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人族イーアス編
Chapter 129 役割熱演(ロールプレイ)
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(この魔物は……自由国オルオの地下迷宮で遭遇した石像……。)
僕は、地下街に降りた後、ひたすらこの石像を壊して回っている。今の僕は、この石像が何体相手でも苦にならない。それにしてもこの地下街というところは、恐ろしく複雑で深く広い……。
でも、全然迷わない……。何故かというと、ここがどこなのかをものすごく親切に現在位置が分かる地図の様なものが板状であちこちに貼られていて、そしてなぜか僕はこの地球の文字が『読めるから』だった。
「あのマーナ……ちゃん、なぜ僕はこの地球の文字が読めるんですか?」
(あ~、それは三〇〇年前に惑星メラに知的生命体が、色んな惑星から移住してくる関係で統一した規則があった方がいいだろうということで、元々、この地球の日本国担当だった『主様』がこの惑星のこの国の言語とか単位を使って標準化したんだと思います~)
へー、僕たちの世界って、この『日本』というところの言語を使ってたんだ……。
「お金……金貨とかもそうなんですか?」
(いいえ~、貨幣だけは独自になってます~)
案内のマーナ様から色々と話をしながら石像を倒していたら、いつの間にか周囲の動いている石像がいなくなった。
「次はどうしたらいいですか?」
(はぁ~い、次はそこの改札口を通ってぇ~、下に降りてね……。そこに中ボスがいるので倒してくださ~い♪)
改札口? 中ボス? なんのことだろう……。とりあえず、言われたとおり、何か機械の箱のようなものの間を通ろうとすると『ピンポーン』と鳴って、機械の箱から棒が飛び出して僕が通ろうとするのを妨げた。ビックリした……。
マーナ様から機械の箱が無い端の方から通ると閉まらないよと教えてもらい、それに従って通ると問題なく通れた。更にその先の階段を下りていくと幅はさほど広くないが左右にずっと奥まで伸びている隧道のようなものがあるところに出た。
少し前に進むと、風が前面から流れてくるのを感じた……こんな地下の中で⁉ 僕が身構えていると、右側の隧道から大きく細長い鉄のようなもので出来た箱状のものが入ってきてしばらくするとこの空間に停止した。
箱は左右が窓になっていて、中が見えるが座席らしきものがあり、どうやら荷馬車のように人を運ぶための巨大な乗り物のようだ……。
『プシュー』──長大な鉄の箱の乗り物の扉が一斉に開く……。
……ん? ……え? なにこれ? 中に入れってこと?
僕は恐るおそる、鉄の乗り物の中に足を踏み入れる。
『プシュー』──扉が閉まった……。閉じ込められた?
扉を無理やり破壊してでも外に出ようか迷っていると、すごく滑らかに鉄の箱が動き始めた。僕はこの鉄の乗り物の前の方にいるので、ずっと後ろまで続いているので、後ろの方に歩いていく。
途中、区切る扉がいくつかあり、開けようとしても押しても引いても開かない……、横に引いたらすっと開いた……誰も見ていないけどちょっと恥ずかしかった……。
しばらく同じ形の箱を渡って進んで行くと、最後尾と思われる扉に手を掛けようとすると、扉にある硝子の向こうに正体不明の者が左右に三体座っている……。魔物……なのかな?
外見は人に近い……が、気配は三人とも、只ならないものがにじみ出ている。
「まったく、なんで俺が中ボス役なんだよ……最終ボスなら分かるけどよ」
「しょうがなかろう……『あの方』がノリノリで最終ボスを買って出たのだから」
「早く、あの若者、来ぬかのぅ、さっさと終わらせて家に帰りたいのじゃ……」
「……」
「──!? 貴様! いつの間に!」
三人が思い思いのことを口にしている中、僕が最後尾の扉を開けて中に入ったところでようやく僕に気が付いた。いや、僕が悪い訳じゃないですから……このすごく滑らかで音一つ立てない扉のせいですから、というかこの人達も気を抜きすぎでは……。
「さあ、掛かってくるがよい、異星のものよ、我らが『術』とくと見せようぞっ」
「……あのう、さっきの話し聞くつもりは無かったんですけど、聞こえてしまったんですが、皆さん、悪い存在ではないですよね?」
僕がそういうと三人は顔を合わせて、どうしようかと小声で相談し始めた。小さい声なのですべては聞き取れないが「お前が悪い」「しらを切った方がいいんじゃね?」などと聞こえてきた……。
「よし、お主の質問に答えよう!」
背の高い男が、僕の質問に答えてくれるようだ……。
「儂の名前は『鴉天狗』、こっちの面倒臭そうにしてる男が『狗神刑部』、そこの女性が『土蜘蛛』だ」
「はい……」
「儂らはこの日本という国の人間に『妖怪』などと呼ばれる存在だが、実のところは『さる方々』に仕えている者なのである」
「はい……」
「それで、今日は、異星のお主の『覚醒』に悪役として付き合うように命じられてここにおる」
「はい……」
「なぁーに、悪役など儂らは慣れておる、遠慮なくかかってくるがよい。」
「でも、いい人ですよね?」
「お主……、儂の話を聞いていたのか? 儂らには色々と役割が与えられておるのだ! 『役割熱演』だ。知らんのか?」
「はい、知りません……皆さんに怪我でもさせたら、大変ですので僕にはできません」
「ほう、儂らに簡単に勝てるとでも……、まあそれはさておき、ここはお主の惑星から発動された並行世界のようなものだし、儂らも『本体』ではないから心配無用だ」
そう説明されても、いまいち気の乗らない僕に鴉天狗たちは痺れを切らした。
「もう、良いわ! ボソボソッ、こちらから行かせて貰おう」
そう言うと、三人は同時に僕に襲い掛かってきた。
──速い⁉
烏天狗が真っすぐに凄い速さで接近し、手に持っている棒で僕の広厚剣と真っ向から打ち合う、威力も段違いで、想力の乗った広厚剣でも吹き飛ばせない。
目の端で何かが光った……。
僕は本能的に後方へ退がると、土蜘蛛の【糸】が、今まで僕が居たところを通過していく……マカロニ君以外の【糸】の使い手を初めて見た……。
急にぱっと烏天狗と土蜘蛛が左右に割れた。後方にいつの間にか変化した『狗神刑部』がいる。
なにそれ?
変化したのは、大きな機械のようなもので、先に大きな丸い筒が付いている……、もしかしてそこから何か発射される……?
「【大砲弾】─【発射】」
『ドオオォン』──やはり発射装置のようなものが火を噴き、鉄の弾のようなものを受け止めたら爆発した。
僕は、その爆発で仕切りの扉を突き破りながら二つ前の方まで吹き飛ばされた。
「カハッ」
今のは危なかった……小盾で受け止めてなかったらやられてたかも……。
僕は、口から少し血を吐いたので、慌てて丸薬を飲み込んだ。
この三人強い……、まるで僕ら『七星』や『七雄』を相手にしているようだ……。
「どうした? 異星の英雄よ……、もう諦めたのか?」
烏天狗がこちらにゆっくりと歩きながら、質問してくる。
気が変わった、なにを僕は日和っているんだろう……、ここで死んだら終わりだと、ザ・ナート様に忠告されたのに……。
僕にはやるべきことがある……、今も『皆』それぞれの地で試練に臨んでいるはずだ、こんなところで負けていいはずがない……。
「あああああっ!」
「へえ、いいじゃん」
「ふむ、よかろう」
「やっとかの? もう早くするのじゃ」
敵対している三人は、目の前の少年の左手の甲に光が宿るのを見て、にやりと笑った。
僕は、地下街に降りた後、ひたすらこの石像を壊して回っている。今の僕は、この石像が何体相手でも苦にならない。それにしてもこの地下街というところは、恐ろしく複雑で深く広い……。
でも、全然迷わない……。何故かというと、ここがどこなのかをものすごく親切に現在位置が分かる地図の様なものが板状であちこちに貼られていて、そしてなぜか僕はこの地球の文字が『読めるから』だった。
「あのマーナ……ちゃん、なぜ僕はこの地球の文字が読めるんですか?」
(あ~、それは三〇〇年前に惑星メラに知的生命体が、色んな惑星から移住してくる関係で統一した規則があった方がいいだろうということで、元々、この地球の日本国担当だった『主様』がこの惑星のこの国の言語とか単位を使って標準化したんだと思います~)
へー、僕たちの世界って、この『日本』というところの言語を使ってたんだ……。
「お金……金貨とかもそうなんですか?」
(いいえ~、貨幣だけは独自になってます~)
案内のマーナ様から色々と話をしながら石像を倒していたら、いつの間にか周囲の動いている石像がいなくなった。
「次はどうしたらいいですか?」
(はぁ~い、次はそこの改札口を通ってぇ~、下に降りてね……。そこに中ボスがいるので倒してくださ~い♪)
改札口? 中ボス? なんのことだろう……。とりあえず、言われたとおり、何か機械の箱のようなものの間を通ろうとすると『ピンポーン』と鳴って、機械の箱から棒が飛び出して僕が通ろうとするのを妨げた。ビックリした……。
マーナ様から機械の箱が無い端の方から通ると閉まらないよと教えてもらい、それに従って通ると問題なく通れた。更にその先の階段を下りていくと幅はさほど広くないが左右にずっと奥まで伸びている隧道のようなものがあるところに出た。
少し前に進むと、風が前面から流れてくるのを感じた……こんな地下の中で⁉ 僕が身構えていると、右側の隧道から大きく細長い鉄のようなもので出来た箱状のものが入ってきてしばらくするとこの空間に停止した。
箱は左右が窓になっていて、中が見えるが座席らしきものがあり、どうやら荷馬車のように人を運ぶための巨大な乗り物のようだ……。
『プシュー』──長大な鉄の箱の乗り物の扉が一斉に開く……。
……ん? ……え? なにこれ? 中に入れってこと?
僕は恐るおそる、鉄の乗り物の中に足を踏み入れる。
『プシュー』──扉が閉まった……。閉じ込められた?
