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すべてを明かす時が来た!
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「僕は……杏さんに頼まれたんです。市来さんとの結婚を白紙にするために、しばらく婚約者を演じてくれと……」
「あれは……ワシを騙すための芝居だったのか?」
お祖父様は呆然としている。
きっと可愛い孫に騙されていたことにかなりショックを受けているに違いない。
僕は申し訳ない気持ちで深々と頭を下げた。
「おっしゃる通りです。騙すような真似をしてすみませんでした」
何を言われても仕方がない。
杏さんに頼まれたとは言え、僕が嘘をついたのは事実だ。
「二人で暮らしてうまくいくのかとお祖父様に言われてから、僕と杏さんはいつ様子を見に来られても疑われないように一緒に暮らしていました」
「なんと……そこまで……」
「一緒に暮らしていたと言っても部屋は別々だし、僕はただそこに住んで家事をしていただけなんですけど……。杏さんはいつも僕の作った料理を残さず食べて、美味しかった、ありがとうって言ってくれました」
僕がそう言うと、お祖父様は穏やかな顔をして嬉しそうに笑った。
「そうか……。人と食事をするのも、物を食べる事自体も苦手だった杏が……君の手料理は美味しいと言って食べていたんだな……」
食べることに苦痛を感じて追い詰められていた子供の頃の杏さんを知っているばあちゃんも、嬉しそうに笑った。
「さすが私の孫でしょ?ねぇ修蔵ちゃん。章悟はね、最初は頼まれて婚約者を演じていただけだったようだけど、今は杏お嬢さんの事が本当に好きみたいよ?」
ばあちゃんの唐突なカミングアウトに驚き、僕は思いきりむせて咳き込んだ。
「ばっ……ばあちゃん!!突然何を……!!」
「あら、本当の事でしょ?」
僕自身も杏さんに言ったことがないのに、なんでお祖父様の前でそんなにさらっと言っちゃえるんだよ?!
だけど僕が杏さんを好きなのは本当の事だし、否定するのも違う気がする。
「それは本当かね?」
お祖父様の真剣な眼差しに、僕は一瞬怯みそうになった。
でも本当の事を話すって僕は決めたんだ。
婚約者としては偽物だったけど、僕が杏さんを好きなのは嘘なんかじゃない。
この気持ちは本物だ。
僕はきちんと姿勢を正し、まっすぐにお祖父様の目を見た。
「はい。僕は杏さんが好きです。この先もずっと、杏さんに僕の作った料理を食べてもらいたいです」
「その言葉に嘘はないんだな?」
「ありません」
僕がキッパリと言い切るとお祖父様は大きくうなずいて、部屋の入り口に控えていた男の人に手招きをした。
さっきから黙って気配を消していたこの人はなんだ?
ドラマなんかでよく見る執事?秘書?SP?
なんだかよくわからないけど、とにかくお祖父様に仕えている人らしい。
その人がそばに駆け寄ると、お祖父様は何やら耳打ちをした。
一体何を話しているんだろう?
何度かうなずいた後、話が済んだのかその人は頭を下げて病室の外に出ていった。
お祖父様はベッドの上でニヤリと不敵に笑う。
「あの若造め、有澤の名に泥を塗ってくれおって……。さて、どうやって泣かせてやろうかの……」
お祖父様、やっぱりめちゃくちゃ怖いんですけど!!
でもとりあえず、僕が辞世の句を詠む必要はなくなったみたいだ。
「あれは……ワシを騙すための芝居だったのか?」
お祖父様は呆然としている。
きっと可愛い孫に騙されていたことにかなりショックを受けているに違いない。
僕は申し訳ない気持ちで深々と頭を下げた。
「おっしゃる通りです。騙すような真似をしてすみませんでした」
何を言われても仕方がない。
杏さんに頼まれたとは言え、僕が嘘をついたのは事実だ。
「二人で暮らしてうまくいくのかとお祖父様に言われてから、僕と杏さんはいつ様子を見に来られても疑われないように一緒に暮らしていました」
「なんと……そこまで……」
「一緒に暮らしていたと言っても部屋は別々だし、僕はただそこに住んで家事をしていただけなんですけど……。杏さんはいつも僕の作った料理を残さず食べて、美味しかった、ありがとうって言ってくれました」
僕がそう言うと、お祖父様は穏やかな顔をして嬉しそうに笑った。
「そうか……。人と食事をするのも、物を食べる事自体も苦手だった杏が……君の手料理は美味しいと言って食べていたんだな……」
食べることに苦痛を感じて追い詰められていた子供の頃の杏さんを知っているばあちゃんも、嬉しそうに笑った。
「さすが私の孫でしょ?ねぇ修蔵ちゃん。章悟はね、最初は頼まれて婚約者を演じていただけだったようだけど、今は杏お嬢さんの事が本当に好きみたいよ?」
ばあちゃんの唐突なカミングアウトに驚き、僕は思いきりむせて咳き込んだ。
「ばっ……ばあちゃん!!突然何を……!!」
「あら、本当の事でしょ?」
僕自身も杏さんに言ったことがないのに、なんでお祖父様の前でそんなにさらっと言っちゃえるんだよ?!
だけど僕が杏さんを好きなのは本当の事だし、否定するのも違う気がする。
「それは本当かね?」
お祖父様の真剣な眼差しに、僕は一瞬怯みそうになった。
でも本当の事を話すって僕は決めたんだ。
婚約者としては偽物だったけど、僕が杏さんを好きなのは嘘なんかじゃない。
この気持ちは本物だ。
僕はきちんと姿勢を正し、まっすぐにお祖父様の目を見た。
「はい。僕は杏さんが好きです。この先もずっと、杏さんに僕の作った料理を食べてもらいたいです」
「その言葉に嘘はないんだな?」
「ありません」
僕がキッパリと言い切るとお祖父様は大きくうなずいて、部屋の入り口に控えていた男の人に手招きをした。
さっきから黙って気配を消していたこの人はなんだ?
ドラマなんかでよく見る執事?秘書?SP?
なんだかよくわからないけど、とにかくお祖父様に仕えている人らしい。
その人がそばに駆け寄ると、お祖父様は何やら耳打ちをした。
一体何を話しているんだろう?
何度かうなずいた後、話が済んだのかその人は頭を下げて病室の外に出ていった。
お祖父様はベッドの上でニヤリと不敵に笑う。
「あの若造め、有澤の名に泥を塗ってくれおって……。さて、どうやって泣かせてやろうかの……」
お祖父様、やっぱりめちゃくちゃ怖いんですけど!!
でもとりあえず、僕が辞世の句を詠む必要はなくなったみたいだ。
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