悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい

文字の大きさ
12 / 60
第3章 はじめてのダンスレッスン!

(2)初心者執事と貧乏お嬢さま

しおりを挟む
 ……なんて、思ったんだけどね。現実は、そううまくいかない。

「あああっ、ごめんロゼ!」
「平気よ、気にしないで。……いたた」

 ロゼが眉を寄せて、それでもわたしを気づかって笑顔を浮かべる。ほんとごめん……!

 ダンスはダンスでも、夜会で踊るのは、いわゆる社交ダンスってものだった。ふたりで手を取り合って踊る、お城みたいな校舎にふさわしいダンスだ。でもわたし、こんなダンスしたことがないんだよ。つぎは、どっちの足を出すんだっけ。右? 左……!?

 なんて混乱して、わたしは何度もロゼの足を踏んでいた。

「リリイ、すこし休みましょうか」
「ありがとう……。あーあ、こんなに踊れてないの、わたしだけだよね……」
「最初はみんな、こんなものよ。踊れるようになるまで、一緒に練習しましょう?」

 ロゼは「飲み物もらってくるわね」と、ぱたぱた走っていった。……呪いとか怖いこと言うけど、普段のロゼは結構やさしいんだよね。

(お嬢さまに飲み物を持ってこさせるなんて、執事としてどうなんだろう)

 だけど、わたしはクタクタで動けそうにない。うう、なさけないよ。

『あらあら、見た目はかっこよくても、やっぱり人間はだめみたいね』
『ダンスくらいマナーでしょう』
『魔法も使えないみたいだし、どうしてこの学校に入学したのかしらねえ』

 ふと聞こえた、お嬢さまたちのこそこそ話。……これ、わたしのことだよね?

『使い魔の代わりに、入学したんだものね。所詮、代打ってことよ』

 胸がひやりとした。所詮、代打……。たしかにわたしは魔法を使えないし、マナーもわからない、へなちょこ執事だけど。そんな言われ方、傷つくんですけど!

「リリイ、お待たせ。あら、暗い顔をして、どうかしたの?」

 ロゼが帰ってきた。でも、お嬢さまたちのこそこそ話はつづく。

『人間を使用人なんかにしたロゼさんも、どうなのかしら』
『特別入学できるくらい頭がいいのは、すごいと思うけれど。貧乏じゃあ、やっぱりね』

 そのとき、ロゼの顔色が、急に変わった。さっと顔が青くなったんだ。

(……そっか。たぶんロゼは、貧乏だってことを気にしてるんだ)

 入学前、「自分はお嬢さまじゃない」って打ち明けてくれたときも、言いづらそうだった。悪魔の中に人間のわたしがいることが気まずいみたいに、ロゼだって、お金持ちの学校で自分ひとりが貧乏だってことを、気にしてるのかもしれない。

(だったら――、放っておけないね)

 わたしのことを悪く言われるのは、最悪、我慢できる。でもロゼが悲しむのは、嫌だな。それは我慢できないし、したくない。わたしは、お嬢さまたちのもとに、つかつかと歩いていった。

「ねえ、ロゼのこと悪く言うのはやめて。……ください!」

 危ない、敬語忘れてた。執事はお嬢さまたちに敬語を使うのがマナーなんだって。

 突然話しかけられてぽかんとするお嬢さまたちを、わたしは、キッと見すえた。

「ロゼは頭いいし、魔法だって先生にほめられてる。悪く言われる筋合いはないはずです」

 ときどき怖いことも言うけど、ロゼはやさしいんだよ。努力して入学したロゼが、貧乏だからって理由だけで悪く言われるのは、嫌だ。こそこそと悪口を言うお嬢さまたちにも、むかつくし。だから。

「これ以上、ロゼにひどいこと言わないで! ……くださいね! ロゼ、いこ」

 わたしの反撃に驚くお嬢さまたちを置いて、ロゼの背をおして歩きだす。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...