163 / 197
アレン奪還と消された秘密⑤
しおりを挟む
「しかし、こちら側がアレンを要求した時、すんなりとアレンをこちらに来させたのも謎だ」
父様がそう呟くと、アレンはハッとした顔をして
「リチャード兄様から『どうせお前なんて、向こうの国に受け入れられる筈は無いんだから、帰って来たら俺達の為に尽くせ』と言われていました」
と呟き、母様の顔をゆっくりと見た。
「成程……。アレンが母親の名付けた名前を呼ばれるのを嫌がっていたのを知っていて、敢えて仲違いさせる為に嘘の情報をこちらに流した」
「しかし思惑は外れて、亜蘭と結婚してしまった……という所かな」
母様の言葉に、父様が続ける。
「絶対に逃げ場は無いと思わせたかったが」
「当たりが外れた……」
父様と母様はそこまで話すと、深い溜め息を吐いた。
「どちらにせよ、胸糞悪い話だな」
母様はそう呟き、天を見上げた。
「でも、それではこの剣の事はどうなりますか?」
少しの沈黙の後、デーヴィトが呟いた。
「確かにな……」
「そして何故、ルーファスはこの剣をこの国に持ち込んだ?」
「綺麗だったからじゃないの?」
父様と母様の会話に呟くと
「国宝だぞ。そんな訳、無いじゃないか」
デーヴィドが間髪入れず叫んだ。
「妙だよな……」
母様はそう呟き、考え込んでしまう。
「アレン。思い出したくは無いだろうが、お前があの国でどう過ごしていたのかを知るのも一つの鍵だと思うんだが……」
父様の言葉に、僕はテーブルを叩いて立ち上がり
「反対だ! 向こうでの記憶が無いって事は、余程、酷い目に遭っていたんだと思うんだ。それなのに、それを思い出せなんて……」
込み上げる涙をそのままに、僕が父様に叫ぶと
「亜蘭、ありがとう。私は大丈夫だ」
そう言って優しく僕の背中を撫でた。
「もう、良いじゃないか! アレンは帰って来たんだよ。これ以上、アレンを苦しめないでよ……」
泣きながら訴える僕を、アレンが優しく抱き締めて
「亜蘭、泣かないで……。シルヴァ王、私はこのままで良いと思っています。この国に居れば、私の身は安全ですし……」
そう呟くと、母様は呆れた顔をすると
「亜蘭、お前はいつまで甘ったれているんだ? 辛いのはお前じゃない、アレンだろ!」
そう怒鳴られた。
「母様……」
驚く僕に
「良いか、亜蘭。お前はアレンと人生を共に歩む決意をしたんだろう? だったら、助けてやらなくちゃならないお前が、アレンの足を引っ張ってどうするんだよ! 俺は前に言ったよな? 覚悟を決めろと……」
初めて見る、母様の本気の怒りだった。
「お前がそんなんだから、アレンはお前の気持ちを優先して、自分の本当の気持ちを言い出せないんじゃないのか?」
母様の言葉に、僕はアレンの顔を見た。
「多朗様、違います! 俺は」
「アレン! お前は黙ってろ!」
母様が僕を睨んで叫んだ後
「俺は……お前の教育を間違えたのかもしれないな……亜蘭」
悲しそうに涙を流した。
父様がそう呟くと、アレンはハッとした顔をして
「リチャード兄様から『どうせお前なんて、向こうの国に受け入れられる筈は無いんだから、帰って来たら俺達の為に尽くせ』と言われていました」
と呟き、母様の顔をゆっくりと見た。
「成程……。アレンが母親の名付けた名前を呼ばれるのを嫌がっていたのを知っていて、敢えて仲違いさせる為に嘘の情報をこちらに流した」
「しかし思惑は外れて、亜蘭と結婚してしまった……という所かな」
母様の言葉に、父様が続ける。
「絶対に逃げ場は無いと思わせたかったが」
「当たりが外れた……」
父様と母様はそこまで話すと、深い溜め息を吐いた。
「どちらにせよ、胸糞悪い話だな」
母様はそう呟き、天を見上げた。
「でも、それではこの剣の事はどうなりますか?」
少しの沈黙の後、デーヴィトが呟いた。
「確かにな……」
「そして何故、ルーファスはこの剣をこの国に持ち込んだ?」
「綺麗だったからじゃないの?」
父様と母様の会話に呟くと
「国宝だぞ。そんな訳、無いじゃないか」
デーヴィドが間髪入れず叫んだ。
「妙だよな……」
母様はそう呟き、考え込んでしまう。
「アレン。思い出したくは無いだろうが、お前があの国でどう過ごしていたのかを知るのも一つの鍵だと思うんだが……」
父様の言葉に、僕はテーブルを叩いて立ち上がり
「反対だ! 向こうでの記憶が無いって事は、余程、酷い目に遭っていたんだと思うんだ。それなのに、それを思い出せなんて……」
込み上げる涙をそのままに、僕が父様に叫ぶと
「亜蘭、ありがとう。私は大丈夫だ」
そう言って優しく僕の背中を撫でた。
「もう、良いじゃないか! アレンは帰って来たんだよ。これ以上、アレンを苦しめないでよ……」
泣きながら訴える僕を、アレンが優しく抱き締めて
「亜蘭、泣かないで……。シルヴァ王、私はこのままで良いと思っています。この国に居れば、私の身は安全ですし……」
そう呟くと、母様は呆れた顔をすると
「亜蘭、お前はいつまで甘ったれているんだ? 辛いのはお前じゃない、アレンだろ!」
そう怒鳴られた。
「母様……」
驚く僕に
「良いか、亜蘭。お前はアレンと人生を共に歩む決意をしたんだろう? だったら、助けてやらなくちゃならないお前が、アレンの足を引っ張ってどうするんだよ! 俺は前に言ったよな? 覚悟を決めろと……」
初めて見る、母様の本気の怒りだった。
「お前がそんなんだから、アレンはお前の気持ちを優先して、自分の本当の気持ちを言い出せないんじゃないのか?」
母様の言葉に、僕はアレンの顔を見た。
「多朗様、違います! 俺は」
「アレン! お前は黙ってろ!」
母様が僕を睨んで叫んだ後
「俺は……お前の教育を間違えたのかもしれないな……亜蘭」
悲しそうに涙を流した。
59
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
溺愛の加速が尋常じゃない!?~味方作りに全振りしたら執着兄上たちの愛が重すぎました~
液体猫(299)
BL
年末年始(1月4日まで)→毎日朝8時10分投稿
通常→毎日AM2時10分投稿
【《血の繋がりは"絶対"ではない。》この言葉を胸に、末っ子クリスは過保護な兄たちに溺愛されながら、大好きな四男と幸せに暮らす】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、九年前へと戻っていた。
巻き戻す前の世界とは異なるけれど同じ場所で、クリスは生き残るために知恵を振り絞る。
かわいい末っ子が過剰なまでにかわいがられて溺愛されていく──
やり直しもほどほどに。罪を着せた者への復讐はついで。そんな軽い気持ちで始まった新たな人生はコミカル&シリアス。だけどほのぼのとしたハッピーエンド確定物語。
主人公は後に18歳へと成長します(*・ω・)*_ _)ペコリ
⚠️濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭のみ重い展開あり。それ以降はコミカルでほのぼの✌
⚠️本格的な塗れ場シーンは三章(18歳になって)からとなります。
⚠️若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる