鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十八章

第293話 悪夢

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 アフラ上空に到着。
 俺は飛空船を王城敷地内の空港へ着陸させた。

「陛下、おかえりなさいませ!」
「アガスただいま。お土産があるよ」
「お土産……ですか?」
「ああ、倉庫のハッチを開けてみるといい。気に入ってもらえるはずだ」

 お土産とはモンスターのレア素材だ。
 武器や防具、高級な家具などで使用できる。

「す、凄い! これほどの素材をどうやって?」
「アハハ、ローザと分けて使ってくれ」

 俺はアガスの肩を軽く叩く。
 そのまま王城へ入ると、執事のステムが敬礼して待っていた。

「アル様! お怪我はありませんか?」
「ステムは心配性だなあ」

 執事のステムだ。
 ステムは数字に強いことから財務局で仕事をしていたが、昨年なんと財務大臣に抜擢。
 そのため執事を新たに雇うと伝えるも、ステム自身が大反対した。
 俺とレイの執事を辞めるのであれば、大臣を断ると言ったほどだ。
 現在は執事と財務大臣を兼任。
 ラルシュ王国は能力があれば、身分など関係なく要職に登用する。
 これはレイがクロトエ騎士団の理念として掲げていたものの一つだ。

 執務室へ入ると、机で書類に目を通すレイと、その前に立つユリアがいた。

「アル! 大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だよ。だけど信じられないことが起こってね。皆を集めて欲しい。緊急会議を開く」
「わ、分かったわ」

 ユリアも同時に頷いた。

「かしこまりました。会議は今日の夕方からでよろしいですか?」
「うん、頼むよ」

 ユリアがお辞儀をして退出。
 俺はレイに調査内容を伝え、会議に備えた。

 そして夕方になり会議室に八人が集合。

 ◇◇◇

アル 国王
レイ 王妃 
シド 冒険者ギルドマスター
オルフェリア 研究機関シグ・セブン局長
ユリア 宰相
ジョージ 研究機関シグ・セブン顧問
ローザ 開発機関シグ・ナイン局長
リマ 王室近衛隊隊長

 ◇◇◇

 初期の建国メンバーだ。
 国家として人材も揃ったため、このメンバーは自分がやりたい職務に就くことを概ね許可。
 ローザは建国時内務大臣だったが、現在は冒険者ギルド開発機関シグ・ナインに戻り、楽しそうに装備開発の日々を送っている。
 ローザが作る剣は恐ろしく高値で取引されるため、国家の収入源の一つだ。

 冒険者ギルドを国営化させる条件は、国軍を持たないことだった。
 リマは当初国軍を運営してもらう予定だったが一旦白紙にし、現在は王室近衛隊隊長の名目で、レイ直属の自由騎士として情報収集など行っている。
 さらに、Aランク冒険者としてクエストに出ることもあった。

 俺とオルフェリアは、全員にクエストの調査内容を伝える。

「そ、そんな……。モンスターが生き返ることなんてあるのか?」

 リマが驚いている。

「いや、それより、百頭もの多種多様なモンスターが一箇所に集まることなんてないぞ」

 ローザは腕を組んでいぶかしげな表情を浮かべている。

「オルフェリアが言う通り寄生虫ではないのじゃ。宿主を乗っ取る寄生虫もいるが、生き返らせることなんてできないからの。それに、多種多様のモンスターを同じ場所に集めるなんて寄生虫には無理じゃぞ」

 ジョージがモンスター学の権威として意見を述べた。

「シドはどう思いますか?」

 オルフェリアがシドの顔を見つめる。
 目をつぶって腕を組んで話を聞いていたシド。
 ゆっくりと目を開けた。

「ふむ。正直私も分からん。だが、オルフェリアやジョージが言う通り寄生虫ではない。となると毒の可能性が極めて高い」

 そう言いながら、シドがレイの顔を見つめた。
 レイは意味が分からず、少しだけ首を傾げる。

「……今回の件とは別だが、毒を注入した生物を兵隊として酷使するモンスターがいた」
「そ、それって! ま、まさか!」

 リマが大声を上げる。
 すると、横にいるレイの身体が急に震えだす。

「レイ? どうした?」

 レイは身をかがめ、両腕で身体を抑えていた。
 顔色が真っ青だ。

 シドが大きく息を吸う。
 何かを覚悟した表情だ。

「……そうだ、リマ。カル・ド・イスクだ。実は……カル・ド・イスクの死骸は盗まれたのだ」

 シドが発言した直後、何かが床に倒れるような鈍い音が響く。

「レ、レイ! どうしたレイ!」

 レイが気を失ったように椅子から転げ落ちていた。
 気を失っているようだ。
 俺はすぐにレイを抱える。

「ユリア、すぐに医務室へ連れて行くぞ!」
「は、はい!」

 頭を揺らさないように慎重にレイを医務室へ運び、医療機関シグ・シックスのソフィ・ピンク局長を呼ぶ。
 ソフィは四十八歳の女性で、国営になる前からシグ・シックスの局長だ。

「私とユリアさんで診ていますので、陛下は会議室へ戻ってください」
「だ、だけど」
「レイ王妃の身体に異変はございません。恐らく精神的な面で何か圧迫があったと思われます」
「分かった。じゃあ、ソフィ、ユリア頼んだよ」
「「ハッ! かしこまりました」」

 俺は二人に任せ、会議室へ戻る。
 部屋に入ると重苦しい空気の中、珍しくシドとリマが言い争っていた。

「そんなバカな! ギルドは何をしていたんだ! あれ程の犠牲を出したんだぞ!」
「その点は悪かったと思っている。調査を行ったが、調査機関シグ・ファイブでも足取りは掴めなかったのだ」
「レイがどんな想いでカル・ド・イスクを倒したと思ってるんだ!」

 リマは立ち上がり、拳でテーブルを殴りつけた。
 会議室に鈍く乾いた音が響く。
 リマが激昂するなんて珍しい。

「二人ともやめろ! どうしたんだ!」

 俺が叫ぶと、リマは我に返ったように動きを止めた。
 そして俺に向かって頭を下げ、シドにも同じように頭を下げる。

「シド様、申し訳ございませんでした」
「いや、リマの気持ちは痛いほど分かる。私もある程度は状況を知っているからな。これまで黙っていてすまなかった」

 リマは大粒の涙を流している。

「陛下、二人で話をしてもよろしいですか? レイ王妃の……過去です」
「レイの?」
「はい」
「わ、分かった」

 シドが全員を見渡す。

「皆、今日は一旦解散しよう。後日また会議を行う」

 俺とリマを残し、全員退出した。
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