240 / 1,278
第三章 【王国史】
3-71 水脈を探して
しおりを挟む翌日、ステイビルたちはエルフと共に山に入っていく。
まずは、集落の水が湧き出る泉から山に向かい、エルフの力で水脈をたどっていく。
だが、水脈が枯れているため追跡がなかなか難しい状況だった。
「……ということは、あまり状況は変わってないですね」
「そうだな、これでは初めの状況と何も変わっていないな」
エレーナの言葉にステイビルも同意する。
ブンデルは、背中に冷や汗をかいている。
自分のせいではないとわかっていても、自分の能力が役に立っていない。
この状況に、また用無しの烙印が押されてしまうのではないかと、ハルナたちにバレない様に焦る心を必死に抑えていた。
「ブンデルさん……」
「え!?……あ。ご、ごめんなさい!」
ハルナから急に声を掛けられて、思わず誤ってしまった。
「いえ、別にブンデルさんが誤ることでは……それよりも、他に何か判ったりしないですかね?」
「あぁ、そうだね。水脈は枯れているが、少しは流れているみたいだ。だが、少なすぎるのと山を上がっていくと地面が厚くなっていくので、追いづらくなっているな」
その言葉に対し、エレーナはひらめいた。
「って言うことは、水の量が増えればその流れを追えるっていうことね……」
「ま、まぁそうだな。だけどそうするには、上の方から水が流れてこないと……」
「ヴィーネちゃん。下の水を感じ取れる?」
「うん、多分。……あ、これかな?」
「――え?」
ブンデルは驚きと同時に、恐怖を感じる。
もしも、本当に精霊に見えてしまうと、自分がここにいる必要性が亡くなってしまうからだった。
「じゃあ、そこから上に向かって水を送ってみて」
「わかった!」
……ゴゴゴゴ
地響きを鳴らしながら、水が重力に逆らい逆相をしていくのを振動で感じる。
そして、ボン!と音が鳴り響き山の中腹から噴水のようなものが立ち上っているのが見える。
「な、なにアレ!」
「あそこに何かありそうだな……行ってみよう!」
そういって、ステイビルは水が噴き出ている場所を目指して山を登り始め、ステイビル、エレーナ、ハルナとその後を追いかけていった。
「……え、あ。ちょっと待って!?」
呆気に取られていたブンデルは置いてけぼりになりそうだった、急いでステイビルたちの背中を追いかけていった。
山の中腹点前に登ってきたところで追いついたハルナとエレーナは、ステイビルとアルベルトが何かを調べていることに気付いた。
「はぁはぁ……どうか……したのですか?」
「うむ、ここの辺りを見てくれ」
高い木の下に草木が生い茂っており、ステイビルはその周辺一帯を見るように促す。
「――?これが何か?」
「……わかりませんか?不自然な草木の生え方をしているんですよ」
追いついたブンデルが、ステイビルが指摘した違和感に気付く。
「そう言われてみると……」
草木が枯れ気味な周囲一帯で、ある周囲だけ元気に生い茂っている場所がある。
「これは、エルフなどが使う”自然の力”によって人工的に造られた場所ですね」
「自然の……力?」
ハルナが、聞き慣れない言葉に聞き直した。
「そうです。ちょっと見ててください」
ブンデルはもともとあった場所とは別の方向を向き、ゆっくりと息を吸い込む。
『健やかなる成長を……”ログホルム”』
その言葉が唱えられた途端、周囲の草木が反応をして枯れかかった草が勢いよく成長していく。
そこには、明らかに何らかの力によって作られたといった感じの緑が出来上がった。
「す……すごい!」
エレーナも初めて目にするエルフの力に驚き、思わず声を挙げてしまう。
「と、こういうような力を使ったものがいるということです」
「ということは、エルフがこの近くにいるのですか?」
アルベルトが、ブンデルに確認をした。
「いいえ。私の知る限りでは、この辺りにはエルフは居ないはず……」
「では一体……誰が」
「わかりません……とにかく、注意してください」
「何か罠が仕掛けてあるかもしれん。ゆっくりと一列になって進んで行こう」
ステイビルの提案で、ハルナたちは横一列になって足元を木の枝で刺して確かめながら進んで行く。
次第に地面が先ほどの噴水の影響か、湿りを帯びてきだした。
何かに近付いている気配を感じ始め、さらに注意して列を進めていった。
そして、ハルナたちは先ほどの水が噴き出ていたと思われる穴を発見した。
辺りは水浸しで、ハルナたちの服も草木に付いていた水で濡れてしまっていた。
「あーあー。誰かいますかー」
ハルナは垂直ではなく斜めに開いた穴をのぞき込んで、。
だが、声は響くだけで何の音も返ってこなかった。
「ハルナ……それは、子供がやる行動よ?」
エレーナは、ハルナの行動をみて呆れる。
「えへへへ、エレーナもやりたいんじゃないの?……あ。」
――ボコっ
照れ隠しで笑いながら、頭を掻くハルナの足元が崩れ落ちる。
「きゃああああああ!!」
「ハルナ!ハルナァァ!!」
「エレン!危ない!!!」
ハルナは崩れた穴の中に滑り落ちて、エレーナたちの前からその姿を消した。
その穴の中を覗き込み。ハルナの名前を叫ぶエレーナ。
アルベルトは脆くなった地面が危険と感じ、穴からエレーナを引き離した。
穴からは、ハルナの声は聞こえてこなかった。
0
あなたにおすすめの小説
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【作家日記】小説とシナリオのはざまで……【三文ライターの底辺から這い上がる記録】
タカハシU太
エッセイ・ノンフィクション
書けえっ!! 書けっ!! 書けーっ!! 書けーっ!!
*
エッセイ? 日記? ただのボヤキかもしれません。
『【作家日記】小説とシナリオのはざまで……【三文ライターの底辺から這い上がる記録】』
カクヨムの週間ランキング1位(エッセイ・ノンフィクション部門)獲得経験あり。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる