27 / 31
二人のダンピールのハンターとそれを巡る関係
時止めの時計と嫉妬対象からの親切
しおりを挟むアレフィードは自分がマリーの家で引きこもっている間に、ディストとクロウの距離が今まで以上に近くなったように感じた。
その様子に、どうあがいても自分だけの愛しい人になってはくれないのだという事実に悲しみにくれた。
しかし、魔族退治ではなんとかそれを出さなかった。
骸骨のような魔族を二人は難なく倒しているのを見て、苦戦している自分と比較してその考えを紛らわせた。
「アレフィード」
「?!」
名前を呼ばれて振り返ると、ディストの顔が近くにあった。
「調子がまだ悪いのか?」
「いや……」
うまく答えられなかった。
それに言えなかった、目の前の人物に勝手に恋をして勝手に失恋してそれで調子が悪いなどと。
「……お前はしばらく仕事に出るな、明らかに調子が悪い。しばらくマリーの元でゆっくりするといい、マリーの元でも落ち着かないなら、クロウにどこか場所を探させよう」
「はいはい、ハニーのご命令ならば」
「……その呼び方はやめろ」
前より親しく見える二人を見て心が締め付けられた。
「……分かった」
アレフィードはその言葉を絞り出すだけが精いっぱいだった。
依頼を終え、マリーのところに戻ると、ディスト達は帰っていった。
それをアレフィードとマリーは見送る。
「そうそう、アレフィードさん、ファレスさんがいらっしゃってますよ?」
「ファレスが? 分かった、どこだ?」
「客室です」
「ありがとう」
アレフィードはファレスのいる客室へと移動した。
客室では柔らかそうなソファーに座っているファレスが居た。
「ファレス」
ファレスはアレフィードを視認すると立ち上がり、恭しく頭を下げた。
「アレフィード様、依頼を終えたばかりというのに、申し訳ございません」
「……ここでは何だ、私の部屋で話そう」
「はい」
アレフィードはファレスを部屋へと案内した。
部屋に招くと、アレフィードはベッドに腰を下ろした。
ファレスは立っている。
「座ればいい」
「では」
言われてファレスは椅子に腰をかけた。
「……アレフィード様、何かあったのですか?」
しばらく沈黙が包んだ後、ファレスが口を開いた。
アレフィードは言うべきかどうか悩んだ後、自嘲気味に口を開いた。
「失恋、とやらだよ。笑ってくれ」
自嘲の笑みを浮かべるはずが泣きそうな顔になってアレフィードは言った。
ファレスはしばらく無言になった後、立ち上がりアレフィードの傍による。
そしてファレスはアレフィードを押し倒した。
「な……?!」
「アレフィード様、私は貴方を恋い慕っております」
ファレスはアレフィードの頬を撫でながら言う。
「む、無理だ。この隙間はお前でも埋めれぬ、私はお前をそのように見れぬことはできない」
「……そうでしょう」
ファレスは何かの時計を取り出して、ボタンをかちりと押した。
その途端、アレフィードの動きが完全に静止した。
「すみませぬ、御父上がご健在ならこの思い止められたでしょうが、今の私は止めることはできませぬ」
アレフィードのズボンと下着を脱がさせ、後孔をほぐす。
ぐちゅぐちゅと音を立て、柔らかくなったソコに自身の男根を押し込み、突いた。
奥を何度も突き、欲を思いのまま吐き出し続ける。
吐き出し終わると、服を戻して、かちりと時計のボタンを押した。
「な……あぐぅううう!?」
ボタンを押した途端アレフィードは動き出した途端のけ反り、絶頂を繰り返した。
何が起きたか全く理解できず、目を白黒させている。
「大丈夫ですよ、アレフィード様」
ファレスは素知らぬ顔でアレフィードを抱きしめ、頬にキスする。
嬌声を上げるアレフィードを抱きしめ、彼が見えぬところで歪な笑みを浮かべて、背中をさする。
絶頂の波が終わったように見えた時、アレフィードは意識を飛ばした。
「……アレフィード様、愛しております……」
答える者がいない場所で、ファレスは静かに呟き、口づけをした。
それから一週間が過ぎるころ、アレフィードはファレスに会うのが少しばかり恐ろしくなっていた。
会うたびに、体が何故か絶頂を繰り返すという事態に襲われているのだ。
抱かれた記憶はない、でも体は誰かに抱かれたかのように、腹の奥にはどろりとした液体が残され、意識を飛ばすまで激しい快感の波が押し寄せる。
どう考えてもファレスが何か隠しているように思うのだが、怖くて問い詰める勇気がなかった。
マリーにファレスと会いたくないと言いたいが、理由を聞かれたらどうしようと思うと中々言い出せなかった。
