鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十四章

第248話 狂戦士

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「レイ! レイ!」

 アタシたちは大声で叫ぶ。
 たが、強風でかき消される。
 この吹雪の中、闇雲に探しても見つからない。

「ナタリー! 風の音にモンスターの咆哮が混ざっている!」

 ウィルが叫んだ。

「なんだと!」
「あっちの方角だ!」

 アタシとナタリーは、ウィルが指差す方向へ走った。
 百メデルトほど走ると、人影のようなものが見える。

「レ、レイか!」

 信じられないことに、レイは薄着のまま雪の中に立っていた。

「レイ! レイ!」

 ナタリーがレイを抱きかかえる。

「リマ! ウィル! すぐに湯を沸かせ! 早く!」
「わ、分かった」

 アタシとウィルは、全速力で民家に戻る。
 そして、風呂場で燃石に火をつけた。

「ウィル! 大量の燃石が必要だ!」
「分かった! 隣の民家から持ってくる!」

 ウィルが外へ出ると、入れ替わりでレイを抱きかかえたナタリーが戻ってきた。

「レイ! レイ!」

 必死に声をかけるナタリーだが、レイは反応がない。
 ただでさえ白い肌のレイが、雪のように真っ白になっていた。
 
「クソッ! なんでこんなことに!」
「リマ、レイの心臓は動いている! とにかく温めるんだ!」

 ナタリーが急いでレイの服を脱がせ、風呂に入れる。 

「ぬるま湯からだぞ! ゆっくり温めるんだ!」
「お、おいナタリー! どこへ行くんだ!」
「現場だ! あれはカル・ド・イスクだ! レイを頼む!」

 そう言い残し風呂場から出てくナタリー。
 しばらくすると、ウィルが麻袋に入った大量の燃石を持ってきた。

「三軒回ってきた! これで十分なはずだ!」
「おう、ありがとう!」
「っと、ご、ごめん!」

 裸のレイが風呂に入っている。
 その姿を見て、ウィルが焦っていた。

「今はそんなことを気にしてる場合じゃないだろう!」
「そ、そうだな」
「ゆっくりと温めるんだ。火力調整を頼む。アタシはレイを見ている」
「分かった」

 風呂に湯気が立ち始めると、レイの身体がほのかに赤くなってきた。
 アタシはそっとレイの頬に触れる。

「ふうう、体温は戻ってきたぞ」
「そうか、良かった」

 アタシもウィルも余裕が出てきた。

「それにしても、ウィル。モンスターの咆哮ってよく分かったな」
「オイラは耳もいいんだ」
「耳も……か」
「アンタと違って、いいところだらけさ」
「ふーん、まあ認めてやるよ」

 安心感から軽口もきけるようになった。

「レイは!」

 そこへナタリーが戻ってきた。

「ああ、体温は戻ってきた」
「そうか、良かった」
「良かったって……、アンタ血が……」
「カル・ド・イスクに遭遇した」
「な、なんだって!」
「向こうは様子見という感じだったが、それでも強烈な攻撃だったよ。こちらもなんとか一撃入れたがな」
「手当を!」
「レイの様子を見てからな。ありがとう」

 十分に温まったレイを風呂から上げ、ナタリーとアタシで身体を拭き服を着せる。
 そして、暖炉の前にシュラフを敷き寝かせた。

 ウィルが珈琲を淹れ、ナタリーにカップを手渡す。

「ありがとう」

 ゆっくりと飲むナタリー。
 どうやら落ち着いたようだ。

「二人とも、これを見ろ」
「これは?」

 ナタリーが真っ白な板のようなものを見せてきた。

「これはカル・ド・イスクの鱗だ」
「こ、これが!」
「ああ、真っ白だろう。奴はこの鱗で全身を覆われている。雪に同化して全く見えないのだ」
「た、確かに!」
「むしろ夜の方が見えるくらいだ」
「じゃあ、その対策も必要だな」

 アタシが答えると、ナタリーの表情が一気に曇った。

「さらにな、カル・ド・イスクは、毒を注入した相手を兵隊として使うことがあるのだ。その兵隊を狂戦士バーサーカーと呼ぶ。一度狂戦士バーサーカーになると、意識を失くし死ぬまで戦うのだ」
「まさか、レイは狂戦士バーサーカーに?」
「分からん。レイは毒を注入されたわけじゃないからな。だが、間違いなく影響はあるはずだ。今回はカル・ド・イスクの咆哮に反応したのだろう」

 ナタリーがウィルの肩に手を置く。

「カル・ド・イスクは毒を注入したあと、高音の咆哮を上げる。それが狂戦士バーサーカー化の命令と言われているんだ」
「なるほど、風の音に混じってた高音の咆哮はそれだったのか」

 吹雪の中で咆哮を聞き取ったウィルが腕を組み、窓の外に目を向ける。
 今もやまない風に警戒しているようだ。

 レイが狂戦士バーサーカー化するのであれば、その対策も必要だ。
 もしかしたら、今回のクエストの最大の障壁は、狂戦士バーサーカーしたレイかもしれない。
 レイと戦うことなんてできないし、そもそもレイと互角なのはナタリーだけだ。

 ナタリーの傷の治療を終え、アタシたちは就寝。
 夜が明けるとレイは目を覚ました。

「レイ、大丈夫か?」

 ナタリーが優しく問いかける。

「身体は痛くないか?」
「少し……肌がピリピリする」

 レイがシュラフから手を出し、ナタリーの手を握る。

「ナタリー、離れないで」
「もちろんだ。ずっと横にいる。さ、これを飲むといい」

 ナタリーはレイに気付かれないように、痛み止めと睡眠効果のある薬草を煎じスープに入れた。
 それを飲んだレイは眠りについた。

「明日、吹雪が止んでいたら村へ帰還する。そして、本格的にカル・ド・イスクの討伐準備だ」
「レイはどうする?」
「レイはパーティーで最高戦力だ。外せない。それに、戦う必要があるのだ」
「ど、どういうことだ?」
「ラバウトの医師パート先生が言っていたのだが、狂戦士バーサーカーを解くにはカル・ド・イスクを倒し、断末魔を聞かせショックを与えること。そして、その血から血清を作り投与する必要があるそうだ」

 ナタリーの話を聞いたアタシとウィル。
 レイにカル・ド・イスクの断末魔を聞かせる必要があることを理解した。

「そうか、レイは討伐の場にいないとダメなのか」
「レイさん大丈夫かな」
「そうだな……心配だな」

 アタシは、暖炉の横で眠る一人の美少女に目を向けた。
 あまり過酷な人生を送るレイ。
 天使のような寝顔を見ていると涙が出る。

「レイ、アタシが守るよ」

 翌日、吹雪が治まったため村へ帰還。
 レイは念のために村の医者に見てもらったが、問題ないとのことだった。
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