問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-70 エルフの協力

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「それはいつ頃からなのですか?」




「つい最近までは出ていましたが、ある時からでなくなってしまったのです」



「何か月前くらいですか?」




「あ、そうか。人間はちょっと前というとその位なのでしたね。我々のちょっと前とはあなた方の二、三年くらい前ですよ」






エルフ族の寿命は長く、時間の流れが人間のものとは異なる。
しかし、時間を合わせると同じ時期に水の影響を受けていたようだ。


エルフは山の湧水を利用していたらしいが、同じ時期にいつもの水場が枯れてしまったとのことだった。




「ということは、原因は同じ理由かもしれませんね……」




アルベルトが、エルフの話しを聞いて自分の考えを告げた。




「でしょうね。水脈は下の方まで続いていましたから、この下の人間が住むところまでは続いていたでしょう」




「え?水脈とか、そういうのわかるんですか?」




「何をおっしゃいますか。我々”森の民”であるエルフにとっては、そんなもの朝飯前ですよ!」





ブンデルは大きなお腹を突き出し、ふんぞり返って見せる。



ハルナは、あることをひらめいた。





「ねぇブンデルさん、お願いがあるんですが。もし、水のことを解決したら、私たちに力を貸してくれませんか?」






そのハルナからの提案に、ブンデルは目を見開いて驚く。





「おい、人間。いくら私が温厚なエルフだからと言って、人間に力を貸すと思うか?」






フウカがそのブンデルの態度に腹を立て、空中に再び数枚の円盤を浮かび上がらせる。




「うん……考えなくも……ないかな?」





「ちょっと、フーちゃん。やめなさい、そうやって弱い者いじめするのは!!」




「弱い者……いじめ……」



「え、あ!ご……ごめんなさい。そんなつもりじゃ」





しょんぼりするブンデル、しかも謝られることによってさらに心に傷を負わせてしまったようだった。




「と……ともかく、我々エルフも水については大きな問題となっています。もちろん我々も、この問題について調査中です。我々よりも先に解決してくれるならば、お手伝いしてもいいですよ」



「え!?本当で……」




喜ぶハルナに、ブンデルは手を出してハルナの発言を制する。






「ただし、今日からあなたたちと同行させてください」







「いいんですか?」






実はブンデルは、エルフの中では少し出来が悪かった。
他の者たちは、様々なスキルを獲得していったがブンデルは覚えが良くなかった。


そのため、エルフの村では仕事を与えられず、自分勝手に行動することが多かった。



ブンデルは、思惑があった。

人間と行動し水の問題が解決したら、自分の手柄にしようと考えていたのだ。
そして、村の自分を見下していた者たちに見せつけてやろうと思っていたのだった。





そうと決まったら、ハルナたちは一度ブンデルと一緒にステイビルの元へ戻ることにした。





「初めまして、エルフ族のブンデル殿。私は東の国王グレイネス・エンテリア・ブランビートの息子で、ステイビル・エンテリア・ブランビートと申します。ステイビルと呼んでください」



「こちらこそよろしく、ステイビル」



エルフは人間を見下している。。
そのため、人間の国の社会のトップよりも、自分の方が偉いと思っている。
今回は、ブンデルも自分の名誉のために、人間と手を組むことを決断したため割り切って付き合うことにした。





「エルフの村はこの辺りにあるのですか?」



ステイビルは、早速あまり知られていないエルフの実態を確認しようとした。




「いや、それは人間には言えませんね。私を含めて、人間を嫌っているエルフがほとんどです。ですから、その場所を知られてしまうと、いろいろと問題になりますし私もさらに……いや、これは何でもありません」





ブンデルは、余計なことを言って自分の価値を下げてしまうところだった。
自分が村で頼りにされていないことなど話してしまったら、この協力関係のバランスも変わってしまうと思い、今後発言に注意しようと決めた。





「そうですか。……エレーナたちから聞いたのですが、水がでなくなった時期がこの集落と同じ時期と聞きました。それについて何か心当たりは?」





「エルフでも調べてはいますが、これについては今のところ何も……」



本当のところは、そういった情報はブンデルのところまで回ってきていないのでブンデルは何も知らなかった。






「わかりました。我々も、調査を開始したばかりです。ここは情報共有し合えれば、解決も早くなると考えます。そういったお願いもエルフ族とは難しいのでしょうか?」



ブンデルは、ギクッとする。




確かにステイビルの言う通り、協力し合えれば早く解決するかもしれないだろう。

だが、除け者にされている自分では人間とエルフの橋渡し役などできないのだ。
ここはどうしても、協力できない様に話しを持っていった。



「あぁ、確かにそうかもしれないね。だけど、自分以外のエルフは……そう、人間を嫌っているんだ。だから協力し合うというのは、少し無理かもね」





「そうですか……残念です。だが、一人でもエルフの協力を得られたことは、今回の調査では大きな進歩です。ぜひ、一緒に解決していきましょう」





「あ、あぁ。よろしくね」




ブンデルはステイビルに差し出された手を握り返す。
その心は、チクチクと痛みを感じていた。







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