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すべてを明かす時が来た!
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「あれは……杏さんに僕との結婚をあきらめて家に帰らせるために言った事じゃなかったんですか?」
「なんの事だ?」
「3か月以内に僕との間に子供が出来なかったら、有澤家に帰って市来さんと結婚するようにと……」
僕の言葉に、お祖父様は意外そうな顔をした。
「そんな事は一言も言っておらんが?」
「え?」
「老い先短い身だから、生きているうちに曾孫を見たいと言ったんだ。あの杏にあそこまで言わせた男だからな。最初から君との結婚を反対などしておらん」
……どういう事だ?
イチキの御曹司の言葉はお祖父様からの伝言じゃなかったのか?
「でも僕は市来さんみたいに大会社の御曹司でもないし……ただのしがない庶民のサラリーマンですけど」
「ワシも元はそうだが?」
「……はい?」
あまりにも意外すぎるお祖父様の言葉に、僕はポカンと口を開けて間の抜けた返事をした。
『鳩が豆鉄砲を食う』って、こういうことを言うんだろうか?
ばあちゃんは僕の隣でおかしそうに笑った。
「修蔵ちゃんは昔、有澤の会社に勤めていたのよ。そこで先代の会長に用があって会社にいらしていた大奥さまに見初められたのよね。それから先代の会長に仕事ぶりと人柄を認められて結婚したの」
「婿養子……ですか?」
「そうだな。妻は会社の経営など自分にはできないから、ワシに会社を任せると」
なるほど、自分自身が庶民の出だから、庶民の僕との結婚にも頭から反対していたわけではないと、そういうことなんだな。
偉そうにデタラメばかり言って杏さんを追い詰めやがったあのボンボンが許せない。
「そうなんですか……。ところで、うちのばあちゃんとは……」
「私と修蔵ちゃんは幼馴染みなのよ。そのよしみでお屋敷にお勤めさせてもらってね」
これまた意外なところに接点があった。
だからお祖父様とばあちゃんはあんなに久しぶりの再会を喜んでいたということか。
蓋を開けてみると意外なことばかりで驚きの連続だ。
「ところで……杏はなぜ急に戻ってきた?君は知っているんだろう?」
この様子だと、お祖父様は何も知らないんだ。
杏さんはお祖父様に心配かけまいと何も言わなかったのだろうけど、この際だから僕の口から会社で起こった事やイチキの御曹司に言われた事も話してしまおう。
「実は……」
それから僕は事の一部始終をお祖父様に話した。
僕の作ったメニューがうちの会社より早く有澤グループの会社から発売されて盗作騒動が起こり、その騒動の責任を取る形で杏さんが自主退職を余儀なくされたけれど、盗作の犯人はまだ特定されていない事。
確証はないが僕の周りで気になる動きをしていた同僚がいて、その同僚が身なりのいい金持ちそうな男と一緒にいたのを目撃されている事と、杏さんがイチキの御曹司から聞いたお祖父様からの伝言の内容。
すべてを話し終えると、お祖父様は立派な顎髭を擦りながら眉をピクピクと動かした。
「なるほどな……。あいつの考えそうな事だ」
お祖父様は騒動の真相に察しがついているようだ。
そして僕は、杏さんが本当は好きでもない決められた相手との結婚を望んではいない事を話した。
それを聞いてお祖父様は僕の顔をじっと見た。
「杏は君との結婚を望んでいたんだろう?」
……違う。
僕は本物の恋人なんかじゃない。
これ以上お祖父様を騙し続けるのは心苦しいから、本当の事を話してしまおう。
「なんの事だ?」
「3か月以内に僕との間に子供が出来なかったら、有澤家に帰って市来さんと結婚するようにと……」
僕の言葉に、お祖父様は意外そうな顔をした。
「そんな事は一言も言っておらんが?」
「え?」
「老い先短い身だから、生きているうちに曾孫を見たいと言ったんだ。あの杏にあそこまで言わせた男だからな。最初から君との結婚を反対などしておらん」
……どういう事だ?
イチキの御曹司の言葉はお祖父様からの伝言じゃなかったのか?
「でも僕は市来さんみたいに大会社の御曹司でもないし……ただのしがない庶民のサラリーマンですけど」
「ワシも元はそうだが?」
「……はい?」
あまりにも意外すぎるお祖父様の言葉に、僕はポカンと口を開けて間の抜けた返事をした。
『鳩が豆鉄砲を食う』って、こういうことを言うんだろうか?
ばあちゃんは僕の隣でおかしそうに笑った。
「修蔵ちゃんは昔、有澤の会社に勤めていたのよ。そこで先代の会長に用があって会社にいらしていた大奥さまに見初められたのよね。それから先代の会長に仕事ぶりと人柄を認められて結婚したの」
「婿養子……ですか?」
「そうだな。妻は会社の経営など自分にはできないから、ワシに会社を任せると」
なるほど、自分自身が庶民の出だから、庶民の僕との結婚にも頭から反対していたわけではないと、そういうことなんだな。
偉そうにデタラメばかり言って杏さんを追い詰めやがったあのボンボンが許せない。
「そうなんですか……。ところで、うちのばあちゃんとは……」
「私と修蔵ちゃんは幼馴染みなのよ。そのよしみでお屋敷にお勤めさせてもらってね」
これまた意外なところに接点があった。
だからお祖父様とばあちゃんはあんなに久しぶりの再会を喜んでいたということか。
蓋を開けてみると意外なことばかりで驚きの連続だ。
「ところで……杏はなぜ急に戻ってきた?君は知っているんだろう?」
この様子だと、お祖父様は何も知らないんだ。
杏さんはお祖父様に心配かけまいと何も言わなかったのだろうけど、この際だから僕の口から会社で起こった事やイチキの御曹司に言われた事も話してしまおう。
「実は……」
それから僕は事の一部始終をお祖父様に話した。
僕の作ったメニューがうちの会社より早く有澤グループの会社から発売されて盗作騒動が起こり、その騒動の責任を取る形で杏さんが自主退職を余儀なくされたけれど、盗作の犯人はまだ特定されていない事。
確証はないが僕の周りで気になる動きをしていた同僚がいて、その同僚が身なりのいい金持ちそうな男と一緒にいたのを目撃されている事と、杏さんがイチキの御曹司から聞いたお祖父様からの伝言の内容。
すべてを話し終えると、お祖父様は立派な顎髭を擦りながら眉をピクピクと動かした。
「なるほどな……。あいつの考えそうな事だ」
お祖父様は騒動の真相に察しがついているようだ。
そして僕は、杏さんが本当は好きでもない決められた相手との結婚を望んではいない事を話した。
それを聞いてお祖父様は僕の顔をじっと見た。
「杏は君との結婚を望んでいたんだろう?」
……違う。
僕は本物の恋人なんかじゃない。
これ以上お祖父様を騙し続けるのは心苦しいから、本当の事を話してしまおう。
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