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落花流水 2
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自分と出会っていなかったら、裕は傷つかなかった。肩の瘡蓋が目に入る。こんなにひどい怪我を負う必要もない。視線が傷ついた肩に移って、眉根がぴくりと動いた。
「たろう?」
「あ、ちがうんです。おじさんにまだ嫉妬しているだけで……。裕さんを守れなかったこと、まだ後悔しているんです」
太郎はふるふると首を振って否定をした。心のわだかまりが解けたのか、口を割ってしまう。
「あれは、俺のせいだよ。おまえは悪くない。だめだな、あれからさ、よく考えても、このまま一人で子供を抱えて育てていけるのかってたまに不安になるんだ」
「裕さん……」
「……俺はもう他のアルファと番うことができない。それでも体はアルファを求めてしまうんだ。発情期はくるし、森さんとだってしてしまった。嫌だろ、こんな事故物件なやつ」
「嫌じゃないです、むしろ、ずっと心配でした。叔父さんも、本当はまだ許せなくて、悔しくて……」
「たろう」
「ごめんなさい」
「なんだよ、謝るなよ。おまえは悪くない。出会えてよかった」
今日はキスも愛撫もしない。そう心に決めた。
「もうつらい目には合わせません」
「うん」
「絶対にです」
「……うん。ありがとう」
涙がこぼれて頬を伝い、すべてを溶かしてしまったかのように流れ落ちた。
「あ、裕さん、本通りに松葉崩しで上下反対にして寝ます?」
「ふは、それは勘弁だ」
目を細めて互いに笑った。疲れていたのか、裕はそのまま寝息をたてて眠る。
笑って誤魔化したが、触りたくてたまらない。
気が変になりそうになりながら、その晩は生き地獄のように裕の寝顔を見守り続けた。
二日目 抱き締める
その日は四人で島を観光した。マンゴーシェイクを島カフェで飲んでいると、裕が太郎の手を上に乗せて握った。それだけで驚いてしまい顔をみると、裕は真っ赤な茹だこのように俯いていた。
その夜は、ぴったりと体をあわせ、太腿を絡ませて長い抱擁を交わす。皮膚のすべての部分を接触しあわせ、裕は恥ずかしそうに太郎の胸に顔を埋める。
「……あたってる」
「う、ごめんなさい」
裕の柔らかな髪が胸板に触れ、性器もまだ硬くない。自分だけが興奮してしまい、申し訳なさと情けなさに恥ずかしくなってしまう。
「……嬉しいんだ。俺に反応してくれて」
「裕さん」
熱い吐息を絡ませて二人は見つめ合う。裕にどんどんと惹かれてしまう。どうやって、夫は裕を抱いたのだろう。抱き締めながら裕の肩に顔をよせた。嫉妬しているのに、林檎の匂いが顔じゅうにひろがり、さらにどくどくと全身の血管が怒張してしまう。
「ご主人に、嫉妬してます」
「雅也に?」
「番になれて羨ましい」
「……」
「僕のこと、嫌じゃないですか?」
「嫌じゃない。包まれているようで安心する。俺を気遣って、我慢してくれてるのも嬉しい。太郎、ありがとう」
にこっと柔和な微笑みを浮かべる裕に、太郎は無になれと自分に言い聞かせた。
三日目 キス
「キス、したい」
「たろ、……んっ、え……んん」
太郎は仰向けになる裕に覆いかぶさって唇を重ねる。下唇を甘噛みし、柔らかな舌が絡みついて、密着感を楽しむ。こちらが吸おうと思うと、逃げていき、裕の頭を持ち上げると、ねっとりとした朱唇の重なりに濃厚なキスを落とした。
「好きです」
「おれ、も……」
頬を赤らめて、裕の藍色の瞳が濡れて、上目遣いで見上げる。耳にもキスし、軟骨をかるく噛んだ。それから鎖骨や骨のでっぱりに唇をあてて、切歯をたてる。ぴくぴくと反応する裕に目を細めてしまう。思いあまって、全身に雨を降らせると裕が笑った。
「……あ、ごめんなさい」
「いいよ。ずっとキスしたかったから」
さらに唇を求めて、裕と貪るように唾液を交換し、体内に染み込ませていく。何度もくりかえして甘美な味わいに歓を尽くした。
「裕さん、好きです」
「……うん、好きだ」
半分喘ぎのようなかすれた声に裕の尖った乳首があたる。太郎は嬉しくて、裕のいたるところに口づけをして歓楽に溺れてしまった。
◇
次の日、水飛沫をつくって遊ぶ三人を眺めながら、パラソルの下で裕は手を振った。すっかり子供たちも太郎に懐いて家族のようにみえる。でも、昨夜はその微笑みを浮かべる男を雄のように求めていたのを思い出し、はっと赤面してしまう。
太郎と初めてキスした。夫以外の男。ましてや番以外のアルファを求めた自分がいる。罪悪感がわきながらも、また太郎に触れたいと思う自分がいた。
きょうもまた、する……。
昨日よりも激しく求めてしまったらどうしよう。日にちを追うように、勃起もせずに全身で欲しいと求めてしまう。
太郎、幻滅する、かな……。
まずいな。これじゃあ、まるで欲求不満みたいじゃないか。
陽射しが照りつけ、遮るように顔を覆うと柔らかな唇の感触が蘇り、肌が照りつくように灼けた。
四日目 愛撫
その夜は戸惑いながらも、軽いキスから深いキスへと変わって、指でなぞるように肌に触れた。乳首に触れられるとぴくぴくと跳ね、焦らすようにくるくると乳輪を目指して、太郎の指は硬くなったしこりをあやしていく。
「裕さん、可愛い」
「ん、焦らすなよ」
「焦らすのがいいんですよ、たくさん気持ちよくなってください」
「え、あ、だめだって……っ」
粟立つ膨らみをなぞりながら、耳のくぼみにも舌を這わせて、濡れた音が響いてとどく。ゆっくりと長い指が下へのびて、火照った躰が太郎の唇を求めてしまう。
「なか、指をいれていいですか?」
「……ん、あ」
「たっぷり濡らしておきますから」
「太郎のも舐めたい……」
裕が太郎の上にまたがり、赤い舌をだしながら強張った怒張をぺろぺろと舐めてくれる。懸命に奉仕してくれる。裕の太腿からはしとどに濡れた粘液が垂れて、妖艶で妖しくみえた。
「太郎のピンクだな」
「い、言わないでください。……僕もさわりますよ」
「おれのは勃たないよ」
「でも濡れてますよ?」
「え、……っ、あ、あ、あ」
丸まった綿を吸われ、筋を指のはらで撫でられる。甘くもせつない痺れが電流のごとく走り、窄まりも粘液で柔らかくほぐれていく。嫌悪感はなく、ぞくぞくとした甘い痺れだ。
「番が死んだら、運命の番に愛されるのかな」
「……っ、都市伝説、だ、よ」
「そうかな? 裕さん、ここ、ふっくらしてますね」
「あ、あ、太郎、おまえ慣れてる……」
「きょうのために勉強しました。よくほぐさないと」
感覚が麻痺するぐらいにひらかれ、さらに快感を得ようとしてしまう。
「はぁ、あ、あ、はぁ、じれったい……」
「裕さん、かわいい」
太郎の桃色に猛ったものを咥えながらも、ひらいていく性感が雄を求めていた。
欲しい、太郎がほしい。
太郎の熱い舌をうしろの小さな窄まりで締めつけて、粘膜が動くたびに尻を振ってしまう。咥えながらも、ぴちゃぴちゃと深い快感をさらに求め続けてしまう自分がいた。
五日目 挿入
最終日は手をつないで海岸を歩いた。
体を寄せて、指も絡ませて、砂浜を踏んではしゃぐ子供たちを見つめた。
そして、子供たちが寝静まり返った深夜、一時間くらいキスと愛撫を重ねる。唇と唇を触れ合わせて、熱い口づけを交わす。体をくねらせる裕に触覚が麻痺するほど接吻を続けた。
感じてくれるのか、首を振って拒まれるのではないか。そんな不安も、濃密な逢瀬を契り重ねるうちに掻き消されていく。ゆっくり、そしてじっくりと愛撫して、体は赤く火照って、燃えあがる。
「太郎の膨らんでいく」
