可能性もあった。
そう考えると、ハルナの口に出したい情報は、自分の中にいるもう一人の自分が、それを止めようとしていた。
そんなハルナの様子をみて、エレーナはハルナの身に何かが起きたことを察して、まず先程のハルナの質問に答えることにした。
「まず、さっきのハルナが言った”ステイビル王子”のことだけど……」
エレーナがハルナに説明した話は、ステイビルは王選に勝利し、現在は国王としてその地位を父親から引き継いでいると説明した。
そのことは国民からも祝福され、キャスメルもそのことについては納得のいく結果だと認めていた。
そこまではハルナも自信が手を貸していたステイビルが国王となったことに
だが、そこから先に問題が生じたという……王妃という問題を。
「そして、王妃に選ばれたのは貴女なのよ……ハルナ」
0
お気に入りに追加
374
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる