悪役令嬢は異世界からの客人に助けられる

雪菊

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 「ヴィオレット様、少々よろしいでしょうか?」
 「はい、何でしょうか?ユリア様」
 ヴィオレットが帰宅しようと校舎を出たところで呼び止められた。振り返るとユリア・ミラー子爵令嬢とリリー・ブール男爵令嬢、コレット・グノー男爵令嬢が立っていた。3人のうちユリアだけがクラスメイトだった。後の二人は顔と名前がわかるが面識はない。いやコレットに対しては一方的にあるが。
 「私は面倒なことが嫌いですので単刀直入に言わせていただきますが」
 「ええ」
 「ヴィオレット様はラウル様の婚約者で間違いないですよね?」
 「ええ。そうですわ」
 「でもラウル様はこちらのコレット様を愛していらしゃると聞きました」
 「……そのようですわね」
 同意するとユリアとリリーは驚きコレットは得意げに顎を反らした。
 「では、本当ですの?」
 「何がでしょうか?」
 「ヴィオレット様がコレット様をいじめているというのは」
 「は?」
 思わずそんな声が出た。
 「ユリア様!そんな直接きいちゃうと私またいじめられちゃいます!」
 コレットがぐいとユリアの袖をひいた。
 「でもコレット様ちゃんと聞かないと!」
 「そうですわ。ヴィオレット様は私たちより身分は高いですがここは学園。間違いはきちんとただしませんと!」
 ユリアとリリーがコレットを振り返って言った。
 「でもヴィオレット様は婚約者に愛されない可哀そうな方なんです!だから私が色々言われても仕方ないんです」
  胸の前で両手を組みコレットはうるうると瞳を潤ませる。
「え?いやあの……」
 一方ヴィオレットは何のことだかさっぱりわからないので事態を把握できなかった。
 「そんな!コレット様は我慢強くていらっしゃるから」
 「はっきり言うべきでしてよ!ヴィオレット様今後一切コレット様に関わらないで下さいまし!でなければ今以上にラウル様に嫌われてしまいましてよ」
 「じゃあ行きましょう」
 言うだけ言って3人はその場を走り去った。後には意味が分からず呆然としているヴィオレットが残された。
 翌日からその場面を目撃していた数名によってヴィオレットがコレットをいじめていたという噂が広がった。
 噂は尾ひれどころか背びれも胸びれも伴って教科書を破いただの足をかけてこけさせようとしただの噴水に突き落としただの散々だった。
 ヴィオレットの友人やクラスメイトは信じなかったがラウルとコレットが二人で一緒にいるのはよく目撃されていたのでいじめの動機だけは誰もが心当たりがあったのがよくなかった。
 卒業まで3か月でヴィオレットの評判は急降下した。それでももう卒業するしいいか大切な人たちは信じてくれているしと放置したのだ。
 特にヴィオレットと同格以上の身分の伯爵令嬢・侯爵令嬢たちは噂を全く信じなかった。ただ下位貴族や平民はこぞって信じていた。
 それは市井で流行っている恋愛小説のせいだ。我儘で横暴な貴族令嬢が婚約者に見限られ婚約破棄される話。物語の視点は婚約者の真実の愛の相手、ルビー。
 ルビーは平民で貴族令嬢は伯爵令嬢。婚約者は侯爵令息で本来なら平民と婚姻は結べない。平民を一度どこかの貴族に養子に出して貴族籍を得るか
 令息が貴族籍を捨てるかだ。だがそれを無視して侯爵夫人となる物語だ。いくら物語とはいえ荒唐無稽すぎる。
 しかし書いたのは異世界からやってきた『マレビト』であるカナ・トバタだったのでそのあたりの知識がないのだろうと受け入れられた。というか荒唐無稽過ぎて夢物語として受け入れられた。
 所詮は作り話なのだから現実と違うと目くじら立てても仕方ないと。マレビトの書いた物語という付加価値もある。
 だが作り話なのに平民や下位貴族には希望になってしまった。そして物語と同じように伯爵令嬢が婚約者に見限られている。
 ルビーとコレットを同一視している層がいて、そこにあのいじめの噂だ。
 
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