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人族イーアス編
Chapter 131 高難度設定(ハードモード)
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「【時空跳躍】」──塔から落下していくなか、僕は自分が跳躍スキルを持っていることを思い出した。勇気を振り絞って、落下先の地面を見てスキルを発動すると、先ほど僕が視線を飛ばしていた場所に『跳躍』して着地する。その際に落下の勢いが無かったことになるので、足には階段を数段飛び降りたくらいくらいの感触しか伝わらなかった。
よかったー、これさえあれば、僕はもう『墜落の呪縛』から解放される。僕がほっと胸を撫でおろしていると頭上から黄色い光が見えた。
──っ!
「【雲上足跡】」
「【時空跳躍】」
『──カッ、ゴオオオォ』大爆発が起きた。なんとかスキルを発動して、ちょっと離れたところに跳んで躱したが、僕がさっきまで立っていたところに巨大な窪地ができて、そのあまりの威力に周囲の建物まで巻き込み損壊している……。
(あっぶなっ……。)
窪地の中心……底にいたダイダラがゆっくりと登ってくる……。
「【豪勇】」──力自慢の相手に押し負けしないよう身体強化系の星泳力スキルを使い、僕の体の周りを蒼い光の膜で包みこむ。
(真っ向勝負だ!)
僕は広厚剣と小盾を駆使し挑み掛かるが、ダイダラはスキル【山掴み】により素手で小盾を殴り、広厚剣を受け止める。
「うあぁ───っ」
「おらああああっ」
互いに気勢をあげ、攻撃と防御の回転をどんどん上げていくが、まったくの互角……、一瞬でも気を抜いたら相手に持っていかれる。
「【噴火】」──少し大振りになってしまった剣を引き戻す前に、ダイダラに踏み込まれ拳による一撃を貰いそうになったので、すかさず広厚剣の柄頭を突き出し、放出系のスキルを発動しダイダラを吹き飛ばすと鉄塔の基礎部にそのまま体ごとめり込んだ。
今だ!
「【暁星】」──ダイダラのいる周辺の地面が蒼い光が天空へと衝き上がる
先ほどからのダイダラと僕のスキル攻撃で、超巨大な鉄塔が「ギギィ」とイヤな音がした。
「【巨身】」──鉄塔にめり込んで灼熱光に曝されたダイダラは、ところどころ傷だらけだったが、おそらく奥の手と思われる手札を切ってきた。
ダイダラの体がみるみる巨大化していく……見上げる。隣の鉄塔と比べるとさっき僕が落ちてきた景色を眺める張り出し部の所よりは低いが、もの凄い大きさである……。
……うん、無理でしょ! これはどうすればいい? 逃げて良いかな?
ふと、隣の鉄塔を見る……イチかバチかだけど……。
【紅炎】──三日月状の巨大な炎が巨人ダイダラの足を掠め、鉄塔の基部に直撃する。直後に反対側の足で僕を蹴り飛ばそうと巨木より大きな足が飛んでくる。
僕は高所イヤイヤ病を我慢してスキルで隣の鉄塔の天辺よりも更に高いところまで『跳躍』した。下を見ると、巨人ダイダラが僕が跳躍前に居た場所を空振り、そのまますぐ隣の建物を玩具の様に蹴り崩壊させている。
しかし、ダイダラは後方の鉄塔の異変にまだ気が付いていない……。
先ほど、僕が傷つけた鉄塔の基部が度重なる衝撃とその高熱で塑性領域を超え、高密度で精製されている筈の鋼の塔が自己の荷重も手伝い、一気に破断点に達してダイダラへと一気に圧し掛かっていく。
そこに上空から以前、星泳力を取得してこれまでスキルとして習得していたのに『力』不足でずっと使えなかったスキルを発動する。
「【超新星】」時間の干渉を殆ど受けない直線的移動の後、僕は巨人ダイダラの後方へ降りたった。
『ゴォォォォ』──黒い軌跡が直線状に空中で描かれ、その後、遅れて巨人ダイダラの胸部を中心にあらゆるものを切り裂く様な轟音とともに周囲の建物を吹きとばすほどの黒い爆発が起きる。
その爆風で、自分まで吹き飛ばされる……。これほどまでの威力とは……我ながら恐ろしい。爆風が過ぎ去り、爆心地に戻ってくると、周囲の建物は跡形もなく消し飛び更地と化している。そこには中央に膝を落として、片手をついて今にも消えて無くなりそうになっているダイダラがいた。
