29 / 71
本編
第二十九話 運命はいつだって残酷・エミリー視点②
しおりを挟む
でもね、最初はアリアの従姉妹として節度を持って接していたわ。
だけどアイザック様と交流すればする程、思いは強く、深く、そして重くなっていった。
私には、溢れる思いを止める事なんて出来ない。
なら、止める必要もないわよね?
ある日アリアがいない夜会で、アイザック様にこの思いを伝えたらアイザック様は困ったようなお顔で、でも拒否しなかった。
だから私は、受け入れられたのだとひたすら舞い上がった。
(アイザック様は私を愛しているんだわ!!)
それからは、夜会でアリアと一緒にいる貴方に、目線で“全て分かってます”と合図を送った。
だって、私を愛してるんだもの。横のあれはお飾りの婚約者なのよね?
でもいつまでも私を全く優先してくれない貴方にとうとう痺れを切らしつい、侯爵邸に押しかけてしまったの。
もちろん先触れなしで出向いたのは悪かったと思ってる。でもその日に、アリアとの約束があったのは事前にアリアから聞いて知っていたから。
だから、私は一縷の望みにかけた。
もしかしたらアリアがこの状況を目にして、潔く婚約者の座を降りてくれるかもしれないと……。
アイザック様は、突然押しかけた私を見て酷く動揺していたけれど、私はただ言質が欲しかった。
私だけを愛してくれると。アリアではなく、私を選んでくれると。
貴方に人目につかない場所へ連れて行かれ、どうして突然来たのか聞かれた私は不安な気持ちを伝え、抱きしめて愛してると言ってほしいと何度も訴えた。そのうち泣き出した私を見て貴方は、強く抱きしめてくれたでしょう?
「君を愛してる」
ずっと求めて、待ち望んでいた言葉もようやくくれたわ。
(あぁ、アイザック様は私を……私だけを愛してくれているっ!)
アリアには家柄も容姿も何一つ勝てなかったけど、アイザック様は私を選んでくれた。
私はアリアに勝ったんだわ……!!
「……っ!もういいだろう!?」
嬉しくて舞い上がっていた私は、その後アイザック様が何を仰っていたのかよく覚えていない。
このままアイザック様と一緒にいられると喜んでいると、彼は何故か追い立てるように私に屋敷から出るように仰った。
どうして?
貴方の愛する人は私でしょう?
だって、今さっき私を愛してるって言ってくれたじゃない。
アイザック様の態度には不安になったけど、私は大丈夫。だって愛されているんだから。
私とアリアは違う。愛されてもいないアリアとは違うのよ。
それにしても、アイザック様に抱きしめられているところをアリアに見てもらえなかったのは残念だったわ。
アリアじゃなくて、私がアイザック様の妻になりたいのに。
あの茶会の後もアイザック様から一向に連絡がなくてやきもきしたけれど、アリア自身が身の程を弁えて身を引いてくれたのは良かったわ。
それなのに、さっきから一体何が起きているの?
アリアは政略の相手であって、そこに愛はないんでしょう?
ねぇ、アイザック様。 私を。私だけを愛しているのよね?
そして私は一つの答えに辿り着いてしまった。
「アイザック様が愛してるのはこの私でしょう?なのにどうしてさっきからおかしな言葉が聞こえてくるの?」
「私は君を愛した事は一度もない。あの日だって突然押しかけてきた貴女を一秒でも早く我が家から出ていってもらう為にあんな芝居をしたんだ……そのせいで私は、「違うでしょう?」」
「アイザック様が愛しているのは私でしょう?アリアなんかじゃないわ。あ、叔父様がいるからそんな見え透いた嘘を吐くのね」
恥ずかしがって否定ばかりするアイザック様。本当に愛おしいわ。
でも後で二人きりになった時にそんな態度を取られて傷付いた事は伝えないと。
私達は間違いなく愛し合ってる。だから良い事も悪い事も伝えないといけないわよね。
でも私、さっきから一つだけとても嫌な気分になってる事があるのよ。
せっかく邪魔者がいなくなったのに、どうしてもっと嬉しそうにしないの?
私達、ようやく一緒になれるのに。
きっとアイザック様は恥ずかしがっているだけ。後でまた前みたいに抱きしめてくれるわ。
今度は口付けだってしてくれるかもしれない。
さっき叔父様が二人は愛し合ってるなんて真実を口にしたからね。
きっと二人きりになったら、いつものアイザック様に戻ってくれるわ。だってそうじゃないとおかしいもの。
私じゃなくてアリアを愛してるなんて、そんな事実あるわけないわ。
だってアイザック様は、私を……エミリーを愛しているんだもの——。
だけどアイザック様と交流すればする程、思いは強く、深く、そして重くなっていった。
私には、溢れる思いを止める事なんて出来ない。
なら、止める必要もないわよね?
ある日アリアがいない夜会で、アイザック様にこの思いを伝えたらアイザック様は困ったようなお顔で、でも拒否しなかった。
だから私は、受け入れられたのだとひたすら舞い上がった。
(アイザック様は私を愛しているんだわ!!)
それからは、夜会でアリアと一緒にいる貴方に、目線で“全て分かってます”と合図を送った。
だって、私を愛してるんだもの。横のあれはお飾りの婚約者なのよね?
でもいつまでも私を全く優先してくれない貴方にとうとう痺れを切らしつい、侯爵邸に押しかけてしまったの。
もちろん先触れなしで出向いたのは悪かったと思ってる。でもその日に、アリアとの約束があったのは事前にアリアから聞いて知っていたから。
だから、私は一縷の望みにかけた。
もしかしたらアリアがこの状況を目にして、潔く婚約者の座を降りてくれるかもしれないと……。
アイザック様は、突然押しかけた私を見て酷く動揺していたけれど、私はただ言質が欲しかった。
私だけを愛してくれると。アリアではなく、私を選んでくれると。
貴方に人目につかない場所へ連れて行かれ、どうして突然来たのか聞かれた私は不安な気持ちを伝え、抱きしめて愛してると言ってほしいと何度も訴えた。そのうち泣き出した私を見て貴方は、強く抱きしめてくれたでしょう?
「君を愛してる」
ずっと求めて、待ち望んでいた言葉もようやくくれたわ。
(あぁ、アイザック様は私を……私だけを愛してくれているっ!)
アリアには家柄も容姿も何一つ勝てなかったけど、アイザック様は私を選んでくれた。
私はアリアに勝ったんだわ……!!
「……っ!もういいだろう!?」
嬉しくて舞い上がっていた私は、その後アイザック様が何を仰っていたのかよく覚えていない。
このままアイザック様と一緒にいられると喜んでいると、彼は何故か追い立てるように私に屋敷から出るように仰った。
どうして?
貴方の愛する人は私でしょう?
だって、今さっき私を愛してるって言ってくれたじゃない。
アイザック様の態度には不安になったけど、私は大丈夫。だって愛されているんだから。
私とアリアは違う。愛されてもいないアリアとは違うのよ。
それにしても、アイザック様に抱きしめられているところをアリアに見てもらえなかったのは残念だったわ。
アリアじゃなくて、私がアイザック様の妻になりたいのに。
あの茶会の後もアイザック様から一向に連絡がなくてやきもきしたけれど、アリア自身が身の程を弁えて身を引いてくれたのは良かったわ。
それなのに、さっきから一体何が起きているの?
アリアは政略の相手であって、そこに愛はないんでしょう?
ねぇ、アイザック様。 私を。私だけを愛しているのよね?
そして私は一つの答えに辿り着いてしまった。
「アイザック様が愛してるのはこの私でしょう?なのにどうしてさっきからおかしな言葉が聞こえてくるの?」
「私は君を愛した事は一度もない。あの日だって突然押しかけてきた貴女を一秒でも早く我が家から出ていってもらう為にあんな芝居をしたんだ……そのせいで私は、「違うでしょう?」」
「アイザック様が愛しているのは私でしょう?アリアなんかじゃないわ。あ、叔父様がいるからそんな見え透いた嘘を吐くのね」
恥ずかしがって否定ばかりするアイザック様。本当に愛おしいわ。
でも後で二人きりになった時にそんな態度を取られて傷付いた事は伝えないと。
私達は間違いなく愛し合ってる。だから良い事も悪い事も伝えないといけないわよね。
でも私、さっきから一つだけとても嫌な気分になってる事があるのよ。
せっかく邪魔者がいなくなったのに、どうしてもっと嬉しそうにしないの?
私達、ようやく一緒になれるのに。
きっとアイザック様は恥ずかしがっているだけ。後でまた前みたいに抱きしめてくれるわ。
今度は口付けだってしてくれるかもしれない。
さっき叔父様が二人は愛し合ってるなんて真実を口にしたからね。
きっと二人きりになったら、いつものアイザック様に戻ってくれるわ。だってそうじゃないとおかしいもの。
私じゃなくてアリアを愛してるなんて、そんな事実あるわけないわ。
だってアイザック様は、私を……エミリーを愛しているんだもの——。
30
お気に入りに追加
2,264
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
恋という名の呪いのように
豆狸
恋愛
アンジェラは婚約者のオズワルドに放置されていた。
彼は留学してきた隣国の王女カテーナの初恋相手なのだという。
カテーナには縁談がある。だから、いつかオズワルドは自分のもとへ帰って来てくれるのだと信じて、待っていたアンジェラだったが──
竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。
この闇に落ちていく
豆狸
恋愛
ああ、嫌! こんな風に心の中でオースティン殿下に噛みつき続ける自分が嫌です。
どんなに考えまいとしてもブリガンテ様のことを思って嫉妬に狂う自分が嫌です。
足元にはいつも地獄へ続く闇があります。いいえ、私はもう闇に落ちているのです。どうしたって這い上がることができないのです。
なろう様でも公開中です。
夜会の夜の赤い夢
豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの?
涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる