鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十一章

第176話 未知なるモンスター領へ

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 一週間が経過。
 予定通り俺達四人とエルウッドは、アフラ火山に向けて出発した。

 サルガの国境を越えると、そこはもう人が支配する土地ではない。
 モンスターの領域だ。

 寝台荷車キャラバンは起伏のある草原を進む。
 御者席に座るのはシドと俺だ。

「この地域に訪れるのは数百年ぶりだ。もしかしたら地形が変わっているかもしれない」
「それは仕方がないよ。自然災害で地形が変わることだってあるんでしょ?」
「そうだ。だから慎重に進む。寝台荷車キャラバンは三日間ノンストップで走行できるが、夜の移動は危険だ。夜はキャンプを張るぞ」
「分かった。今回は調査が目的だしな。慎重に進んでルートを開拓しよう」 

 初日はモンスターに遭遇することなく夜を迎えた。
 俺たちは草原にキャンプを張る。

 キャンプと言っても、寝台荷車キャラバンには折りたたみキッチンや全員分のベッドがある。
 そのため、寝台荷車キャラバンを停車させて宿泊するだけだった。

「キャンプ風情を出すために、寝台荷車キャラバンの外で焚き火をして食事を取っても良いがな。ハッハッハ」

 シドはのんきに笑っているが、ここはもうモンスターの領域だ。
 危険な行為は避けるべきだろう。

 オルフェリアがキッチンで夕食を調理。
 シドは地図に様々な情報を書き込む。
 俺とレイとエルウッドは、付近の見回りに出た。

「今のところ問題ないね」
「そうね。でも油断しないようにしましょう」
「ウォン」

 そして夕食を取り、見張りの順番を決め就寝。

 シドはサルガに滞在中寝台荷車キャラバンを改造し、寝台の屋根に見張り台を作っていた。
 屋根の高さは三メデルトもあるため、見張り台として最適だった。

 俺は深夜に目を覚ます。
 ハシゴを登り屋根に上る。

「オルフェリア、交代するよ」
「アル、ありがとうございます」

 小声で話す。

「異変は?」
「特にないです」
「そうか、じゃあオルフェリア、ゆっくり寝て……」
「ん、どうしました、アル?」
「いや、なんとなく気配を感じたような気がしたんだけど……。気のせいかな」
「アルの感覚は鋭いですからね。警戒しておきましょう」
「そうだね。ありがとうオルフェリア。おやすみ」
「はい、おやすみなさいアル」

 オルフェリアと見張りを交代。
 鉄製の焚き火台の前で、毛布にくるまりながら夜空を見上げる。

 星がこぼれ落ちそうな夜空だ。
 モンスターの領域であっても、自然の美しさは変わらない。
 むしろ人がいないことで、この自然が保たれているのだろう。

「人が自然を壊してるのか……」

 そんなことを考えながら、俺はモンスター領で人生初の夜を過ごした。
 結局、何事もなく無事に朝を迎え出発。

 壮大な草原を進む。

「アル! 見て! 大牙猛象エレモスの群れよ!」

 御者席に座るレイが俺に声をかけてきた。
 寝台の窓から外を見ると、約二百メデルト先に十頭ほどのエレモスが群れをなしている。

 エレモスはBランクの大型モンスターで、以前討伐したことがある。
 そのエレモス討伐がきっかけで、オルフェリアと知り合うことができた。

「エレモスが十頭もいると壮観だな。レイ、危険はなさそう?」
「そうね、大丈夫だと思うけど。オルフェリアどうかしら?」

 オルフェリアがエレモスの群れを観察。

「そうですね。こちらの存在に気付いてますが、放置しているようです。近付かずに進みましょう」

 今朝出発してから、モンスターに遭遇する頻度が非常に高くなった。
 戦闘はまだないものの、いつ襲われても対応できるように警戒している。

 ここまで見かけたモンスターはDランクからBランク。
 もし、Aランクのモンスターに遭遇したら、戦闘は避けられないかもしれない。

 二日目の移動を終えキャンプを張る。
 日はまだ完全に落ちておらず、夕焼けが薄い雲を真紅に染めていた。

「うわ、凄い夕焼けだ!」
「ええ、綺麗ね」

 キッチンではオルフェリアが夕食を作っている。
 まるで行楽に来ているようだ。
 しかし、俺は昨日から時折気配を感じていた。

「なあ、エルウッド。やっぱり僅かに気配を感じないか?」
「ウォウ」
「ちょっと見回りに行こう」
「ウォン!」

 レイが俺の肩を軽く叩いてきた。

「アル待って。私も行くわ」

 空はまだ明るいが、レイは燃石に火をつけランプの用意を始めた。

「ふむ、私は何も感じないが、アルが言うなら何かあるかもしれんな。エルウッドも否定しておらぬし」
「そうですね。アルは昨日も言っていたので、もしかしたら後をつけられているのかもしれません」
「となると、Aランククラスか。厄介だな。とはいえ、今のアルとレイならAランクなぞ瞬殺か。ハッハッハ」

 シドの話を聞いたレイが、呆れた表情を浮かべている。

「バカなこと言わないの。さあアル、エルウッド、行きましょう」

 ランプを持ちキャンプ地を出発。

 レイは新しい細剣レイピアを携えている。
 ヴェルギウスの鱗で作られた真紅の細剣レイピアだ。

 俺はこれまで通り黒爪の剣レリクスを腰に下げつつ、新武器である真紅のツルハシを背負った。
 このツルハシは対ヴェルギウス専用だが、慣れるために持ち出した。
 重量は三十キルクもある俺にしか扱えないツルハシだ。

 竜種の素材で作ったこのツルハシは、世界で最も高性能かつ高価だろう。
 ローザが特別に作ってくれたものだから価格は不明だが、竜種の素材ということで金貨数千枚の価値はあるかもしれない。

 せっかくなので、俺は採掘用のツルハシとしても使うつもりだ。
 この真紅の色も気に入っている。

「アル、何か感じる?」

 キャンプから二キデルトほど歩いたところで、レイが話しかけてきた。

「今は特に何も……。気配を完全に消してるのか……」
「ウォン!」

 すると、エルウッドがダッシュし、地面に向かって吠えていた。

「地面が光ってる?」
「夕日が反射してるようね」
「これは液体?」

 透明な液体が、三十セデルトほどの小さな水たまりを作っていた。
 革手袋の上から触ってみる。

「粘り気があるな。なんだろう。モンスターの体液? 涎か?」

 俺は辺りを見渡した。
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