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第五章『図書室ではお静かに』
09
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木賀島を引きずるようにして図書館へと戻る。
その道中は酷く長く感じた。流石の木賀島も堪えてるのではないかと思ったが、その口数は減るどころか増してる。
「宰ぁ」と耳元、囁きながらどさくさに紛れて抱き着いてくる木賀島を振り落とそうかと何度も思ったが、堪えた。
図書室まで連れていったら叩き落としてやる。そう思いながら。
「いいから黙ってろ」
「……うん」
「……」
なんなんだよこいつは。
ただでさえおかしなやつなのに、普段以上に様子がおかしいと戸惑う。
木賀島の身体を支えてる腕がじんじんと痺れだすのを感じ、限界を感じた。急いだ方がいいよさそうだ。
そう、木賀島を背負いながらようやく図書室の前までやってきたときだ。
扉の前、そこには進藤が立っていた。
「お! 右代、木賀島――……って、お前ら」
どうやら待ってくれてたようだ。
進藤は俺に背負われた血まみれの木賀島と、俺の腕から滲む血を見て顔を強張らせる。
「どうしたんだよ、それ」
「……っ、話は、あとだ……それより、こいつ運ぶの手伝ってくれ」
「やほ、篤紀~~」
「うわっ、い、生きてんのか?! 目ぇどうしたんだよそれ!」
「話はあとだって言ってんだろ、……いいから手ぇ貸せ」
「わ、わかった」
流石の能天気マイペース進藤も只事ではないと思ったようだ。
そう図書室への扉を開いた進藤は、そのまま俺の代わりに木賀島を担いだ。
この調子では木賀島が図書室内でぽろぽろ喋りそうだったので、念の為その口を塞ぎながら俺は進藤について図書室へと入る。
――図書室内・カウンター。
戻ってきた俺たちを見て、案の定周子は血相を変えていた。
そして、意外なことに篠山も顔面右半分血まみれの木賀島を見て青ざめている。
「那智、その目は……」
「――陽太のやつだよ」
俺の言葉に、カウンター内が静まり返る。
誰かが固唾を飲む音が聞こえるほとだ。
「陽太のやつが、やりやがった」
俺が言わなくても木賀島がどうせ言うだろう。そう思って先に伝えれば、木賀島の左目がこちらを見るのだ。
「それ、言っちゃってよかったの?」なんて、まるで人をバカにするように。
「ここまでされて隠す義理もねえよ。……あいつは、最初から俺を狙うつもりだったろ」
「ま、待って……順序立てて説明してくれないか。旭君と会ったんだね?」
狼狽える周子に「ああ」とだけ応える。
「それで、どうしてこんなことになるんだ。――それに、右代君。君の腕……」
「大体想像つくだろ」
「いやつかないよ、だって彼は君のことだけは特別視してたし……それに今の言い方だったら、本当は目を潰されるのは右代君、君の方だったってことじゃないか」
あまりにも動揺してるのか、捲し立てるように詰め寄ってくる周子に『ああ、そうだった』と思い出す。
――こいつらは、俺と陽太が揉めていたのを知らないのか。
だとすると、余計説明するのも面倒だった。
カウンター内の柱を壁代わりに座らされた木賀島に、その傷に菌が入らないようにと応急処置を施してる篠山を横目に俺は考えた。
「……まあ、そういうことだ」
「そういうことだってなに?」
「あいつは、俺を殺したかったんだろ。……けど、こいつが余計な真似したせいで」
「余計じゃないでしょ~? その代わり、宰が優しく介抱してくれたし役得役得~」
「……」
「……き、木賀島君」
元から脳と口が直結してるようなやつだとは思っていたが、もう少しどうにかならないのか。
頭が痛くなってくる。
「いつからそんなことになってたんだ。もしかして、旭君が姿を消したのも……」
「知らねえ、それはあいつの勝手だろ」
「……けど、そのときにはもう、喧嘩したってことだよね」
ガキじゃあるまいし、もう少し他の言い方があっただろう。
呆れながらも息を吐く。
「お前には関係ないだろ」
「確かに、そうかもしれないけど……君にまで手を出すって……」
「……」
知らねえよ、あいつのことなんか。
これ以上ここにはいないやつの話を聞きたくなくて、しつこい周子に背中を向けるように丸椅子に座る。
そんなとき、隣にやってきた進藤に「なあ、右代」と声をかけられた。
「お前も手当、したほうがいいんじゃないか。それ」
言われて腕を指される。興奮状態だった脳も落ち着き、痛みと熱で痺れていたそこを進藤に掴まれそうになり、堪らず振り払おうとして痛みに呻いた。
「俺のは……放っときゃ治る、掠り傷みたいなもんだ」
「自分ではわかんねえのかもしれねえけど、出血量酷いだろ。顔真っ白だぞ」
「……」
「ああ、そうか、……ごめんね。右代君も辛いよね」
「だから辛くねえって言ってんだろ」
つうか頭ぶん殴られたやつが人を心配してんじゃねえよ、と言いたかったが、その先の言葉はいきなり進藤にブレザーを脱がされそうになり、途切れた。
ブレザーの下のシャツが血をたっぷりと含んで肌に張り付き、そのべたべたの状態のまま乾こうとしていたようだ。
変色したそこを見て、こちらを覗き込んだ周子は「うわ」と漏らした。
「……っ、見てんじゃねえよ」
「これもう脱いだ方が早そうだよな。取り敢えず、止血先にしとくか」
「脱がなくていい、このまま」
「あ? なんでだよ」
「……いいから」
「分かった、分かったから睨むなよ。……ほら、腕貸せ」
進藤に命令されるのは癪だが、他の奴らよりはましだ。
俺は渋々進藤に腕を出した。
「痛むか?」
「別に、大したことはない」
「よく言うよ」
「……あいつに比べたらマシだ」
誰とは言わずとも、進藤には伝わったようだ。
周子と篠山に挟まれてあーだこーだと言われている木賀島を睨めば、進藤は「そらそうかもだけど」と肩を竦めた。
「けど、旭のやつがこんなことするなんてな。よっぽどじゃないのか?」
「……チッ、あいつのことはもうどうだっていいだろ」
「今更仲直りってレベルの話じゃねえしな、ここまで来たら」
「……」
上腕の部分を進藤のネクタイで締め上げられる。窮屈ではあるが、血管が締まるような感覚は今丁度良くすらも感じた。
「ほら、これで少しはマシなんじゃないか? 本当なら、ちゃんと傷口を洗って消毒した方がいいんだろうけどな」
「保健室にでも行けりゃ、できるかもな」
「保健室か……確かに、この先に階段があって下に行くのが一番いいよな」
「一番っていうなら、こんなカビ臭えところ出て病院に行くのが先だ」
指摘すれば、進藤は「それは出られた場合の一番だな」と笑う。
つくづく無神経なやつだが、その可能性も大いにある分全く笑えない。
「うわ、止まらないね……血。なんか変な汁も出てるし……」
「那智、痛くはないですか」
「痛いってよりも、違和感がある感じだねえ。けど、こうやって塞いでたらマシだよ~ほら」
「……ええ? 本当に?」
「うんうん、いいんちょーの顔もしっかり見えるし」
「……」
目にゴミが入ったときの痛みは俺も知っている。しかも今回木賀島の目に入ったのはゴミと呼べるレベルのものではない。
大丈夫なわけがあるか、と舌打ちする。それとも本当に眼球の奥にある何かしらの神経を傷つけられ、おかしくなったのか。
「木賀島」
「……ん、あれ。どーしたの? 宰ぁ」
「お前、動けるのか?」
「問題ないよぉ。ほら」
どっこいしょ、と立ち上がろうと近くの椅子を掴み、腰を持ち上げる木賀島。しかし、やはりまだ感覚が取り戻せていないようだ。ふらりとその長身が傾き、「那智!」と驚いた篠山が押し潰されそうになりながらも慌てて支える。
「無理しないでください、那智。……この先の自習室は僕達だけで行きます。那智はここで待っててください」
「ええ、それは過保護すぎでしょ~? 俺は進藤やルイルイみたいに全身ズタボロってわけじゃないし? ほら、ちょーっとふらついて片目潰れただけだから」
「それはちょっとと言わないよ、木賀島君」
「ですが……」
「ああ、そうだな。自習室にはお前もこい」
「というか、全員で行くって話だっただろ」と篠山と周子を見れば、デモデモダッテと周子は口籠っていた。
「……宰」
「それに、肉壁が一つ減るのは痛手だからな」
「右代は本当素直じゃないよな。『この先、保健室に行けるかもしれないから悪化する前に向かった方がいいと思った』って素直に言えばいいのに」
「おい進藤、勝手に付け加えてんじゃねえよ」
「けど、そういうことだろ?」
なんでこいつはこういうときばかり楽しそうにしてんのか。まるで理解できない。
舌打ちが出る。
「…………そういう利点もあるって話だ」
「右代君、君は……」
「うるせえな、もうこれ以上ここに留まる理由もねえだろ。……さっさとその自習室に行くぞ」
そう言いかけたときだった。
いきなり図書室の扉が開き、カウンターにいた俺達は一斉に図書室の扉へと目を向ける。
そこにいたのは予想していなかった人物だった。
「……」
「……っ、お前……」
――陣屋だ。
そこにいた陣屋は貸出カウンターにいる俺達を一瞥し、それから壁に貼られた無数の【私語厳禁】と書かれたポスターを一瞥した。
そして、ゆっくりとこちらへと向かってくる陣屋。全員の視線が陣屋に向けられていた。
「なるほど、ここならお喋り自由ってことか。……図書委員はいい加減だな」
「もしかして、君が……陣屋君?」
「だったらなにか問題があるか?」
「そいつから聞いた。この先に行くんだろ、俺も同行しよう」まるでなにもなかったかのように、相変わらずの不遜な態度で続ける陣屋に俺も、他の奴らも、今回ばかりは呆気にとられていた。
その道中は酷く長く感じた。流石の木賀島も堪えてるのではないかと思ったが、その口数は減るどころか増してる。
「宰ぁ」と耳元、囁きながらどさくさに紛れて抱き着いてくる木賀島を振り落とそうかと何度も思ったが、堪えた。
図書室まで連れていったら叩き落としてやる。そう思いながら。
「いいから黙ってろ」
「……うん」
「……」
なんなんだよこいつは。
ただでさえおかしなやつなのに、普段以上に様子がおかしいと戸惑う。
木賀島の身体を支えてる腕がじんじんと痺れだすのを感じ、限界を感じた。急いだ方がいいよさそうだ。
そう、木賀島を背負いながらようやく図書室の前までやってきたときだ。
扉の前、そこには進藤が立っていた。
「お! 右代、木賀島――……って、お前ら」
どうやら待ってくれてたようだ。
進藤は俺に背負われた血まみれの木賀島と、俺の腕から滲む血を見て顔を強張らせる。
「どうしたんだよ、それ」
「……っ、話は、あとだ……それより、こいつ運ぶの手伝ってくれ」
「やほ、篤紀~~」
「うわっ、い、生きてんのか?! 目ぇどうしたんだよそれ!」
「話はあとだって言ってんだろ、……いいから手ぇ貸せ」
「わ、わかった」
流石の能天気マイペース進藤も只事ではないと思ったようだ。
そう図書室への扉を開いた進藤は、そのまま俺の代わりに木賀島を担いだ。
この調子では木賀島が図書室内でぽろぽろ喋りそうだったので、念の為その口を塞ぎながら俺は進藤について図書室へと入る。
――図書室内・カウンター。
戻ってきた俺たちを見て、案の定周子は血相を変えていた。
そして、意外なことに篠山も顔面右半分血まみれの木賀島を見て青ざめている。
「那智、その目は……」
「――陽太のやつだよ」
俺の言葉に、カウンター内が静まり返る。
誰かが固唾を飲む音が聞こえるほとだ。
「陽太のやつが、やりやがった」
俺が言わなくても木賀島がどうせ言うだろう。そう思って先に伝えれば、木賀島の左目がこちらを見るのだ。
「それ、言っちゃってよかったの?」なんて、まるで人をバカにするように。
「ここまでされて隠す義理もねえよ。……あいつは、最初から俺を狙うつもりだったろ」
「ま、待って……順序立てて説明してくれないか。旭君と会ったんだね?」
狼狽える周子に「ああ」とだけ応える。
「それで、どうしてこんなことになるんだ。――それに、右代君。君の腕……」
「大体想像つくだろ」
「いやつかないよ、だって彼は君のことだけは特別視してたし……それに今の言い方だったら、本当は目を潰されるのは右代君、君の方だったってことじゃないか」
あまりにも動揺してるのか、捲し立てるように詰め寄ってくる周子に『ああ、そうだった』と思い出す。
――こいつらは、俺と陽太が揉めていたのを知らないのか。
だとすると、余計説明するのも面倒だった。
カウンター内の柱を壁代わりに座らされた木賀島に、その傷に菌が入らないようにと応急処置を施してる篠山を横目に俺は考えた。
「……まあ、そういうことだ」
「そういうことだってなに?」
「あいつは、俺を殺したかったんだろ。……けど、こいつが余計な真似したせいで」
「余計じゃないでしょ~? その代わり、宰が優しく介抱してくれたし役得役得~」
「……」
「……き、木賀島君」
元から脳と口が直結してるようなやつだとは思っていたが、もう少しどうにかならないのか。
頭が痛くなってくる。
「いつからそんなことになってたんだ。もしかして、旭君が姿を消したのも……」
「知らねえ、それはあいつの勝手だろ」
「……けど、そのときにはもう、喧嘩したってことだよね」
ガキじゃあるまいし、もう少し他の言い方があっただろう。
呆れながらも息を吐く。
「お前には関係ないだろ」
「確かに、そうかもしれないけど……君にまで手を出すって……」
「……」
知らねえよ、あいつのことなんか。
これ以上ここにはいないやつの話を聞きたくなくて、しつこい周子に背中を向けるように丸椅子に座る。
そんなとき、隣にやってきた進藤に「なあ、右代」と声をかけられた。
「お前も手当、したほうがいいんじゃないか。それ」
言われて腕を指される。興奮状態だった脳も落ち着き、痛みと熱で痺れていたそこを進藤に掴まれそうになり、堪らず振り払おうとして痛みに呻いた。
「俺のは……放っときゃ治る、掠り傷みたいなもんだ」
「自分ではわかんねえのかもしれねえけど、出血量酷いだろ。顔真っ白だぞ」
「……」
「ああ、そうか、……ごめんね。右代君も辛いよね」
「だから辛くねえって言ってんだろ」
つうか頭ぶん殴られたやつが人を心配してんじゃねえよ、と言いたかったが、その先の言葉はいきなり進藤にブレザーを脱がされそうになり、途切れた。
ブレザーの下のシャツが血をたっぷりと含んで肌に張り付き、そのべたべたの状態のまま乾こうとしていたようだ。
変色したそこを見て、こちらを覗き込んだ周子は「うわ」と漏らした。
「……っ、見てんじゃねえよ」
「これもう脱いだ方が早そうだよな。取り敢えず、止血先にしとくか」
「脱がなくていい、このまま」
「あ? なんでだよ」
「……いいから」
「分かった、分かったから睨むなよ。……ほら、腕貸せ」
進藤に命令されるのは癪だが、他の奴らよりはましだ。
俺は渋々進藤に腕を出した。
「痛むか?」
「別に、大したことはない」
「よく言うよ」
「……あいつに比べたらマシだ」
誰とは言わずとも、進藤には伝わったようだ。
周子と篠山に挟まれてあーだこーだと言われている木賀島を睨めば、進藤は「そらそうかもだけど」と肩を竦めた。
「けど、旭のやつがこんなことするなんてな。よっぽどじゃないのか?」
