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第1章 憧れのお嬢さま学校!

(7)わたしが使用人です……!?

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「じゃあ、リリイ。わたしのお願いを、早速聞いてもらえるかしら?」
「うん。いいよ。なんでも言って」
「それなら……、わたしの使用人として、アルカナ学園に入学してちょうだい!」

 ロゼが期待に満ちたまなざしで、わたしを見上げた。

「あー、入学ね、はいはい。……って、待って。使用人ってなに?」
「大丈夫、特別なことはしなくていいの! 使用人も授業を受けられるし、わたしといっしょなら学費も無料! リリイはただアルカナ学園に通うだけよ! だから、ね、お願い?」

 そういえば、家でも言ってたっけ。「リリイもアルカナ学園に入学して」って。ロゼは、きらきらうるうるのひとみで、わたしを見上げている。かわいい……けど。

「さすがに、それはちょっと……、無理かなあ」

 ロゼが悪魔だってことは、まあ、うーん、一旦信じてみる? 魔法も見ちゃったし。生徒は飛んでたし。ひとまず、ロゼの話を全部信じることにしてみようか。だけど入学は、無理だよ。わたし、普通の中学校に入学することになってるし!

「……リリイ、だめなの?」
「ご、ごめん! 入学以外のことなら手伝うから! 黒猫捜しとかで、どうかな?」
「いまから捜しても遅いわ。……こうなったら、仕方ないわね」

 しばらく黙ってから、ロゼがつぶやいた。そのひとみがあやしく光る。さっき魔法を使ったときみたいに。ロゼは、そっとわたしに顔を近づけた。

 え、え、なに? なんか顔が怖い気が……?

「ねえ、リリイ。あなたが断るなら……、わたし、リリイを呪っちゃうかもしれないわよ」
「……えっ!? 呪い!?」

 思わず一歩下がったわたしを追い詰めるみたいに、ロゼは一歩踏み出す。

「使い魔を逃がしたのって、リリイにも原因があるでしょう?」
「そ、それは、そうかもだけど……」
「じゃあ、わたしのお願いを聞いてくれてもいいんじゃない? 聞くべきよね?」

 ……これってもしかして。わたし、悪魔におどされてる? なにそれ、こわっ!

「リリイ、あと三秒で決めないと、呪っちゃうわよ」
「は? 三秒!? みじかっ!」
「はい、さーん、にー」

 え、ちょ、問答無用じゃん! しかも、なんか、まわりの木がばさばさ揺れはじめたんだけど! 呪う準備万端ってこと!?

「いーーーーち」

 光を灯した赤いひとみが、わたしを射抜く。するするっと、バラの蔓がわたしの足をのぼってくる。逃がさない、って言うみたいに。これ、やばいんじゃない!?

「ぜーーーーーーーーーー……」
「わ、わかった! 入学する! しますっ! させていただきます!」

 つい、大声で叫んだわたし。そうするしかないよ、この状況!

 ロゼのバラ色のくちびるが、ゆっくりと、きれいに三日月を描く。

「よかったぁ! うれしいわっ!」

 勢いよく抱きついてくるロゼを、「うわあっ」と、なんとかキャッチ。

「これでわたし、アルカナ学園に入学できる! ありがとう、リリイ!」

 ロゼは、とってもうれしそうな笑顔だ。さっきまでの怖さがうそみたいに。

「そ、そっかー。よかったネー」

 ……どうしよう。入学、するって、言っちゃった。

(いやでも、思い出して。わたし、アルカナ学園には、もともとあこがれてたじゃん)

 お母さんも乗り気だったし、入学するのは問題ない、のかも? ……うん、そう思うことにしようかな。そうじゃないと、やってられない!

「リリイ。これからよろしくね。――やっぱりやめた、なんて言ったら呪っちゃうから」
「え」

 ほほ笑むロゼは、とってもかわいい。だけど、わたしの顔はひきつった。なんか、とんでもないことに巻き込まれた気がするよ……!
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