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人族イーアス編
Chapter 130 「もういやぁぁぁ」はもういやぁぁぁーー!
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(おめでとうございます~、イーアスさんは〝第二標〟に目覚めました~)
僕は覚醒した後、すぐに例の三人を『一撃』で消し飛ばした。三人は、敵対していた筈の僕に、最期、まるで慈しむべきものを見るような目で穏やかな表情を浮かべていた……。僕は、誰もいなくなったこの動く鉄の箱の中で自分の両手を見る。
左手の甲の標……。右手にあるものと一緒だ……。
以前の〝標〟と併せて僕は更に強くなったことを実感した。
(第二標は『器』の標じゃなくて~〝旗〟の標なんです~)
旗? どういうことだろう? 僕一人じゃ分からないや……。ヴァンやチャイチャイさんに後で教えてもらおう。
そう、教えて貰うためにも戻らねば。僕の生まれ住む惑星へ……。
物思いに耽っている間に、動く鉄の箱は、先ほど乗り込んだ時と同じような細長く大きな空間で停まり、扉がすべて開いた。
(では地上に出てください~)
鉄の箱から出た僕は地上に上がるべく、階段を上り始める。途中で、また石像が襲ってきたが、僕は素手でも石像が壊せるくらいに強くなっていた。地上に出ると、かなり近くに巨大な鉄で出来た赤い塔が建っていた。
(ではそこの赤い『トーキョー鉄塔』を登ってくださーい。)
近くまで来たら、その大きさに圧倒される……。
いったいどうやってこの惑星の人達はこんなものを造ったんだろう。
スキルか何かを使ったのかな?
僕はそんなことを考えながらマーナ様に「右曲がってこの先をすぐに左でーす」などと案内してもらいながら階段の入口部に到着し、階段を登り始めた。
★
うーん、結構、上まで上がって来て分かったことがあるんだけど、僕、どうやら高いところが苦手みたい……。飛行船に乗っていた時はそうでも無かったのに、ヒューヒューと横風を体に受けながら、高欄の隙間から下を見下ろすと、なんかお尻の少し上の部分が「キュン」となる……。
いや、余計なことを考えないでおこう、二度目があれば三度目があるなんて、どこかで聞いたことがあるような気がするけどもう三度目は未踏破の島で済んだし冗談じゃない。あんな思いはもうたくさんだ……。絶対に『あの言葉』を口になどしてなるものか……。
そんな、僕の考えに、なんとなく誰かが『僕の反応』を待ち望んでいる気がするがそんなの絶対に気のせいだ……。
体力的に疲れた訳ではないが精神的に何かすり減った気がした。そんなことを考えながら、ようやく上の階に到着した。
階段を上っている時に見えたけど、塔の中腹部に丸く円形に突き出たところがあって、先ほどマーナ様に教えてもらった『最終ボス』と言う、魔物のいる場所に僕はそっと侵入する。
「うん?」──なんかすすり泣く声が聞こえる……。
その声の方に行ってみると、まだ十歳にも満たない小さい男の子と女の子がいて、その前に大男が立っている。男の子は女の子の前にたちはだかり、2メートル以上ある大男から女の子を守るような仕草をしている。
「そこの君たち、大丈夫?」
僕は、子供たちが余計に怖がらないように、静かに素早くそこまで移動すると子供たちが僕の後ろに隠れた。
「あなたが『最終ボス』……いったいこの子達をどうするつもりだったんだ?」
僕は、決して油断せずに注意深く剣と盾を構える。
大男がゆっくりと右手を頭の上に上げ……髪を搔きむしり始めた……!?
「いやーどうしよう? この並行世界には現世の人間は入ってこれない様になってる筈なんだけどなー、相当『力』を秘めてるのかなー?」
え? それはどういう意味? 大男がぼやく様に話し出した内容に、僕の理解が追いつかない……。
「異星の英雄君、とりあえずその子達を『向こう』に連れてくからオジサン怖くないよーって説得してくれ」
そんなこと言われても……。目の前に立っている大男は、顎髭が揉み上げに繋がっていて大きなギョロっとした目、髪はボサボサで、どこをどう見ても『怖い』……。
「この子たち、あなたの見た目で怯えていると思います」
「ん、見た目? ……⁉ おお、そうかそうか、わかった……これでどうだ?」
『ボフンッ』──大男が『僕』に変身した。なんで?
