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アレン奪還と消された秘密④

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「まず、この剣を抜いてみてくれ」
 朝食を食べ終わり、僕達は母様に呼ばれて会議室に集まっていた。
恐らく、僕達が食堂に行った後、母様に精神的にボコボコにされたのだろう。
父様とデーヴィトの顔が死んでいる。
(まぁ……父様に関しては「暫く神事禁止」くらいだろう)
部屋に着くなり、母様に黄金に輝く剣を差し出された。
僕は剣を掴み、ゆっくりと鞘から抜こうとした。
……が、全く抜けない。
どうやっても抜けない。
「シルヴァ、デーヴィト。お前らもやって見せてやれ」
そう言うと、母様が僕から剣を受け取り、父様とデーヴィトの順で手渡した。
2人がどんなに抜こうとしても、剣は鞘から抜けない。
「さて、アレン。お前が抜いてみろ」
母様がアレンに剣を差し出すと、アレンが戸惑った顔をした。
「私は剣術でも力技でも、シルヴァ王に勝った事が無いのですが……」
戸惑うアレンに
「つべこべ言わずに、さっさと抜け」
そう言って、母様は乱暴に剣をアレンに投げ渡したのだ。
どう見ても高そうな剣を放り投げられ、慌てて受け取った瞬間、剣が光って軽々とアレンの手で抜かれたのだ。
すると父様と母様は顔を見合わせて頷くと
「アレン、その剣はきみ達の国の剣だ」
母様は真剣な顔をして呟いた。
「え?」
「その剣は、ルーファス辺境伯の宝物庫にあった物でね。恐らくだが、美しい剣だからセイブリア帝国から持ち出したものの、扱えなかったのだろうな」
驚くアレンに、父様が珍しく深刻な顔をしている。
「その剣な、な王族しか抜けないよう力が付与されていてね」
「王族……」
「そう……、な王族だ」
父様とアレンが見つめ合う。
重い空気が漂い、僕はただならぬ空気を感じた。
「今回、アレンが誘拐されるまで忘れていたのだけれど……私は子供の頃、セイブリア帝国の事を本で読んだ事があったんだ。セイブリア帝国は50年程前までは、帝国という名では無く『王国』だった。その頃の資料には、王族の肌の色は褐色。髪の毛は、夜の闇の色と記されていた。なのに、現セイブリア帝国の王族は、私達と同じ肌の色に金髪だ。そこで考えた。現セイブリア帝国の王族は、異国から追放された犯罪者の残党達なのではないだろうか?と。そして犯罪者達は、なんらかの手段でセイブリア王国に流れ着き、他国にバレないように王族を殺害し、国を乗っ取たのではないか?と。だから、今の王族にはこの剣を抜く事が出来なかった……」
父様の言葉に、僕とアレンは息を呑んだ。
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