「裕さんのもひらいてますよ」
「……あ、ぁ。あっ」
じゅるじゅると太郎の雄を咥えながらも、指と肉厚な舌で丹念に嬲られる。はやく、欲しい。浮きでた血管を舐めとり、張りつめた屹立を吸った。後孔に指を挿入され、皺を舐るように唾液で柔らかくほぐされ、強ばりを解かれていく。
「……ッァ」
真っ赤になりながら、濡れた視線を投げた。
「そろそろ、いれますね」
「んぁ、あ、……」
「ゆっくりいれます」
「……ん、はぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ん」
濡れてつやつやと熟れて光る窄まりに、怒張をあてて音を鳴らしておさめた。
快感の期待に目を潤ませて、裕の触れた指先から微かな震えと振動が伝わる。ぐらぐらと眩暈を感じながら、二人は心と体が悦びに打ち震えた。
「はぁ、ぁ、気持ちいいです」
「あ……、あ、っ……」
「裕さん、愛してる」
甘い吐息をはきながら、キスを求め、熱がひろがっていく。ゆさゆさと胸を揺さぶられると、痙攣する手で肩をつかんで、夢見心地に体がわななく。
三十分は動いてはいけない。すべてが匂いたつようにほぐれ、蕩けるようにいやらしい。手を絡ませて、唇を重ねて舌を吸う。尖ったふたつの蕾はじんじんと腫れて、熟れた肉が弾けるように押しひらかれた。
体の芯から温まるように脈の振動が伝わる。揺りかごの赤ん坊のように揺すられて、一つになっている感覚がした。
太郎が好きだ。愛している。
角砂糖が落とされたような甘い痺れが躰の奥へと溶けていく。ぴくぴくと誘うように疼いて、とくとくと脈打つ音が腹の奥まで響いた。まるで魂がぼたん雪のように溶けてきえていく。
抱擁と愛咬をくりかえしていくうちに、いつしか全身がさざ波のように震えた。体を離さず、震えに身をゆだね、二人は一体となった。
「……裕さん」
「太郎……」
深くキスを落とすと、か細い声が漏れて、胸の尖りはほんのりと膨らんで赤みを帯びてみえた。腹の凹凸でどこまではいっているのかわかる。
「なか、気持ちいい……」
「はぁ、あ、……すき……っ」
「あ、煽らないでください」
キュッと窄まりを締めつけると、また、むくむくとなかで膨らむのがわかった。
「あ、太郎」
ピクンと裕が揺れた。少し動くだけで、敏感になって腰が動いてしまう。見つめ合いながらも、お互いの性器が触れたところから発熱していく。膨らみと強ばりが象られ、どろどろと液体となり一つになっていく気がした。
「やっと時間だ。……動きます」
「……ん、んぁ、ぁ、っ」
ゆっくり、ゆっくりと揺さぶられ、びくびくと裕が震えた。深い悦楽の波にのまれ、気が遠くになりそうなオーガズムが荒波となって襲ってくる。
キスと粘膜の音が響き、このままずっと繋がっていたい。引いて、埋め込むような挿入をゆるゆると繰り返されるのが愛しくてたまらず、乱れた髪が濡れて額にはりついた。
「すき、あっ、ん、すき、たろ……」
熱くて、溶けてしまう。愛されたいという受動的な感情よりも、不思議に愛したいという能動的な欲望が強まっていく。
「裕さん、愛してます」
「……ぁ、ぅっ、たろ、愛してる」
「嬉しい。たくさんいってください」
「あ、あ、あ、たろ、た、ろ、なかで、いく、いってる、いってる」
腰を揺らしながら、ピタピタと柔らかな陰茎を震わせた。勃起はせずに割れ目からはとぷとぷと汁がこぼれ、腹は透明にぬれて、蜜壺から溢れるようにひろがっている。
「ここ、好きですか?」
腰をまわして、粘液で絡んだ雄を奥まで埋めると裕の目が眩み、弓なりに躰が反った。
「ああああ、あ、だめ、あ、あ……」
「それとも、ここですか?」
探るように押しあてると、裕はふるふると首を振った。太ももが痙攣しては太郎の鼠蹊部に脚を巻きつける。
「あ、っ、あ、そこ、そこ、あたってる」
