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本編
第十四話 優しい婚約者②
しおりを挟む「アイザック様、連絡もせず申し訳ありませんでした。体調がなかなか回復せず、手紙の返事が出せませんでした」
「いいんだ。気にしないでくれアリア。私の方こそ突然押しかけてしまってすまない。アリアからの連絡がないなんてこんな事初めてで不安になって動揺してしまった」
「本当に申し訳ありませんでした。あの日アイザック様と会えるのをとても楽しみにしていたので、前日上手く眠れなかたのが祟ったみたいで……」
「ははっ、アリアは本当に昔からそういう少し抜けた所があって可愛らしいよね。ただ私だってアリアに負けないくらいとても楽しみにしていたんだよ」
そう言って彼は優しい笑顔で私の顔を覗き込む。
(アイザック様はこんなにも演技がお上手だったのね。これじゃまるで本気で私を愛してるみたいだわ)
(この演技を信じていた私は、きっと側から見て相当滑稽だったでしょうね)
長年婚約者として共に歩んで来たのにそんな事実にも気が付かず、ずっと愛されていると思っていた。
私には愛してもいない女に優しい態度を取り続けるアイザック様が、まるで知らない人の様に思えた。
そんな彼だから私は聞きたい事が一つあった。
「アイザック様。私お聞きしたい事があるのです」
「なんだい?」
「……あの日、急なお仕事で対応に追われていたと仰っていましたが誰かとお会いしていたのですか?」
「あ、えっとそれは」
「あの日応接室へ向かう途中窓から庭園の方へ向かうアイザック様らしき人物を目撃したのです。もしかしてアイザック様だったのではないかとずっと気になっていたものですから」
「あ、ああそうだったんだね」
落ち着かなそうに目線を泳がせているアイザックに私は本当の事を話してほしいと願った。
あの日エミリーといた事実だけでもいい。ただ彼の口から直接知りたかった。
だけど現実はどこまでも残酷だった。
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