鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十八章

第294話 レイの壮絶な過去

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 俺たちも部屋を変えることにした。
 二人で会議室は広すぎるため、俺の執務室へ移動。
 メイドのマリンが珈琲を淹れて退出。
 リマと二人きりになった。

「陛下、先程は申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。でも珍しいね。リマがそんなに感情的になるなんて」
「はい、王妃の過去に触れることになりますから」
「リマ、普通に話してくれ」
「分かりました」

 俺とリマは対面でソファーに座る。
 リマは珈琲カップを両手で持ち、一点を見つめていた。

「アル君はレイの過去を知らないだろう?」
「そうだね。実は何も知らないんだ」
「アタシはレイの過去を知っている。でも絶対に他言しないと、ある人物と約束してるんだ。アタシは墓まで持っていく」
「そ、そんな話を俺にしていいの?」
「ああ。本来だったら約束を守ったよ。レイは幸せなままアル君と暮らしていく。それでいいと思っていた。だけど、さっきシド様が口したカル・ド・イスク。まさかもう一度その名を聞くとは思わなかった」
「カル・ド・イスクって、確か凍蝙蝠竜ラヴィトゥルのネームドだよね。十年以上前に討伐されたって記録を見たけど」
「よく知ってるね。実はカル・ド・イスクを討伐したのは、レイやアタシなんだ」
「な、なんだって!」

 レイが過去にネームドを討伐したことは知っていたが、モンスターの名前までは聞いてないし、レイも教えてくれなかった。

「恐らくレイ自身も当時の記憶は定かではないと思う。だからレイの過去を知るのは、この世にアタシしかいないんだ」
「この世に? え? ど、どういうこと?」

 リマが全てを話してくれた。

 レイの幼少期。
 レイの両親がカル・ド・イスクに殺されたこと。
 ナタリー・ステラーとの出会い。
 リマとの出会い。
 カル・ド・イスクの毒の影響で狂戦士バーサーカー化したこと。
 カル・ド・イスクを討伐したこと。
 最愛の養母を亡くしたこと。
 騎士団へ入った理由。
 そして、騎士団を辞めた理由。

 レイがそれほどまでに壮絶な人生を送っていたとは知らず、俺は涙が止まらなかった。

「だからアタシがレイの母親なんだ。アタシは人生をかけてレイを守るし、幸せにする。でもその役目は今やアル君が担ってるけどな。フハハハ」

 リマは笑いながらも、涙を流している。

「レイは夢だった世界で一番素敵なお嫁さんになった。アル君のおかげさ」
「そ、そんなこと……。あのさ、リマがレイを守る役目に、俺も参加してもいいかな? レイは俺の最愛の人だ。俺も一緒に守りたい」
「フハハハ、アル君は本当にいい男だな。アタシにも気を遣ってくれのか」

 レイは俺の伴侶だ。
 命をかけて一生守る。
 だけど、リマもレイを見守ってきた。
 その気持ちは大切にしたい。

「リマ、ちょっとつき合ってよ」
「え? いいの?」
「ああ、少し飲みたい気分だ」

 俺は棚から一本の葡萄酒を取り出す。
 これは以前、イーセ王国でハウ・ギブソン隊長からお祝いとしていただいた葡萄酒だ。
 ギブソン家はイーセ王国最大の葡萄酒生産者だった。

「あ! これはあの時ナタリーと一緒に飲んだ葡萄酒だ。懐かしいなあ」
「良かったらナタリーの話をもっと聞かせてくれないか?」
「ああ、いいよ。あれほど慈愛に満ちた女性はいないからな。本当に素敵な女性だったんだ」

 リマから当時のことをたくさん聞いた。
 レイのことを心から愛し、レイのために生きた女性。
 血の繋がりなんて関係なく、魂で繋がっていた二人の母娘。

 ナタリーという女性がいたから今のレイがある。
 レイもまた、ナタリーを追うように生きていると思う。
 ナタリーの素晴らしい考え方や理念は、レイそのものだ。

 リマが葡萄酒を一気に煽ると、俺に頭を下げた。

「アル君。今さらだけど、王都での事件は申し訳なかった」
「え? 事件って?」
「前陛下と宰相の事件だよ」
「い、いや、あれはリマが謝ることじゃないよ」
「アタシは近衛隊隊長として陛下に近い立場にいた。アタシが身を挺してでも、もっと強く言っていれば……」
「あの時のレイやリマは、自らの信念に基づいて動いたんだ。それに、最後は俺を守ってくれたよ?」
「そう言ってくれるか。本当にありがとう」

 確かにあの事件でエルウッドは角を抜かれ、命の危険にさらされた。
 許せることではないが、あの事件があったから今の俺があるとポジティブに捉えている。

「レイは今でも前陛下を尊敬している。もちろんやったことは許されないけど、本当に立派なお方だった」
「うん。きっと想いが強すぎたんだろうね。俺も国王という立場になって、少しだけ分かった気がする。やり方は認められないけど、国を繁栄させ国民を幸せにしたいという気持ちは理解できるよ」
「ありがとう、陛下も救われると思う。それに、アル君ならジョンアー様と同じ過ちはしないさ」
「アハハ、そうだね。もし俺がそうなっても、リマが身を挺して止めてくれるでしょ?」
「そうさ! そうだよ! もちろんさ! アタシはレイの母親だ! ということは、つまりアル君の母親でもある!」
「アハハ、これからもよろしくね。リマ母さん」
「フハハハ、任せろ! レイもアル君もアタシが幸せにするぞ!」
「じゃあ、さっそく給与の前借りを禁止しよう」
「ちょ、ちょちょちょ、それは待ってくれ!」
「アハハ」

 その後もリマと葡萄酒を飲んだ。

 昔は気付かなかったこと、理解できなかったことが、今の立場になって初めて分かった。
 国王という絶大な権力を持ち、常に華やかに見える立場でも、様々な苦悩や苦労がある。
 道を踏み外すこともあるかもしれない。

 だけど、俺には素晴らしい仲間いる。
 そしてレイがいる。
 俺は絶対に過ちを犯さないと誓った。
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