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本編
第三話 婚約者の本心を知る②
しおりを挟む「——っ」
「——」
近くまで行くと、何やら人の話し声が聞こえてきた。
(誰か他にもいるのかしら?)
見つからないように相手の姿が見えるギリギリの所に隠れた私は、そっと声のする方を覗き見た。
でもきっと、私がそんな普段と違う行動を取った罰なのだろう。
「——君を愛してる」
「アイザック様、私も……私も愛していますっ」
秘密の恋人達の逢瀬にはうってつけのようなこの場所で、お互いを強く抱きしめあっているのは婚約者であるアイザック様と私の従姉妹のエミリーだった。
(どういう事なの……?)
この時の私は目の前に広がる光景……自分の婚約者と従姉妹の逢瀬を、ただ茫然と眺める事しか出来なかった。
「——っ様、お嬢様!!」
「っ!?」
ノーラに声をかけられ、はっとした私は現実へと一気に引き戻される。
「お嬢様、」
「大丈夫よ。ひとまず……応接室に向かいましょう」
ノーラにそう伝え、私は目の前の光景に背を向け踵を返す。
今しがた目にした光景を何度も思い返しながら、歩き慣れた廊下を黙々と進みながら私は何度も思い返した。
庭園の片隅で抱き合っていたアイザック様とエミリー。
強く抱きしめ合っていた二人はまるで恋人同士のようだった。
(どうして……)
(一体何が……)
何度、考えても明確な答えは出てくれない。
そんな時、横に控えていたノーラが声を荒げ先程の光景に憤慨していた。
「お嬢様!さっきのあれは一体何なんですか!?それにどうしてここにエミリー様がいらっしゃるんです!?」
「……私にも分からないわ」
「どうして抱き合ったりなんか……アイザック様はお嬢様の婚約者ではないですか!!」
ノーラの悲痛な叫びを聞き、私は歩みを止めまっすぐ彼女の目を見た。
「ノーラ」
「も、申し訳ありません。出過ぎた真似を致しました」
「私を思って言ってくれたのよね。でもね、ノーラ。ここはレスター侯爵邸であって我が家ではないの。他家で無闇に感情を面に出してはダメよ」
「申し訳ございません」
「それからアイザック様にお会いしても、決して態度に出してもダメよ」
「……アイザック様にお聞きなさらないのですか?」
「きっと何か事情があったのよ。アイザック様から話してくださるまで待つ事にするわ」
「……かしこまりました」
「——だって、私は貴族の娘だもの」
「お嬢様?」
「いいえ、何でもないわ。さぁ行きましょう」
今日のこの交流は何日も前から決められていた事なのに……。
(どうしてエミリーがここにいるの?)
(どうして、あの二人が抱き合っているの?)
結局応接室に辿り着くまでの間、納得の出来る理由は見当たらなかった。
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