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第六章 【二つの世界】
6-193 違和感3
しおりを挟む「ハルナ……あなたが王妃に選ばれたのよ?」
ハルナの顔から表情が抜け落ち、もう少しで口元が力なく開きそうなくらい驚きで脱力していた。
エレーナはハルナのその反応から、ハルナが何らかの事情によって昨日までのハルナと違うことを確信した。
「やっぱり……その表情は自分のことわかってないみたいな顔ね。記憶喪失なのかしら?」
「であれば、私たちのことやステイビル様のこともお忘れになられてるのではないでしょうか?」
「確かに、ソフィーネの言う通り……一時的なショックで……何か……こう……って、私がそんなのわかるはずないじゃない!?ヴィーネいる?」
自分の考え以上の状況が起きて、そのことに思考が暴走しかけたエレーナは、自分の相棒の精霊の名を呼ぶ。すると、その背後から信頼が置ける相棒がエレーナの前に姿を現した。
『なに?どうしたの?』
「ちょっと、ハルナの中で何かおかしなところがないか診てくれない?」
ヴィーネはエレーナからの頼みに応じ、ハルナの身体を診るために身体の中に入ろうとした。
『あ……れ?』
「どうしたの?何か変なものでも……!?」
『ち……違うんだ、エレーナ』
「違う?じゃあ、一体何があったっていうの?」
『ハルナの中に、入れないんだ!』
「え?まさか!?そんなことって……あるの?」
今までの旅の中やそれ以降に生じた原因不明の症状や魔素の問題に関してヴィーネは国民のために、水の大精霊ガブリエルから授かったその能力を大いに役立てていた。
かなりの数の人間や一部亜人の身体の中を見てきたが、今回起きた現象はヴィーネにとっても初めての出来事だった。
しかも大精霊から授かった能力が、この世界に生きるものに通用しない……そこでエレーナは思い出した。
――ハルナが、この世界の者ではないことを
だからとは言えないが、ハルナの異変も何か自分たちが知らないところで起きているのだとエレーナは理解しようとした。
エレーナはショックを受けるヴィーネを慰め、後で説明すると言ってまた自分の中にその姿を戻した。
「……やっぱりね」
「な、何か?」
ハルナは自分が何かをしてしまったのではないかという恐怖から、少しだけエレーナに身構えてしまった。だが、エレーナはそんなハルナのことを理解して怯えるハルナを気遣った。
「……心配しないで、ハルナ。私たちはハルナの味方よ?きっとハルナに私たちの知らない”何か”があったのだと思うけど、私たちはハルナが今まで助けてくれたことを忘れてないわ」
そのエレーナの言葉に、ソフィーネも深く何度も頷く。
その行動は二人の思惑通り、固くなったハルナの気持ちを解すことができた。
しかし、エレーナもこれから先のことを考えれば現状を整理することが優先と考え、ハルナに今の状況を説明することが先だと判断した。
「さっきも言った通り、あなたは王妃でステイビル様は国王なの。だけど、これはまだ決定したわけじゃないの……」
エレーナはそう説明し、今の状況を話すためのきっかけとした。
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