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二人のダンピールのハンターとそれを巡る関係
時止めの時計と嫉妬対象からの親切
しおりを挟むアレフィードは自分がマリーの家で引きこもっている間に、ディストとクロウの距離が今まで以上に近くなったように感じた。
その様子に、どうあがいても自分だけの愛しい人になってはくれないのだという事実に悲しみにくれた。
しかし、魔族退治ではなんとかそれを出さなかった。
骸骨のような魔族を二人は難なく倒しているのを見て、苦戦している自分と比較してその考えを紛らわせた。
「アレフィード」
「?!」
名前を呼ばれて振り返ると、ディストの顔が近くにあった。
「調子がまだ悪いのか?」
「いや……」
うまく答えられなかった。
それに言えなかった、目の前の人物に勝手に恋をして勝手に失恋してそれで調子が悪いなどと。
「……お前はしばらく仕事に出るな、明らかに調子が悪い。しばらくマリーの元でゆっくりするといい、マリーの元でも落ち着かないなら、クロウにどこか場所を探させよう」
「はいはい、ハニーのご命令ならば」
「……その呼び方はやめろ」
前より親しく見える二人を見て心が締め付けられた。
「……分かった」
アレフィードはその言葉を絞り出すだけが精いっぱいだった。
依頼を終え、マリーのところに戻ると、ディスト達は帰っていった。
それをアレフィードとマリーは見送る。
「そうそう、アレフィードさん、ファレスさんがいらっしゃってますよ?」
「ファレスが? 分かった、どこだ?」
「客室です」
「ありがとう」
アレフィードはファレスのいる客室へと移動した。
客室では柔らかそうなソファーに座っているファレスが居た。
「ファレス」
ファレスはアレフィードを視認すると立ち上がり、恭しく頭を下げた。
「アレフィード様、依頼を終えたばかりというのに、申し訳ございません」
「……ここでは何だ、私の部屋で話そう」
「はい」
アレフィードはファレスを部屋へと案内した。
部屋に招くと、アレフィードはベッドに腰を下ろした。
ファレスは立っている。
「座ればいい」
「では」
言われてファレスは椅子に腰をかけた。
「……アレフィード様、何かあったのですか?」
しばらく沈黙が包んだ後、ファレスが口を開いた。
アレフィードは言うべきかどうか悩んだ後、自嘲気味に口を開いた。
「失恋、とやらだよ。笑ってくれ」
自嘲の笑みを浮かべるはずが泣きそうな顔になってアレフィードは言った。
ファレスはしばらく無言になった後、立ち上がりアレフィードの傍による。
そしてファレスはアレフィードを押し倒した。
「な……?!」
「アレフィード様、私は貴方を恋い慕っております」
ファレスはアレフィードの頬を撫でながら言う。
「む、無理だ。この隙間はお前でも埋めれぬ、私はお前をそのように見れぬことはできない」
「……そうでしょう」
ファレスは何かの時計を取り出して、ボタンをかちりと押した。
その途端、アレフィードの動きが完全に静止した。
「すみませぬ、御父上がご健在ならこの思い止められたでしょうが、今の私は止めることはできませぬ」
アレフィードのズボンと下着を脱がさせ、後孔をほぐす。
ぐちゅぐちゅと音を立て、柔らかくなったソコに自身の男根を押し込み、突いた。
奥を何度も突き、欲を思いのまま吐き出し続ける。
吐き出し終わると、服を戻して、かちりと時計のボタンを押した。
「な……あぐぅううう!?」
ボタンを押した途端アレフィードは動き出した途端のけ反り、絶頂を繰り返した。
何が起きたか全く理解できず、目を白黒させている。
「大丈夫ですよ、アレフィード様」
ファレスは素知らぬ顔でアレフィードを抱きしめ、頬にキスする。
嬌声を上げるアレフィードを抱きしめ、彼が見えぬところで歪な笑みを浮かべて、背中をさする。
絶頂の波が終わったように見えた時、アレフィードは意識を飛ばした。
「……アレフィード様、愛しております……」
答える者がいない場所で、ファレスは静かに呟き、口づけをした。
それから一週間が過ぎるころ、アレフィードはファレスに会うのが少しばかり恐ろしくなっていた。
会うたびに、体が何故か絶頂を繰り返すという事態に襲われているのだ。
抱かれた記憶はない、でも体は誰かに抱かれたかのように、腹の奥にはどろりとした液体が残され、意識を飛ばすまで激しい快感の波が押し寄せる。
どう考えてもファレスが何か隠しているように思うのだが、怖くて問い詰める勇気がなかった。
マリーにファレスと会いたくないと言いたいが、理由を聞かれたらどうしようと思うと中々言い出せなかった。
