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毎日が幸せ

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こんな恥ずかしい姿をすぐにでも直くんの記憶から消したくて、直くんを洗面所に行かせた。
直くんが部屋から出て行くのを見送って急いでシャワールームに飛び込んだ。

頭から冷水を被って頭も身体も冷やす。

はぁーーっ。

ため息しか出ない。

直くんが朝勃ちの処理をしてくれたのに、たった二擦りでイってしまうなんて……。
俺……こんな早漏じゃなかったんだけどな。

直くんがしてくれるだけで我慢も何もできない。
俺、マジでやばいよな……。

いつか直くんと愛し会えた時、直くんを気持ちよくさせるなんてできるんだろうか……。

伯父さんや伊織さんたちに相談しても無駄だよな。
だって、絶対に満足させてそうだし……。俺みたいに早漏なんて絶対に有り得なさそう。
やっぱりここは恥を忍んで村山に相談するしかないよな。

あいつは絶対にカールと関係が進んでいるはずだ。
流石に親も住んでいる自宅だから最後まではできないにしても、それなりにやってるはずだ。
ただ学校では絶対にカールから離れないだろうしな。

週末直くんも一緒に遊ぼうって声をかけようか。直くんもカールがいる間に遊びたいだろうしな。
俺もその間に相談できるし、一石二鳥だ。

よし!

俺は冷水ですっかり冷えた身体にさっと温かなシャワーを浴びて出た。

制服に着替えて急いでキッチンに向かい、朝食の支度を手伝った。

途中で直くんが来てドキッとしたけれど、直くんは伯父さんに出発時間を聞いただけだった。
どうやらさっきのことは本当に二人だけの秘密にしてくれているみたいでホッとする。

朝食を済ませて、学校に行く準備をして玄関に向かうと、直くんがランチバッグを手渡してくれた。

「やった! 今日の中身は何?」

「鮭とおかかです」

「俺の好きなやつだ。ありがとう。今日楽しんできてね」

行ってらっしゃいと笑顔で見送られて、新婚みたいだななんて思いながら学校にむかった。

カールの登校も今日で四日目。
もうすっかり村山とカールのラブラブっぷりもみんな慣れてきたようで、二人の姿を見てもざわついたりはしなくなっていた。慣れって怖いな。

「おはよう、ノボル」

「ああ。おはよう」

靴箱で笑顔で声をかけてくれたカールに挨拶すると、その横でいつになくニヤついた表情を浮かべた村山に挨拶された。

「なんだよ、その顔。なんかいいことでもあったのか?」

「聞きたいか?」

「どうせカールがらみだろ。ってか、言いたくてたまらないんだろう? 早く言えよ」

「これ」

村山がさっと掲げたのは、ランチバック。

「あっ、もしかして……おにぎり、か?」

「正解! カールが俺のためだけに作ってくれたんだよ」

この上なく嬉しそうな表情を浮かべる村山を見て、俺も直くんのおにぎりをもらってこんな感じになってたんだろうなと想像できた。

「へぇ、カール。すごいな、おにぎり作れるなんて」

「ルリさんが教えてくれたんだ。ノボルがナオのおにぎりを美味しそうに食べてたから僕もリューヤに作りたくなったんだよ」

村山の母さんに頼んだのか。それは相当喜んだろうな。
娘と一緒に料理作ったりするのが夢だったって母さんと話してたの聞いたことあるし。
まぁ、娘じゃないけど似たようなもんだしな。

「村山、よかったな」

「ああ。休み時間が楽しみでたまらないよ」

「そう言えばさ、週末は何か予定立ててるのか?」

「そうそう。その話もしたかったんだ。土日のどっちか、直くんも一緒に遊べないか? カールが直くんに会いたがってるんだ。結婚式の話も聞きたいってさ。な、カール」

「うん。ナオとおしゃべりしたい」

「そっか。よかった、俺も遊べないか聞こうと思ってたんだ。じゃあ伯父さんたちとも相談して今日中に連絡するよ」

俺の言葉にカールはもちろん村山も喜んでいた。
そしてもちろん俺も……。これで村山とちょっと話ができるかもな。


<side直純>


テーブルに置かれた大きなお皿に盛り付けられたケーキは小さくてどれも可愛かった。
あの敬介さんのホテルのケーキなんだそうで、今日の集まりのためにわざわざ特別に作ってくれたらしい。

あの日はドレスや着物を用意してくれたし、本当に優しい人だな。

その敬介さんが今度みんなでお茶会がしたいと伝言してくれたそうで、今度はそのホテルで編み物をしながらのお茶会があるみたい。あやちゃんと一緒に僕も誘ってもらえるみたいでとっても嬉しい。

一花さんの結婚式にでていろんな人と知り合いになれて、僕の生活もすっかり変わったな。
今は毎日が幸せだ。

たくさんのケーキの中から苺のモンブランとガトーショコラというのを選ばせてもらって、どちらも美味しそうでどちらから手をつけようか悩んでしまう。

ガトーショコラというケーキの上に載っていたチョコレートがとても美味しそうに見えて、つい指で摘んで口に入れてしまった。チョコレートが溶けて指についたのを舐めるのがなんだかとても美味しく感じられた。

ふと視線を感じて顔を上げると一花さんと目が合った。
恥ずかしいところを見られてしまったと思って慌てて手を隠したけれど、一花さんは笑顔で

「気にしないでいいよ。僕もいつもそうしちゃうし。なんでだろうね、摘んで食べる方がずっと美味しく感じるよね」

と言ってくれた。その優しさに嬉しくなる。

「んっ? ああ、そのチョコレート? 僕もやるよ。大人だから恥ずかしいけどこっそりね」

僕たちの会話を聞いていた史紀さんはいたずらっ子のような笑顔で目の前にあったケーキの苺を指で摘んで口に放り込んだ。

「ん、美味しいね。ケーキは幸せになる食べ物だから好きに食べたらいいんだよ」

その笑顔に僕も笑顔が溢れた。
やっぱり今の生活は毎日が幸せだ。
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