鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗

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第十章

第164話 絶望

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「レイ、こっちだ!」

 リマに先導され私は走った。
 サルガの街はヴェルギウスに破壊され、建物は崩れ、瓦礫が散乱している。
 イーセ王国が誇る、美しく整備された石畳の街道も見る影がない。
 いくつもの穴、剥き出しの土。
 私たちが走ることで砂埃が舞う。

「はあ、はあ」

 二キデルトは走っただろう。
 嫌な予感がする。
 向かう先は、サルガに残っている建物の中で最も大きい建物だからだ。
 そこは重傷者を収容する救護施設となっている
 言い換えれば、その施設には手遅れの者たちが収容されていた。
 そして、最大の死体収容所でもある。

 私の予想通り、救護施設に到着。

「こ、この救護施設なのね……。アルは大丈夫かしら」

 私の呟きにリマは答えない。
 息を整え入口をゆっくり進む。
 リマが先を歩き、私は後をついていく。

 一階の広いフロアには、急遽仕入れたトーマス工房の折りたたみ式ベッドがいくつも並べられていた。

 ベッドに横たわる人々は見るからに大怪我だ。
 怪我人たちから、うめき声が聞こえる。
 それはまるで激戦地の戦場病院のようだった。
 このフロアにアルがいるのだろうか。

 ベッドの間の通路を真っ直ぐ進む。
 どうやらこのフロアではないようで安心した。

「レイ……こっちだよ」

 リマは階段があるフロアへ入った。

「良かった。上の階にいるのね」
「……ああ」

 そのまま階段を上り三階まで行くと、数人の騎士が警護しているフロアに出た。
 私たちの姿を見て敬礼する騎士たち。

「ご苦労様」

 私は騎士に声をかけ廊下を進む。
 先程の一階とうってかわって無音だ。

 その静寂を破る足音。
 ブーツの踵部分の鉄板が、石造りの廊下に鳴り響く。
 リマに案内されたのは、廊下の最奥部にある部屋だった。

 大きな両開きの扉は木造で、少し色あせた赤紫色をしている。
 扉全体に施されている繊細なレリーフが美しい。
 それなりの地位についた者の部屋だったのだろう。
 リマが扉に手をかけると、木が軋む音が響く。

 部屋に入ると、ヴィクトリアとジル・ダズ姿があった。
 ヴィクトリアは部屋の奥にあるベッド脇の椅子に座り、ジル・ダズはその横に立っている。
 私はヴィクトリアに敬礼。

 窓際に設置されている一台のベッドは、トーマス工房の折りたたみベッドだ。
 窓から差す太陽の光が、真っ白なシーツをより輝かせている。
 ベッドにはアルが寝ていた。
 光が反射したアルの顔は白く輝いており、表情は全く分からない。

「アル! 良かった! ここにいたのね。心配したのよ」

 ヴェルギウスとの戦いで怪我をしたのだろう。
 もしかしたら酷い怪我かもしれない。
 私はベッドに近付く。

「アルの様子は?」

 誰も答えない。
 誰も私の顔を見ない。
 私はアルの顔に視線を落とす。

「ねえ、アル? 私よ? レイよ?」

 ヴィクトリアが涙を流し、部屋の外へ出ていった。
 ジル・ダズはヴィクトリアの後を追う。

「ジル・ダズはヴィクトリアの警護だものね」

 今朝まで元気だったアル。
 やはりヴェルギウスとの戦いは激しかったのだろう。

「アル。怪我は? 大丈夫?」

 リマも大粒の涙を流している。

「な、なんで皆泣いてるの?」

 雲が太陽を遮ると、部屋に差し込んでいた陽の光が消えた。
 アルの顔がはっきりと見える。
 私はベッドの真横まで近付く。
 髪は焦げて、顔の一部には酷い火傷のような跡。

「ア、アル……顔の怪我は大丈……」

 アルの顔は真っ白だ。

「う、嘘よ……。ね、ねえ、起きてアル」

 私は右手でアルの頬に触れる。
 その瞬間、全てを悟った。

 悟ってしまった。

「嫌ぁぁぁぁぁぁ! アル! アル! 嫌よ! アル!」
「レイ! ダメだ! アル君を動かしてはダメだ!」
「嫌よっ! アル! ずっと一緒って約束したじゃない! アル!」
「レイ!」
「アル! 起きてよ! ねえ約束は! アル! アル!」

 私は絶望に支配された。
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