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しおりを挟む友人が増えて男同士で遊ぶことが増えたのは良い。男性同士の社交もこれから成人するにあたって重要だ。
今から人脈を作り上げることは大切だとヴィオレットは理解している。ヴィオレットも同様に令嬢たちとお茶会を開いたり観劇に行ったりした。
しかしラウルは気づけば男同士ではなく女性を交えて出かけることが増えた。
ヴィオレットとラウルは違うクラスだったのでクラスメイトだと言われれば引き下がるしかなかった。
祖父や父の決めたことに逆らいたくはない。いずれ家を出る身なのだからそれまでは自慢の娘、孫でありたかった。
ヴィオレットは社交とともに学業に打ち込み慈善事業も始めた。外国語を学んでいたから通訳補佐をして父の事業を手伝った。
一方でラウルはただ遊んでいた。社交だと言いわけをして男友達だけでなくクラスメイトだからと子爵令嬢や男爵令嬢を連れて出かけていた。
そのうち数名いたクラスメイトの女子が固定になり、気づけばコレット・グノー男爵令嬢と二人きりで出かけるようになっていた。
それを知ったときには手遅れだったのだ。
ヴィオレットは再びため息をつく。
そこへ「こんなところにいたのか」と声がかけられた。
視線を向ければ件のラウルとコレットが寄り添って立っていた。
ラウルは金髪碧眼の王子様然とした長身の美形だ。黙っていれば全ての令嬢が見惚れる。
ただし性格はすこぶる悪い。伯爵家長男であることを鼻にかけ横暴だし努力を嫌う。婚約者のヴィオレットのことは蔑ろにする。学園でヴィオレットが声をかけようものなら嫌悪感をむき出しにした。ヴィオレットはいつもまわりに同情されていた。
コレットは淡いピンクの珍しい髪色に栗色の瞳をしている。
愛らしい子リスのようだと男性からは言われるがその顔に合わない豊満な身体が彼女の自慢でもあった。
年齢よりやや幼い顔立ちだからふんわりした柔らかいフリルとレースをふんだんにあしらった可愛らしいドレスが似合うだろうに彼女は露出高めだ。
「ラウル様」
「気安く私の名を呼ぶな!」
「え?」
急な怒鳴り声にびっくりして目を丸くしているとラウルはこれ見よがしに傍らのコレットを抱き寄せて口を開く。
「ヴィオレット!貴様の悪行は全て把握している!よってここに貴様との婚約破棄を宣言する!」
皆聞け!とばかり声高らかにラウルは叫んだ。ちらちらと視線がこちらに向く。
「……婚約破棄、ですか」
「そうだ!言っておくが泣いて縋ろうとも貴様のような悪逆非道な女と将来を誓う気はない!」
「いえ、泣いて縋る気はございませんが」
唖然としていたヴィオレットが急にそれだけきっぱりと言い、ラウルは面食らった。
「…っな、強がりを!」
「そうですぅ、ヴィオレット様はぁ、ラウル様にぃ捨てられたんですよ!あたしのこといじめるから!」
ぎゅうっとラウルに胸を押し付けるようにしたコレットが口をとがらせる。
コレットのドレスは大きく胸の開いたドレスなのでぎゅむっと押し付けると乳房がはみ出さんばかりだ。
(誰かあれは月兎館という高級娼館で御用達のドレス。誰か教えてあげなかったのかしら)
今日は卒業パーティーだ。舞踏会とはいえ今日までは学生の身。故にみな大人しいデザインのドレスが多かった。
高級な素材でも露出は控えめだしアクセサリー類もシンプルな物が多い。
大半は袖のあるドレスでノースリーブのドレスの者はロンググローブをしてショールを羽織っている。コレットだけが胸元も開いていればスカートにスリットも入っている。
その上色は赤。落ち着きのある深紅などではなく人目を惹きたい!目立ちたい!そんな思惑が見えるような真っ赤だった。
そんな派手な色や露出の多いドレスを着るのは高級娼婦だけだ。夜会に出ない学生のうちはあまり知らないかもしれないが。
コレットから目を背ける令息や令嬢は多い。はしたないふしだらな恰好に思えて直視できないのだ。
「ところで悪逆非道とはどういったことでしょうか?」
「とぼけるな!私の寵愛を一身に受けているコレットが妬ましかったのだろう?いじめられたとコレットが言っている」
「ですから具体的に何を私がしたのか、と聞いているのです」
ラウルが大声で怒鳴るからホールのフロアは様子を伺うようにざわめきが引いている。楽し気な談笑の声がひそひそ話の小声になっていた。
せっかくの舞踏会なのに台無しじゃないのとヴィオレットは思うけれど絡まれてしまった以上どうすることもでき ない。
それにいじめていたなどという冤罪は晴らしておきたい。何しろラウルと婚約破棄してしまえば次を見つけるのは難しいのだ。
せめてラウルの有責で破棄したのだということは広めておきたい。
「それは……」
ラウルが詰まる。困ったようにコレットを見つめる。コレットは明らかに焦りを顔に浮かべた。
(まさかただいじめたってだけで断罪しようとしたわけじゃないわよね?)
年明けに一瞬だが、ヴィオレットがコレットをいじめているという噂がたったことがある。それを蒸し返す気だろうと思っていたのだが。
ラウルの出方を待っている間にヴィオレットはその時のことを思い出していた。
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