すると、すすり泣いていた女の子も、女の子の手を繋ぎ、歯を喰い縛って必死に精いっぱいの勇気をみせていた男の子も体の力が抜けたのか二人ともその場にへたり込んだ。
「じゃあ、この子達、ちょっと連れていくからそこで景色でも見ててくれ」
そういうと、僕に変化した大男は、子供たちを連れて【空間転移】のようなスキルで何処かに跳んでいった。
しばらく待っていたが、なかなか帰ってこない……。段々、緊張が解けて窓の外の景色も見る。とても遠いところに、すごく立派な山が見える……。まるでナラク領にある『霊峰フガク』のようだ……。
僕が景色を堪能していると、ちょっとややこしいけど「大男だったイーアス」が帰ってきた。
「おー、待たせたなー、あの後、子供たちを『向こう』に連れていったら俺が不審者に間違えられて警察官に追いかけまわされて大変だったんだ」
えーっ、ちょっと待って。僕の顔で何てことしてくれてるんですかっ!?
「まあ、それはさておき」と、変化を解き元の大男に戻った。……良かった。
「俺は『ダイダラ』この国では妖怪たちの首領をやらせてもらっている……」
普通に名乗り始めた……。子供たちを送り届けたし、もう僕の戦意は一欠けらも残っていない……。
「おう、アイツらから聞いたぜ? 俺達と戦うのを嫌がるらしいな? いったいお前は、何しにここに来たんだ?」
僕はここに何しに……そう、故郷の惑星メラを救うためにここに「強く」なるために来た……。
「思い出したか? ここで負けたり折れたりしたら、お前の故郷が救えなくなるぞ?」
それはダメだ! 僕はもう簡単に自分の命を諦めて良いような運命では無くなっている……。
「よおぉし、良い目になってきたな……それじゃあ行くぞ? 異星の英雄!」
ダイダラのその言葉が闘いの合図となり、この天空の塔で激しくぶつかり始めた。
「【|穂先(スピカ)】」
「【山掴み】」
僕の広厚剣テイルの刀身が青白く輝きダイダラを貫こうとするが、僕の広厚剣を素手で掴んでそのまま僕ごとぶん投げた。
投げられた先には「窓」があり、突き破り外に放り出された。何となくわかってた。多分こうなることを……。
これで四回目だ……とても癪だが、僕の本能が叫ばずにはいられない……。
「もういやぁぁぁぁーーーッ!」
僕は覚醒した後、すぐに例の三人を『一撃』で消し飛ばした。三人は、敵対していた筈の僕に、最期、まるで慈しむべきものを見るような目で穏やかな表情を浮かべていた……。僕は、誰もいなくなったこの動く鉄の箱の中で自分の両手を見る。
左手の甲の標……。右手にあるものと一緒だ……。
以前の〝標〟と併せて僕は更に強くなったことを実感した。
(第二標は『器』の標じゃなくて~〝旗〟の標なんです~)
旗? どういうことだろう? 僕一人じゃ分からないや……。ヴァンやチャイチャイさんに後で教えてもらおう。
そう、教えて貰うためにも戻らねば。僕の生まれ住む惑星へ……。
物思いに耽っている間に、動く鉄の箱は、先ほど乗り込んだ時と同じような細長く大きな空間で停まり、扉がすべて開いた。
(では地上に出てください~)
鉄の箱から出た僕は地上に上がるべく、階段を上り始める。途中で、また石像が襲ってきたが、僕は素手でも石像が壊せるくらいに強くなっていた。地上に出ると、かなり近くに巨大な鉄で出来た赤い塔が建っていた。
(ではそこの赤い『トーキョー鉄塔』を登ってくださーい。)
近くまで来たら、その大きさに圧倒される……。
いったいどうやってこの惑星の人達はこんなものを造ったんだろう。
スキルか何かを使ったのかな?
僕はそんなことを考えながらマーナ様に「右曲がってこの先をすぐに左でーす」などと案内してもらいながら階段の入口部に到着し、階段を登り始めた。
★
うーん、結構、上まで上がって来て分かったことがあるんだけど、僕、どうやら高いところが苦手みたい……。飛行船に乗っていた時はそうでも無かったのに、ヒューヒューと横風を体に受けながら、高欄の隙間から下を見下ろすと、なんかお尻の少し上の部分が「キュン」となる……。
いや、余計なことを考えないでおこう、二度目があれば三度目があるなんて、どこかで聞いたことがあるような気がするけどもう三度目は未踏破の島で済んだし冗談じゃない。あんな思いはもうたくさんだ……。絶対に『あの言葉』を口になどしてなるものか……。
そんな、僕の考えに、なんとなく誰かが『僕の反応』を待ち望んでいる気がするがそんなの絶対に気のせいだ……。
体力的に疲れた訳ではないが精神的に何かすり減った気がした。そんなことを考えながら、ようやく上の階に到着した。
階段を上っている時に見えたけど、塔の中腹部に丸く円形に突き出たところがあって、先ほどマーナ様に教えてもらった『最終ボス』と言う、魔物のいる場所に僕はそっと侵入する。
「うん?」──なんかすすり泣く声が聞こえる……。
その声の方に行ってみると、まだ十歳にも満たない小さい男の子と女の子がいて、その前に大男が立っている。男の子は女の子の前にたちはだかり、2メートル以上ある大男から女の子を守るような仕草をしている。
「そこの君たち、大丈夫?」
僕は、子供たちが余計に怖がらないように、静かに素早くそこまで移動すると子供たちが僕の後ろに隠れた。
「あなたが『最終ボス』……いったいこの子達をどうするつもりだったんだ?」
僕は、決して油断せずに注意深く剣と盾を構える。
大男がゆっくりと右手を頭の上に上げ……髪を搔きむしり始めた……!?
「いやーどうしよう? この並行世界には現世の人間は入ってこれない様になってる筈なんだけどなー、相当『力』を秘めてるのかなー?」
え? それはどういう意味? 大男がぼやく様に話し出した内容に、僕の理解が追いつかない……。
「異星の英雄君、とりあえずその子達を『向こう』に連れてくからオジサン怖くないよーって説得してくれ」
そんなこと言われても……。目の前に立っている大男は、顎髭が揉み上げに繋がっていて大きなギョロっとした目、髪はボサボサで、どこをどう見ても『怖い』……。
「この子たち、あなたの見た目で怯えていると思います」
「ん、見た目? ……⁉ おお、そうかそうか、わかった……これでどうだ?」
『ボフンッ』──大男が『僕』に変身した。なんで?
すると、すすり泣いていた女の子も、女の子の手を繋ぎ、歯を喰い縛って必死に精いっぱいの勇気をみせていた男の子も体の力が抜けたのか二人ともその場にへたり込んだ。
「じゃあ、この子達、ちょっと連れていくからそこで景色でも見ててくれ」
そういうと、僕に変化した大男は、子供たちを連れて【空間転移】のようなスキルで何処かに跳んでいった。
しばらく待っていたが、なかなか帰ってこない……。段々、緊張が解けて窓の外の景色も見る。とても遠いところに、すごく立派な山が見える……。まるでナラク領にある『霊峰フガク』のようだ……。
僕が景色を堪能していると、ちょっとややこしいけど「大男だったイーアス」が帰ってきた。
「おー、待たせたなー、あの後、子供たちを『向こう』に連れていったら俺が不審者に間違えられて警察官に追いかけまわされて大変だったんだ」
えーっ、ちょっと待って。僕の顔で何てことしてくれてるんですかっ!?
「まあ、それはさておき」と、変化を解き元の大男に戻った。……良かった。
「俺は『ダイダラ』この国では妖怪たちの首領をやらせてもらっている……」
普通に名乗り始めた……。子供たちを送り届けたし、もう僕の戦意は一欠けらも残っていない……。
「おう、アイツらから聞いたぜ? 俺達と戦うのを嫌がるらしいな? いったいお前は、何しにここに来たんだ?」
僕はここに何しに……そう、故郷の惑星メラを救うためにここに「強く」なるために来た……。
「思い出したか? ここで負けたり折れたりしたら、お前の故郷が救えなくなるぞ?」
それはダメだ! 僕はもう簡単に自分の命を諦めて良いような運命では無くなっている……。
「よおぉし、良い目になってきたな……それじゃあ行くぞ? 異星の英雄!」
ダイダラのその言葉が闘いの合図となり、この天空の塔で激しくぶつかり始めた。
「【|穂先(スピカ)】」
「【山掴み】」
僕の広厚剣テイルの刀身が青白く輝きダイダラを貫こうとするが、僕の広厚剣を素手で掴んでそのまま僕ごとぶん投げた。
投げられた先には「窓」があり、突き破り外に放り出された。何となくわかってた。多分こうなることを……。
これで四回目だ……とても癪だが、僕の本能が叫ばずにはいられない……。
「もういやぁぁぁぁーーーッ!」
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