「……チッ、あいつのことはもうどうだっていいだろ」
「今更仲直りってレベルの話じゃねえしな、ここまで来たら」
「……」
上腕の部分を進藤のネクタイで締め上げられる。窮屈ではあるが、血管が締まるような感覚は今丁度良くすらも感じた。
「ほら、これで少しはマシなんじゃないか? 本当なら、ちゃんと傷口を洗って消毒した方がいいんだろうけどな」
「保健室にでも行けりゃ、できるかもな」
「保健室か……確かに、この先に階段があって下に行くのが一番いいよな」
「一番っていうなら、こんなカビ臭えところ出て病院に行くのが先だ」
指摘すれば、進藤は「それは出られた場合の一番だな」と笑う。
つくづく無神経なやつだが、その可能性も大いにある分全く笑えない。
「うわ、止まらないね……血。なんか変な汁も出てるし……」
「那智、痛くはないですか」
「痛いってよりも、違和感がある感じだねえ。けど、こうやって塞いでたらマシだよ~ほら」
「……ええ? 本当に?」
「うんうん、いいんちょーの顔もしっかり見えるし」
「……」
目にゴミが入ったときの痛みは俺も知っている。しかも今回木賀島の目に入ったのはゴミと呼べるレベルのものではない。
大丈夫なわけがあるか、と舌打ちする。それとも本当に眼球の奥にある何かしらの神経を傷つけられ、おかしくなったのか。
「木賀島」
「……ん、あれ。どーしたの? 宰ぁ」
「お前、動けるのか?」
「問題ないよぉ。ほら」
どっこいしょ、と立ち上がろうと近くの椅子を掴み、腰を持ち上げる木賀島。しかし、やはりまだ感覚が取り戻せていないようだ。ふらりとその長身が傾き、「那智!」と驚いた篠山が押し潰されそうになりながらも慌てて支える。
「無理しないでください、那智。……この先の自習室は僕達だけで行きます。那智はここで待っててください」
「ええ、それは過保護すぎでしょ~? 俺は進藤やルイルイみたいに全身ズタボロってわけじゃないし? ほら、ちょーっとふらついて片目潰れただけだから」
「それはちょっとと言わないよ、木賀島君」
「ですが……」
「ああ、そうだな。自習室にはお前もこい」
「というか、全員で行くって話だっただろ」と篠山と周子を見れば、デモデモダッテと周子は口籠っていた。
「……宰」
「それに、肉壁が一つ減るのは痛手だからな」
「右代は本当素直じゃないよな。『この先、保健室に行けるかもしれないから悪化する前に向かった方がいいと思った』って素直に言えばいいのに」
「おい進藤、勝手に付け加えてんじゃねえよ」
「けど、そういうことだろ?」
なんでこいつはこういうときばかり楽しそうにしてんのか。まるで理解できない。
舌打ちが出る。
「…………そういう利点もあるって話だ」
「右代君、君は……」
「うるせえな、もうこれ以上ここに留まる理由もねえだろ。……さっさとその自習室に行くぞ」
そう言いかけたときだった。
いきなり図書室の扉が開き、カウンターにいた俺達は一斉に図書室の扉へと目を向ける。
そこにいたのは予想していなかった人物だった。
「……」
「……っ、お前……」
――陣屋だ。
そこにいた陣屋は貸出カウンターにいる俺達を一瞥し、それから壁に貼られた無数の【私語厳禁】と書かれたポスターを一瞥した。
そして、ゆっくりとこちらへと向かってくる陣屋。全員の視線が陣屋に向けられていた。
「なるほど、ここならお喋り自由ってことか。……図書委員はいい加減だな」
「もしかして、君が……陣屋君?」
「だったらなにか問題があるか?」
「そいつから聞いた。この先に行くんだろ、俺も同行しよう」まるでなにもなかったかのように、相変わらずの不遜な態度で続ける陣屋に俺も、他の奴らも、今回ばかりは呆気にとられていた。
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