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人族イーアス編
Chapter 140 八福
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巨大な蛸となった異神は、僕らをまるで小蝿でも振り払うように八本の脚を動かしてくるが、その威力は途方も無く、どこかにその足が当たる度に大爆発を引き起こしている。
迂闊に近づくことができず、皆、思い思いの遠距離スキルを当てているが、全然応えている様子が見受けられない。さすがに『神』と同等とされている存在。こんなものにどうやって勝とうとしているのか……。
(あと六十秒切ったよ、今、君たちにダウンロード……じゃなかった恩恵を受け取った筈だよー、確認してみてー)
そんな僕らにザ・ナート様からの念話が入った。恩恵とは天使八福と呼ばれるもので、想力スキルや勁力スキル、星泳力、英雄スキルとはまた別の各種族を守護する天使様から授かるスキル。
天使アラネル(鬼人族)
予知【未来視】──シュンテイ
天使ナーステリア(海人族)
結界【三絶界】──ミズナ
天使マナ(人族)
浄化【鈴鳴】──イーアス
天使エッダ(魔人族)
祝福【聖戦】──ヴァン
天使トイトー(巨人族)
時間【時間停止《ストップウォッチ》】──イーアス
天使タバサ(獣人族)
創造【人形創作】──チャイチャイ
天使シャイネー(龍人族)
息吹【銀色颶風】──ロレウ
天使フラウ(小人族)
転移【空間転移】──マカロニ
……なんか二か所ほど謎が……まず僕が二つ恩恵を受けているのとロレウさんが龍人族の守護天使シャイネー様の「息吹」が与えられている。魔人族だから普通「祝福」だけど……。
他の人が授かったものまで、どんなものなのか「情報」として頭に入ってくる。
異神──巨大蛸は、やはり僕らのことなんて眼中にないようだ。足を二・三本だけを僕らに振り向け、残りの足は地面にしっかりと張り付き、力を溜めている素振りをみせる。これはもう一度地面に金属の柱を生み出し刺そうとしているのか……。
「よし、作戦立案完了、皆聞いてくれ」
ヴァンは手短に最小限の情報だけを僕たちに伝えてくる……やっぱり、この王子はすごい、情報を受け取って数秒でこんな作戦を思いつくなんて……。
僕らはさっそく対異神攻略作戦を決行した。
★
「栄えある先陣を切らせて頂き、大変光栄です──【黒刀】」
シュンテイがゆっくりと前に進み出ながら鞘から彼の愛刀「小夜刀」を抜き放つ。
元々、鬼人族は過去幾人もの名匠を世に生み出しているが、二百数十年前に惑星「ギアニア」から移住してきた最初の鬼人族の中に『オホト』という稀代の名工がおり、シュンテイの「小夜刀」はそんな彼の銘が刻まれている数少ない一振りである。
名刀を神より与えられた英雄スキルで黒く染め上げる、その切れ味は数ある刀や槍矛と比肩しても並び立つものは存在しない。
更に先ほどから彼の体からエネルギーが立ち昇りそれが赤いエネルギーに変わった時に初めて異神はその小さな存在に目を向ける。シュンっと、今までとは比べられないほど速い一撃がシュンテイに迫る。
「【国断之剣】」 ──余りにも早く目に捉えきれないほどの異神の凶悪な足による攻撃。
それを迎えうつべくシュンテイは天使八福の一つ、予知系【未来視】で完全なる一撃を完成させた。
これまで数多くの遠距離スキルでビクともしなかった異神の足が縦に沿って、切り裂かれていく。シュンテイの持ち得る限りの業を掛けあわせ生れ出た『必殺』……。しかし動作後に隙ができる。異神の別の足が違う角度から、硬直中のシュンテイを襲う。
「私の仲間に指一本たりとも触れさせません」
シュンテイの前にいつの間にかミズナが立ちはだかっている。
彼女はいつだってそうだ、決して目の前で起こり得る悲劇を全力で否定するために立ち向かい、抗する。
現世・星幽・深闇──その三界において、あらゆる干渉を拒絶する。
「【三絶界】」──ミズナは、天使より授かったスキル発動前に異神に「黒玉」を放り投げ、異神の足に当たり、前方で空間が捻じれるが、ミズナの張った結界はそれさえも遮断してのける。
★
少し怯む。立て続けに足を失った異神は、先ほどから前方にいる取るに足りないと意識すら向けていなかった小さな存在が、ここに来て初めて自分に抗する力を保有していることを知覚した。
この生物たちが手に持っているそれは、こんな宇宙の外に出られない惑星の生き物が普通持っていることがあり得ないほどの高出力を秘めていることもあわせて検知する。
早くこの衛星を『喰って』触媒とし、あの碧く輝く惑星を自分の手でメチャクチャにしてやりたい。それを邪魔するのであれば叩き潰すのみ。
異神は、すでに後ろに退いて距離を取った小さきものを追って初めて前に進み始める。すると目の前に巨大な自分と同じくらいの大きさのものが突然出現する。
異神はすぐにそれが生物ではないことを見抜いた──機巧で動く人形……、以前、他の惑星を喰った時にも目の前に現れたことがある。この次元には「神」と呼ばれる連中がいる。そいつらは直接、歯向かってこないがこうやって、その惑星の小さい生き物を使って抗ってくる。
すぐに巨大機巧人形を破壊して後ろにいる小さきものを追い掛けようと、数本の足で叩きつけたがこちらの攻撃を持ち堪えてきた。いつのまにか、小さき存在の中でも最も小さくすばしっこいものが背後に回り込んでいて、あの「黒玉」を二個放り投げてきた。
背に腹は代えられない。異神は二本の足を犠牲にして、黒玉の直撃を防ぐ。異神は一本で地震を起こし、島を沈めることだってできる自らの足を四本も失って、もはや目の前の小さきもの達は異神にとって、自分を脅かすに至る存在であることに気付き戦慄を覚える。
先ほど検出した高エネルギー反応はあと二つ、しかし、最初にこちらの足を一本切り裂き、攻撃を防いだのは、このちっぽけな存在の力だった。
どうする? この惑星を諦めて、他に行くか……。
この周囲にはまだ他にも目ぼしい惑星はいくつか存在する──。
さほど大きくも無いが、手始めにこの小さな惑星に狙いをつけた。
だが、こうも激しい抵抗に遭うとは予想していなかった……。
ここを見過ごし、他の惑星を片っ端から平らげれば、何ら問題ではない。
──〝 否 〟──
我という、高次の存在に盾突くこの小さな生き物どもが気に入らない、ましてやその背後にいるであろう〝神〟とやらを……。
迂闊に近づくことができず、皆、思い思いの遠距離スキルを当てているが、全然応えている様子が見受けられない。さすがに『神』と同等とされている存在。こんなものにどうやって勝とうとしているのか……。
(あと六十秒切ったよ、今、君たちにダウンロード……じゃなかった恩恵を受け取った筈だよー、確認してみてー)
そんな僕らにザ・ナート様からの念話が入った。恩恵とは天使八福と呼ばれるもので、想力スキルや勁力スキル、星泳力、英雄スキルとはまた別の各種族を守護する天使様から授かるスキル。
天使アラネル(鬼人族)
予知【未来視】──シュンテイ
天使ナーステリア(海人族)
結界【三絶界】──ミズナ
天使マナ(人族)
浄化【鈴鳴】──イーアス
天使エッダ(魔人族)
祝福【聖戦】──ヴァン
天使トイトー(巨人族)
時間【時間停止《ストップウォッチ》】──イーアス
天使タバサ(獣人族)
創造【人形創作】──チャイチャイ
天使シャイネー(龍人族)
息吹【銀色颶風】──ロレウ
天使フラウ(小人族)
転移【空間転移】──マカロニ
……なんか二か所ほど謎が……まず僕が二つ恩恵を受けているのとロレウさんが龍人族の守護天使シャイネー様の「息吹」が与えられている。魔人族だから普通「祝福」だけど……。
他の人が授かったものまで、どんなものなのか「情報」として頭に入ってくる。
異神──巨大蛸は、やはり僕らのことなんて眼中にないようだ。足を二・三本だけを僕らに振り向け、残りの足は地面にしっかりと張り付き、力を溜めている素振りをみせる。これはもう一度地面に金属の柱を生み出し刺そうとしているのか……。
「よし、作戦立案完了、皆聞いてくれ」
ヴァンは手短に最小限の情報だけを僕たちに伝えてくる……やっぱり、この王子はすごい、情報を受け取って数秒でこんな作戦を思いつくなんて……。
僕らはさっそく対異神攻略作戦を決行した。
★
「栄えある先陣を切らせて頂き、大変光栄です──【黒刀】」
シュンテイがゆっくりと前に進み出ながら鞘から彼の愛刀「小夜刀」を抜き放つ。
元々、鬼人族は過去幾人もの名匠を世に生み出しているが、二百数十年前に惑星「ギアニア」から移住してきた最初の鬼人族の中に『オホト』という稀代の名工がおり、シュンテイの「小夜刀」はそんな彼の銘が刻まれている数少ない一振りである。
名刀を神より与えられた英雄スキルで黒く染め上げる、その切れ味は数ある刀や槍矛と比肩しても並び立つものは存在しない。
更に先ほどから彼の体からエネルギーが立ち昇りそれが赤いエネルギーに変わった時に初めて異神はその小さな存在に目を向ける。シュンっと、今までとは比べられないほど速い一撃がシュンテイに迫る。
「【国断之剣】」 ──余りにも早く目に捉えきれないほどの異神の凶悪な足による攻撃。
それを迎えうつべくシュンテイは天使八福の一つ、予知系【未来視】で完全なる一撃を完成させた。
これまで数多くの遠距離スキルでビクともしなかった異神の足が縦に沿って、切り裂かれていく。シュンテイの持ち得る限りの業を掛けあわせ生れ出た『必殺』……。しかし動作後に隙ができる。異神の別の足が違う角度から、硬直中のシュンテイを襲う。
「私の仲間に指一本たりとも触れさせません」
シュンテイの前にいつの間にかミズナが立ちはだかっている。
彼女はいつだってそうだ、決して目の前で起こり得る悲劇を全力で否定するために立ち向かい、抗する。
現世・星幽・深闇──その三界において、あらゆる干渉を拒絶する。
「【三絶界】」──ミズナは、天使より授かったスキル発動前に異神に「黒玉」を放り投げ、異神の足に当たり、前方で空間が捻じれるが、ミズナの張った結界はそれさえも遮断してのける。
★
少し怯む。立て続けに足を失った異神は、先ほどから前方にいる取るに足りないと意識すら向けていなかった小さな存在が、ここに来て初めて自分に抗する力を保有していることを知覚した。
この生物たちが手に持っているそれは、こんな宇宙の外に出られない惑星の生き物が普通持っていることがあり得ないほどの高出力を秘めていることもあわせて検知する。
早くこの衛星を『喰って』触媒とし、あの碧く輝く惑星を自分の手でメチャクチャにしてやりたい。それを邪魔するのであれば叩き潰すのみ。
異神は、すでに後ろに退いて距離を取った小さきものを追って初めて前に進み始める。すると目の前に巨大な自分と同じくらいの大きさのものが突然出現する。
異神はすぐにそれが生物ではないことを見抜いた──機巧で動く人形……、以前、他の惑星を喰った時にも目の前に現れたことがある。この次元には「神」と呼ばれる連中がいる。そいつらは直接、歯向かってこないがこうやって、その惑星の小さい生き物を使って抗ってくる。
すぐに巨大機巧人形を破壊して後ろにいる小さきものを追い掛けようと、数本の足で叩きつけたがこちらの攻撃を持ち堪えてきた。いつのまにか、小さき存在の中でも最も小さくすばしっこいものが背後に回り込んでいて、あの「黒玉」を二個放り投げてきた。
背に腹は代えられない。異神は二本の足を犠牲にして、黒玉の直撃を防ぐ。異神は一本で地震を起こし、島を沈めることだってできる自らの足を四本も失って、もはや目の前の小さきもの達は異神にとって、自分を脅かすに至る存在であることに気付き戦慄を覚える。
先ほど検出した高エネルギー反応はあと二つ、しかし、最初にこちらの足を一本切り裂き、攻撃を防いだのは、このちっぽけな存在の力だった。
どうする? この惑星を諦めて、他に行くか……。
この周囲にはまだ他にも目ぼしい惑星はいくつか存在する──。
さほど大きくも無いが、手始めにこの小さな惑星に狙いをつけた。
だが、こうも激しい抵抗に遭うとは予想していなかった……。
ここを見過ごし、他の惑星を片っ端から平らげれば、何ら問題ではない。
──〝 否 〟──
我という、高次の存在に盾突くこの小さな生き物どもが気に入らない、ましてやその背後にいるであろう〝神〟とやらを……。
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