少し苦手意識が出たワーム型の魔族を浄化しながら、アレフィードはぐるぐると考えていた。
「どうしたアレフィード」
失恋したものの、いまだに恋い慕うのを止められぬ相手――ディストが声をかけてきたのだ、魔族の討伐が終わってもどこか様子がおかしいアレフィードを見て声をかけてきたのにアレフィードは気づかなかった。
「い、いや……なんでも」
「……嘘だな、普段なら言いづらいなら話さなくてもいいで済ませるが、今のお前を見ていると話を聞き出さないと何かが起きそうだ」
「……」
「ディストに話しづらいなら俺が聞いてやる」
「クロウ」
二人の会話を聞いてクロウが近づいてきた。
嫉妬の感情を向ける相手だ、少々複雑な気分でもある。
「マリーにも言いづらいんだろう、まぁ俺に言いたくないって気持ちもあるかもしれねぇが、腹立たしいこと含めて苛立ちとかぶちまけるなら俺だろ」
「……そうだな……クロウ、お前に話そう……」
「よし、つーわけでハニーは家に先に戻ってな」
「ああ」
クロウが空間の穴を開けると、ディストは穴を通って姿を消した。
「で、どうした坊ちゃん。ワーム型の魔族とは戦うのが嫌……っていう顔でもあるが、本質はそれじゃねぇな、誰に何された?」
「……」
クロウがそう尋ねるとアレフィードは言いづらそうに事情を話した。
ファレスが来る度起きる謎の現象、それが起きる為かファレスに会うのが怖いということまで。
「あー……間違いなくあのヴァンパイアが原因だわそれ、あと多分それ『時止めの時計』だな、よくそんなもん持ってんなあのヴァンパイア」
「時止めの時計?」
「ああ、まぁ色々種類がある、周囲の時を止めちまう時計から、特定の物質の時を止めちまう時計から色々な、それらひっくるめて『時止めの時計』っていうんだ。形状は様々、とりあえず時計の形してるって思ってくれ」
クロウは続けた。
「多分、対象の時だけを止める時計を持ってるんだろう、それでお前さんの時を止めて抱きまくってるんだろ。――で、この時計はその間に起きた感覚とかは無効にはならない反映される、まぁよくあるAV――いや、いいかこれは、とにかく反映されるんだ」
「で、では……」
「お前が急に快感感じてイキまくるのもそれが原因だろう。問題はこれを悪意なしでやってることだ」
「悪意?」
「ああ、悪意や敵意がわずかでも混じるとマリーにすぐさま伝達されるんだ、マリーの家はそういう構造になってる」
「悪意……つまり」
「まぁ、悪意がないなら善意があるわけではない、奴はごく普通にやっちまってるんだよ、だからマリーは感知できない」
クロウの言葉にアレフィードは自分の体を抱きしめて震えた。
「……坊ちゃん、しばらく姿隠してろ」
「し、しかし」
「マリーには俺が詳細伝えずに言っとく」
ディストはそういって空間に穴を開けた。
空間の向こうは静寂に包まれた夜の空間だ、小さな一軒家がある。
「俺が使ってた隠れ家の一つだ、空間がずれてるから場所を把握してる奴しか行けねぇ、お前はそこで一人大人しくしてろ、飯とかは俺が持っていくから」
「……すまん」
アレフィードは空間の穴を通ってそこへ移動した。
「とにかく落ち着くまでそこにいろよ」
「……分かった」
アレフィードが家に入ると、クロウは空間の穴を閉めた。
「さて、俺もよそ様のことはとやかく言えんが、俺よりも質が悪い相手さんをどうにかしないとな……」
クロウは頭をバリバリと掻き、その場から移動した。
マリーに詳細は省いて、アレフィードは今は一人になるのがいいと説明し、納得してもらうと、そのまま家に戻った。
寝室のベッドに座りながら、ディストが考え事をしていた。
「どうしたハニー」
「……いや、俺では相談に乗れなかったのが歯がゆくてな……」
「仕方ないさ、色々事情がある」
弟分のように思っているアレフィードに何も手助けできないことを悩んでいるディストの頭をクロウは優しく撫でた。
「まぁ、ハニーのその気持ちだけであの坊ちゃんは十分だろうさ……ちょっとばっかし俺は嫉妬しちゃうけど」
「嫉妬するな、弟みたいなものだ」
「だからだよ」
クロウはディストを押し倒して額に口づけをする。
「とりあえず、俺が色々出張ることになるけど、心配するな」
「……」
少し不服そうな顔をするディストの頬にキスをする。
「今日はキスだけで我慢してくれよな」
「……珍しいな」
「ちょっと厄介そうな奴さんとやり合いそうなんでな」
「……無事に戻ってこい」
「分かってるよディスト」
二人は抱きしめ合い、深く口づけをした。
0
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる