9 / 60
第2章 悪魔って意味わかんない!
(2)美少女で美少年2
しおりを挟む
ロゼは深く息を吸い込む。ぽんっとロゼのまわりに煙が生まれた。もわもわと、全身をおおって見えなくなる。そうして煙は、ゆっくりと晴れていき――。
「ほら、こんな感じだよ」
聞こえたのは、さっきまでのロゼの声とはちがう。きれいだけど、すこし低い声だった。そして、そこに立っていたのは、
「『王子』じゃん……!?」
黒猫を追いかけていた、あの男の子! 白い肌に、きれいな黒髪。澄んだ赤いひとみ。やっぱり、きれいな子だ――、でも。
(これってつまり、そういうことだよね……)
「……きみは、ロゼなの?」
「うん。そうだよ」
男の子――ロゼは、あっさりうなずいた。
う、うそでしょ……! そんなことある!? え、だってさっきまで女の子だったのに! たしかに髪とか、ひとみの色は同じだし、きれいな子っていうのも同じだけど!
「えええっ!? 兄妹じゃないの!?」
「ちがうよ。同一人物。どっちも『ロゼ』。ぼくは、男の姿のほうが速く走れるから、この姿で使い魔を追いかけていたんだ」
まあ、結局逃げられたんだけど、とロゼ(男の子バージョン)はため息をつく。
「あ、ぼくが男になったのは、内緒にしてね。勝手に姿を変えると先生に怒られるんだ」
「へ、へー……、そうなんダー……」
ちらっとロゼを盗み見た。どこからどう見ても、男の子。しかもアイドル級の美少年。でも、ロゼ、なんだよね? う、頭パンクしそう……。
「リリイ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、だいじょーぶ……」
「どっち?」
くすっとロゼは笑った。か、かっこいいんだけど、この子……!
(い、いやいや、だけど相手はロゼ、女の子じゃん)
いや、女の子、なのかな? いまは完ぺきな男の子だけど……。あー、混乱するよ!
「本当に大丈夫? まあ、性別なんて、ただの器のちがいでしかないからさ」
目がぐるぐる回っているわたしを見て、ロゼは苦笑した。
「深く考えずに『ロゼ』って相手と話してるって思ったら、いいんじゃないかな?」
「ロゼと話す……。な、なるほど……? わかった、そういう風に考えてみるよ……」
「うん。とはいえ、学園の制度的に、男女の区別は必要なんだけど」
「制度?」
「そういえば、リリイにはまだ説明してなかったっけ」
ロゼは思い出したように手を叩いた。
「えっと、この学園では、一年生はお嬢さまと執事、二年生はお坊ちゃまとメイド、三年生は好きな性別を選んで通うんだ」
そ、そんな制度が……。
「だから、リリイには執事になってもらわないと困るんだけど……、無理なの?」
「無理だよ! そういう大切な話は先にしておいてくれないと困るって!」
「んー、そっか……。想定外だな。人間って性別を変えられなかったんだ……」
ロゼが眉を寄せて、「困ったなあ」とわたしを見た。
「……いや、でもリリイならいける気がする。ちょっと顔見せて」
ふいに、ロゼがわたしの頬を手ではさんで、顔を近づけてきた。って、えええっ!? ち、近い……! つい、ぼぼぼっと、わたしの顔が熱くなる。
「あれ、リリイ、顔赤いね。どうしたの? ……あ、もしかして」
不思議そうに首をかしげていたロゼのくちびるが、すっと三日月の形をつくった。
「照れた?」
「て、照れてない!」
「へー、照れてるんだ。リリイ、かっこいいのに、かわいいね」
いたずらっぽい笑顔のロゼに、わたしの顔はもっと熱くなる。
(か、かわいい、とか、はじめて言われた……っ!)
ほ、ほんとに? わたし、かわいいの……? ていうか、はずかしい! あー、もう、大混乱だよ!
「さて、入学式がはじまるし、いつまでもこうしているわけにはいかないね」
ぽんっと、ロゼが煙に包まれる。
「仕方ないわ。リリイ、覚悟を決めてちょうだい。リリイならいけるから」
一瞬で、女の子の姿にもどっていた。声も口調も、いつものロゼだ。ほんとに気軽な感じで性別を変えられちゃうんだね……。悪魔って、すごい。
「ていうか、いけるって、なにが……?」
「それはもちろん、決まってるでしょ?」
ロゼはにっこりと花がほころぶような笑顔を浮かべた。あ、なんか、いやな予感……。
「ほら、こんな感じだよ」
聞こえたのは、さっきまでのロゼの声とはちがう。きれいだけど、すこし低い声だった。そして、そこに立っていたのは、
「『王子』じゃん……!?」
黒猫を追いかけていた、あの男の子! 白い肌に、きれいな黒髪。澄んだ赤いひとみ。やっぱり、きれいな子だ――、でも。
(これってつまり、そういうことだよね……)
「……きみは、ロゼなの?」
「うん。そうだよ」
男の子――ロゼは、あっさりうなずいた。
う、うそでしょ……! そんなことある!? え、だってさっきまで女の子だったのに! たしかに髪とか、ひとみの色は同じだし、きれいな子っていうのも同じだけど!
「えええっ!? 兄妹じゃないの!?」
「ちがうよ。同一人物。どっちも『ロゼ』。ぼくは、男の姿のほうが速く走れるから、この姿で使い魔を追いかけていたんだ」
まあ、結局逃げられたんだけど、とロゼ(男の子バージョン)はため息をつく。
「あ、ぼくが男になったのは、内緒にしてね。勝手に姿を変えると先生に怒られるんだ」
「へ、へー……、そうなんダー……」
ちらっとロゼを盗み見た。どこからどう見ても、男の子。しかもアイドル級の美少年。でも、ロゼ、なんだよね? う、頭パンクしそう……。
「リリイ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、だいじょーぶ……」
「どっち?」
くすっとロゼは笑った。か、かっこいいんだけど、この子……!
(い、いやいや、だけど相手はロゼ、女の子じゃん)
いや、女の子、なのかな? いまは完ぺきな男の子だけど……。あー、混乱するよ!
「本当に大丈夫? まあ、性別なんて、ただの器のちがいでしかないからさ」
目がぐるぐる回っているわたしを見て、ロゼは苦笑した。
「深く考えずに『ロゼ』って相手と話してるって思ったら、いいんじゃないかな?」
「ロゼと話す……。な、なるほど……? わかった、そういう風に考えてみるよ……」
「うん。とはいえ、学園の制度的に、男女の区別は必要なんだけど」
「制度?」
「そういえば、リリイにはまだ説明してなかったっけ」
ロゼは思い出したように手を叩いた。
「えっと、この学園では、一年生はお嬢さまと執事、二年生はお坊ちゃまとメイド、三年生は好きな性別を選んで通うんだ」
そ、そんな制度が……。
「だから、リリイには執事になってもらわないと困るんだけど……、無理なの?」
「無理だよ! そういう大切な話は先にしておいてくれないと困るって!」
「んー、そっか……。想定外だな。人間って性別を変えられなかったんだ……」
ロゼが眉を寄せて、「困ったなあ」とわたしを見た。
「……いや、でもリリイならいける気がする。ちょっと顔見せて」
ふいに、ロゼがわたしの頬を手ではさんで、顔を近づけてきた。って、えええっ!? ち、近い……! つい、ぼぼぼっと、わたしの顔が熱くなる。
「あれ、リリイ、顔赤いね。どうしたの? ……あ、もしかして」
不思議そうに首をかしげていたロゼのくちびるが、すっと三日月の形をつくった。
「照れた?」
「て、照れてない!」
「へー、照れてるんだ。リリイ、かっこいいのに、かわいいね」
いたずらっぽい笑顔のロゼに、わたしの顔はもっと熱くなる。
(か、かわいい、とか、はじめて言われた……っ!)
ほ、ほんとに? わたし、かわいいの……? ていうか、はずかしい! あー、もう、大混乱だよ!
「さて、入学式がはじまるし、いつまでもこうしているわけにはいかないね」
ぽんっと、ロゼが煙に包まれる。
「仕方ないわ。リリイ、覚悟を決めてちょうだい。リリイならいけるから」
一瞬で、女の子の姿にもどっていた。声も口調も、いつものロゼだ。ほんとに気軽な感じで性別を変えられちゃうんだね……。悪魔って、すごい。
「ていうか、いけるって、なにが……?」
「それはもちろん、決まってるでしょ?」
ロゼはにっこりと花がほころぶような笑顔を浮かべた。あ、なんか、いやな予感……。
11
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
男女比:1:450のおかしな世界で陽キャになることを夢見る
卯ノ花
恋愛
妙なことから男女比がおかしな世界に転生した主人公が、元いた世界でやりたかったことをやるお話。
〔お知らせ〕
※この作品は、毎日更新です。
※1 〜 3話まで初回投稿。次回から7時10分から更新
※お気に入り登録してくれたら励みになりますのでよろしくお願いします。
ただいま作成中
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる