問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-135 魔法解除

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「それでは身体を縛ります……”ログホルム”!」




……



ナルメルが呪文を唱えても、何も起こらない。

可笑しな状況に気付き、マルスはナルメルに声を掛けた。






「ナルメル……どうしたんだ?時間が勿体ないぞ」


「うん……それが、さっきから呪文を唱えているんだけど、その効果が発現しないのよ」



「そうなのか?……ということは、今回は魔法解除の魔法も掛けられているのか」






新しく移動した場所で魔法を扱える者がいたとすれば、今回ナルメルたちが入ってきた方法で入ることが可能となる。
事前に知っていればロープなどを用意すればいいはずだが、その仕掛けを知っている者は入り込んで茂みからは永遠に出ることはできない。

今回、新しく仕掛けを増やした理由は”身内”の者への対策が強いのだろう。





「これは困ったりましたね。私の術が使えないとなると、別に誘導する者を用意しなければなりません。あと、間隔が短いと一人以上と認識されるため茂みの中に入ることも出来なくなってしまいます……」





「そういえば、ブンデルさんもこの魔法は使えたんじゃないですか?」


「え?ブンデルさんも……!?」




ハルナの言葉を聞き、マルスはやや驚いた顔をする。





「え……えぇ、まぁ」





ブンデルは何か嫌な予感がして、簡単に返事を返した。







「その魔法は特に、ある家系の者しか使えないと聞いているが……”あなたの村”でも使える人がいたんですね」







マルスは、ブンデルが別の村から来たエルフだと勘違いしていた。
マルスもブンデルがこの村にいたことを知らなかった様子だった。







「と……とにかくブンデルさんの魔法が使えるかどうか試してもらえませんか?」






ナルメルは、慌てて話題を打ち切るかのようにブンデル魔法を使うよう促す。

ブンデルはナルメルに言われて、魔法の詠唱を始める。






「……”ログホルム”」





――パン……バシッ!





詠唱が終わると、電気が放電したように光と破裂音が発せられ、ナルメルには出来なかったことが何の問題もなかったかのように蔦が目の前に現れた。






「で……出てきましたね」




隣で見ていたサナが、誰よりも先に驚きを口にした。
二人のエルフは、信じられないといった表情でその結果を見ていた。






「どうしたんですか?ナルメルさん、マルスさん……」






心配したハルナが、呆けている二人に声を掛けた。








「あなた方はこれを見て何も!?……すみません、取り乱しました、人間の方には魔法とはあまり縁がないのでしたね」








マルスはハルナに一言詫びて、この状況の説明をしてくれた。



【魔法解除】は、魔法が掛かった範囲内での魔法の使用が出来なくなる。
詠唱前にかけたもの、詠唱後にかけようとしたもの、どちらも解除の魔法をかけた術者の魔法レベル以下ではその効果を取り消されてしまう魔法だった。


この魔法をかけた術者も相当なレベルの術者であることは茂みにかけた他の魔法を解除していないことから、その術者の魔法のコントロールの精密さが伺える。


だが目の前のエルフは、そんな高度の術者が仕掛けた魔法をいとも簡単に破り自分の魔法を発現させてみせた。
これは、エルフの村にとっては大きな脅威となるだろう。






「……なるほど、そういうことなのね」





マルスの説明を聞き、エレーナが納得する。




「でも、まだ他の魔法もかかっているんでしょ?当面は安全じゃない?」



「当面……そうですね、当面は安全かもしれませんね」




少し諦めたような表情で、今の状況を何とか理解しようとする。






「それでは、そろそろ行きましょう。こうしていても何も進みませんから」





ステイビルがマルスとナルメルに話しかけ、引き続き新しいエルフの村まで案内してもらうようお願いした。





マルスを先頭に全員が蔦の紐で身体を繋げ、順に茂みの中に入っていく。
ハルナも今日二回目の魔法で聴覚を封じられた世界を体験する。

視覚はあっても、音が聞こえない状態は、ハルナにとってとても怖い状況だった。
またハルナは、腰に結んだ蔦を強く握りしめた。



結果、最初の茂みよりもさらに長い間進んで行く。
それが今回の慎重さに繋がっている結果だった。


それもようやく、終わりを迎える。
ハルナは再び、音のある世界に戻ってきた。





「ぷふぅー……」





自分の出した張り詰めた息を逃がす音も、いまハッキリと聞こえてくる。




「ハルナさん、大丈夫ですか?」




少し白い顔をしたハルナに、ナルメルが気を使って話しかけてくれた。



「大丈夫です、ありがとうございます……」



ソフィーネが水筒からコップに水をくみ、それを一口含んだ。




ようやくハルナも、周りの状況が見え始めた。
風に乗って草を刈った時のあの匂いが、嗅覚を刺激する。




そうしているうちに、再びこの場に全員が揃った。






「それでは、案内をお願いできますか?」







ステイビルは再びマルスに案内してもらうようにお願いしたが、その言葉にマルスは首を横に振る。





「すみませんが、ここでお待ちいただけますか?この村の中での混乱を避けるため、まず私が村長に話しをしてきます」






ステイビルたちは罠かもしれないという考えが頭の中に浮かんだが、ここまで来てはどうしようもないことと先ほどの誓いの意味を確かめるためにもマルスを信用することにした。





「わかりました……ここでお待ちしています」





その言葉に頷いて、マルスは背中を向けて奥へと歩き始めた。










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