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第7章 二度目の実践授業は大ピンチ!

(15)不器用お嬢さま

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 そのとき、ごほん、と咳ばらいが。うん?

 わざとらしい咳ばらいを繰り返すイエローさんの背を、「ほら、お嬢」とシトリンが苦笑して押した。

「どうしたの、イエローさん」
「えっと、その……。せ、先生の魔法を解くなんて、ロゼさんも、なかなかやりますわね!」

 突然の言葉に、ロゼがいぶかしげな顔をした。

「なによ、急に?」
「褒めてるんですのよ! 喜びなさいな! ……それから、その」

 すこし言葉に迷ってから、イエローさんはつづける。

「かっとしたからって、ちょっと、言い過ぎましたわ。貧乏とか、いろいろ……だから、……ごめんなさいっ!」

 イエローさんは、がばりと頭を下げた。ロゼが「えっ」と目を見開く。

「それから、リリイさんも!」
「え、あ、はい!?」

 イエローさんが、顔を真っ赤にさせた。

「あの、た、助けに来てくれたとき……、うれしかった、ですわ」

 もじもじと指を動かしてから、決心したようにイエローさんが顔を上げた。

「だから……、ありがとうございました、ですの!」

 ぽかーん。わたしとロゼは、固まった。だってイエローさんが、そんなこと言うなんて。

「ふたりとも、ごめんなさい。お嬢って、余計なことは言うのに、大切な言葉は足りなくって~」

 シトリンが苦笑した。ええっと?

「ひどいこと言ったみたいだけど、お嬢に悪気はないんですよ。特別入学のロゼさんと人間のリリイは、なにかと大変だろうから、助けたいって思っただけなんです。ね~、お嬢?」
「そ、そうですわ、そのとおりですわ!」

(な、なるほど……?)

 ロゼのことを貧乏だって言ったこととか、わたしを人間だから~って言ったこととか。ちょっと言葉が悪かったけど、心配してくれていただけ、ってことだよね?

「そっか……うん、わたし、怒ってないですよ。まあ、ちょっとむかついたけど」
「うっ、ご、ごめんなさいですわ……」
「――わたしも、貧乏だって言われたのは、とても嫌だった」

 一番怒っていたロゼは、いまも、しかめっ面をしている。だけど、ふっと表情を崩して、苦笑した。

「でもまあ……、いいわ。もう言わないでくれるなら、わたしも気にしないから」

 ……よかった。ロゼは、やっぱりやさしいんだよね。これで、仲直りだ。

 わたしはイエローさんに笑いかけた。

「今回の作戦が成功したのは、イエローさんのおかげです。かっこよかったですよ!」
「えっ、あ、そ、そうかしら? えっと……」

 イエローさんの顔が、ぼんっと真っ赤になった。急にまたもじもじして、わたしを見たり見なかったり。

「り、リリイさんも、というより、リリイさんのほうが、その、――ですわ」
「え、ごめんなさい、なんて言いました?」
「だ、だから! 助けに来てくれたときのリリイさん、とても、かっこよかったって言ってるんですのよ! わたしが褒めてるんだから、喜ぶといいですわ……っ!」

 どーん、と真っ赤な顔で言い切ったイエローさん。

「……ありがとう?」

 かっこいいって言われるのは、あいかわらず、微妙な気持ちだけど。みんなを守ることができた。それでかっこいいって言われるなら……、誇らしいかも。
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