ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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直くんの才能

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<side絢斗>

休憩も終わり、これから自分が何を作るのかを決定していく。
まだ信じられない部分はあるけれど、思いがけず自分に編み物の才能があるらしいということがわかって、何を作ろうかワクワクする。

直くんは作りたい人がいっぱいだから、みんなにマフラーを作るみたい。
一番最初はフランスに行った二葉さんと毅さん。
フランスの冬は寒いから、きっと直くんのマフラーは重宝するだろう。
あの二人なら直くんの手作りだって知ったら喜んで使ってくれるだろうな。
それから私と卓さん。そして昇くん。あとは直くんにとっての二人のおじいちゃん。
無理をさせないように注意しながら作らせてあげないとな。

そして、私は何を作ろうか。
私が作るのは卓さんだけだし、直くんが時間をかけてたくさん作るのだから、私も時間をかけて卓さんのものを編みたいと思った。でも、さすがにセーターは無謀だろう。

それなら手袋。
前に理央くんが作ったという手袋を見せてもらったけれど、かなり難しそうだった。
まさかあの時は自分が編めるなんて思わなかったから詳しく聞かなかったけれど、観月くんがすごく嬉しそうにしていたから卓さんにもあんな表情をしてもらえたらいいな。

初心者には手袋も無謀です。マフラーが無難ですよ……なんて言われるかもしれないと思いつつ、

「史紀さん、手袋は難しいかな?」

緊張しながら尋ねた。

「初心者にはかなり難しいですが、絢斗さんなら作れると思いますよ」

史紀さんに太鼓判を押されてホッとする。
初めてなんだしできなくてもいいという気持ちで頑張ってみようかな。

一花ちゃんも手袋を編むことにしたみたい。
それならもっと頑張れそうな気がする。仲間がいるっていいな!

「絢斗くん、毛糸はもう選んだ?」

未知子さんから尋ねられて、私は首を横に振った。
あの保養所で一花ちゃんからアプリを教えてもらって、それからも何度か直くんと毛糸を見ていたけれど、マフラーを作るには最低でも四つくらいは必要になる。それを買って、もし編み物が壊滅的にダメだったら……みすみす無駄にしてしまうとわかって購入することはできなかった。
きっと直くんは作れそうだから買っておいても大丈夫だと思ったけれど、やっぱり直くんも不安だったみたいで今回は買わずにいた。

「それならよかったわ。毛糸にはいろんな種類があるから作るものが決まっているならそれに合った毛糸を選んだ方がより編みやすいのよ」

買っておいたほうが時間短縮になったかもしれないと思ったけれど、未知子さんに言われてホッとする。
直くんと顔を見合わせて笑い合った。

「あのアプリに毛糸がたくさん追加されたって征哉が言っていたわ。史紀さんはあのアプリを知っているのかしら?」

「ええ。先日、敬介さんから教えてもらいました。今からみんなで好きな毛糸を選びましょうか?」

そうか、史紀さんは敬介くんから教えてもらったんだ。
確か開発に周平くんが関わっていると言っていたからそれなら敬介くんが知っていて当然か。

毛糸を選ぶのは難しそうだけど、未知子さんと史紀さんがアドバイスをくれるから安心だ。

早速アプリを開いて毛糸を探してみる。

「あれ?」

「どうかした?」

「いや、この前見た時よりものすごく毛糸の種類が増えてるなって。ねぇ、直くん」

「はい。色の種類もすごく増えてます」

その量の多さにびっくりしてしまう。

「きっと敬介さんが蓮見さんに頼んでくれたんじゃないかな。今日編み物会をするのを知ってるから」

「きっとそうね。それなら素敵なものが選べるわね。毛糸選びから編み物は始まっているんだから楽しくなるわよ」

未知子さんのいうとおり、毛糸を選ぶのが楽しい。その人をイメージしながら毛糸を選ぶってこんなに楽しいものなんだな。

「あっ! これ! すごく綺麗!! ふーちゃんに似合いそう! あやちゃん、どうですか?」

夢中で毛糸を見ていた直くんが嬉しそうな声をあげる。
二葉さんに似合いそうだと言ったのは、綺麗な菖蒲色の毛糸。
なるほど、直くんの中で二葉さんはこういうイメージなんだ。うん、よく似合ってる。

「毅パパは……あ、これ! いいかも!!」

直くんが指さしたのは、はなだ色。青よりも少し薄い色でこちらも毅さんにピッタリだ。
この色でマフラーを作って送ったら、二人とも大喜びだろうな。

「直くん、似合う色を選ぶのが上手だね」

「えっ、そんな……っ」

一花ちゃんから尊敬の眼差しで見つめられて、照れている直くんがすごく可愛かった。
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