セキワンローキュー!

りっと

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第一Q 隻腕の単細胞

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 入部二日目。体育館の半分を使用している女子バスケ部の中に、紗綾の姿を見つけた。

 紗綾は肩まである髪を一つに縛り、Tシャツにハーフパンツという姿でストレッチをしていた。決して色気のある格好ではないはずなのに、白い肌やふくらはぎにはどこか掻き立てられるものがある。

「いい……!」

 雪之丞が紗綾の姿に興奮していると、

「おー。今年は珍しいタイプの一年が入ってきたなー」

 いつの間にか隣にいた知らない男が、雪之丞を見て目を丸くしていた。

「……はあ、そっすか?」

 白髪混じりの黒髪をワックスで固めている男は、四十代くらいだろうか。悪気はなさそうなため露骨に突っかかることはしなかったが、左腕をじろじろ見られて気分が悪い。不審感を抱きつつ男の顔を見ていると、多田が「集合!」と声をかけ雪之丞の周りに部員を集めた。

「な、なんすか多田先輩! 俺、なんかしましたか!?」

「いやいや、お前じゃなくて。……鳴海の隣にいる方はな、ウチの監督だ。お前もちゃんと挨拶しろ」

「か、監督っすか!?」

 男は白い歯を見せ、部員たちを見回した。

「昨日は急な残業が入ってしまってな、一年生にとっては初めての練習だったのに来られなくて悪かった。俺は男子バスケ部監督の宇佐美うさみだ。沢高OBでもあるが、練習が好きな方ではなかったし、筋トレなんかはいつもやりたくないと思ってきた。そんな俺が、どうしてわざわざ厳しい練習をさせると思う?」

 急に質問を振られた雪之丞だったが、自信たっぷりに答えた。

「試合で勝ちたいからっす!」

 雪之丞の返答に、宇佐美は大きく頷いた。

「そうだな。皆そう思っているから、練習していると思う。だけど、もっと単純に考えてみてもいいと思うんだ。バスケを本当に好きになるためには、ある程度の実力が必要になる。そうすると、やっぱりキツい練習をしなくちゃ実力はついてこないし楽しくなれないんだ。俺は今も抱えている『もっと練習していれば、あのとき勝てたかもしれない』なんて後悔をお前たちにはしてほしくない」

 宇佐美はそこで一旦区切り、再び笑った。

「厳しい練習の中に、楽しさを見い出せる選手になってほしいと願う。一年生諸君、ようこそ沢高バスケ部へ!」

「「ウス!」」

 部員全員の返事に意思の統一を感じとったであろう宇佐美は、満足そうに頷いた。

「俺の職場は決して忙しい職場ではないんだが、急な残業が入った日は練習に来られないことだけ勘弁してくれ。それから……一年の中にはミニバスから続けている上手い奴もいるだろうが、先輩たちは想像しているよりもはるかに上にいると考えておいた方がいい。まあ、まずは高校バスケのレベルを知ってもらおうと思う。今からゲームをやるから、よく見ておきなさい。そして各々、何かを感じとってほしい」

 そう言って宇佐美は二、三年だけ集めて指示をし始めた。こんなに早く実戦形式で先輩たちのプレーを見られるとは思っていなかった一年生たちは、予想もしていなかった展開にざわついていた。バスケの試合を生で見たことのない雪之丞もまた、気分が高揚して思わず大声を出していた。

「おお、試合かあ! ……つか、バスケの試合って何分でやんだっけ?」

「高校バスケの試合は、一クォーター十分の試合を四回繰り返すのよ。鳴海、あんたはわたしの隣にいなさい。ルールを教えてあげるから」

 そう言って、久美子は雪之丞に一冊の本を手渡した。表紙には『誰でも最初は初心者! 簡単にわかるバスケットボール』と書かれてある。

「あんたに宿題よ。これを読んで、インハイ予選までにバスケのルールを覚えること。とりあえず今日は、基本的な最低限のルールだけ説明するからね」

「あざっす! 助かるっす! 久美子先輩にはマジで感謝します!」

 雪之丞が素直に感謝の意を口にすると、久美子は少し照れたように咳払いをした。

「じゃあ早速、基本中の基本から説明するわ。ボールを持ったまま三歩以上歩くと『トラベリング』、ドリブルして一度止まってからまたドリブルすることを『ダブルドリブル』といって、反則になるわ。これくらいは知ってた?」

 雪之丞はかぶりを振った。

「……まあ、これからだしね。あとは試合を見ながら教えていくから」

「あざっす!」
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