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第六章 【二つの世界】
6-191 違和感1
しおりを挟むエレーナとソフィーネは困惑する。
突然泣き出したハルナにその理由を聞くが、ハルナは何も言えずにただ泣きじゃくるだけだった。
エレーナは、ハルナの身に何があったのか判らなかったが、ハルナの感情が落ち着くまで優しく隣に座って背中をさすり続けていた。
そして、次第に涙が収まり腕の中のハルナはゆっくりと落ち着きを取り戻していった。
ソフィーネはハルナの気持ちが収まるようにと甘い香りのする草を焚き、温かい飲み物も近くに用意していた。
ハルナの頭の中に、ある思いが浮かんでくる。
『――元の世界に戻ってこれた』
その元の基準となるのは、もちろん東京にいた頃の話ではない。
それくらい、”元”がこの世界の生活が基準になるほどの時間をハルナは過ごしてきたのだと。
だからこそ、このまま泣いてばかりにはいられない。
ハルナは、今にも再会を喜びたいところだったが、自分のやるべき行動に移る。
「ご……ごめんね、エレーナ?ソフィーネさんも、ありがとうございます」
「?……いえ、大丈夫です。それよりも、こちらをどうぞ」
ソフィーネから手渡されたカップを、ハルナは手に取り自分の膝の上に持ってく。
そこから湧き上がるミルクの入った甘い紅茶の香りが、ハルナの嗅覚に沁みていく。
そして、今度はカップを口元に持っていき、一口……もう一口と甘くて香りのよい美味しいお茶を、今度は口の中で味わった。
そのお茶が喉を通り胃に降りていくと、ハルナの高ぶっていた感情も不思議と落ち着いていった。
「ありがとうございます……とっても美味しかったです」
そう言ってソフィーネは笑顔を作り、ハルナから差し出された空になったカップを両手で受け取った。
「それは何よりです……美味しく淹れた甲斐もありましたわ」
「ソフィーネ……それは入れてもらった人が言う評価じゃない?自分で美味しく淹れたって……アンタどれだけ自信があるのよ」
「あら、お言葉ですが……エレーナ様。ハルナ様は、私の淹れたお茶をいつも喜んでくださいましたのよ?起きられたとき、眠れないとき、気持ちが不安なとき……いかなる時でもハルナ様のお好みに合わせてお茶を淹れてまいりましたわ」
「まぁ、ソフィーネのお茶は美味しいもんね。私の家にも一人欲しいくらいよ?」
「それは先日もお話しした通り、お断りさせていただきます。私は”ハルナ様”のメイドでございますので、もし私のお茶をご要望の場合はハルナ様といつまでも仲良くして頂ければと思いますわ?」
「いうわね……ソフィーネ」
そう言ってソフィーネとエレーナはハルナを挟んで笑いあった。
ハルナもその笑い声につられて、気持ちは先ほどよりも楽なっている。
だが、多分この世界で自分しか知らないことがあり、そのことがハルナの心に絡みついて取れない。
それを察していたエレーナは、自分の親友に再び声をかけた。
「それでどうしたの?一体何があったの?」
ハルナはその言葉にタイミングを得て、自分の不安に対しての行動を起こすことを決意した。
「あの……ステイビルさんは今どこに?」
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