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14 フォーティーン フィーバー

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THAILAND THE SIAM STANDARD ZONE ― 
YAMADA CITY STREET OF JAPANESQUE







そこは、フランスでいうところのジャポニスムな通りが町を突き抜けている。
しかし、町全体は小さくまとまっている。コンパクトな町である・・・。
中心のストリートの奥には、朱色の飾りが美しい3階建ての建物が見える。
バーガスは暫く住んで町にも少し慣れたようで通りを歩きながら余裕も見える。
バーガスは、朱色飾りの建物の前で一度立ち止まり、少しして中へ入った。
朱色飾りの建物の中に入るとすぐに玄関がありそこには20体の招き猫があった。
バーガスは、すこし大きな声で挨拶口上を言った。
「ボンジュール~」
おくから四十代くらいの女性がスタスタと現れた。
女性は満面の笑みを出し言うのだった。
「あ~ら、またムッシュー・バーガスさんじゃな~い」
バーガスは照れながら言った。
「バーガスって呼んでくれ」
女性も笑って答えた。
「そうでしたわね。バーガス~」
バーガスは、そして彼自身が被っている帽子の縁を触りながら言うのだった。
「メルシボーク。気楽にファーストネームで呼ばれるのが気に入ってるんだ」
女性はバーガスを中へ案内した。

そこは、会員制バーだ。

「もう一週間になる。そうだ。
僕は一週間も、ここで。
ジュンナ・アガウトリジックの客として入りびたっているのだ。
異次元空間で・・・。
そうだ、あの異次元空間は時間を飛び越える道だったのだ。
科学的に名づけるなら、タイムトンネル・・・。
あのとき、僕らはタイムスリップして、この世界に来た・・・。
タイムトンネルでジュンナが消失してから2ヶ月後だった。
この山田長政が建設した町で、ジュンナに再開できたのはよかった。
が、ジュンナは過去の記憶をうしなっていた。

自分を『さくらなおこ』だというのだよ、まったく。なんておばかな話なんだ。
だが、私はジュンナに夢中だ。

一週間、つけで客になり支払いは済ませていない。
しかし、じつのところ、僕には金などないのだ。
この失われたタイの長政の町で、私はどうすればいいのか・・・・・」

バーガスは立ち上がる。

ジュンナはどういう訳か記憶を失い自身を東洋人『さくらなおこ』としている。
さくらなおこ(ジュンナ)はバーガスに話しかけた。

「ムッシュー、いえ、バーガスのお兄さん・・・・・。
そろそろ支払って頂かないとわたくしも困ります」
さくらなおこは、まじまじとバーガスを見た。
バーガスはそわそわしてしまう・・。そして言う。
「今日は金を忘れてしまったが、そうだ、これを代金のかわりに授けるが」
彼はさくらなおこに懐にしまっていた徳川埋蔵金在処を示す万華鏡を見せる。
バーガスは自信ありげな顔を装って見せながら言うのだった。
「これだ、どうじゃ」
バーガスの手のひらにのっている万華鏡・・・・・・・・・・。
まじまじと、さくらなおこは、それを見るのだった・・。
さくらなおこは無言になる。
「・・・・・・・・」

バーガスは、きわめつけのセリフを言う。
「おどろくな。これは徳川の埋蔵金、つまり宝の山を示す万華鏡ぞよ!」
さくらなおこは、一瞬きょとんとする・・。しかし、つぎの瞬間、大声で喜ぶ。
「えー、こんなの、あたしにくれるの! すごい! うれしい!」

バーガス自身が逆に戸惑い呟く。
「え・・・」
バーガスは一瞬あっけにとられるが、満面の自信を自己演出して言うのだった。
「うむ、やるぞよ。きっと何億両の宝石、金銀財宝がある」
バーガスは、さくらなおこに万華鏡を渡した。

バーを出るバーガス。

彼は、町を抜け、山道を帰るのだった。
道の脇には、不動明王の滝が見える。
バーガスは独白した。
「うむ。
ジュンナ・アガウトリジックいや今はさくらなおこ、すなおな女だ。」
バーガスはにやりと笑い呟いた。
「アホかもしれんな・・・」
不動明王の滝の前で、しかし、バーガスは、ふと立ち止まる。
バーガスはひとり呟いた。
「しかしこの世の中、人のことをアホだと思う奴こそ、アホだって場合が多い。
僕こそアホかもしれん。あの万華鏡、はったりだと思ってあげてしまったが。
本物かもしれぬぞ」
バーガスは、来た道を引き返すのだった・・・・・・・。
町に再び戻ってくると、バーガスの耳に太鼓の音が聴こえる。
そしてストリートでは、天狗(の面をつけた男)がビラを配っていた・・・。
町にもどったバーガスは、天狗にお調子者風の敬礼をした。
天狗は言った。
「今日は祭りだ。夜は花火もあがる」
バーガスは、天狗からビラを1枚もらった。(花火大会のビラだ。)
天狗はさらにバーガスに何かを渡しながら言う。
「これも、もってってくれ」
バーガスがもらったもう一枚のビラはお尋ね者2人のビラだった。
そこには、お尋ね者2人の似顔絵があった・・・・・・・・・・。
・・・お尋ね者の絵の2人は、・・・一人がイケ面のサムライだ。
・・・もう一人は、ヒョットコのお面をつけている男だ。
天狗は説明する。
「2人は仲間だ」
バーガスは頷く。
「ふーーん」
そして彼は、そそくさと天狗男を後にした。
バーガスは歩きながら独白した。
「そんなお尋ね者のことなどどうでもいいのだ。僕は。
どうも、あの万華鏡が本物の宝のアリカを示しているって感じがし始めている。
そんな気が強迫観念のように強くしはじめたんだ。
さくらなおこが何も疑わず受け取ったっていうのも、その原因だ。
女の感ってやつかもしれん。だからって、僕はね。
一回あげるといってあげたモノを取り返そうなんて。
そんな道義に反したことはしない。そんなことをしようってんじゃない」
ストリートには、ヒョットコの面の連中がたくさんいる・・・。
彼らはマツリバヤシを鳴らしている・・・。
バーガスは独白した。
「こんな祭りの日だ。ヒョットコの面をつけた奴なんか、わんさかいるじゃな
いか。
とにかく、僕が何をしようと思っているかっていうとさ。
ちょっと、さくらなおこの様子を覗きにいくのさ。
すぐに宝探しにでも行くあてがあるのかもしれないしね。
そしたら、こっそり、なおこの後をつけようと思ってる。
別に、宝を横取りしようってわけじゃない。
あれが徳川の埋蔵金なら、そりゃ金銀財宝、大判小判があるはずなんだ。
だから見つけた後、持って運んだってすこしくらいポロポロ落ちちゃうものさ。
それを少しだけ拾い集めたって、世界一周が出来てさ。
エーゲ海に別荘を建てるくらいは十分にあるはずだって思うんだ。
それが狙いなんだ。
そう悪いことじゃないだろ?」
バーガスが急ぎ足でストリートの奥へ向かっていると元気な老人が声をかけた。
老人ははりのある声で話しかけるのだった。
「おい兄さん、なんかうまそうな料理屋を教えてくれ」
バーガスは突然のことで動揺したが、聞き返した。
「あんただれ? 僕は急いでるんだ」
老人は答えた。
「うむ、最初が大事だ。わしの名は、ヘルムート永井。77歳。
広州で修業をした。チャーハンが好きだ」
バーガスはきょとんとして呼応した・・。
「チャーハン・・。」
ヘルムート永井は、バーガスに並んで小走りしている。

バーガスは言う。
「今、僕が向かっているのはストリートの奥のバーだ。
そこのチャーハンはうまいよ」

ヘルムートは言う。
「ではいっしょにまいろう」

バーガスはヘルムートに言う。
「じゃ、あんたは、食堂のほうに行きな」

ヘルムートはバーガスに聞いた。
「おぬしは?」
バーガスは動揺して答えた。
「いや、ちょっと、うらの方から、2階の屋根にのぼるので」
ヘルムートはさらりと言った。
「あっそ。ところで、君の名は?」
バーガスは名のった。
「バーガス・チャン」
置屋の屋根・・・・・・・・・・。
バーガスが屋根の上に這いつくばってあがってくる・・・・・。
そして2階の壁にくっつき、中の声を聞いている。
さくらなおこの声が聞こえる。
「あんた、まってたわ」
ヘルムートが突然、バーガスの隣りにあらわれて話しかけた。
「バーガスよ。おぬし、趣味が覗きか」
ヘルムートがチャーハンのテイクアウトを持って、屋根の上にやってきたのだ。
バーガスは言った。
「ふかくは聞かないでくれ」
そしてバーガスは、さくらなおこの部屋に聞き耳をたてた。
2階の窓からは、カーテン越しに部屋が見えるのだ。
そこではさくらなおこと客(イケ面サムライ風男)が抱擁しているのが見える。

お客は、なおこに話した。
「なおこ、拙者、サムライの家に生まれ、・・・・・
職を失ってからは、代々用心棒として生活してきた。
が、ここらで、なにか、・・・・。
まっとうでバテレン的に言うなら、・・・。
わーるどわいどな貿易商になろうかと思っておる。
そのあかつきには、そなたを嫁にもらいとうござる」
なおこは感激して言う。
「あれまあ。涙のあふれるばかりのしあわせ!
KUROSAWAさまと結婚いたします。」

お客の名はKUROSAWAというらしい。
KUROSAWAは喜びにあふれ言うのだった。
「おお、うけてくれるか、なおこよ」
2人は、そしてしっかり抱擁した。
バーガスは、涙を2、3滴流し、そんな2人をすきまから見た。
バーガスはつぶやいた。
「僕もなおこを愛していたが、僕などピエロにすぎぬ男・・。
2人の幸せを願おう」

そして、・・・ふとバーガスは思い、首をかしげた。
バーガスは心の中で考えてみた。
「あのKUROSAWA・・・なんだか、お尋ね者のビラのイケ面の絵に似てるな。
ま、でも、イケ面って、みんなだいたい似てるからな・・」



KUROSAWAとなおこは、きらきらした目で互いをしばし見つめあうのだった。
なおこは言う。
「KUROSAWAさま。
あたしあんたの事業の元手になりそうな宝の在処がのってる地図をもってる」
KUROSAWAはとまどう。
「なんのことだ?」
なおこは万華鏡を棚の引き出しから出し、言う。
「これよ」
外の屋根では、バーガスとヘルムートが屋内のKUROSAWAたちをのぞいていた。
バーガスは屋内をすきまから覗きながら、ヘルムートに言う。
「あれだ」
ヘルムートは(チャーハン弁当を食べながら)関心を示した。
「ほほお」
バーガスは言った。
「あれは、僕が彼女にあげたものだ。
ぱちもんだと思っていたが、ほんものかもしれん」
ヘルムートは聞いた。
「とりかえしたいのか?」
バーガスは答える。
「いや、それは間違っている。ただ、おこぼれを拾いたいだけだ」
ヘルムートはにやりとして言った。
「いいじゃないか。おこぼれか・・。いいじゃないか」
なおこの部屋・・・・・・・。
KUROSAWAが、万華鏡を覗いている。
万華鏡の中に、地図が見えているのだ。
KUROSAWAがなおこに聞く。
「これが、宝の地図か?」
なおこは言う。
「お客さんが、徳川の埋蔵金のありかだって、くれたの!」
KUROSAWAは笑って言うのだった。
「けらけらけら。信じてるのか?」
そのとき、フスマがスーと開く。
メイドがラーメンをもってきたのだ。
メイドは言う。
「ご注文のラーメンです」
ひょいとKUROSAWAはラーメンを受け取った。
KUROSAWAはメイドに礼を言い、チップを渡した。
「ありがとよ。またな」
すごいいきおいでラーメンを食べるKUROSAWAであった・・。
なおこは、それをみている・・・。
KUROSAWAは、なおこをちら見した。
そしてKUROSAWAは笑い飛ばした。
KUROSAWAは(ラーメン食べながら)言った。
「・・・『B』級のペーパーバックの読み過ぎってやつさ。
そんな話、信じちゃうなんてさ。二番煎じのストーリーさ」
バーガスは、屋根から屋内を(隙間を通して)覗いていたが、頷いた。
「たしかに!」
なおこの部屋・・・・・・・。
フスマがまたもスーと開く。
メイドが来て、言った。
「替え玉おもちしました」
ラーメンの替え玉を受け取るKUROSAWAであった。
KUROSAWAはニコニコして云った。
「せっしゃは、ラーメンの替え玉ってやつが好きさ。
味が変わるから、替え玉は出さないって店もあるけどさ。
二番煎じの替え玉の味も、ぐっとくるほどうまいのさ」
そういっていると、もう一方の窓からサクラの花びらが舞いながら入ってきた。
KUROSAWAはその花びらにみとれた。

熱帯鳥の泣き声も聴こえている・・・・・。
KUROSAWAは考えてみて、ふと言った。
「二番煎じ・・。二番煎じ・・。二番煎じのラーメン。
二番煎じのストーリー。・・・『B』級小説みたいなはなし・・。
そういう話こそ、うまみがあるかもな」
なおこはにっこりして言う。
「でしょ」
KUROSAWAは決意して言った。
「うん、いこーか、宝探し。それで、拙者の新事業が始められるかも。
バテレンの持っているようなデッカイ舟を買うのじゃ! 
拙者はあの、わーるどわいどなバテレンたちが大好きなんじゃ。
...SHIKASHIな、そんなフルボケタ地図を見ても、解読不可能だぞ。
主君のために殉職するような暗黒の時代もとうに過ぎ去った。よいことじゃ。
今はグローバルな『でもくらしー』の世の中。
ちまたでは、色のついた立体映画も上映されておる。
考古学者でも連れてこなけりゃ昔の地図などチンプンカンプンじゃ」


なおこは、そういうKUROSAWAをしばし、だまって見て、・・・言うのだった。
「実はねいるのよ。わたし知ってる考古学者がいるの。わたしのお客なの」
YAMADA CITY 中央ストリート・・・・・・・・・・。
SIAM(現代のタイランド)国内だがこの日本町には白壁通りが建造されている。
そんな通りをを歩いてくる、変わったカッコウの男がひとり・・・。
その男は、天狗の面をつけた男に呼び止められた。
天狗は尋問した。
「あんた、なんか変わってるな。怪しい者か?」
変わった服の男は答えた。
「最初が大事だ! 自己紹介をしよう。私の名は、比我。
比我ドロンさ。怪しい者かと聞かれ、怪しいものだと答える人間はいない。
が、しかし、私は特に犯罪者ではない! 大学で考古学を教えている。だが。
ほんとうは学者の家系ではない。私の先祖は甲賀のNINJA なのだ。
その意味では、あやしい者かもしれん。だがそれは曽祖父の時代だ。
いまの世の中、NINJA 家業では食っていけん・・・。それで学者となった。
バテレンの船に乗り込んで世界を見てまわっておる!

じつは、ナオコという女に入れ込んでおる。
今、そこへ向かうところだ」


天狗、はた、と何かを思い出したようなしぐさで言うのだった。
「あの、通りの先にあるバーか! あれはちかぢか店じまいかもしれんな~」
比我は突然心配そうな顔になり聞いた。
「え、どうして?!!」
天狗は答えた。
「凶悪なマフィアが、あの土地を奪おうとしてるのさ。
よく、あの店の女主人を脅しにきてるぞ」
比我は心配してもう一度聞いた。
「そうなのか?」
天狗は、ちょいと指で示して言った。
「ほら、あれだ」
人相の悪い男が、蒸気バイクに乗ってやって来た。




KUROSAWAはなおこに言った。
「・・・そうかい。いろんな客がいるんだな。
だが、これからは拙者だけの女になってくれ」

なおこは、それに答えた。
「KUROSAWAさまの妻になります、あいしてますゎ」
2人はしっかりと抱き合った。

屋根の上では・・・・・・・・。
ヘルムートが自身のひたいをペンッとたたいて、言った。
「ああ、みちゃいられねえ。チャーハン食おう。
うまい。うまい。コーラがあうな、チャーハンは」
しかし、脇にはポロポロ涙しているバーガスがいた。
バーガスはつぶやいた。
「なおこ・・、いやジュンナ、愛していた・・」
ヘルムートは言う。
「そうか。あんたも本気だったのだな。
映画みたいなはなしだ。2人の男と1人の女」
バーガスはヘルムートに言った。
「とりこみ中だ。僕はいったん去る」
ヘルムートはバーガスに言う。
「そこらへんで、珈琲でも飲まんか。おごるぞ」



ヘルムートは言う。
「バーガス、君に新しい世界の扉を開く鍵を授けよう。
ものの見方をかえるのだ!」
中央ストリートには、珈琲屋があった。そこは、洒落た雰囲気の建物だ。
珈琲屋に入ったヘルムートとバーガスはテーブルで珈琲を飲んでいた。
バーガスはヘルムートに聞いた。
「で、ヘルムートのおやっさん。
あんたの言う、新しい世界の扉ってなんだい?」
ヘルムートは、しばし沈黙。そして珈琲をひとくち。それから語った。
「この世界の真のエネルギーを見る方法だ」
バーガスはびっくりした顔で聞くのだった。
「真のエネルギー?」
ヘルムートは語り続けた。
「そうだ、わたしはこの世界を何十年かほうぼう旅した。
広州での修行もした」
ヘルムートは背中のリュックから、たくさんの紙のタブレットを出す。
多くの文献のうつしだ。バーガスはそれらを手にとってパラパラ見る。
なかには、写真や絵もある。
ヘルムートはまじめな顔で言うのだった。
「この世界は、・・・。
未熟な者は、人間が、そしてそのなかの王侯貴族が動かしていると思っている。
そうではないのだ、・・・。
世界を動かす真のエナジーは人間がフツウの方法で知覚できるものではない」
バーガスは首をかしげた。
ヘルムートはさらに語った。
「例えば、一例を挙げよう。
かつて日本国のある地方に病気で伏せていたミナモトのライコウというマスラ
オがいた。
かれは、薬をもらえど、病は治らなかった。
ある日怪しい法師が彼を訪ねてくるがそれは土蜘蛛というモンスターだった。
法師は、何本もの糸をくりだして、ライコウをがんじがらめにしようとした。
が、ライコウは、名刀KUMOKIRIでモンスターに一撃をくらわせた。
モンスターは逃げ、自分の棲家であった古塚にもどる。
が、ライコウの手下と一戦をまじえ、滅びた。ライコウは再び元気を回復た。
つまり。
・・・この世界にマイナスエフェクトを与えんとするエネルギーが存在すると
いう事だ」
バーガスは、神妙に話を聴いている。
ヘルムートはバーガスに言う。
「ライコウは修行によって、ある力を得ていた。
それはな。
マイナスエネルギーの塊を粉砕する力。
地上のエネルギー・バランスを正常化するウォリアーとしての力だ。
それを君に伝授しようか」
バーガスは目を丸くして言った。
「ヘルムート永井さん、あなたは、それができるのですか??? 
そうなのですか・・・?」
ヘルムートはウインクして、言った。
「わたしのコーヒーカップを見ていなさい」
ヘルムートは目を閉じ、手のひらを、ひらひらと動かした。
カップの中のコーヒーの液体が静かに動き出した。
それはやがて、手が何本もあるアシュラの形になる。
おどろくバーガスであった・・・。
ヘルムートは少し得意そうに言った。
「ふふふ・・。人間には限界がある。
その差は人それぞれだが、多かれ少なかれ限界がある点では同じだ。
そこに形になったのはアシュラと呼ばれる神話におけるパワーのシンボルだ。
バーガス君。おもしろいだろう?
こういうパワーの一部を習得するのだよ、君も。パワーは制御するのが難しい。
パワーによって我を失う人間もいる。パワーは正しく使う者にとどまる」


バーガスは感心して言う。
「ヘルムートのおっさん、すげー」
ヘルムートは言う。
「究極の教えを、広州の先生から聴こう」
バーガスは呼応する。
「広州・・・」
ヘルムートはさらに言う。
「・・・そこは・・・すべての修行者たちが向かう場所・・。
チャイナ・コンティネント、広州」
バーガスはつぶやいた。
「チャイナ・コンティネント・・・か」  
ヘルムートはうなづき、言う・・。
「そう、そこに仙人が住んでいる」
つぎにヘルムートはふところから筆を取り出し、大き目の和紙にその名を書く。
『PANDA KOICHIRO』と・・・。
それをバーガスに見せた。
大き目の和紙に仙人の名を書道したヘルムートは、ふうとコーヒーをひと口。
コーヒー屋内には、ひょっとこや天狗、鬼などの奇面を被った連中が多い。
ひょっとこのお面の男が、じっとヘルムートの書を見ているようだ。
突然、群集の声が外から聞こえて来た。
「けんかだ。けんかだ!」
コーヒー屋のそとの通りで天狗が叫んだ。
「ケンカだーー」
ヘルムートは、戸口の方を振り向いて言った。
「けんかじゃと!?」



女主人は、大声で言った。
「だから、もう来んなって、いっただろ!!」
それは、凶悪なマフィアに対しての言葉であった。
マフィアは、店の営業を妨害していたのだ。
マフィアは女主人に恫喝し言うのだった。
「おまえがこの店を明け渡すまでしょっちゅうくるよ。ぐふふ」
マフィアは威嚇に銃を使った。
「バキューン!」(銃の音が、通りにコダマした・・・。)
  
レストランは騒然となった。
マフィアの銃口からは煙が立ち上っていた・・・。
いくつかのテーブルの客は、じっとマフィアを見ている・・・・・。
その客たちの中に、さくらなおこと、KUROSAWAもいた。
まだ、マフィアの銃口からのぼる煙が見える・・・。
マフィアはさらに恫喝する。
「よお、女主人。ここを俺にあけ渡せ。ここに、賭博場をつくるんだ。
こんなしけた置屋なんか潰してやる!」
マフィアは、もう一発、鉄砲で天井を撃った。
「ドギューーンンン・・!」
女主人は恐怖で叫んだ。
「キャー!!」
女主人は、レストランの奧の方の壁へと逃げた。
マフィアは恫喝を続けた。
「すなおにあけ渡せ」
マフィアは女主人の方へKUROSAWAとなおこのテーブルを横切り迫ろうとする。
そのとき突然、その歩くマフィアの足の前に、自分の足を出す
KUROSAWA・・・。
そのKUROSAWAの足が、マフィアの足に引っかかった。
マフィアの驚く目玉はまん丸に見開いた。
つぎの瞬間、ばたーん、とマフィアが地面にたおれた。
・・・汚れた顔で起き上がるマフィアだったが、かんかんに怒っているようだ。
マフィアはKUROSAWAに言う。
「ててててめー! どういう気だ!!!」
KUROSAWAは笑って答えた。
「ちょっとヒーローになりたくてさー」    
マフィアは、いきりたって言う。
「このー! 善人ぶりやがって」
KUROSAWAはまた油を注ぐような発言をする。
「いや、拙者も、くずれザムライ。どっちかと言えばワルでありんす。
が、アンタはワルすぎる」
マフィアは大声で言った。
「決闘だ!」
KUROSAWAは受けて言った。
「うけよう。お互い、武士くずれのようだ。刀よりピストルが似合う。
我々の決闘にはな!」
マフィアが言う。
「よかろう」
置屋レストランの入り口付近で、この2人を見ている、6人がいた・・・・。
バーガス、ヘルムート、天狗面の男、・・・。
ヒョットコのお面を被った人間が3人・・・。
マフィアは彼らに叫んだ。
「みせものじゃねーんだぜ! 祭りの日だからって。
くだらねーお面をかぶってんじゃねーーー!!」
それを見ていた、ヒョットコのお面の者たちの中の1人が、お面を脱いだ。
中肉中背の男だ。
中肉中背の、その男は言った。
「決闘だ、と聞いた。それには、審判がいる。
私がそれになろう。私の名は琵太郎」
マフィアは言う。
「おー、すぐにはじめよう。」
KUROSAWAは提案した。
「では、この置屋の裏に砂地がある。そこで、早撃ちで勝負だ」
KUROSAWAは笑って琵太郎に言った。
「琵太郎(びたろう)さんよ。審判をかってでてくれて、ありがたいぜ」
置屋の裏の砂地・・・・・・・・・・。
サボテンがところどころに生えている。砂を風が巻き上げている。
枯れ草が飛ぶ・・。
琵太郎が、2つのピストルを、1つずつ、KUROSAWAとマフィアに渡した。
琵太郎は、そして言った。
「ピストルは私が用意した。ゆえに、公平だ。
あとは、あんたら2人の腕だけで、勝負がつく」
マフィアはKUROSAWAを脅した。
「この世からおさらばさせてやるぜ、KUROSAWAの善人ぶりのアンちゃんyo」
ピストルを手にした2人・・・・・・・・。
位置についた。
背中あわせに立つ、KUROSAWAとマフィアだった・・。
その様子を見ている、おばあが居た。
おばあは涙しながら言った。
「おそろしいことじゃ、おそろしいことじゃ。決闘などと・・・。
この文明社会に、決闘などと・・・。
すべては、そうじゃ、すべては、土蜘蛛のせいなのじゃ」
おばあの形相がこわばった。
おばあは、マフィアを指差し、言った。
「あの男」
おばあは言葉を続けた。
「あの男にも、土蜘蛛がとりついているのじゃ!!」
マフィアは、ちらり、とおばあを見た。
KUROSAWAは、訝しげに言った。
「何を言っているんだ・・・?」
KUROSAWAは、しばしおばあを見た。
マフィアは大声で言った。
「たわごとよ!!! さあ、決闘だ」
 
       


決闘の地を上空から見ると、こうなっていた。
KUROSAWAとマフィアの立っている位置を中央にして見てみる・・・。
するとその左右それぞれ、20から1、1から20と番号がふられたラインが並ぶ。
つまり、中央ラインの左と右にそれぞれ20本のラインが見える。
中央ラインと合わせ上空から見ると合計41本、2m長のラインが並んでいる。
KUROSAWAとマフィアは中央ライン上に背中合わせ反対方向を見て立っている。
琵太郎は、そこで説明する。
「はじめるぞ。ルールは、シンプル。
今の背中合せの方向つまり互いに、反対方向を向いたまま前方に20歩、あるく。
私が20、カウントする。20のカウントで、振り向いていい。
そこで、互いを撃ち合うことになる!早撃ちだ。ピストルの速さで勝負がつく。
シンプルなやり方だ」
カラスが、頭上を飛び、かあかあ鳴いた・・・。
決闘の様子をバーガス、そしてヘルムートがすこし遠くから見ているのだった。
琵太郎は叫んだ。
「カウント!」
マフィアとKUROSAWAの顔には、汗がぎらぎら流れ落ちている・・。
琵太郎がカウントする。
「1」
一歩踏み出す、2人だった・・。
琵太郎がまたカウントした。
「2」
決闘の様子を見ている天狗の面の男がいた・・・・。
琵太郎がカウントする。
「3」
遠景から見ているバーガスがいる。
互いに6歩分離れたKUROSAWAとマフィアだった。
琵太郎がカウントする。
「4」
女主人は、ごくりと唾を呑み込むのだった・・。
琵太郎がカウントする。
「5」
一歩すすむKUROSAWAだった・・・・。
琵太郎がカウントする。
「6」
一歩すすむマフィアも、緊張しているようだ。
琵太郎がカウントする。
「7」
カラスが頭上を舞っている・・・・・。
琵太郎のカウントする声がこだまする。
「8」
互いに16歩分離れたKUROSAWAとマフィア・・。遠景からみているヘルムート。
琵太郎がまたカウントした。
「9」
天狗の面の男の、面の下の顎のところから滴り落ちる汗・・・。たらっ。
琵太郎がカウントする。
「10」
一歩すすむマフィアだった・・・・・。
琵太郎がカウントする。
「11」
一歩すすむKUROSAWA・・・。
琵太郎のカウント声が聞こえる。
「12」
緊張感みなぎるマフィアの顔があった。大つぶの汗がしたたっていた。
琵太郎のカウント・・・。
「13」
KUROSAWAの顔には緊張感がみなぎっていた・・。
琵太郎がカウントした。
「14」
これで、互いに28歩分離れた2人だった。遠景から見るバーガスらがいた。
琵太郎がカウントする。
「15」
見ているバーガスとヘルムートも真剣だった。
琵太郎がカウントする。
「16」
琵太郎は、ヒョットコの面を後頭部にかけて、カウントするのだった。
「17」
また一歩すすむKUROSAWAだった。
琵太郎がカウントした。
「18」
KUROSAWAの顔に一瞬の笑みが見えた。
そのとき、琵太郎がつぎのカウントをした。
「19」
そのカウントが聞こえるや否や、マフィアはとつぜん振り返り銃を出した!
マフィアは瞬間、心に思った。
「ぶゎかめ! 素直に20まで待つわきゃないだろ」
マフィアは銃を腰に構えた。
だが、マフィアの顔は一瞬ひきつり、驚きの表情に変わった。
すでにKUROSAWAは、マフィアの方を向き、マフィアに照準を合わせている!
そして、銃をしっかり構えているではないか!
しかも、KUROSAWAの足の位置は『18』のライン上にある!!
彼の両足の位置は、上空から見ると、こうだ。
地面に書かれた『20~1・1~20』の数字とそれに対してひかれた白いライン。
そのKUROSAWA側の『18』のラインの上に、彼の両足があるのだ!
(KUROSAWAは『18』のカウントの時すでに銃を構えていたことになる。)
KUROSAWAの銃が火を吹く。ドキューーン!!!
それは、マフィアの腿を貫通した。
マフィアはたおれた。
KUROSAWAはマフィアに言うのだった。
「命はとらないよ。反省しな。この町には、もうくるなよ」
KUROSAWAの銃口からケムリが立っている。
KUROSAWAの足は、そのまま『18』のラインの上にあるのだった・・。
『18』のライン上のKUROSAWAの足をジッと見るマフィアだった・・。
マフィアは言う。
「KUROSAWA、きさま、ルール違反だろ・・」
KUROSAWAも言った。
「あんたもな、・・・・『19』で振り向いたな」
マフィアは怒鳴った。
「おい!! 審判、何見てやがった!・・・・・・・」
一瞬の沈黙があり、マフィアはハッとした。気づいたのだ。
マフィアはくやしがり、言うのだった。
「え、・・・まさか、審判、そして、KUROSAWA、最初からグルかよ」
審判(琵太郎)は、外していたヒョットコの面を被りなおした。
何枚かのビラがゴミになって、砂地を飛んでいた・・・・・。
ストリートには砂埃がたっていた。そういう季節らしい。
砂地もストリートも、風がゴミをも巻き上げていた。
風がストリートの奥から、一枚のビラを砂地へバサバサと転がしながら運んだ。
あの、お尋ね者のビラだ。
それが、ザザザッと風にのって飛んできて、マフィアの顔にはりついた。
ぺたっ。
マフィアはビラを顔からはぎとり、見た。
ビラには・・・イケ面のサムライと、ヒョットコ(の、にしき絵)・・・。
それは、・・・。
まさに(マフィアの前に居る)KUROSAWAとヒョットコ面の男(琵太郎)だ。
マフィアは憤怒した。
「きさまらあああ!!! はじめからグルだったのか」
KUROSAWAは諭す。
「もう、極悪な事はやめな!」



KUROSAWAに(観衆だった)天狗面の男がちかづく。
天狗の面の男がKUROSAWAに言った。
「今回は、礼を言う。しかし、あんたも、お尋ね者の身の上だな、・・・。
はやく立ち去ったほうがいい」


KUROSAWA「わかってるさ・・拙者はくずれザムライ。
いいはなしがあって、これから宝さがしに出るところさ。
まだ、どこにあるのかも分からない宝さがしだけどな」
その話をこっそり聞いていた比我ドロンが、ぴくっ、とKUROSAWAを見る・・。
マフィアは怒りが収まらず、怒鳴った。
「くだらねーロマンにひたりやがって!」
マフィアは、銃をかまえて言った。
「これでおわりさ」
マフィアはガス管を撃った。どぎゅっ!
ガス管破裂・・。
爆発・・!
バーはめらめら炎上するのだった・・・・・・・・。

それを見ていた町の人々の中に、あの、おばあの姿もあった。
おばあは云った。
おばあは、日系移民一世で、小さい頃聞いた日本の話を覚えていた。
「やはり、そうじゃった・・ やはり、そうじゃったのだぁ。 
その男には土蜘蛛がとりついているのじゃぁ!!!」
マフィアは人間性を失い虫の様に異常な動きをし地面をのた打ち回りはじめた。

おばあは、そのようすを指差しぷるぷるうち震えるのだった。
それは地獄絵図だ。
おばあは叫んで言った。
「おおおっおっ、・・土蜘蛛じゃ、子どもの頃から、よう、聞かされておった。
人の体に巣くい、人の欲を餌にして成長するのじゃ!!!!! あれじゃー!
それが、土蜘蛛なんじゃあああ!!! ごおおお・・。 
おっおっ。 じゃーあ!」
祭に来ていた人々(外野)はのた打ち回る虫のようにうごくマフィアに驚いた。
人々は叫んだ。
「土蜘蛛・・・・! 本当に土蜘蛛なのか! あの伝説の悪魔・・!」
人々は狂乱するのだった。
「ぎゃああ」
人々は気を失いそうに叫び狂った。
「キャー」
いっせいに、その場から逃げる人々の一団があった・・。
のた打ち回っていたマフィアは、さけぶ。最後の人間性が吹き飛んだ。
マフィアはよだれを垂らしながら、雄叫びのような狂ったような叫びをあげた。
「うぎゃあああああ」
その直後、マフィアは、ぱたっ、と動かなくなり、地面に崩れ落ちた。 

ある人々は動揺し、平常心を失い、言う。
「こいつは、やばすぎるそ! 当局がやって来る前に、ここから去ろうぜ」
またべつの人々は、逃げる一団に同調して言った。
「そうだ、ここから去ろう」
屈強そうな男たちも、去っていった・・。

裏の砂地・・・・・・・・・・。

そこに残っているのは、・・・。
KUROSAWA、なおこ、ヒョットコ(KUROSAWAの相棒・琵太郎)。 
他は比我ドロンだ。
(バーガスとヘルムートは少し遠くのサボテンの陰に潜んでいた。)
なおこは、比我ドロンを見て言う。
「あ、あなた、お客さんの、・・・」
KUROSAWAは言う。
「このものは、そなたの客だったのか」
なおこは答える。
「そう、この人が考古学者さんよ」
比我は、そわそわして言う。
「いまは、そんな挨拶どころではないぞ!」
マフィアの体が、突如おきあがり、口がバガアッと開いた。異常な開き方だ。
まるで顎がはずれてしまって、そのまま上下の唇が引き裂かれそうだ・・。
マフィアの口は、そのままさらに開き、ついに口がさけた!
裂けた口の中から、巨大な虫が顔を出した!
バーガスとヘルムートは、茂みの陰から、その様子を見ている・・・。
茂みの陰で、吐きそうな顔のバーガスだった・・。
バーガスは気持ち悪そうに言った。
「うえええ! ありゃなんだぁ」
ヘルムートが言った。
「人の欲を餌に成長する怪物、・・・土蜘蛛さ。
土蜘蛛とは、・・・古来の悪魔なのだ。
人々に、口から吐き出す、呪われた液体をかけて、溶かす・・・。
ドロドロに溶かし、ダンゴにしてしまい、それを食って生きてきた」


