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13、真実が明らかに
しおりを挟む「離したくないが、仕方ないか」
馬車が止まると、名残惜しそうに離れる。私も離れたくないけど、抱き合ったまま会場に入るわけにはいかない。
これから私は、ジュラン様を追い詰めようとしている。ハンク様と想いが通じ合ったばかりだというのに、嫌われてしまうかもしれない。
そう考えると怖いけど、これが今の私だ。
ハンク様にエスコートしてもらい、会場へと足を踏み入れる。私達に気付いた1人の令嬢が、まるで幽霊でも見たかのように驚いた顔で固まった。
固まっている令嬢に向かってウィンクをすると、彼女は『きゃ~』と、黄色い声をあげた。
「ローレン様のお顔が……」
「やはり、お美しい……」
今まで見下していたのに、傷が消えただけで手のひらを返す。
「ローレン!?」
周りから視線が集まる中、ジュラン様が私達に気付いた。
「ジュラン様、いらしていたのですね」
出席していることを知らなかったフリをして、ジュラン様に笑顔を向ける。
「傷痕が、消えたのか……やはり、お前は綺麗だ。だが、なぜハンクといるんだ!? 離れろ!!」
傷痕が消えた途端、私の顔をずっと見つめるジュラン様。今となっては、この人の何を愛していたのか分からない。
「離れるのは、あなたです。私達の結婚は、無効になりました。ジュラン様の子を生んでくれたシンシアさん……ではなく、新しい彼女のハイリーさんとお幸せに」
「ローレン……? 何を言っているんだ!?」
私が反撃するなんて思っていなかったのか、本気で動揺している。引き止めようと、私に手を伸ばした。
「触るな! 穢らわしい!
あぁ、ごめんなさい。ジュラン様の愛人に、毎日侮辱されていたので、言葉使いが悪くなってしまったようです。ですが、これが私の本心です」
「お前は、俺のものだ! 誰にも渡さない! ローレン……愛しているんだ!」
正気を失ったように、目が血走っている。彼の愛は、ただの執着としか思えない。
「ジュラン様の愛は、随分薄っぺらいのですね。そういえば、他の令嬢はシンシアさんより醜いと仰っていましたものね。他の方との結婚は、考えられないのですよね?」
私の言葉に、会場にいる令嬢達の表情が変わる。
「それは、聞き捨てなりませんね!」
誰よりもプライドが高いマリアンが、黙っているはずがなかった。
「ローレン、あなた自分が醜いと言われたからって、そんな嘘をつくなんて……見損なったわ!」
最初から、見損なわれるような仲じゃない。
「嘘だと思うなら、私ではなく直接本人に聞いたらどう? ねえ、シンシアさん」
会場の入口から、レイバンがシンシアさんを支えながらこちらに歩いて来る。
「な!? なぜ、お前がここにいるんだ!?」
シンシアさんを見て、顔が青ざめていくジュラン様。
子を生んですぐに、ジュラン様に追い出されたシンシアさんを、レイバンが見つけた。レイバンが夜会に連れて行きたいと言った人物は、シンシアさんだったのだ。
邸から追い出されたシンシアさんは両親を亡くしていて、行く宛てもなく、お金もなく、街をフラフラと歩いていた。そんなシンシアさんを偶然見かけたレイバンが、ジュラン様の愛人だとは知らずに声をかけたそうだ。
まさか、シンシアさんが私の味方についてくれるとは思っていなかった。子を奪われ、無惨に捨てられた怒りから、子を産んだばかりの辛い体でも、この場に来て彼の本性を証言したいと言ってくれた。
「ジュラン様……私の子を、返してください! 私を愛していると仰ってくれたのは、全て嘘だったのですか!? 令嬢達なんかより、私の方が美しいと言ってくれたではありませんか!!」
シンシアさんは、本当に美しい。だからこそ、ジュラン様がそう言ったのだと裏付けられた。自分達は、シンシアさんに負けていると思ったのか、反論する者は誰一人いなかった。
……くだらない。
誰かと比べる必要なんて、ありはしないのに。容姿だけが全てだと思っているジュラン様は、決して誰も愛せないだろう。
「お、俺は、そんなことを言った覚えはない! 他の令嬢は、ローレンより醜いと言っただけだ!」
墓穴を掘るとは、このことを言うのだろう。自ら認めてしまったジュラン様のことを、令嬢達は睨みつけている。そんな中、マリアンは涙目になっている。まさか、マリアンはジュラン様に好意を持っていたのだろうか……
だとしたら、私をあんなに嫌っていたことにも納得が行く。
「ジュラン様……そんなの、嘘ですよね? 私が一番だと、仰ってくれたではありませんか……」
まさかジュラン様が、マリアンにも手を出していたとは……
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