118 / 1,278
第二章 【西の王国】
2-87 王子の助け
しおりを挟む「ステイビル王子、キャスメル王子!……どうしてここに!?」
ハルナたち東の国の者にとっては、その登場に驚きを隠せない。
本来はこんな危険なところに居てはいけない人物なのだから。
「な……なぜ、こんな場所に?」
ルーシーも動揺を隠しきれず、王子たちにその理由を質問した。
「ふむ。聞けば何やら、私たちの精霊使いと警備兵が困っていると耳にしてな。その手助けにやってきたのだ」
ステイビルは、”何か問題でも?”といった感じでルーシーの言葉に返す。
「しかし、王子たちがいらっしゃったとしても状況は何一つ変わらないのです……」
「そうですか?私たちは、国としてではなく個人として手助けに来たのですよ。少しでも人手と”力”があった方がいいのではないですか?」
ルーシーの言葉に、次はキャスメルが答えた。
「時に、ドイルよ。その書簡の中に、撤退の命令はあったのか?」
「いいえ。撤退の連絡は何も……」
「ということは、作戦は継続中ということになるな。これはあくまでも”コボルド討伐作戦”の一環なのだ。我が国の範囲でできることと、その場にいた個人が出来ることやればよいのではないか?」
「まさか……あの”東の国として”ということは」
「そういうことでしょうね、ハルナ様」
メイヤが、ハルナの言葉に応えて安心させる。
「そうか……そういうことなのね」
エレーナは、一人頷いている。
「……どういうことですか?」
クリエが、その意味が分からずエレーナに問う。
「一言で言うなら、”国は関係ないけど、頑張りなさいよ”ってことよ」
「そうか……そうなのね。だから王子もこんなところまで」
ルーシーも、この状況を理解した様だ。
「そう、王子はその言葉通り助けに来てくれたのよ」
「そろそろ、我々の王選の準備もあるしな。ここらで、一緒に冒険をするのもいいんじゃないか?」
「あの……すみません。私たちにも、そちらの王子をご紹介頂けませんでしょうか?」
ニーナはこっそりと、邪魔にならない様に話しかけてきた。
「あ!ごめんなさい。あの、こちらが東の国の王子で、ステイビル王子とキャスメル王子です」
ハルナが、ニーナたちに紹介した。
それに返すように、ニーナも自己紹介をする。
「お初にお目にかかります、東の王子様。私、西の国の王女でニーナと申します。以後、お見知りおきを」
「ニーナ様、そんなに畏まらなくとも結構です。今回は単独で来ていますので普通にステイビル、キャスメルとお呼びください」
隣でキャスメルも頷いている。
「ご協力いただき、感謝します。ステイビル様」
ボーキンがステイビルたちの前で、跪いて感謝を告げた。
「それよりも、これからどのようにするおつもりでしょうか?」
キャスメルが、話しを前に進める。
王子が加わることによって、国としてではないがこれから先に同盟の糸口がつかめたことになる。
それは今すぐでもなく、遠い未来でもない。
”次の王”が誕生する時には、早い段階で協力し合えることになるだろう。
「早速ですが私たちは西に戻り、今回のことを調査せねばなりません。あの者たちは、後からやってくる警備兵たちに山越えをさせます」
エルメトがそう告げる。
「では、その者と一緒に我らも西の国へ参る。その時はどこを訪ねていけばよい?」
「その際は、私を訪ねてくださればよいでしょう、王子……いや、ステイビル様」
ステイビルは、ボーキンの言葉を了承した。
「では、まず私とエルメトでゴーフたちを連れてまいります。ニーナ様はアーリスと一緒に、次の隊と一緒にお帰りください」
そう告げると、ボーキンはドイルに頼みゴーフの開放をお願いした。
併せてエルメトの山を越えの準備が整い、ボーキンたちは山の中に入っていった。
今回は、ハルナたちは全員で行くことになった。
次の隊で、西の人物はこちらにはいなくなるので前回いかなかったアルベルトやアリルビートたちも行くことになった。
ドイルたち西の警備隊は何か起きた時のために、ここに留まることにした。
王国との連絡は一日一回、下の警備兵が入れ替わっているのでその時に行っていくことになった。
そして、日が暮れる。
ニーナは、初めて東の国で泊まることになった。
その日の夜は、少し豪勢な食事が用意された。
そうなると、食事の席出てくるのはにアルコール。当然それを誰よりも先に要求したのは、エレーナだった。
しかも、ルーシーも実は飲むことが好きで、アリルビートも加わり一種の同盟のようなものが生まれていた。
「ハルナも久しぶりじゃないの?一緒に飲むわよ!」
(言えない……向こうで、ずっと飲んでたなんて……)
ひきつった笑顔でエレーナに合わせるハルナは、なんとかばれないことを祈った。
アーリスもニーナも一緒になり、この場を楽しんでいた。
ここで、状況が変化する。
「ハル姉ちゃん!あのコボルドが来るよ!」
フウカは姿を見せて、山の入り口の方へ向かっていった。
ハルナは、注がれていたグラスを置いてフウカの後を追いかけた。
エレーナも何かを感じ、ハルナの後を追った。
『ニンゲンよ、森の中で怪しい人影を見つけたので知らせに来た!』
「え?怪しい人って……どんな感じでした?」
『よく見えなかったが、あれは商人とか警備兵などとは違う感じの者たちだったぞ……』
コボルドの長によると、西から来た人物の数は二、三人でだったようだ。
警備していたコボルドには被害がなかったが、確認しようにも普通ではない速さで移動しているため見失ってしまったとのことだ。
『とにかく、こちらに向かっているとのことで注意した方が良……』
――ドン!!
ハルナたちが拠点にしていたテントの方から爆発音が聞こえた。
テントの向こうから煙が昇っている。
「アーリスさん!」
警備兵が、走ってアーリスのところまでやってきた。
「どうしました!?」
「西の襲撃者たちの檻が、爆発しました!」
0
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる