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第一Q 隻腕の単細胞
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片仮名が多くてすでに覚えられる気がしなかったが、こんなことで弱音を吐いてはいられない。
「そうそう、うちの主要メンバーについても教えるわ。うちのスターティングメンバーは、PG・多田先輩、C・神谷先輩、SG・戸部先輩、PF・岡村先輩、そしてSFが廉よ」
「ウス、全然わかんねえっす!」
「……そうよね。えっと、今のは簡単に言えばポジションの説明なの。PG、ポイントガードは攻撃の起点でチームの司令塔。SF、スモールフォワードは点取り屋、チームのエース的ポジションよ。SG、シューティングガードは高いシュート力が必要とされるから、3ポイントが上手い人がなることが多いかな。PF、パワーフォワードはリバウンドしつつ点も取らなきゃいけないから、パワフルなプレーが求められるわね。C、センターは守備の要、チームの大黒柱よ。ゴール近くからの得点にも多く絡んでくるわ」
「ま、また片仮名か……! ちなみに俺は、どのポジションになりますかね?」
「そうねえ……上背があるから、無難にいけばPFかCじゃないかしら? ウチはPFの選手層が薄いから、頑張れば試合に出られる可能性が高いわよ」
「パワーフォワード……」
口に出したところでまだイメージはできないが、試合に出られる可能性が高いというのは魅力的だ。もしスタメンになれるなら、早々に自分を馬鹿にした廉の鼻を明かすことができるだろう。
雪之丞が廉の方を見ると、彼は腕のストレッチをしながら多田と話をしていた。
「……廉先輩ってスタメンだったんすね。上手いんすか?」
「あー、あんた絡まれてたもんね。ふふ、そうね。あいつが上手いかどうかは、自分の目で確かめてみたら?」
すでにコートの中ではスタメンで構成されたAチームの五人と、宇佐美が選抜したBチームの五人が対峙していた。両チームで一番背の高い二人がセンターサークルの中心に入り、それ以外のメンバーはサークルの外で見守っている。間もなく試合が始まろうとしているのだ。
「第一クォーター開始のジャンプボールのことを、ティップオフって言うのよ」
久美子の説明とほぼ同時に、戦いの火蓋は切って落とされた。
スタメンチームの神谷が叩いたボールを多田が拾って、すぐさま敵陣に侵攻していった。そのまま多田がゴールまでボールを運ぶのかと思ったが、多田は走りながらマークを外した戸部を見逃すことなく、正確なパスを通した。パスを受け取った戸部はレイアップシュートを打ったが――Bチームのセンターが見事なブロックを決め、先制点とはならなかった。
ボールを拾ったBチームはすぐに反対側のゴールへボールを運び、早くもディフェンスへの切り替えができているスタメンチームの壁を崩そうと、パスを回して攻撃の糸口を探っていた。そうして何度かパスを回している最中、甘く入ってきたパスを戸部がカットした。カウンターだ。両チーム共、再び真逆にあるゴールを目がけてコートを駆けていく。
――なんだこれ。速い。速すぎるだろ。
目の前で行われるスピーディーな攻防に、雪之丞は息をつく暇もなかった。
マークを振り切った廉にボールが渡ると、Bチームが殺気立った気がした。シュートモーションに入った廉をカバーに入ってきた選手が止めようとしたが、廉が打とうとしたシュートはフェイントだった。ブロックのためにジャンプしてしまい身動きの取れない彼を嘲笑うように、廉は軽くドリブルで躱して打点の高いシュートを放った。
「ナイッシュウ! いいぞ廉!」
チームメイトから声をかけられても当然だと言わんばかりに喜びを顔に出さなかった廉は、敵に好き勝手な動きをさせない巧みなディフェンスで、マッチアップしていた選手のトラベリングを誘った。
再びスタメンチームの攻撃だ。多田はセンターラインまでボールを運んでから廉にパスを出した。廉がドリブルで敵を抜こうとすると、先程やられた分を取り戻そうと躍起になっている敵の、腰を低く落としたディフェンスに行く手を遮られた。
これはパスを出すしかないだろうなと思いながら見ている雪之丞を鼻で笑うように、廉は左足を軸に背中側で反転して敵を巻き込むような動きで華麗に抜き去り、鮮やかにシュートを決めた。
まるで魔法のようだった。驚いた雪之丞は、興奮気味に久美子に問いかけた。
「な、なんすか!? あのくるって回るヤツは!?」
「バックロールターンね。さすが廉、上手いわあ」
技名は例のごとくまだ覚えられそうにないが、とにかく廉が見せた一連の動きに魅せられた。
「そうそう、うちの主要メンバーについても教えるわ。うちのスターティングメンバーは、PG・多田先輩、C・神谷先輩、SG・戸部先輩、PF・岡村先輩、そしてSFが廉よ」
「ウス、全然わかんねえっす!」
「……そうよね。えっと、今のは簡単に言えばポジションの説明なの。PG、ポイントガードは攻撃の起点でチームの司令塔。SF、スモールフォワードは点取り屋、チームのエース的ポジションよ。SG、シューティングガードは高いシュート力が必要とされるから、3ポイントが上手い人がなることが多いかな。PF、パワーフォワードはリバウンドしつつ点も取らなきゃいけないから、パワフルなプレーが求められるわね。C、センターは守備の要、チームの大黒柱よ。ゴール近くからの得点にも多く絡んでくるわ」
「ま、また片仮名か……! ちなみに俺は、どのポジションになりますかね?」
「そうねえ……上背があるから、無難にいけばPFかCじゃないかしら? ウチはPFの選手層が薄いから、頑張れば試合に出られる可能性が高いわよ」
「パワーフォワード……」
口に出したところでまだイメージはできないが、試合に出られる可能性が高いというのは魅力的だ。もしスタメンになれるなら、早々に自分を馬鹿にした廉の鼻を明かすことができるだろう。
雪之丞が廉の方を見ると、彼は腕のストレッチをしながら多田と話をしていた。
「……廉先輩ってスタメンだったんすね。上手いんすか?」
「あー、あんた絡まれてたもんね。ふふ、そうね。あいつが上手いかどうかは、自分の目で確かめてみたら?」
すでにコートの中ではスタメンで構成されたAチームの五人と、宇佐美が選抜したBチームの五人が対峙していた。両チームで一番背の高い二人がセンターサークルの中心に入り、それ以外のメンバーはサークルの外で見守っている。間もなく試合が始まろうとしているのだ。
「第一クォーター開始のジャンプボールのことを、ティップオフって言うのよ」
久美子の説明とほぼ同時に、戦いの火蓋は切って落とされた。
スタメンチームの神谷が叩いたボールを多田が拾って、すぐさま敵陣に侵攻していった。そのまま多田がゴールまでボールを運ぶのかと思ったが、多田は走りながらマークを外した戸部を見逃すことなく、正確なパスを通した。パスを受け取った戸部はレイアップシュートを打ったが――Bチームのセンターが見事なブロックを決め、先制点とはならなかった。
ボールを拾ったBチームはすぐに反対側のゴールへボールを運び、早くもディフェンスへの切り替えができているスタメンチームの壁を崩そうと、パスを回して攻撃の糸口を探っていた。そうして何度かパスを回している最中、甘く入ってきたパスを戸部がカットした。カウンターだ。両チーム共、再び真逆にあるゴールを目がけてコートを駆けていく。
――なんだこれ。速い。速すぎるだろ。
目の前で行われるスピーディーな攻防に、雪之丞は息をつく暇もなかった。
マークを振り切った廉にボールが渡ると、Bチームが殺気立った気がした。シュートモーションに入った廉をカバーに入ってきた選手が止めようとしたが、廉が打とうとしたシュートはフェイントだった。ブロックのためにジャンプしてしまい身動きの取れない彼を嘲笑うように、廉は軽くドリブルで躱して打点の高いシュートを放った。
「ナイッシュウ! いいぞ廉!」
チームメイトから声をかけられても当然だと言わんばかりに喜びを顔に出さなかった廉は、敵に好き勝手な動きをさせない巧みなディフェンスで、マッチアップしていた選手のトラベリングを誘った。
再びスタメンチームの攻撃だ。多田はセンターラインまでボールを運んでから廉にパスを出した。廉がドリブルで敵を抜こうとすると、先程やられた分を取り戻そうと躍起になっている敵の、腰を低く落としたディフェンスに行く手を遮られた。
これはパスを出すしかないだろうなと思いながら見ている雪之丞を鼻で笑うように、廉は左足を軸に背中側で反転して敵を巻き込むような動きで華麗に抜き去り、鮮やかにシュートを決めた。
まるで魔法のようだった。驚いた雪之丞は、興奮気味に久美子に問いかけた。
「な、なんすか!? あのくるって回るヤツは!?」
「バックロールターンね。さすが廉、上手いわあ」
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