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アレン奪還と消された秘密⑤
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「しかし、こちら側がアレンを要求した時、すんなりとアレンをこちらに来させたのも謎だ」
父様がそう呟くと、アレンはハッとした顔をして
「リチャード兄様から『どうせお前なんて、向こうの国に受け入れられる筈は無いんだから、帰って来たら俺達の為に尽くせ』と言われていました」
と呟き、母様の顔をゆっくりと見た。
「成程……。アレンが母親の名付けた名前を呼ばれるのを嫌がっていたのを知っていて、敢えて仲違いさせる為に嘘の情報をこちらに流した」
「しかし思惑は外れて、亜蘭と結婚してしまった……という所かな」
母様の言葉に、父様が続ける。
「絶対に逃げ場は無いと思わせたかったが」
「当たりが外れた……」
父様と母様はそこまで話すと、深い溜め息を吐いた。
「どちらにせよ、胸糞悪い話だな」
母様はそう呟き、天を見上げた。
「でも、それではこの剣の事はどうなりますか?」
少しの沈黙の後、デーヴィトが呟いた。
「確かにな……」
「そして何故、ルーファスはこの剣をこの国に持ち込んだ?」
「綺麗だったからじゃないの?」
父様と母様の会話に呟くと
「国宝だぞ。そんな訳、無いじゃないか」
デーヴィドが間髪入れず叫んだ。
「妙だよな……」
母様はそう呟き、考え込んでしまう。
「アレン。思い出したくは無いだろうが、お前があの国でどう過ごしていたのかを知るのも一つの鍵だと思うんだが……」
父様の言葉に、僕はテーブルを叩いて立ち上がり
「反対だ! 向こうでの記憶が無いって事は、余程、酷い目に遭っていたんだと思うんだ。それなのに、それを思い出せなんて……」
込み上げる涙をそのままに、僕が父様に叫ぶと
「亜蘭、ありがとう。私は大丈夫だ」
そう言って優しく僕の背中を撫でた。
「もう、良いじゃないか! アレンは帰って来たんだよ。これ以上、アレンを苦しめないでよ……」
泣きながら訴える僕を、アレンが優しく抱き締めて
「亜蘭、泣かないで……。シルヴァ王、私はこのままで良いと思っています。この国に居れば、私の身は安全ですし……」
そう呟くと、母様は呆れた顔をすると
「亜蘭、お前はいつまで甘ったれているんだ? 辛いのはお前じゃない、アレンだろ!」
そう怒鳴られた。
「母様……」
驚く僕に
「良いか、亜蘭。お前はアレンと人生を共に歩む決意をしたんだろう? だったら、助けてやらなくちゃならないお前が、アレンの足を引っ張ってどうするんだよ! 俺は前に言ったよな? 覚悟を決めろと……」
初めて見る、母様の本気の怒りだった。
「お前がそんなんだから、アレンはお前の気持ちを優先して、自分の本当の気持ちを言い出せないんじゃないのか?」
母様の言葉に、僕はアレンの顔を見た。
「多朗様、違います! 俺は」
「アレン! お前は黙ってろ!」
母様が僕を睨んで叫んだ後
「俺は……お前の教育を間違えたのかもしれないな……亜蘭」
悲しそうに涙を流した。
父様がそう呟くと、アレンはハッとした顔をして
「リチャード兄様から『どうせお前なんて、向こうの国に受け入れられる筈は無いんだから、帰って来たら俺達の為に尽くせ』と言われていました」
と呟き、母様の顔をゆっくりと見た。
「成程……。アレンが母親の名付けた名前を呼ばれるのを嫌がっていたのを知っていて、敢えて仲違いさせる為に嘘の情報をこちらに流した」
「しかし思惑は外れて、亜蘭と結婚してしまった……という所かな」
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「どちらにせよ、胸糞悪い話だな」
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少しの沈黙の後、デーヴィトが呟いた。
「確かにな……」
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「綺麗だったからじゃないの?」
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「国宝だぞ。そんな訳、無いじゃないか」
デーヴィドが間髪入れず叫んだ。
「妙だよな……」
母様はそう呟き、考え込んでしまう。
「アレン。思い出したくは無いだろうが、お前があの国でどう過ごしていたのかを知るのも一つの鍵だと思うんだが……」
父様の言葉に、僕はテーブルを叩いて立ち上がり
「反対だ! 向こうでの記憶が無いって事は、余程、酷い目に遭っていたんだと思うんだ。それなのに、それを思い出せなんて……」
込み上げる涙をそのままに、僕が父様に叫ぶと
「亜蘭、ありがとう。私は大丈夫だ」
そう言って優しく僕の背中を撫でた。
「もう、良いじゃないか! アレンは帰って来たんだよ。これ以上、アレンを苦しめないでよ……」
泣きながら訴える僕を、アレンが優しく抱き締めて
「亜蘭、泣かないで……。シルヴァ王、私はこのままで良いと思っています。この国に居れば、私の身は安全ですし……」
そう呟くと、母様は呆れた顔をすると
「亜蘭、お前はいつまで甘ったれているんだ? 辛いのはお前じゃない、アレンだろ!」
そう怒鳴られた。
「母様……」
驚く僕に
「良いか、亜蘭。お前はアレンと人生を共に歩む決意をしたんだろう? だったら、助けてやらなくちゃならないお前が、アレンの足を引っ張ってどうするんだよ! 俺は前に言ったよな? 覚悟を決めろと……」
初めて見る、母様の本気の怒りだった。
「お前がそんなんだから、アレンはお前の気持ちを優先して、自分の本当の気持ちを言い出せないんじゃないのか?」
母様の言葉に、僕はアレンの顔を見た。
「多朗様、違います! 俺は」
「アレン! お前は黙ってろ!」
母様が僕を睨んで叫んだ後
「俺は……お前の教育を間違えたのかもしれないな……亜蘭」
悲しそうに涙を流した。
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