ダイダラは僕に気が付くと、偽り無き賞賛を僕に送る。
「……やるな……流石『あの方』が選んだ人の子だ……、地球でも武闘派で知られる俺に勝ったんだ……これならお前の|故郷でる惑星も守れるだろう……」
僕が心配そうに好敵手を見ていると、ダイダラはふっと笑った。
「お前、まだ俺のことを心配しているのか? 大丈夫って言ったろ? これは星幽体って言って消えても本体に還元されるだけなんだ……まあ、なんだ……心配してくれてサンキュー」
ダイダラは少し照れたような表情を作ったあと、そのまま煙となってさらさらと消えていった……。ダイダラの最期を見届けて感傷に浸っている僕に、何の遠慮も無い声でマーナ様の声が頭に響き渡る。
(チャララッチャラーン……イーアスさんおめでとうございます~♪ これでステータスもスキルも飛躍的に上昇しました~♪)
うーん、なんかそういう誉め方されると素直に喜べなくなる……僕ってひねくれているのかな……。
(はーい、それでは、元の現実世界に戻りたいと思います~)
マーナ様がそう言うと僕の意識は沈んでいくのか、浮き上がっていくのどちらなのかさえ、分からない不思議な感覚になり意識が薄くなっていった……。
★
「あっ! 起きた! おーい皆、イーアス君が起きたよー」
目を開けると飛行船の上で、いつの間にか仰向けに寝そべっていた……、僕のすぐそばにはシュンテイさんが心配そうに僕を診てくれていたらしく、意識が戻った僕を見て周囲の人に声を掛けている。
しばらくすると、他の七星の皆やそれぞれの担当の場所から戻った七雄の面々、森の散歩者とペンネ君、モンテールちゃん、龍人族クルト王子などが集まってくる。
「イーアス君、よく無事に戻ったね、君だけちょっと『高難度』にしたから心配してたんだ」
いつの間にか僕の隣に立っているザ・ナート様が僕に話しかけてきた……びっくりした……。
高難度──え? っていうか、そんな話聞いてないんですけど?
「まあ無事だったから結果良好……ということでこれからさっそく『アレ』の攻略会議に入ります、その前に何か質問ある人―?」
誰も手を挙げない……。
「じゃあ、説明始めるよー……、作戦名『ぶっ飛ばす』だ!」
……はあ。
よかったー、これさえあれば、僕はもう『墜落の呪縛』から解放される。僕がほっと胸を撫でおろしていると頭上から黄色い光が見えた。
──っ!
「【雲上足跡】」
「【時空跳躍】」
『──カッ、ゴオオオォ』大爆発が起きた。なんとかスキルを発動して、ちょっと離れたところに跳んで躱したが、僕がさっきまで立っていたところに巨大な窪地ができて、そのあまりの威力に周囲の建物まで巻き込み損壊している……。
(あっぶなっ……。)
窪地の中心……底にいたダイダラがゆっくりと登ってくる……。
「【豪勇】」──力自慢の相手に押し負けしないよう身体強化系の星泳力スキルを使い、僕の体の周りを蒼い光の膜で包みこむ。
(真っ向勝負だ!)
僕は広厚剣と小盾を駆使し挑み掛かるが、ダイダラはスキル【山掴み】により素手で小盾を殴り、広厚剣を受け止める。
「うあぁ───っ」
「おらああああっ」
互いに気勢をあげ、攻撃と防御の回転をどんどん上げていくが、まったくの互角……、一瞬でも気を抜いたら相手に持っていかれる。
「【噴火】」──少し大振りになってしまった剣を引き戻す前に、ダイダラに踏み込まれ拳による一撃を貰いそうになったので、すかさず広厚剣の柄頭を突き出し、放出系のスキルを発動しダイダラを吹き飛ばすと鉄塔の基礎部にそのまま体ごとめり込んだ。
今だ!
「【暁星】」──ダイダラのいる周辺の地面が蒼い光が天空へと衝き上がる
先ほどからのダイダラと僕のスキル攻撃で、超巨大な鉄塔が「ギギィ」とイヤな音がした。
「【巨身】」──鉄塔にめり込んで灼熱光に曝されたダイダラは、ところどころ傷だらけだったが、おそらく奥の手と思われる手札を切ってきた。
ダイダラの体がみるみる巨大化していく……見上げる。隣の鉄塔と比べるとさっき僕が落ちてきた景色を眺める張り出し部の所よりは低いが、もの凄い大きさである……。
……うん、無理でしょ! これはどうすればいい? 逃げて良いかな?
ふと、隣の鉄塔を見る……イチかバチかだけど……。
【紅炎】──三日月状の巨大な炎が巨人ダイダラの足を掠め、鉄塔の基部に直撃する。直後に反対側の足で僕を蹴り飛ばそうと巨木より大きな足が飛んでくる。
僕は高所イヤイヤ病を我慢してスキルで隣の鉄塔の天辺よりも更に高いところまで『跳躍』した。下を見ると、巨人ダイダラが僕が跳躍前に居た場所を空振り、そのまますぐ隣の建物を玩具の様に蹴り崩壊させている。
しかし、ダイダラは後方の鉄塔の異変にまだ気が付いていない……。
先ほど、僕が傷つけた鉄塔の基部が度重なる衝撃とその高熱で塑性領域を超え、高密度で精製されている筈の鋼の塔が自己の荷重も手伝い、一気に破断点に達してダイダラへと一気に圧し掛かっていく。
そこに上空から以前、星泳力を取得してこれまでスキルとして習得していたのに『力』不足でずっと使えなかったスキルを発動する。
「【超新星】」時間の干渉を殆ど受けない直線的移動の後、僕は巨人ダイダラの後方へ降りたった。
『ゴォォォォ』──黒い軌跡が直線状に空中で描かれ、その後、遅れて巨人ダイダラの胸部を中心にあらゆるものを切り裂く様な轟音とともに周囲の建物を吹きとばすほどの黒い爆発が起きる。
その爆風で、自分まで吹き飛ばされる……。これほどまでの威力とは……我ながら恐ろしい。爆風が過ぎ去り、爆心地に戻ってくると、周囲の建物は跡形もなく消し飛び更地と化している。そこには中央に膝を落として、片手をついて今にも消えて無くなりそうになっているダイダラがいた。
ダイダラは僕に気が付くと、偽り無き賞賛を僕に送る。
「……やるな……流石『あの方』が選んだ人の子だ……、地球でも武闘派で知られる俺に勝ったんだ……これならお前の|故郷でる惑星も守れるだろう……」
僕が心配そうに好敵手を見ていると、ダイダラはふっと笑った。
「お前、まだ俺のことを心配しているのか? 大丈夫って言ったろ? これは星幽体って言って消えても本体に還元されるだけなんだ……まあ、なんだ……心配してくれてサンキュー」
ダイダラは少し照れたような表情を作ったあと、そのまま煙となってさらさらと消えていった……。ダイダラの最期を見届けて感傷に浸っている僕に、何の遠慮も無い声でマーナ様の声が頭に響き渡る。
(チャララッチャラーン……イーアスさんおめでとうございます~♪ これでステータスもスキルも飛躍的に上昇しました~♪)
うーん、なんかそういう誉め方されると素直に喜べなくなる……僕ってひねくれているのかな……。
(はーい、それでは、元の現実世界に戻りたいと思います~)
マーナ様がそう言うと僕の意識は沈んでいくのか、浮き上がっていくのどちらなのかさえ、分からない不思議な感覚になり意識が薄くなっていった……。
★
「あっ! 起きた! おーい皆、イーアス君が起きたよー」
目を開けると飛行船の上で、いつの間にか仰向けに寝そべっていた……、僕のすぐそばにはシュンテイさんが心配そうに僕を診てくれていたらしく、意識が戻った僕を見て周囲の人に声を掛けている。
しばらくすると、他の七星の皆やそれぞれの担当の場所から戻った七雄の面々、森の散歩者とペンネ君、モンテールちゃん、龍人族クルト王子などが集まってくる。
「イーアス君、よく無事に戻ったね、君だけちょっと『高難度』にしたから心配してたんだ」
いつの間にか僕の隣に立っているザ・ナート様が僕に話しかけてきた……びっくりした……。
高難度──え? っていうか、そんな話聞いてないんですけど?
「まあ無事だったから結果良好……ということでこれからさっそく『アレ』の攻略会議に入ります、その前に何か質問ある人―?」
誰も手を挙げない……。
「じゃあ、説明始めるよー……、作戦名『ぶっ飛ばす』だ!」
……はあ。
応援ありがとうございます!
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