52 / 60
第7章 二度目の実践授業は大ピンチ!
(15)不器用お嬢さま
しおりを挟む
そのとき、ごほん、と咳ばらいが。うん?
わざとらしい咳ばらいを繰り返すイエローさんの背を、「ほら、お嬢」とシトリンが苦笑して押した。
「どうしたの、イエローさん」
「えっと、その……。せ、先生の魔法を解くなんて、ロゼさんも、なかなかやりますわね!」
突然の言葉に、ロゼがいぶかしげな顔をした。
「なによ、急に?」
「褒めてるんですのよ! 喜びなさいな! ……それから、その」
すこし言葉に迷ってから、イエローさんはつづける。
「かっとしたからって、ちょっと、言い過ぎましたわ。貧乏とか、いろいろ……だから、……ごめんなさいっ!」
イエローさんは、がばりと頭を下げた。ロゼが「えっ」と目を見開く。
「それから、リリイさんも!」
「え、あ、はい!?」
イエローさんが、顔を真っ赤にさせた。
「あの、た、助けに来てくれたとき……、うれしかった、ですわ」
もじもじと指を動かしてから、決心したようにイエローさんが顔を上げた。
「だから……、ありがとうございました、ですの!」
ぽかーん。わたしとロゼは、固まった。だってイエローさんが、そんなこと言うなんて。
「ふたりとも、ごめんなさい。お嬢って、余計なことは言うのに、大切な言葉は足りなくって~」
シトリンが苦笑した。ええっと?
「ひどいこと言ったみたいだけど、お嬢に悪気はないんですよ。特別入学のロゼさんと人間のリリイは、なにかと大変だろうから、助けたいって思っただけなんです。ね~、お嬢?」
「そ、そうですわ、そのとおりですわ!」
(な、なるほど……?)
ロゼのことを貧乏だって言ったこととか、わたしを人間だから~って言ったこととか。ちょっと言葉が悪かったけど、心配してくれていただけ、ってことだよね?
「そっか……うん、わたし、怒ってないですよ。まあ、ちょっとむかついたけど」
「うっ、ご、ごめんなさいですわ……」
「――わたしも、貧乏だって言われたのは、とても嫌だった」
一番怒っていたロゼは、いまも、しかめっ面をしている。だけど、ふっと表情を崩して、苦笑した。
「でもまあ……、いいわ。もう言わないでくれるなら、わたしも気にしないから」
……よかった。ロゼは、やっぱりやさしいんだよね。これで、仲直りだ。
わたしはイエローさんに笑いかけた。
「今回の作戦が成功したのは、イエローさんのおかげです。かっこよかったですよ!」
「えっ、あ、そ、そうかしら? えっと……」
イエローさんの顔が、ぼんっと真っ赤になった。急にまたもじもじして、わたしを見たり見なかったり。
「り、リリイさんも、というより、リリイさんのほうが、その、――ですわ」
「え、ごめんなさい、なんて言いました?」
「だ、だから! 助けに来てくれたときのリリイさん、とても、かっこよかったって言ってるんですのよ! わたしが褒めてるんだから、喜ぶといいですわ……っ!」
どーん、と真っ赤な顔で言い切ったイエローさん。
「……ありがとう?」
かっこいいって言われるのは、あいかわらず、微妙な気持ちだけど。みんなを守ることができた。それでかっこいいって言われるなら……、誇らしいかも。
わざとらしい咳ばらいを繰り返すイエローさんの背を、「ほら、お嬢」とシトリンが苦笑して押した。
「どうしたの、イエローさん」
「えっと、その……。せ、先生の魔法を解くなんて、ロゼさんも、なかなかやりますわね!」
突然の言葉に、ロゼがいぶかしげな顔をした。
「なによ、急に?」
「褒めてるんですのよ! 喜びなさいな! ……それから、その」
すこし言葉に迷ってから、イエローさんはつづける。
「かっとしたからって、ちょっと、言い過ぎましたわ。貧乏とか、いろいろ……だから、……ごめんなさいっ!」
イエローさんは、がばりと頭を下げた。ロゼが「えっ」と目を見開く。
「それから、リリイさんも!」
「え、あ、はい!?」
イエローさんが、顔を真っ赤にさせた。
「あの、た、助けに来てくれたとき……、うれしかった、ですわ」
もじもじと指を動かしてから、決心したようにイエローさんが顔を上げた。
「だから……、ありがとうございました、ですの!」
ぽかーん。わたしとロゼは、固まった。だってイエローさんが、そんなこと言うなんて。
「ふたりとも、ごめんなさい。お嬢って、余計なことは言うのに、大切な言葉は足りなくって~」
シトリンが苦笑した。ええっと?
「ひどいこと言ったみたいだけど、お嬢に悪気はないんですよ。特別入学のロゼさんと人間のリリイは、なにかと大変だろうから、助けたいって思っただけなんです。ね~、お嬢?」
「そ、そうですわ、そのとおりですわ!」
(な、なるほど……?)
ロゼのことを貧乏だって言ったこととか、わたしを人間だから~って言ったこととか。ちょっと言葉が悪かったけど、心配してくれていただけ、ってことだよね?
「そっか……うん、わたし、怒ってないですよ。まあ、ちょっとむかついたけど」
「うっ、ご、ごめんなさいですわ……」
「――わたしも、貧乏だって言われたのは、とても嫌だった」
一番怒っていたロゼは、いまも、しかめっ面をしている。だけど、ふっと表情を崩して、苦笑した。
「でもまあ……、いいわ。もう言わないでくれるなら、わたしも気にしないから」
……よかった。ロゼは、やっぱりやさしいんだよね。これで、仲直りだ。
わたしはイエローさんに笑いかけた。
「今回の作戦が成功したのは、イエローさんのおかげです。かっこよかったですよ!」
「えっ、あ、そ、そうかしら? えっと……」
イエローさんの顔が、ぼんっと真っ赤になった。急にまたもじもじして、わたしを見たり見なかったり。
「り、リリイさんも、というより、リリイさんのほうが、その、――ですわ」
「え、ごめんなさい、なんて言いました?」
「だ、だから! 助けに来てくれたときのリリイさん、とても、かっこよかったって言ってるんですのよ! わたしが褒めてるんだから、喜ぶといいですわ……っ!」
どーん、と真っ赤な顔で言い切ったイエローさん。
「……ありがとう?」
かっこいいって言われるのは、あいかわらず、微妙な気持ちだけど。みんなを守ることができた。それでかっこいいって言われるなら……、誇らしいかも。
10
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる