ひとりぼっちになった僕は新しい家族に愛と幸せを教えてもらいました

波木真帆

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幸せと喜びと恥ずかしさと※微

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「毎週みんなで集まれたら楽しいわ。ねぇ、絢斗くん」

手の中にあるコースターを茫然と見つめていると、未知子さんの声が聞こえたと思ったら、

「えっ!」
「まぁ!」
「わぁっ!!」

みんなの驚く声が聞こえた。
私だって驚いているんだからその反応も当然だろう。

「すごいわ、絢斗くん! 全然苦手なんかじゃないじゃない!」

目を輝かせて褒めてくれる未知子さんの隣で、直くんと一花ちゃんはあんぐりと口をあけて私を見ていた。

でも自分でもどうしてこんなことができたのかわからない。
ただ史紀さんだけは笑顔で教えてくれた。

「絢斗さんはやる前から頭でいろいろと考えすぎてしまうんです。それで難しいと感じて今まで敬遠していたみたいですが、何も考えずにやったらうまくいったみたいですね。僕は少し注意を逸らそうと話しかけてただけですから。元々、絢斗さんには才能があるんですよ」

注意を逸らそうと……そうか、話しかけてくれていたのはそういう理由だったんだ。
特に何も思わずに好きな花のことを考えていたら、指が勝手に動いていた。

「私に、編み物の才能なんて……絶対ないと思ってた……でも、これ本当に私が作ったんだよね?」

「ええ。これならすぐになんでも編めるようになりますよ。磯山先生もお喜びになりますね」

まだ自分でやったと信じられなかったけれど、卓さんが喜んでくれるという言葉に、私は幸せでたまらなかった。

<side直純>

あやちゃんの才能にびっくりしつつ、僕も未知子さんと一花さんのおかげで指が動くようになってきた。
あやちゃんほど上手じゃないけれど、僕の手の中にもお花のコースターがある。
これ、もう少し上手に編めるようになったら昇さんにプレゼントしようかな。

――直くん、ありがとう。

優しい昇さんだからきっと喜んでくれそう。想像するだけで楽しい。

「少し休憩しましょうか。僕、美味しいケーキを買ってきたんですよ。玄関で牧田さんにお渡ししてきました」

史紀さんの言葉に、未知子さんがすぐに部屋を出ていった。
すぐに帰ってきて、

「そろそろ休憩だと思って準備してくれていたみたい。すぐに持ってきてくれるわ」

と教えてくれた。

牧田さんって、玄関に一花さんたちと一緒にいた人だよね。
すごく優しそうだったな。

そんなことを思っていると、突然

「あっ! そういえば直くん、一花ちゃんたちにお土産渡すの忘れてるよ」

と教えられた。
そうだった。今日会ったらすぐに渡そうと思っていたのに部屋に入ってグリちゃんに会ってはしゃいでたからすっかり忘れてた。

持ってきたリュックを急いで開けて、中からラッピングされたお土産を取り出した。

「あの、一花さんと貴船さんの結婚式の次の日に、水族館に連れて行ってもらったんです。それでこれ、その時のお土産です。これは一花さん」

受け取ってもらえるかドキドキしながら手渡すと、一花さんは満面の笑顔で受け取ってくれた。
それにホッとしつつ、未知子さんと史紀さんにもお土産を渡した。

みんなすぐにラッピングを開けてくれて、その瞬間がすごくドキドキした。

「わぁーっ!! 可愛いっ!!」

一花さんに選んだ、どこかに吊り下げられる大きさの可愛いペンギンちゃんは僕の一番小さなペンギンちゃんよりずっとずっと小さい。手のひらサイズのペンギンちゃんだ。一花さんはそれを嬉しそうに顔の近くまで持っていって見つめてくれた。

「あらあら、私のはアザラシかしら? 可愛いわ」

「僕のはカワウソかな。可愛いね! ありがとう!」

未知子さんと史紀さんも同じサイズのアザラシくんとカワウソくん。やっぱり可愛くて似合ってる気がする。

水族館のぬいぐるみがすごく可愛くて、本当は大きなぬいぐるみをお土産に渡したかったけれど、大きさで断念しちゃった話をあやちゃんがいうと、一花さんは納得したように頷いていた。そうか、あの水族館に行ったことがあるんだ。

「一花さんもあの水族館行ったんですね。僕……同じものを買っちゃったりしてませんか?」

「大丈夫、僕が買ってもらったのは、ほら。あそこのラッコちゃんだから」

同じものをもらっても優しい一花さんだから自分からは言わなさそうな気がして尋ねると、大きなベッドを指差して教えてくれた。そっちに視線を向けると、パパとあやちゃんが買ってくれたくらいの大きさのラッコちゃんがいた。

その首にマフラーが巻かれているのが見えて、

「わぁー、可愛い! ラッコちゃんがマフラーしてる。これって、もしかして……?」

と尋ねると、やっぱり一花さんの手作りだった。

「僕もあれくらいの大きさのペンギンさんのぬいぐるみ買ってもらったので、真似してもいいですか?」

ドキドキしながら尋ねると、

「もちろん! お揃い、嬉しいよ」

と笑顔で返してくれた。

一花さんとお揃い……っ。それがとても嬉しかった。

<side昇>

ああ……今朝はなんとも刺激的な朝だった。

俺が直くんのためにプレゼントしたペンギンに話しかけている可愛い姿を見れて嬉しすぎて抱きしめたら、直くんに朝勃ちを気づかれた。今までなら、直くんに気づかれる前に処理しなきゃ! と焦ってトイレに飛び込んだだろうけど、それをしなくても良くなっただけで心に余裕ができたはずだった。

それなのに、服越しに直くんの小さな手に触れられて余裕なんか吹き飛んでしまった。

今日は学校だし、今触れられたら学校でもその感触を思い出してとんでもないことになりそうな気がする。
なんとか直くんの手を止めようと思って正直に我慢ができなくなりそうだと告げた。

それでその手は止まるだろうと思ったのに、

「……? 我慢は、しなくていいですよ」

とんでもない言葉をかけられた。

我慢しなくてもいい……それって、俺と最後まで……。

違う、違う! 
直くんがそんなことを言うわけないし、伯父さんに知られたら殺される。

でも直くんの言葉が頭から離れない。

茫然としている間に、

「僕、蜜を出すお手伝いしてもいいですか?」

と言われたと思ったら、布団を剥ぎ取られてしまった。

なんとか布団で隠していたのに、それがなくなったら俺の昂りがパジャマを押し上げているのがバレバレだ。

「服、脱がなくていいですか?」

「えっ、は、はい。ぬ、ぬぎますっ」

もう頭は働いてない。言われるがままにズボンと下着を取ると朝勃ちとは思えないほど昂ったモノが現れた。
直くんはそれを見て怖がるでもなく、笑顔を見せた。

「朝から元気で可愛いですね」

嬉しそうに触れながらそんなことを言われておかしくなりそうだ。
直くんは俺の様子に気づくこともなく、両手で俺の昂りを握ると上下に二度擦った。
それだけであっという間に限界を迎えた俺は、あっけなく蜜を溢した。

嬉しそうな直くんとは対照的に俺は早漏だと思われたのが恥ずかしくてたまらなかった。
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