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二人のダンピールのハンターとそれを巡る関係

ダンピールのハンター、自覚する

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 ディストは悩んでいた。
 クロウの言葉がきっかけだ。
 自分はクロウの事を好いているのかという今まで考えたことのない事に悩んでいたのだ。
 家族愛なら覚えている、親愛の情もわかる、だが「恋愛」に近しい感情とは全く無縁で生きていたつもりのディストにはクロウの言葉は悩みの種になっていた。
 依頼中はそれをなんとか抑えられるが、クロウに抱かれるたびにこの疑問が浮かんでくる。
 拒否して、一人で生きていけばいいのに、それが今もうできなくなっている。

 思い返せば、一人で生きていた時期は今まで生きてきた生の中で短い物のように思えた。
 マリーのところを離れ、ロクに戻らず魔族狩りの日々を過ごしていた初期がそれにあたる。
 早く仇が討てるようになりたくて、強くなりたくて仕方なかった。
 誰もいらない、一人で生きていく、もう失うのはたくさんだと自棄になっていた時期でもあった。
 魔族に凌辱されてから、それは終わった。

 クロウが干渉するようになったのだ、引き止め、血を与えてきて、抱いて、清めて、眠らせるようになった。
 最初はお前の助けなんかいらないとばかりに突っぱねてたが、いつの間にか助けを無意識に求めるようになっていた。
 体も、無理やり欲情させられていたものから、無意識に媚びるようになっていた。
 傍にいるのが当たり前のようになっていた。
 いなくなるなんて考えられない。

――まさか、これが好いているということか?――

 ディストは一人頭を抱えた。

 百年以上生きてきていて今更ながら「初恋」という状態を知ってしまったのだ。

 ディストは生まれてこの方、「恋」をしたことがなかったのだ。
 マリーと面識はあった、だが彼女は昔は「姉」と見ていた、劣情も恋慕の情も抱いたことはない、だからマリーには恋をしていない。
 他の人間たちとは会わない生活をしていた、だから人に恋したこともない。

――なんてことだ――

 無意識にそんな感情を抱いていることが酷く恥ずかしくなった、その上であんな態度を取り続けているものも憤死ものだった。
 穴があったら入りたい、そんな気持ちにディストはなっていた。
 恥ずかしくて部屋から出ようとしたが、出れなかった。
 ここでクロウが自分を外に出さないように色んな箇所に術をかけていることを思い出した。
 それでもガチャガチャと回していると、ノック音が聞こえた。
「ハニー? 何してるんだ? 大人しくベッドに戻ってな」
 仕事をやっているはずであろうクロウが部屋の前に来ているらしく、扉の前に存在感を感じた。
「……ここを出たい、出してくれ」
「いや、ハニー外に出したら大騒動じゃすまないから、それは無理」

 クロウは久しぶりに脱走しようとしているディストに少し面食らった。
 様子が何かおかしい。
 出したくないのは見せたくない独占欲――というものはほんのわずかあるが、一番の問題はディストの美しさにある。
 こんな美しい存在が町中を歩いたら、騒動が起きる。
 SNS上でも有名になって色々と問題が起きる。
 それらを予測できているクロウはディストを仕事以外で部屋の外に出すのをためらった。
 クロウはちょっと良心が咎めたが、目を黒くしてディストの情報、心理を覗き見た。

 クロウが言った言葉の結果、ようやくディスト自身は自分がクロウの事を「好いている」という事実を認識した結果だと理解できた。
 恥ずかしくてこの場所にいたくない、そういう気持ちが強くなっているのだと。
 だったらなおさら出すわけにはいかなかった。
 こんな複雑な状態で、色香も増しているディストを出したら襲われかねない。
 クロウは舌打ちして急遽店を閉めて、念入りに術を店や自宅にかけてディストが逃亡できないようにした。
 その上で、寝室の扉を開けるとディストは飛び出すように逃亡を図ろうとした。
「そうはさせるか!!」
 クロウはディストを羽交い絞めにしてずるずると寝室に連れ戻す。
 ディストも凄まじい力で逃亡と脱出を図ろうとするが、破壊者の息子のクロウの力にはかなわずずりずりと戻されていく。
「ハニ~~!? 今日は大人しく俺とベッドで寝ようなぁ~~!!」
「断る!!」
「その返事は今回は聞かないからな!!」
 扉を術で閉め、ディストをベッドに押し倒し服を脱がせる。
「止めろ!!」
「断る!!」
「拒否すれば止めると言ったのは貴様だろう!!」
「恥ずかしくて拒否してるかわいいハニーを抱くなってのが無理な話なんだよ!!」
「なっ……!?」
 ディストは無表情がほとんどの顔を明らかに違うものに変化させた。
 顔もほのかに赤みがさしている。

――あ、やばい、いつもと違う可愛さが見えた、我慢できねぇ――

 クロウがキスをしようとすれば、クロウの口を手で止めてそれを拒絶するような仕草をディストはした。
 嫌がっているのではない、恥ずかしがっているのがまるわかりだった。
 自分の感情に気づいてその恥ずかしさに耐えかねているのがまるわかりだった。
 クロウがディストを術でここに閉じ込めておかなければ、とんでもない騒動が発生するのがわかるほどの変化だった。
 明日辺り、「あの美しい人は誰?!」という情報が大量に来るレベルでの騒動が起きそうなので自分がそういう術を覚えておいてよかったとクロウは心の底から思った。

 ディストの瞼の上にキスをしてやれば、どこか無意識に物欲しそうな顔を浮かべていた。

――これは本当、我慢無理だ――

 唇を奪い、舌を入れれば、絡ませてきた。
 表情もまだ抱いて、どろどろに快楽に堕としてないのに惚けた表情になっている。
 何時もと違う雰囲気のディストに、クロウはぞわぞわと自分の欲が膨らむのが分かった。
 普段の鉄面皮が、抱いて堕として堕とし続けてようやく見せる表情に近いが、それとはまったく異なってもいる表情を今ディストは自分に見せているのだ。

――ああ、本当にハニーは可愛いな――

 クロウはディストの口内を貪るように味わう。
 そして口を開放すると、ズボンに手をかける。
「ま、待て」
「お預けは無しだぜ?」
 クロウはズボンと下着を脱がせると、ローションを取り出し、手を濡らして指を突っ込んだ。
「っ……ぐ……」
 ぐちゅぐちゅと指でほぐすといつもより、反応が早い。
 男根は先走りを垂らし、ナカの締め付けも強い。
 ほぐしているのに、もっとと言わんばかりに指に絡みついてくる。
 クロウは我慢ができず、指を抜き、勃ち上がった男根を後孔に挿れる。
「っぅあ――……!!」
 ディストは喘ぎ声のような声を上げ、シーツを掴んだ。
 ばちゅんばちゅんと奥を突きながら、声をいつも以上に必死に殺しているディストを見る。
 いつもより感度が高いのか、荒い呼吸を繰り返している。
 唇を噛みすぎて血まででている。
 血を舐め上げ、唇に触れ、そのままキスをする。
 口づけで開いた口に舌を入れて絡ませる。
 舌を恐る恐る絡ませてくる。
 積極的ではない、けれども正直に体を開いていた。
 今までのセックスもいいが、このセックスもいいとクロウは思った。
 口を開放し、首筋や胸元にキスをする。
「う、ぅん」
 どろどろと男根からは白濁液が零れ、何度か絶頂しているようだった。
 奥を突き、熱を放ってやると、体を反らし、白い喉元を見せた。
 足先がピンと伸び、ぴくぴくと痙攣している。
 男根からはどぷどぷと白く濁った液体が零れていた。
「っア」
「よしよし、いい子だ」
 奥をぐりぐりと刺激しながら、ディストの頭を撫でてやる。
 ディストは惚けた表情で、口元に薄い笑みさえも浮かべていた。
 クロウ以外の存在なら虜になってしまう魔性の笑みに、クロウは笑みを浮かべて返した。
 笑みを浮かべてキスをして、口づける。
 腹の奥に熱を放ちながら、何度も口づけをし、舌を絡ませあい、ディストが意識を飛ばすまで愛し合った。


 夜、目を覚ましたクロウは、マリーに連絡を取る。
 今日は依頼は受けないからアレフィードを休ませておけという連絡をだ。
 連絡を受けたマリーはそれを了承した。
 クロウはまだ眠っているディストの表情を見る。
 いつもの意識を飛ばした表情ではなく、幸せそうな寝顔だ。
 そっと頬を撫でてやる。
 幸せそうに口元に笑みを浮かべている。
 こんな風なのは多分彼にとって子どもの頃以来だろう、幸せな眠りなど。
 両親を喪ってからは、表情を喪い、安らかに眠るという感覚は無かったのをクロウは知っていた。
 成人するまで毎日のように眠ると魘されているのをマリーに聞かされたし、成人して抱いた後、意識を飛ばしたディストが魘されているのを目撃したのはよくあった。
 しばらくすると、魘されるという行為はなくなったが、抱いて意識を飛ばさせない限り眠らなくなるという状態にもなり始めたので苦労した記憶もある。
 それが今、悪夢にうなされず、安らかに笑みさえ浮かべて眠っているのだ。
 クロウはディストの長い黒髪に口づけをすると、ディストを抱きしめて再び眠りに落ちた。

 朝、ディストが目を覚ますとクロウは眠っていた。
 それにほっと息を吐く。
 居なくなっていたらどうしようと思ったのだ。
 家族以外で愛しいと思う事ができた存在が急にまた自分の手をすり抜けるようにいなくなるのがディストは恐ろしかった。
「……」
 ディストはクロウに抱き着いた。
 いなくならないでほしいと願いを込めて。
「俺はいなくならねぇよ、むしろハニー、お前がいなくなるなよ」
 目が覚めたらしい、クロウがディストにそう言って抱きしめ返した。
「……わかった」
 ディストがそういうと、クロウは満足したように髪を撫で言った。
「今日は夜まで寝て過ごすか、俺仕事する気にならねぇや」
「……それも、いいかもしれんな」
「だろ」
 笑みを浮かべ合って、二人は抱き合って口づけをしてそれから再びの惰眠を貪ることにした。





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