悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい

文字の大きさ
上 下
8 / 60
第2章 悪魔って意味わかんない!

(1)美少女で美少年

しおりを挟む
 わたし、高坂莉々衣は、悪魔の学校に通うことになりました。お母さんもお父さんも、「お嬢さま学校、いいね、頑張って!」って送り出してくれた。

(さすがに悪魔の学校ってことは、ふたりには内緒だけどね……)

 アルカナ学園は寮暮らし。しかもひとり一部屋なんだって。さすがお金持ち。そんなわけで、わたしは実家から寮に引っ越してきた。

 今日はいよいよ入学式だ。……悪魔の学校かあ。まだ時々、夢を見てるのかなって思うけど、現実なんだよね。

(そういえば……、あの男の子も、アルカナ学園に通ってたりするのかな)

 ふっと思い出す、黒猫を追いかけていた男の子の姿。ロゼの使い魔を捜していたんだし、顔もロゼと似てる。もしかして、兄妹とか?

「リリイ、いまいいかしら? やっと制服が届いたわよ!」
「あ、はーい」

 コンコン、とノックの音がして、ロゼが部屋に入ってきた。相変わらず黒髪はさらさらで、ぱっちりした赤いひとみが、かわいい。わたしのご主人さまで……、悪魔の女の子だ。

「制服、間に合ったんだね。よかった」

 実は、わたしの入学が突然決まったから、制服の準備ができてなかったんだよ。……よく考えたら、わたしもあのセーラーワンピースを着れるってことなのかな。いかにもお嬢さまって感じの、かわいい制服を、わたしも……!?

「さあリリイ! あなたの執事服よ! 急いで着替えましょ!」
「う、うん!」

 どきどきしながら、リリイのもつ制服を受け取ろうとした……んだけど。

 ――ちょっとまた、トラブルの予感がするんですが。

「えーっと、ごめんロゼ、なんて? ひつじ?」
「羊じゃないわ。し、つ、じ」

 執事……って、お嬢さまやお坊ちゃまのお世話をする、男のひとのことだよね? ドラマで執事役をしたアイドルがかっこよかったって、友だちがはしゃいでいたっけ。

「え? 使用人って、執事のことなの?」
「ええ、そうよ。ほら。きっとリリイに似合うわ」

 目の前で、ロゼが制服を広げる。それは、真っ黒のスーツみたいな服だった。どう見たって、セーラーワンピースじゃない。……ちょっと待って。

「わたし、女だよ!? 執事が必要なら、男の子連れてこなきゃだめじゃん!」

 まさかロゼ、わたしのこと男だと思ってた? いやさすがに、それはないよね……?

「あら、なに言ってるの、リリイ。そんなの、男の子になればいいだけじゃない」

 ……うん? わたし、まだ寝ぼけてるのかな。変な言葉が聞こえたような気が。

「えっと……ロゼ、何度もごめん。もう一回言ってもらっていい?」
「だから、男の子になってちょうだい。それくらいできるでしょう?」
「で、できないよ……!? なに言ってるの!」

 わたしの大声に、ロゼは「え?」と目を瞬いた。

「そうなの? 人間ってそんなこともできないの?」
「当たり前じゃん! なにその、きょとん顔。かわいいけど!」

 悪魔と人間の感覚って、だいぶずれてるみたいなんだよね。男になる、なんて。

「あれ、ていうか、その言い方はもしかして……、悪魔は性別を変えられる感じ?」
「ええ、そうよ。わたしは、男の姿になれるけれど……、見たい?」

 ……見たいかも。性別変えられるってことを、この目で確かめたいし。

「いいわ。見せてあげる」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】ねぇ、おかあさん

たまこ
児童書・童話
おかあさんがだいすきな、おんなのこのおはなしです。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 <第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>

マハーディヴァ

東雲紫雨
児童書・童話
注:登場する世界観はネーミングのみを借用し、実際の思想・理念・信仰・地域性とは一切紐づいておりません。公開にあたって極力配慮致しますが、誤解を招くような表記がありましたら、あらかじめお詫びいたします。

世にも奇妙な日本昔話

佐野絹恵(サノキヌエ)
児童書・童話
昔々ある所に お爺さんと お婆さんが住んでいました お婆さんは川に洗濯物へ お爺さんは山へ竹取りへ 竹取り? お婆さんが川で 洗濯物をしていると 巨大な亀が泳いで来ました ??? ━━━━━━━━━━━━━━━ 貴方の知っている日本昔話とは 異なる話 ミステリーコメディ小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

小さいくも

功刀攸
児童書・童話
ある日、小さなくもは家の主人の娘と出会った。 小さなくもと女の子の出会い、日常、成長と別れ――。 ※個人サイト及び他サイトとの重複投稿です。

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

処理中です...