婚約破棄された公爵令嬢が魔法少女として生きていく

鈴原ベル

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みんな揃って異世界に

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 わたしたちは、ルビー王国で名前が知られているドーリーという名の年老いた女の魔法使いの前にいた。公爵家との付き合いは古く、父公爵も時々魔法を依頼していた。わたしとも既に面識はあった。礼金は高いが、それだけの成果があることは確かだった。今回もあらかじめ多額の報酬を前払いで払っていた。

 わたしと老ドーリーはテーブルを挟んでサシで向かい合っていた。わたしの部下たちは後ろに控えている。

「ふーむ、お嬢様が異世界への転移をご希望ですと?」
「はい、その通りです。ぜひお願いします」

 世故に長けたドーリーは、公爵令嬢のわたしが、異世界などに行こうと奇妙な依頼をした理由を尋ねるような野暮なことはしない。婚約破棄の話はもう知っているはずだ。そのことと関連があるだろうくらいのことは、誰にでも想像はつくだろう。彼女はいきなり本題に切り込んでいった。

「異世界転移の術を操れる者は、このルビー王国でも数人しかおりませぬ。わたくしにも可能でございますが、いくつか問題がありましてな」
「問題とは?」

 わたしの声に警戒感がこもった。

「まず、第一に、どのような世界に行くかわかりませぬ。人の住む世界には行けまするが、行先をこちらから決める事は出来ぬわけでして。更にもう1つ、一度異世界に行ってしまえば、もう二度とこちらへ戻ることはできませぬ。お嬢様にその御覚悟がおありなのかどうか?」

 わたしの脳裏に両親の公爵夫妻の顔が浮かんだ。大いなる愛情で、わたしを今まで育ててくれた。やがて、ルビー王国の王妃となり、何不自由ない一生を送れる手筈まで整えてもらっていたのに、寸前で挫折してしまった。

 父公爵への置き手紙にはいつか戻るとは書いたが、異世界に行ってしまったらもう戻れないのだ。たとえ婚約破棄されて行先がなくなってしまった立場であっても、これまで通り公爵領の中で、庇護された生活を送らせてもらえるだろう。だが、これからは他人には頼らず、自分の力で生きていくしかない。もう決めたのだ。

「はい、覚悟の上です。もうこちらには戻るつもりはありません」

 とっくに決意を固めていたわたしは老魔法使いにきっぱりと返事した。

「うむ。わかりました。お嬢様がそのお覚悟があるのなら、もう申すことはございませぬ。では、魔法を始めまする」

 わたしたち5人の仲間に、異世界転移の魔法がかけられた。いよいよ異世界に行く事になったのだ。徐々に意識が薄れていく。どこに行くのか、そして行く先に何が待ちうけているのか、期待と不安が相半ばしていた。


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