バーガスは独白するのだった。
「はじめてみたよぉー」
砂地には、マフィアの口から出てきたドロドロの液体が広がっていた。
マフィアの体が口から裂けた。
マフィアの体と同じくらいの大きさの怪物『土蜘蛛』(つちぐも)が出てきた。
土蜘蛛はうなる。
「うごごごごごぉぉぉぉぉぉぉぉ」(雄たけび)
マフィアであり人間の容姿であった時の皮の部分はしゅうしゅう、と蒸発した。
マフィアからある意味、変化したと言える不気味な土蜘蛛がぎえええ!と叫ぶ。
その背後には置屋がまだ炎上し続けていた・・。
土蜘蛛は口から火の玉をいくつも発射し、町に火の玉がつぎつぎと落下した。
あちらこちらで、火事がおきはじめた。
ヘルムートが土蜘蛛の前に出て行った・・・・・・・。
ヘルムートは気合を入れる声を出した。
「ふんむ!」
ヘルムートは、(土蜘蛛に対して)掲げた手のひらから緑色のビームを出す。
ビームは土蜘蛛の頭部を破壊した。
土蜘蛛は雄叫びをあげた。
「うごわあああ」
土蜘蛛は、ダメージをうけたまま、羽を出し、・・・空へ舞い上がる。
(土蜘蛛は、普通の蜘蛛でないゆえに、羽が生えるのであった。)
ヘルムートは言う。
「わたしも、歳を取った・・。ビーム1発でへとへとじゃ・・。
だが、しかし!」
ヘルムートは気合を入れて、渾身のビームをもう1発放った。
ビームは、土蜘蛛の右の羽に少しだが穴を開けて、ダメージを与えたのだった。
バランスを崩す土蜘蛛であった・・・。
土蜘蛛は喋った。
「わたしを敵にまわしたな! また会おう」
土蜘蛛、空の彼方へ飛び去った。(バランスを崩しながら・・・)
おばあは叫んだ。
「地獄絵図じゃああ」

KUROSAWAは女将に謝った。
「すまねえ」
女将は言った。
「そうよ、あんたが悪いのよ。あんたが決闘のきっかけを作ったからよっ」
KUROSAWAは女将に言った。
「今から、なおこと宝探しに出る。
その宝であんたの店も再建するから、拙者らが帰還するまでまっててくれ。
 いくぞ! なおこ」
女将は、なおこと出発するKUROSAWAに言うのだった・・。
「きっとよ、約束よ!!!」
KUROSAWAは、比我ドロンを誘う。
「あんたも、ついてこい! 分け前は考えるから。
あんたの知識で、宝の地図の謎をといてくれよ」
ヘルムートは、KUROSAWAに申し出る。
「わしも、つれていけ」
KUROSAWAは頷いた。
「そうだな、あんたも必要かもな」
茂みでは、バーガスが様子をうかがっていた・・。
バーガスはぽつりと口に出すのだった・・。
「えーー、そういう展開?」


KUROSAWA、なおこ、ヒョットコ、比我、ヘルムート。
5人は、YAMADA CITYを出発した。
そのあとに、かくれながら、(うしろから)バーガスがついていくのだった。
ヘルムートは、うしろのバーガスに向かってウインクした。
バーガスは心に思い出した。
「そうだ、ヘルムートさんは、僕に新しい世界の見方を教えると言った。
まさに、ヘルムートさんは、土蜘蛛にダメージを与えた。
手のひらから圧倒的パワーを出して土蜘蛛を撃退した。
だけど、多分、土蜘蛛はまたやってくる・・・。
とはいえ、ヘルムートさんの言う新世界の扉の向こうが知りたい。
あのウインクは、ついてこいという意味だ。私はヘルムートについていくぞ。
それは、きっと・・・。
圧倒的何か世界を支配しようとする非人間的なるものとの戦なのだ、しかし」
バーガスは、一行に隠れて付いて行きながら町の外れで天狗の面の男に会った。
バーガスは頼んだ。
「その面を売ってくれ」
バーガスは、買った天狗面を被り、KUROSAWA一行に近づくのだった。
KUROSAWAは、うしろからきた天狗面のバーガスに気づいた。
KUROSAWAはバーガスに言った。
「あんたもついてきたいのか、天狗さんよ」
バーガスは首を縦に振る。
KUROSAWAは受け入れた。
「よかろう」
6人は、町外れの不動の滝をよこぎり、旅立つのであった・・・・。

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