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二人のダンピールのハンターとそれを巡る関係
情報屋兼ハンターとヴァンパイアの殴り合い
しおりを挟むファレスは、一週間という短い期間だがアレフィードと会うことができず焦っていた。
このままどこかまた遠くに行ってしまったのではないかと言う焦りだ。
自分の手の届かないどこか遠くへ。
「よぅ、ヴァンパイアの兄ちゃん、ちょいと顔貸しな」
そこにクロウがやってきた、どうやって自分の居場所を調べたのかはわからないが、破壊者の息子だ、何ができてもおかしくない。
「……よいでしょう」
ファレスは頷きクロウの言葉に応じた。
人気が全くない広く、闇に包まれた場所に移動する。
「ここは……『常闇の広場』ですか」
「真祖の一人が作ったどうしても喧嘩しなきゃならない時につくった空間だ、今まで来る奴は一人もいなかったが、今回は別だ」
クロウは手をバキバキと鳴らした。
そして、ファレスの整った顔を殴った。
ファレスが勢いよく吹っ飛ぶ地面に倒れ伏す。
「……っ何なのです破壊者クロウ!!」
「お前なぁ!! 『時止めの時計』は本来緊急時に脱出するとか、どうしようもなんない事態を先送りにして後で解決する用の時計なんだよ!! それを惚れた相手をレイプすんのに使った挙句後始末もしないで帰るたぁどういう根性だてめぇ!!」
「……っ何故分かったのです」
「あの坊ちゃんに聞いたんだよ、そっから推測したんだ!! 何処で入手したかはわからねぇ『時止めの時計』に間違いないってな!! うちの死んだお袋が持ってたから覚えてたんだよ!!」
ずかずかと近寄り、クロウは再び殴る体勢に入っていた、ファレスも黙って殴られているわけではない。
手加減しているクロウと、本気のファレスの殴り合いが始まった。
「貴方はどうなのです破壊者クロウ!!」
「俺は抱いたらちゃんと最後まで責任とったよ!! つーかあの時はハニーマジで生きるか死ぬかの瀬戸際だったから引き止める方法俺のちんけな脳みそじゃその位だったんだよ!! わりぃか!!」
「私とて長年恋していた相手にそんな事はしたくなかった!! だが、恋い慕っていいたアレフィード様はどうだ、貴方の恋人――ディストに恋慕の情を抱き、いまだ劣情に苛まれ苦しんでいる!! それで苦しむくらいなら私はどんな手だって使う!!」
「その手段を考えなおせってんだよこのアホヴァンパイア!!」
殴り合いながら言葉をぶつけ合う。
本気で殴っているファレスの拳は届いているものの、それでも頑丈すぎるクロウにはあまり効果がない、一方手加減しているクロウの拳はファレスの体に着実にダメージを与えていた。
「分かるかテメェ!! いつも凌辱の危機!! 自分の命は顧みねぇ!! 無茶ばかりする!! それでも依頼はやめない!! そんなハニー止めるには四肢切断か、それができないまで体力減らすかの二択だったんだよ当時は!! だから俺は抱きつぶして強制的に休ませてたんだ!!」
「貴方も相当アレな行動じゃないですか!!」
「神々が口出ししまくってた時代だったら神々が取り合いする美貌の持ち主なんだよディストは!! そんなの放置してたら何起きるか分からねぇだろうが!!」
生々しい殴り合う音と二人の怒声が静かだった広場に響く。
二時間程殴り合いになり、まだまだ余裕がありそうなクロウと、外傷は少ないもののぼろぼろに見えるファレスが居た。
ファレスは地面に膝をつき荒い呼吸をする。
「……っ本気で殴ってこれとは……御真祖が負けるわけです」
「伊達に破壊者の息子として生まれたわけじゃねぇんだよ。……まぁあんまりうれしくないがな」
「……私はどうすればよかったんです?!」
「待てばいいんだよ、俺もお前も坊ちゃんもディストも、何もなければ時間なんざ無限に続く。その中であの坊ちゃんが失恋から立ち直って恋しようと思えるようになった時にでもいえばよかったんだよ」
「……その時が来なかったら?」
「そん時は当たって砕けちまえ。俺は散々当たってきた、まぁ、俺はハニーの無自覚に悩まされたがな、ようやく実ったばっかだ」
「……」
「とりあえず、坊ちゃんに謝れ。二度と『時止めの時計』でそんな事すんな、いいな?!」
クロウはそう言うと空間に穴を開けた。
「話しはもうした戻るぞ」
「……分かりました」
空間の穴を通って、元居た場所に戻る。
「とりあえず坊ちゃんとは当分会わせねぇからな、あの坊ちゃん相当怯えちまってるから」
「……」
「だからしっかり反省しとけ」
クロウはそういって空間に穴を開けて帰っていった。
一人取り残されたファレスは何をするべきだったのか思い悩み始めた。
隠れ家にいるアレフィードの元にクロウは向かった。
アレフィードは椅子に座って、マリー特製のあのお茶を飲んでいた。
