あなたと食べるふたりご飯。

真柴理桜

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七草粥で朝ごはん

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 朝、起床してから簡単に身支度を整えて、潤はキッチンに立った。
 今日は休日だから時間は比較的遅めで時計はすでに9時を回っている。

「さて、始めますか」

 まずはお米を洗って水切りをし、その間に春の七草を綺麗に洗って細かく切って、スズナとスズシロは薄切りに。
 土鍋にお米と水を入れたら強火にかけて、沸騰したら弱火に。30分ほどゆっくり煮込み、10分前くらいにスズナとスズシロを入れて一緒に煮る。
 炊きあがったら残りの七草を入れて、しんなりするまで煮れば完成だ。
 味つけはあえてせずに、3つに仕切られた長皿に椎茸の佃煮、梅干、塩昆布を並べる。それから実家から送られてきた能登の塩を出す。
 それらをダイニングテーブルに運んだ頃、ちょうど奈々がリビングに顔を出した。

「潤、おはようー」
「おはよう、奈々。ちょうどご飯出来たとこだよ」

 顔洗ってきなよと笑う潤に頷いて、奈々は洗面台へと向かった。





 奈々が戻ってきて、2人でダイニングテーブルにつく。テーブルには中央に土鍋を置いて、取分け様の小さめのお碗と佃煮や梅干をのせた仕切り皿を各々の前に並べてある。

「土鍋でお粥ってなんかいいね。映えるやつだ」
「普通の鍋より土鍋のほうが美味しくなる気がするしね」

 顔を見合せて笑い合うと2人同時に合掌がっしょうする。

「いただきます」

 まずはそのまま一口。土鍋でお米からじっくりと炊いたお粥はふっくらとしており、七草の風味が香る優しい味わいだ。
 塩昆布をのせたり、梅干を崩して混ぜたりしながら食べても美味しいし、シンプルに能登の塩だけでも美味しい。塩が美味しいからか、お米の甘味も引き立ってこれだけでもご馳走だ。

「美味しいねぇ」

 ほぅと息をつきながら頬を緩める奈々。潤は口元をほころばせる。頬をほんのり紅潮させて、頬張る奈々の美味しそうな顔を見ているのは楽しい。

「七草粥は胃を休めるためだっけ?」

 奈々の問いに潤は頷く。

「そうだね。お正月料理のご馳走で疲れた胃腸を休める意味があるよ。あとはお決まりの……」
「無病息災!」

 潤の言葉を奪う様に奈々が重ねる。

「うん。新年に若菜摘みをして、生命力に満ちた新芽を食べる事で邪気を払うとか、葉野菜が少ない冬に青菜を食べることで栄養素を補うとかって意味があって。それが無病息災や健康長寿になったんだろうね」
「栄養があって体に優しいお粥は健康的な食事だってことだね」

 体も温まるしねと笑う奈々に潤も笑顔を返す。
 お腹の中から温めて、病気知らずで元気に過ごせます様に。そんな願いを込めて。ゆっくり味わう七草粥はじんわりと体に染みていく様な優しい味わいだった。

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