少し苦手意識が出たワーム型の魔族を浄化しながら、アレフィードはぐるぐると考えていた。
「どうしたアレフィード」
失恋したものの、いまだに恋い慕うのを止められぬ相手――ディストが声をかけてきたのだ、魔族の討伐が終わってもどこか様子がおかしいアレフィードを見て声をかけてきたのにアレフィードは気づかなかった。
「い、いや……なんでも」
「……嘘だな、普段なら言いづらいなら話さなくてもいいで済ませるが、今のお前を見ていると話を聞き出さないと何かが起きそうだ」
「……」
「ディストに話しづらいなら俺が聞いてやる」
「クロウ」
二人の会話を聞いてクロウが近づいてきた。
嫉妬の感情を向ける相手だ、少々複雑な気分でもある。
「マリーにも言いづらいんだろう、まぁ俺に言いたくないって気持ちもあるかもしれねぇが、腹立たしいこと含めて苛立ちとかぶちまけるなら俺だろ」
「……そうだな……クロウ、お前に話そう……」
「よし、つーわけでハニーは家に先に戻ってな」
「ああ」
クロウが空間の穴を開けると、ディストは穴を通って姿を消した。
「で、どうした坊ちゃん。ワーム型の魔族とは戦うのが嫌……っていう顔でもあるが、本質はそれじゃねぇな、誰に何された?」
「……」
クロウがそう尋ねるとアレフィードは言いづらそうに事情を話した。
ファレスが来る度起きる謎の現象、それが起きる為かファレスに会うのが怖いということまで。
「あー……間違いなくあのヴァンパイアが原因だわそれ、あと多分それ『時止めの時計』だな、よくそんなもん持ってんなあのヴァンパイア」
「時止めの時計?」
「ああ、まぁ色々種類がある、周囲の時を止めちまう時計から、特定の物質の時を止めちまう時計から色々な、それらひっくるめて『時止めの時計』っていうんだ。形状は様々、とりあえず時計の形してるって思ってくれ」
クロウは続けた。
「多分、対象の時だけを止める時計を持ってるんだろう、それでお前さんの時を止めて抱きまくってるんだろ。――で、この時計はその間に起きた感覚とかは無効にはならない反映される、まぁよくあるAV――いや、いいかこれは、とにかく反映されるんだ」
「で、では……」
「お前が急に快感感じてイキまくるのもそれが原因だろう。問題はこれを悪意なしでやってることだ」
「悪意?」
「ああ、悪意や敵意がわずかでも混じるとマリーにすぐさま伝達されるんだ、マリーの家はそういう構造になってる」
「悪意……つまり」
「まぁ、悪意がないなら善意があるわけではない、奴はごく普通にやっちまってるんだよ、だからマリーは感知できない」
クロウの言葉にアレフィードは自分の体を抱きしめて震えた。
「……坊ちゃん、しばらく姿隠してろ」
「し、しかし」
「マリーには俺が詳細伝えずに言っとく」
ディストはそういって空間に穴を開けた。
空間の向こうは静寂に包まれた夜の空間だ、小さな一軒家がある。
「俺が使ってた隠れ家の一つだ、空間がずれてるから場所を把握してる奴しか行けねぇ、お前はそこで一人大人しくしてろ、飯とかは俺が持っていくから」
「……すまん」
アレフィードは空間の穴を通ってそこへ移動した。
「とにかく落ち着くまでそこにいろよ」
「……分かった」
アレフィードが家に入ると、クロウは空間の穴を閉めた。
「さて、俺もよそ様のことはとやかく言えんが、俺よりも質が悪い相手さんをどうにかしないとな……」
クロウは頭をバリバリと掻き、その場から移動した。
マリーに詳細は省いて、アレフィードは今は一人になるのがいいと説明し、納得してもらうと、そのまま家に戻った。
寝室のベッドに座りながら、ディストが考え事をしていた。
「どうしたハニー」
「……いや、俺では相談に乗れなかったのが歯がゆくてな……」
「仕方ないさ、色々事情がある」
弟分のように思っているアレフィードに何も手助けできないことを悩んでいるディストの頭をクロウは優しく撫でた。
「まぁ、ハニーのその気持ちだけであの坊ちゃんは十分だろうさ……ちょっとばっかし俺は嫉妬しちゃうけど」
「嫉妬するな、弟みたいなものだ」
「だからだよ」
クロウはディストを押し倒して額に口づけをする。
「とりあえず、俺が色々出張ることになるけど、心配するな」
「……」
少し不服そうな顔をするディストの頬にキスをする。
「今日はキスだけで我慢してくれよな」
「……珍しいな」
「ちょっと厄介そうな奴さんとやり合いそうなんでな」
「……無事に戻ってこい」
「分かってるよディスト」
二人は抱きしめ合い、深く口づけをした。
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