「ここですね」
こめかみにキスを落として、裕の涙を吸いとった。爪を立てて、腰に足を絡めて、はぁはぁと裕は絶頂を迎えつづけた。
快感に悶えながら、紐で結ばれたように縫い留められる。逃げられない運命の桎梏から解き放つように裕は乱れた。固くなった頬がほぐれて、唇がかすかにほころび、唾液がだらしなく垂れる。すべてをひろげられ、溶かされて悦楽に堕とされる。
「きが、へんに、……な、る……」
「ゆっくり動きますよ。……裕さん、逃げないで」
太郎は笑みを浮かべながら、ゆっくりと速度を落として、秘めたしこりを押すように突いた。裕の尻が逃げようとする。太郎が深くキスをして繋ぐと、ひくひくと窄まりが締める。
「かわいい、裕さん」
「ぁ、あー……ぁ」
「愛してる」
「……っ、う、ん、あ、あいして、る……」
ゆっくりと擦って、収縮を繰り返す腹のなかで深い悦楽が花びらのように散る。胸の蕾もぷっくりと尖って赤みを増していた。
「僕もいっていいですか?」
ぱくぱくと半開きに動く唇にキスを落として、太郎は深いとこまで突くと精を吐きだした。
ゴムをして、ピルも飲んで、避妊はしていた。それでも流しこまれる熱を感じながら二人は求め続けた。
「ぁ……、ああ、あ、すき」
「裕さん、愛してます」
解き放たれても、長いまま繋がってお互いを離さない。ふたりは契りを交わしながら深い充実感にひたる。互いを縫い合わせたような心地よさに離れられない。
やっと出会えた魂の番。感謝と悦びに涙が止まらない。
翌朝、目を覚ますと隣で太郎が気持ち良さそうに眠っていた。子供たちはまだ起きそうにない。栗毛の髪を梳いてやると口許がゆるむ。窓辺からは朝日が黄色く漏れでて、すでにじっとりとした暑さが見てとれる。
幸せだな、と裕はなんとなしに思った。
後日、太郎が東雲家に引っ越してきたが、なくなったと思っていた私物品がいくつもみつかり、怒り狂った裕に殴られたのはいうまでもない。
「アルファも巣ごもりするんです!」
「しねぇよ!」
ウォークインクローゼットに衣類を集めて巣作りをしていることは、墓までもっていこうと固く誓った。
「たろう?」
「あ、ちがうんです。おじさんにまだ嫉妬しているだけで……。裕さんを守れなかったこと、まだ後悔しているんです」
太郎はふるふると首を振って否定をした。心のわだかまりが解けたのか、口を割ってしまう。
「あれは、俺のせいだよ。おまえは悪くない。だめだな、あれからさ、よく考えても、このまま一人で子供を抱えて育てていけるのかってたまに不安になるんだ」
「裕さん……」
「……俺はもう他のアルファと番うことができない。それでも体はアルファを求めてしまうんだ。発情期はくるし、森さんとだってしてしまった。嫌だろ、こんな事故物件なやつ」
「嫌じゃないです、むしろ、ずっと心配でした。叔父さんも、本当はまだ許せなくて、悔しくて……」
「たろう」
「ごめんなさい」
「なんだよ、謝るなよ。おまえは悪くない。出会えてよかった」
今日はキスも愛撫もしない。そう心に決めた。
「もうつらい目には合わせません」
「うん」
「絶対にです」
「……うん。ありがとう」
涙がこぼれて頬を伝い、すべてを溶かしてしまったかのように流れ落ちた。
「あ、裕さん、本通りに松葉崩しで上下反対にして寝ます?」
「ふは、それは勘弁だ」
目を細めて互いに笑った。疲れていたのか、裕はそのまま寝息をたてて眠る。
笑って誤魔化したが、触りたくてたまらない。
気が変になりそうになりながら、その晩は生き地獄のように裕の寝顔を見守り続けた。
二日目 抱き締める
その日は四人で島を観光した。マンゴーシェイクを島カフェで飲んでいると、裕が太郎の手を上に乗せて握った。それだけで驚いてしまい顔をみると、裕は真っ赤な茹だこのように俯いていた。
その夜は、ぴったりと体をあわせ、太腿を絡ませて長い抱擁を交わす。皮膚のすべての部分を接触しあわせ、裕は恥ずかしそうに太郎の胸に顔を埋める。
「……あたってる」
「う、ごめんなさい」
裕の柔らかな髪が胸板に触れ、性器もまだ硬くない。自分だけが興奮してしまい、申し訳なさと情けなさに恥ずかしくなってしまう。
「……嬉しいんだ。俺に反応してくれて」
「裕さん」
熱い吐息を絡ませて二人は見つめ合う。裕にどんどんと惹かれてしまう。どうやって、夫は裕を抱いたのだろう。抱き締めながら裕の肩に顔をよせた。嫉妬しているのに、林檎の匂いが顔じゅうにひろがり、さらにどくどくと全身の血管が怒張してしまう。
「ご主人に、嫉妬してます」
「雅也に?」
「番になれて羨ましい」
「……」
「僕のこと、嫌じゃないですか?」
「嫌じゃない。包まれているようで安心する。俺を気遣って、我慢してくれてるのも嬉しい。太郎、ありがとう」
にこっと柔和な微笑みを浮かべる裕に、太郎は無になれと自分に言い聞かせた。
三日目 キス
「キス、したい」
「たろ、……んっ、え……んん」
太郎は仰向けになる裕に覆いかぶさって唇を重ねる。下唇を甘噛みし、柔らかな舌が絡みついて、密着感を楽しむ。こちらが吸おうと思うと、逃げていき、裕の頭を持ち上げると、ねっとりとした朱唇の重なりに濃厚なキスを落とした。
「好きです」
「おれ、も……」
頬を赤らめて、裕の藍色の瞳が濡れて、上目遣いで見上げる。耳にもキスし、軟骨をかるく噛んだ。それから鎖骨や骨のでっぱりに唇をあてて、切歯をたてる。ぴくぴくと反応する裕に目を細めてしまう。思いあまって、全身に雨を降らせると裕が笑った。
「……あ、ごめんなさい」
「いいよ。ずっとキスしたかったから」
さらに唇を求めて、裕と貪るように唾液を交換し、体内に染み込ませていく。何度もくりかえして甘美な味わいに歓を尽くした。
「裕さん、好きです」
「……うん、好きだ」
半分喘ぎのようなかすれた声に裕の尖った乳首があたる。太郎は嬉しくて、裕のいたるところに口づけをして歓楽に溺れてしまった。
◇
次の日、水飛沫をつくって遊ぶ三人を眺めながら、パラソルの下で裕は手を振った。すっかり子供たちも太郎に懐いて家族のようにみえる。でも、昨夜はその微笑みを浮かべる男を雄のように求めていたのを思い出し、はっと赤面してしまう。
太郎と初めてキスした。夫以外の男。ましてや番以外のアルファを求めた自分がいる。罪悪感がわきながらも、また太郎に触れたいと思う自分がいた。
きょうもまた、する……。
昨日よりも激しく求めてしまったらどうしよう。日にちを追うように、勃起もせずに全身で欲しいと求めてしまう。
太郎、幻滅する、かな……。
まずいな。これじゃあ、まるで欲求不満みたいじゃないか。
陽射しが照りつけ、遮るように顔を覆うと柔らかな唇の感触が蘇り、肌が照りつくように灼けた。
四日目 愛撫
その夜は戸惑いながらも、軽いキスから深いキスへと変わって、指でなぞるように肌に触れた。乳首に触れられるとぴくぴくと跳ね、焦らすようにくるくると乳輪を目指して、太郎の指は硬くなったしこりをあやしていく。
「裕さん、可愛い」
「ん、焦らすなよ」
「焦らすのがいいんですよ、たくさん気持ちよくなってください」
「え、あ、だめだって……っ」
粟立つ膨らみをなぞりながら、耳のくぼみにも舌を這わせて、濡れた音が響いてとどく。ゆっくりと長い指が下へのびて、火照った躰が太郎の唇を求めてしまう。
「なか、指をいれていいですか?」
「……ん、あ」
「たっぷり濡らしておきますから」
「太郎のも舐めたい……」
裕が太郎の上にまたがり、赤い舌をだしながら強張った怒張をぺろぺろと舐めてくれる。懸命に奉仕してくれる。裕の太腿からはしとどに濡れた粘液が垂れて、妖艶で妖しくみえた。