扉を無理やり破壊してでも外に出ようか迷っていると、すごく滑らかに鉄の箱が動き始めた。僕はこの鉄の乗り物の前の方にいるので、ずっと後ろまで続いているので、後ろの方に歩いていく。
途中、区切る扉がいくつかあり、開けようとしても押しても引いても開かない……、横に引いたらすっと開いた……誰も見ていないけどちょっと恥ずかしかった……。
しばらく同じ形の箱を渡って進んで行くと、最後尾と思われる扉に手を掛けようとすると、扉にある硝子の向こうに正体不明の者が左右に三体座っている……。魔物……なのかな?
外見は人に近い……が、気配は三人とも、只ならないものがにじみ出ている。
「まったく、なんで俺が中ボス役なんだよ……最終ボスなら分かるけどよ」
「しょうがなかろう……『あの方』がノリノリで最終ボスを買って出たのだから」
「早く、あの若者、来ぬかのぅ、さっさと終わらせて家に帰りたいのじゃ……」
「……」
「──!? 貴様! いつの間に!」
三人が思い思いのことを口にしている中、僕が最後尾の扉を開けて中に入ったところでようやく僕に気が付いた。いや、僕が悪い訳じゃないですから……このすごく滑らかで音一つ立てない扉のせいですから、というかこの人達も気を抜きすぎでは……。
「さあ、掛かってくるがよい、異星のものよ、我らが『術』とくと見せようぞっ」
「……あのう、さっきの話し聞くつもりは無かったんですけど、聞こえてしまったんですが、皆さん、悪い存在ではないですよね?」
僕がそういうと三人は顔を合わせて、どうしようかと小声で相談し始めた。小さい声なのですべては聞き取れないが「お前が悪い」「しらを切った方がいいんじゃね?」などと聞こえてきた……。
「よし、お主の質問に答えよう!」
背の高い男が、僕の質問に答えてくれるようだ……。
「儂の名前は『鴉天狗』、こっちの面倒臭そうにしてる男が『狗神刑部』、そこの女性が『土蜘蛛』だ」
「はい……」
「儂らはこの日本という国の人間に『妖怪』などと呼ばれる存在だが、実のところは『さる方々』に仕えている者なのである」
「はい……」
「それで、今日は、異星のお主の『覚醒』に悪役として付き合うように命じられてここにおる」
「はい……」
「なぁーに、悪役など儂らは慣れておる、遠慮なくかかってくるがよい。」
「でも、いい人ですよね?」
「お主……、儂の話を聞いていたのか? 儂らには色々と役割が与えられておるのだ! 『役割熱演』だ。知らんのか?」
「はい、知りません……皆さんに怪我でもさせたら、大変ですので僕にはできません」
「ほう、儂らに簡単に勝てるとでも……、まあそれはさておき、ここはお主の惑星から発動された並行世界のようなものだし、儂らも『本体』ではないから心配無用だ」
そう説明されても、いまいち気の乗らない僕に鴉天狗たちは痺れを切らした。
「もう、良いわ! ボソボソッ、こちらから行かせて貰おう」
そう言うと、三人は同時に僕に襲い掛かってきた。
──速い⁉
烏天狗が真っすぐに凄い速さで接近し、手に持っている棒で僕の広厚剣と真っ向から打ち合う、威力も段違いで、想力の乗った広厚剣でも吹き飛ばせない。
目の端で何かが光った……。
僕は本能的に後方へ退がると、土蜘蛛の【糸】が、今まで僕が居たところを通過していく……マカロニ君以外の【糸】の使い手を初めて見た……。
急にぱっと烏天狗と土蜘蛛が左右に割れた。後方にいつの間にか変化した『狗神刑部』がいる。
なにそれ?
変化したのは、大きな機械のようなもので、先に大きな丸い筒が付いている……、もしかしてそこから何か発射される……?
「【大砲弾】─【発射】」
『ドオオォン』──やはり発射装置のようなものが火を噴き、鉄の弾のようなものを受け止めたら爆発した。
僕は、その爆発で仕切りの扉を突き破りながら二つ前の方まで吹き飛ばされた。
「カハッ」
今のは危なかった……小盾で受け止めてなかったらやられてたかも……。
僕は、口から少し血を吐いたので、慌てて丸薬を飲み込んだ。
この三人強い……、まるで僕ら『七星』や『七雄』を相手にしているようだ……。
「どうした? 異星の英雄よ……、もう諦めたのか?」
烏天狗がこちらにゆっくりと歩きながら、質問してくる。
気が変わった、なにを僕は日和っているんだろう……、ここで死んだら終わりだと、ザ・ナート様に忠告されたのに……。
僕にはやるべきことがある……、今も『皆』それぞれの地で試練に臨んでいるはずだ、こんなところで負けていいはずがない……。
「あああああっ!」
「へえ、いいじゃん」
「ふむ、よかろう」
「やっとかの? もう早くするのじゃ」
敵対している三人は、目の前の少年の左手の甲に光が宿るのを見て、にやりと笑った。
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