悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい

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第4章 迷いの森で、実践授業!

(2)迷路の罠

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 わたしたちは森の奥へ進んだ。でも、先生の言っていたとおり、魔法は強力だ。どれだけ歩いても、まわりは木ばっかりで、校舎が見えない。それどころか。

「同じところをグルグル回ってる気がする……」
「そうね……、空から、見てみましょうか。方角がわかれば帰れるはずだし」

 ロゼはぽんっ、と背中にコウモリみたいな翼を広げた。そっか、悪魔は空を飛べるんだもんね。ロゼは軽やかに地面から離れて、空に抜けようとする。だけど。

「きゃあっ、なにこれ!」

 まわりの木が、ロゼの飛行にあわせて、どんどん空にのびていく。ロゼを森から出さないようにしているみたい。これも先生の魔法!?

「む、むり~~~っ!」

 って、ろ、ロゼが落ちてくる! やばいっ!

 わたしは急いでロゼの落下地点に立った。つぎの瞬間。

 どしーん!

「いたた……って、リリイ!? ごめんなさい、大丈夫!?」
「うん、へいき……」

 ぎりぎり、ロゼのクッションになれた。つまりいま、わたしはロゼの下敷きになってる。お、重い……、でもロゼが無事なら、よかった。

「ご、ごめんなさい!」
「いいのいいの。わたしのことは気にしないで、体は丈夫だからさ」

 立ち上がって、どうぞ、とロゼに手を差し出す。

「あらあら、まるで王子さまですわねえ」

 イエローさんが口もとに手をあてて感心している。

「それにしても地道に歩いていくしかないのかしらねえ……、あら? なにかしら、あれ」

 ふとイエローさんが指をさした先を見て、わたしも「うん?」と首をかしげる。そこにあったのは、もっさりした生垣でできた、緑の壁だった。

『生垣の迷路。ゴールは校舎につながってるかも……!?』

 そんな看板があって、生け垣の一部が開かれて、入り口みたいになってる。

「迷路だなんて、なんだか、あやしいわね」
「ええ。いかにもって感じですわ」

 ロゼとイエローさんのお嬢さまコンビが、眉をひそめる。

「うさんくさい。迷いの森に、さらに迷路って、どんだけ迷わせる気なの」
「っていうか、このハイテンションな看板、ソフィ先生がつくったのかな~?」

 わたしとシトリンの執事コンビは、苦笑い。

 でも、ほかに行く当てもない。おそるおそる迷路の中に進むことにした。ずーっとつづく、緑の壁。脱出できるのか、不安になってくるよ……。

 しばらく歩いてから、イエローさんが腕を組んで考えた。

「これは、力づくで行ったほうが早いんじゃないかしら」

 力づく……?

「あ、ダメですよ~、お嬢の力づくは危ないんだから――」

 そのとき、シトリンののんびりした声を、ざわざわざわっ、という音がさえぎった。音は、後ろからすごい勢いで近づいてくる。な、なに? なんの音?

「って、うわああ! なにこれっ!」
「大変! 走ってリリイ!」

 ロゼがわたしの手をつかんで走り出す。イエローさんとシトリンもつづいた。

 迷路が、わたしたちの後ろから、どんどん閉じていっているんだ! 左右の生垣が絡まりあって、道をふさいでいく。逃げ遅れたら、生垣に潰されちゃう!? やばっ!
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