「太郎のピンクだな」
「い、言わないでください。……僕もさわりますよ」
「おれのは勃たないよ」
「でも濡れてますよ?」
「え、……っ、あ、あ、あ」
丸まった綿を吸われ、筋を指のはらで撫でられる。甘くもせつない痺れが電流のごとく走り、窄まりも粘液で柔らかくほぐれていく。嫌悪感はなく、ぞくぞくとした甘い痺れだ。
「番が死んだら、運命の番に愛されるのかな」
「……っ、都市伝説、だ、よ」
「そうかな? 裕さん、ここ、ふっくらしてますね」
「あ、あ、太郎、おまえ慣れてる……」
「きょうのために勉強しました。よくほぐさないと」
感覚が麻痺するぐらいにひらかれ、さらに快感を得ようとしてしまう。
「はぁ、あ、あ、はぁ、じれったい……」
「裕さん、かわいい」
太郎の桃色に猛ったものを咥えながらも、ひらいていく性感が雄を求めていた。
欲しい、太郎がほしい。
太郎の熱い舌をうしろの小さな窄まりで締めつけて、粘膜が動くたびに尻を振ってしまう。咥えながらも、ぴちゃぴちゃと深い快感をさらに求め続けてしまう自分がいた。
五日目 挿入
最終日は手をつないで海岸を歩いた。
体を寄せて、指も絡ませて、砂浜を踏んではしゃぐ子供たちを見つめた。
そして、子供たちが寝静まり返った深夜、一時間くらいキスと愛撫を重ねる。唇と唇を触れ合わせて、熱い口づけを交わす。体をくねらせる裕に触覚が麻痺するほど接吻を続けた。
感じてくれるのか、首を振って拒まれるのではないか。そんな不安も、濃密な逢瀬を契り重ねるうちに掻き消されていく。ゆっくり、そしてじっくりと愛撫して、体は赤く火照って、燃えあがる。
「太郎の膨らんでいく」
「裕さんのもひらいてますよ」
「……あ、ぁ。あっ」
じゅるじゅると太郎の雄を咥えながらも、指と肉厚な舌で丹念に嬲られる。はやく、欲しい。浮きでた血管を舐めとり、張りつめた屹立を吸った。後孔に指を挿入され、皺を舐るように唾液で柔らかくほぐされ、強ばりを解かれていく。
「……ッァ」
真っ赤になりながら、濡れた視線を投げた。
「そろそろ、いれますね」
「んぁ、あ、……」
「ゆっくりいれます」
「……ん、はぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ん」
濡れてつやつやと熟れて光る窄まりに、怒張をあてて音を鳴らしておさめた。
快感の期待に目を潤ませて、裕の触れた指先から微かな震えと振動が伝わる。ぐらぐらと眩暈を感じながら、二人は心と体が悦びに打ち震えた。
「はぁ、ぁ、気持ちいいです」
「あ……、あ、っ……」
「裕さん、愛してる」
甘い吐息をはきながら、キスを求め、熱がひろがっていく。ゆさゆさと胸を揺さぶられると、痙攣する手で肩をつかんで、夢見心地に体がわななく。
三十分は動いてはいけない。すべてが匂いたつようにほぐれ、蕩けるようにいやらしい。手を絡ませて、唇を重ねて舌を吸う。尖ったふたつの蕾はじんじんと腫れて、熟れた肉が弾けるように押しひらかれた。
体の芯から温まるように脈の振動が伝わる。揺りかごの赤ん坊のように揺すられて、一つになっている感覚がした。
太郎が好きだ。愛している。
角砂糖が落とされたような甘い痺れが躰の奥へと溶けていく。ぴくぴくと誘うように疼いて、とくとくと脈打つ音が腹の奥まで響いた。まるで魂がぼたん雪のように溶けてきえていく。
抱擁と愛咬をくりかえしていくうちに、いつしか全身がさざ波のように震えた。体を離さず、震えに身をゆだね、二人は一体となった。
「……裕さん」
「太郎……」
深くキスを落とすと、か細い声が漏れて、胸の尖りはほんのりと膨らんで赤みを帯びてみえた。腹の凹凸でどこまではいっているのかわかる。
「なか、気持ちいい……」
「はぁ、あ、……すき……っ」
「あ、煽らないでください」
キュッと窄まりを締めつけると、また、むくむくとなかで膨らむのがわかった。
「あ、太郎」
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「やっと時間だ。……動きます」
「……ん、んぁ、ぁ、っ」
ゆっくり、ゆっくりと揺さぶられ、びくびくと裕が震えた。深い悦楽の波にのまれ、気が遠くになりそうなオーガズムが荒波となって襲ってくる。
キスと粘膜の音が響き、このままずっと繋がっていたい。引いて、埋め込むような挿入をゆるゆると繰り返されるのが愛しくてたまらず、乱れた髪が濡れて額にはりついた。
「すき、あっ、ん、すき、たろ……」
熱くて、溶けてしまう。愛されたいという受動的な感情よりも、不思議に愛したいという能動的な欲望が強まっていく。
「裕さん、愛してます」
「……ぁ、ぅっ、たろ、愛してる」
「嬉しい。たくさんいってください」
「あ、あ、あ、たろ、た、ろ、なかで、いく、いってる、いってる」
腰を揺らしながら、ピタピタと柔らかな陰茎を震わせた。勃起はせずに割れ目からはとぷとぷと汁がこぼれ、腹は透明にぬれて、蜜壺から溢れるようにひろがっている。
「ここ、好きですか?」
腰をまわして、粘液で絡んだ雄を奥まで埋めると裕の目が眩み、弓なりに躰が反った。
「ああああ、あ、だめ、あ、あ……」
「それとも、ここですか?」
探るように押しあてると、裕はふるふると首を振った。太ももが痙攣しては太郎の鼠蹊部に脚を巻きつける。
「あ、っ、あ、そこ、そこ、あたってる」
「ここですね」
こめかみにキスを落として、裕の涙を吸いとった。爪を立てて、腰に足を絡めて、はぁはぁと裕は絶頂を迎えつづけた。
快感に悶えながら、紐で結ばれたように縫い留められる。逃げられない運命の桎梏から解き放つように裕は乱れた。固くなった頬がほぐれて、唇がかすかにほころび、唾液がだらしなく垂れる。すべてをひろげられ、溶かされて悦楽に堕とされる。
「きが、へんに、……な、る……」
「ゆっくり動きますよ。……裕さん、逃げないで」
太郎は笑みを浮かべながら、ゆっくりと速度を落として、秘めたしこりを押すように突いた。裕の尻が逃げようとする。太郎が深くキスをして繋ぐと、ひくひくと窄まりが締める。
「かわいい、裕さん」
「ぁ、あー……ぁ」
「愛してる」
「……っ、う、ん、あ、あいして、る……」
ゆっくりと擦って、収縮を繰り返す腹のなかで深い悦楽が花びらのように散る。胸の蕾もぷっくりと尖って赤みを増していた。
「僕もいっていいですか?」
ぱくぱくと半開きに動く唇にキスを落として、太郎は深いとこまで突くと精を吐きだした。
ゴムをして、ピルも飲んで、避妊はしていた。それでも流しこまれる熱を感じながら二人は求め続けた。
「ぁ……、ああ、あ、すき」
「裕さん、愛してます」
解き放たれても、長いまま繋がってお互いを離さない。ふたりは契りを交わしながら深い充実感にひたる。互いを縫い合わせたような心地よさに離れられない。
やっと出会えた魂の番。感謝と悦びに涙が止まらない。
翌朝、目を覚ますと隣で太郎が気持ち良さそうに眠っていた。子供たちはまだ起きそうにない。栗毛の髪を梳いてやると口許がゆるむ。窓辺からは朝日が黄色く漏れでて、すでにじっとりとした暑さが見てとれる。
幸せだな、と裕はなんとなしに思った。
後日、太郎が東雲家に引っ越してきたが、なくなったと思っていた私物品がいくつもみつかり、怒り狂った裕に殴られたのはいうまでもない。
「アルファも巣ごもりするんです!」
「しねぇよ!」
ウォークインクローゼットに衣類を集めて巣作りをしていることは、墓までもっていこうと固く誓った。
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