「お前よくそれ飲むな、俺一回飲んで以来二度と飲んでないぞ」
「私もあまり好きではないが……ハンター業を続けるのなら飲まないと……」
瘴気耐性を上げるお茶を飲みながらアレフィードは精一杯苦笑いを浮かべた。
「あのヴァンパイア殴っといた」
「ファレス、をか?」
「とりあえずお前と会えるようになった時に謝れと言っておいた。謝って済むなら俺らいらねぇんだけどなぶっちゃけると」
「……」
「で、お前はあいつの事どう思ってるんだ?」
「……わからないのだ……彼は私の師みたいな、兄のような存在だったから……」
「なるほど」
「いきなり好きだと言われても私にはわからない……でも、今は会うのが怖いんだ……」
「ならそれでいいんじゃねぇの?」
「え?」
「とりあえず、お前は落ち着くまでここにいろ、この場所はマリーも知ってるがマリーが公言しない場所だ」
「……わかった」
「……まぁ、お前が恋した相手本格的に恋人にしちまった俺が言うのもなんだけどな……」
「俺らの生はなっげぇぞ、だから色んな意味で覚悟しとけ、まだお前は20ちょっとしか生きてないんだから」
「……」
「――と、100なんてとっくの昔に超えた俺からの助言だ、以上!!」
ディストはそういうと空間に穴を開けて帰っていった。
誰もいなくなった部屋でアレフィードは呟いた。
「……そうだな……私達の生は長すぎるのだ……覚悟しなければならない……」
自分に覚悟をしろと言ったクロウの言葉を思い返す。
ああいってるクロウも内心は恐れているのだ、ディストが死ぬのを。
それを恐れながら、そうならないように傍に置き守る覚悟を決めている、守られてばかりの自分にはできないことだった。
その言葉はまるで――一度かけがえのない誰かを亡くしたような思い言葉があった。
クロウは誰か母親以外で親しい者を亡くしたのかとアレフィードは思った。
家に帰ってくると、クロウは深いため息をついた。
そして寝室に入ると、ベッドに腰をかけているディストが居た。
「どうだった?」
「殴り合い地味にいてぇ、ヴァンパイアやっぱり怪力だわ年とってる連中だと特に」
クロウはディストの隣に座り、肩を回す。
「でも手加減したんだろう?」
「本気でやったら殺しちまうからな、それが目的じゃねぇしな」
「……アレフィードは?」
「まだちょっと怖がってるな、ありゃあ」
「……」
何か言いたげなディストをクロウは押し倒した。
「どうした?」
「いや、俺に何かできることはないか……と思ってな」
「今度坊ちゃんのところに行くか? でも坊ちゃんには気をつけろよ」
「弟みたいなものだと言ってるだろう」
「……やっぱり鈍感だなぁ……まぁ、これは坊ちゃんの選択肢に任せるか」
クロウはそういってディストの服に手をかけた。
「……休んだらどうなんだ?」
「休みより、ハニーが欲しい」
「……好きにしろ」
少し恥ずかしそうに顔を背ける仕草が可愛らしく見えた。
クロウはにやけたいのを必死に抑えながら服を脱がせる。
傷一つない美しい体があらわになる。
傷は残させなかった、傷つくのを見る度に治療し傷を消したからだ。
ハンター業で傷ついてくる度に、その傷を癒して消し、凌辱の痕があれば抱いて上書きを続けた。
クロウの力の賜物だ。
勿論、ディストのダンピールの治癒力などもあるが、それ以上にクロウが力を惜しみなく使ったりしたからである。
ぐちゅぐちゅと後孔をほぐし、ほぐれた後孔に男根を押し当て、ゆっくりと押し込んでいく。
柔らかいのにきつく締め付けてくるナカの感触を楽しみつつ、白い肌にキスをする。
ディストの口からは熱っぽい吐息が零れ、それでも声は押し殺していた。
その仕草を可愛いと思いながら、クロウは奥を突き、ディストの体のナカを堪能する。
熱っぽい吐息をこぼしながらも快感による喘ぎ声を出すまいと閉ざしがちな口にキスをして、舌を入れる。
舌を入れてやれば、絡ませてきた。
舌を絡ませあいながら、深く交わる。
今までは快楽に蕩け切って、意識を半ば飛ばしている状態がほとんどだった無意識な甘えを、ディストは意識的にやるようになっていた。
それが、クロウにとっては嬉しいことだった、自覚無しも鈍くて可愛らしいが、自覚があると、本当の意味で自分の感情が伝わって嬉しいのだ。
熱を腹の奥に放つと、ディストは体を震わせさせた。
口を開放し、腹の奥を突き続けると、わずかながら声が上がる。
錆を含んだ色香のある声が。
それが愛おしくて深く突き上げ、何度も熱を放った。
ずるりと引き抜くと、ごぷりと精液が零れてきた。
クロウは意識を飛ばしたディストを抱きしめ、ベッドに横になる。
「……さて、あの坊ちゃんとファレスってヴァンパイア、どう動くか……」
そう呟いてから目を閉じた。
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