悪役令嬢は異世界からの客人に助けられる

雪菊

文字の大きさ
2 / 13

2

しおりを挟む

 友人が増えて男同士で遊ぶことが増えたのは良い。男性同士の社交もこれから成人するにあたって重要だ。
 今から人脈を作り上げることは大切だとヴィオレットは理解している。ヴィオレットも同様に令嬢たちとお茶会を開いたり観劇に行ったりした。
 しかしラウルは気づけば男同士ではなく女性を交えて出かけることが増えた。
 ヴィオレットとラウルは違うクラスだったのでクラスメイトだと言われれば引き下がるしかなかった。
 祖父や父の決めたことに逆らいたくはない。いずれ家を出る身なのだからそれまでは自慢の娘、孫でありたかった。
 ヴィオレットは社交とともに学業に打ち込み慈善事業も始めた。外国語を学んでいたから通訳補佐をして父の事業を手伝った。
 一方でラウルはただ遊んでいた。社交だと言いわけをして男友達だけでなくクラスメイトだからと子爵令嬢や男爵令嬢を連れて出かけていた。
 そのうち数名いたクラスメイトの女子が固定になり、気づけばコレット・グノー男爵令嬢と二人きりで出かけるようになっていた。
 それを知ったときには手遅れだったのだ。
 
 ヴィオレットは再びため息をつく。
 そこへ「こんなところにいたのか」と声がかけられた。
 視線を向ければ件のラウルとコレットが寄り添って立っていた。
 ラウルは金髪碧眼の王子様然とした長身の美形だ。黙っていれば全ての令嬢が見惚れる。
 ただし性格はすこぶる悪い。伯爵家長男であることを鼻にかけ横暴だし努力を嫌う。婚約者のヴィオレットのことは蔑ろにする。学園でヴィオレットが声をかけようものなら嫌悪感をむき出しにした。ヴィオレットはいつもまわりに同情されていた。
 コレットは淡いピンクの珍しい髪色に栗色の瞳をしている。
 愛らしい子リスのようだと男性からは言われるがその顔に合わない豊満な身体が彼女の自慢でもあった。
 年齢よりやや幼い顔立ちだからふんわりした柔らかいフリルとレースをふんだんにあしらった可愛らしいドレスが似合うだろうに彼女は露出高めだ。
 「ラウル様」
 「気安く私の名を呼ぶな!」
 「え?」
 急な怒鳴り声にびっくりして目を丸くしているとラウルはこれ見よがしに傍らのコレットを抱き寄せて口を開く。
 「ヴィオレット!貴様の悪行は全て把握している!よってここに貴様との婚約破棄を宣言する!」
 皆聞け!とばかり声高らかにラウルは叫んだ。ちらちらと視線がこちらに向く。
 「……婚約破棄、ですか」
 「そうだ!言っておくが泣いて縋ろうとも貴様のような悪逆非道な女と将来を誓う気はない!」
 「いえ、泣いて縋る気はございませんが」
 唖然としていたヴィオレットが急にそれだけきっぱりと言い、ラウルは面食らった。
 「…っな、強がりを!」
 「そうですぅ、ヴィオレット様はぁ、ラウル様にぃ捨てられたんですよ!あたしのこといじめるから!」
 ぎゅうっとラウルに胸を押し付けるようにしたコレットが口をとがらせる。
 コレットのドレスは大きく胸の開いたドレスなのでぎゅむっと押し付けると乳房がはみ出さんばかりだ。
 (誰かあれは月兎館という高級娼館で御用達のドレス。誰か教えてあげなかったのかしら)
 今日は卒業パーティーだ。舞踏会とはいえ今日までは学生の身。故にみな大人しいデザインのドレスが多かった。
 高級な素材でも露出は控えめだしアクセサリー類もシンプルな物が多い。
 大半は袖のあるドレスでノースリーブのドレスの者はロンググローブをしてショールを羽織っている。コレットだけが胸元も開いていればスカートにスリットも入っている。
 その上色は赤。落ち着きのある深紅などではなく人目を惹きたい!目立ちたい!そんな思惑が見えるような真っ赤だった。
 そんな派手な色や露出の多いドレスを着るのは高級娼婦だけだ。夜会に出ない学生のうちはあまり知らないかもしれないが。
 コレットから目を背ける令息や令嬢は多い。はしたないふしだらな恰好に思えて直視できないのだ。
 「ところで悪逆非道とはどういったことでしょうか?」
 「とぼけるな!私の寵愛を一身に受けているコレットが妬ましかったのだろう?いじめられたとコレットが言っている」
 「ですから具体的に何を私がしたのか、と聞いているのです」
 ラウルが大声で怒鳴るからホールのフロアは様子を伺うようにざわめきが引いている。楽し気な談笑の声がひそひそ話の小声になっていた。
 せっかくの舞踏会なのに台無しじゃないのとヴィオレットは思うけれど絡まれてしまった以上どうすることもでき ない。
 それにいじめていたなどという冤罪は晴らしておきたい。何しろラウルと婚約破棄してしまえば次を見つけるのは難しいのだ。
 せめてラウルの有責で破棄したのだということは広めておきたい。
 「それは……」
 ラウルが詰まる。困ったようにコレットを見つめる。コレットは明らかに焦りを顔に浮かべた。
 (まさかただいじめたってだけで断罪しようとしたわけじゃないわよね?)
 年明けに一瞬だが、ヴィオレットがコレットをいじめているという噂がたったことがある。それを蒸し返す気だろうと思っていたのだが。
 ラウルの出方を待っている間にヴィオレットはその時のことを思い出していた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私は婚約破棄をされ好い人と巡り会いました。

SHIN
恋愛
忙しい年末年始に現れたのはめったに顔を遭わせない男でした。 来た内容はえっ、婚約破棄ですか? 別に良いですよ。貴方のことは好きではありませんでしたし。 では手続きをしましょう。 あら、お父様。私が欲しいと言う殿方が居ますの?欲しがられるなんて良いですわね。 この話は婚約破棄を快く受け入れた王女が隣国の男に愛される話。 隣国の方はなんと『悪役令嬢をもらい受けます』のあの方と関わりがある人物だったりじゃなかったりの方です。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...