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番外編
取り逃がした天使 <side楠田>
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サブタイトル見て、誰?って感じですよね。
宮古島旅行編がようやく終わったところで、思いついたお話は真琴がOB訪問に行こうとしていた相手視点のお話です。
ちなみに楠田→クズだから名前つけてます(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
総務に呼び出され、仕事で必要な資格を取るのに大学の卒業証明書がいると面倒なことを言われ、仕方なく俺は久しぶりに母校である桜城大学に足を踏み入れた。
入学するときもギリギリだったが、留年を重ねなんとか七年で卒業できた大学は、俺にとってはかなり居心地が悪い。
なんせ、周りにいる奴らはみんなエリート。
在学中に司法試験に合格するような奴らがゴロゴロいるし、卒業後は会社社長や官僚、医師や弁護士などかなりハイスペックな職業についている。
ハイスペックなくせに金持ちで、しかもイケメン。
そんな奴らの陰に隠れるように俺は生きてきた。
だが、底辺であってもあいつらと同じ桜城大学卒業生に変わりはない。
卒業後は社長でも官僚でもない、ただの会社員だけれど父親のコネでかなり有名な会社に就職できた。
俺の勤める会社は桜城大学の学生からも人気は高く、OB訪問の依頼は後をたたない。その中でも俺好みのやつを狙って、OB訪問を受けてやる。
もちろん狙いはそいつの身体。
男でも女でも可愛ければ問題ない。
ただ、しっかりと吟味するのはそいつが口を割らないやつかどうかだけ。
気が弱く、俺にどんなことをされても誰にも相談できなさそうなやつで、俺好みのやつとなると、なかなかぴったりなものはいないが、でもそれなりにここ数年楽しんできた。
案の上、誰にも相談できなかったらしい奴らのおかげで、俺は今もこうして楽しい日々を過ごしている。
「さっさと証明書取って帰ろう」
郵送でもよかったが、すぐに必要だと言われたから仕方がない。
さっさと取って帰りかけていたとき、遠くの方で俺好みの可愛い子が通ったことに俺のセンサーが発動した。
あの子、なんだ?
すっげぇ好み!!
近くには教授らしき姿があり、さすがに近くには寄れない。
しばらくその辺りをうろうろしたが、会社からさっさと帰ってこい! とスマホに連絡が入ってしまった。
仕方なく俺はスマホで最大限アップにして、その子の写真を撮り、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。
それからというもの、気づけばその写真を見つめてしまっている。
あの子を俺のでっかいのでヒィヒィ言わせてやりたいと思い続けていると、写真を見るだけで興奮するようになっていた。
今日も喫煙室で写真を見つめていると、
「どうしたんだよ、そんなしけたツラして」
と声が聞こえた。
見上げれば、同じ大学の先輩で今は上司の男が立っていた。
「いや、なんでもないですよ」
さっとスマホを隠そうとしたら、その前に画面を覗き込まれてしまった。
「あっ、ちょっーー」
「あれ? この子……」
「えっ? 知り合いですか?」
「いや、知り合いっていうこともないが、俺の後輩が彼と同じゼミにいて、うちの会社が気になっているみたいな話をされたって。まだOB訪問するほどじゃないらしいけど、いくつか聞かれたことをその後輩経由で教えてやったんだよ」
「っ、あ、あの! その後輩の連絡先、教えてください!」
「えっ? なんで?」
いきなり何言ってんだ、こいつ……って顔をされるが、彼とのつながりを失いたくない。
「い、いや。うちの会社気になってるなら、先輩として話をしてあげたいんで、後輩の連絡先教えるのがダメなら、後輩に俺の連絡先教えて、その子から連絡もらうんでもいいんで。お願いします」
「なんだよ、お前、そんな後輩思いだったか? まぁ、OB訪問やらは熱心にやってるみたいだったが」
「そ、そうなんですよ。いい人材の確保は早めがいいですからね」
「にしては、お前が対応する学生、誰も就職試験を受けにこないけどな」
「ぐっ――! い、今の子は気合いが足りないんですよ」
「わかった。わかった。じゃあ、俺の後輩にお前の連絡先教えとくよ、連絡が来るか来ないかはわからないけどな」
「はい。それで大丈夫です」
そう言いつつも、俺は絶対に返事が来ると確証していた。
あの子は絶対に人への礼儀を欠かさない子だ。
そうして、一秒たりともスマホから手放さない生活を過ごして三日目。
見慣れない番号から電話が来た。
ーあ、あの……楠田さんのお電話でお間違えないでしょうか?
ーはい。楠田です。
ー私、桜城大学に通っています砂川と申します。OB訪問の件でご連絡させていただきました。
ビンゴっ!!!
ああ、なんて可愛い声なんだ。
まるで小鳥の囀りのように美しい。
ー砂川くんだね。初めまして。いやぁ、君がうちの会社を気になってくれていると人伝てに聞いてね、ぜひ私が案内してあげようと思って連絡先を渡したんだ。連絡をくれて嬉しいよ。
ーわざわざありがとうございます。ですが、まだ検討段階で貴社に入ってどうこうというところまでは考えていないので、そんな私のためにお時間を頂戴するのは申し訳なくて……
ーそんなこと気にしないでいいよ。学生時代は大いに悩むものさ。今回訪問したからといって必ずうちに入らなければいけないといったこともないし、実際に見学することは悪いことではないよ。どうだろう? 試しに一度来ないか?
ーえっ、でも……ご迷惑では?
ー迷惑なら最初から連絡先を伝えたりしないよ。私は君たち後輩のために力を貸したいだけなんだ。来てくれるだろう?
ーは、はい。じゃあ、一度お伺いして、お話を聞かせていただきたいです。
よしっ!!!!!
作戦成功だ!!!!
ーじゃあ……
日にちを言おうとして、スケジュールを思い出す。
タイミングの悪いことに長期出張が入っている。
ー少し間が開くが二週間後の金曜日でも大丈夫かな?
ーはい。それでは予定を入れておきます。ありがとうございます。
ーなにかあったらいつでも連絡をくれ。
そういうとわかりましたと言って電話はきれた。
ああ、もう最高だ!
金曜日、適当に会社訪問を終わらせて食事に誘ってそのままホテルに連れ込むか。いつもの睡眠薬使えばあっという間だろう。
それからの出張中、かなり興奮しまくっていたが、彼・砂川くんとの楽しい時間のために自家発電もやめて溜め続けた。
そして、ようやく約束の前日を迎えた。
すると、手の中のスマホがブルブルと震える。
見れば砂川くんの表示。
喜び勇んで電話をとるが、
ー楠田さん、申し訳ありません。明日のお約束ですが、どうしてもいけない用事ができてしまって……キャンセルさせてください。
と、そんな言葉が聞こえてきた。
ーはぁ? なんで?
ー申し訳ありません。実はバイト先の休みをお願いしていたんですが、休日返上で働くように言われてしまって……
ーそんなの断ればいいだろう? ただのバイトなんだから。
ーでも、バイトでも仕事には変わりありませんし。
ーふざけるなよ、今日のためにどれだけ時間を調整したと思ってんだ?
ー本当に申し訳ありません。もし、よければ次の機会にでもお願いします。
そう言ってきたが、残念ながら、週明けからまた出張が入っている。その終わりがまだいつになるか判断がつかない。
ーわかったよ。じゃあ、また連絡するから、今度は必ずだからな。
ーはい。本当に申し訳ありません。
そう言って電話は切れた。
くそっ!!!
これまで死ぬほど待ってたのに!!!
全ての計画が丸潰れだ!
今度あったら、この分もたっぷり遊んでやらないとな。
覚えとけよ!!
それからしばらくして、ようやく仕事も落ち着く見通しがつき、砂川くんに連絡をしようと思っていた矢先……
「楠田さんですね、少しお時間いいですか?」
仕事から帰ろうとする俺の前に、見るからに高級そうなスーツに身を包んだ男が突然現れた。
「なんだ、お前? 誰だ?」
「弁護士の成瀬、と申します。被害者の方からの依頼、と言ったらわかるでしょうか?」
「っ、な、なんだよ。被害者って。俺は何もしてない!」
「そうですか? あなたがその態度なら、こちらはすぐに出るところに出ますが……」
そう言って上着のポケットから出してきたのは今までOB訪問できていた奴らとのホテルでの写真。
「な、なんで、これが……」
「あなたが、このことをバラしたら写真をばら撒くぞと脅した音声データもありますよ。これをもって警察に行きますか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 助けてくれ! どうしたらいいんだ?」
「被害者の皆さまの希望は慰謝料、一人五百万。あなたが今までに無理やり手を出した学生全員からの依頼ですので、七千五百万をお支払い頂いたら、警察には届けないと仰っていますが、どうされますか?」
「な、ななせん、ごひゃくまん? そ、そんな大金払えるわけないだろう! ふざけんな!」
「ふざけてませんよ。正当な金額です。恨むなら、今まで自分勝手に行動していた自分を恨んでください。期間は一週間。その間に支払いがなければ、示談に応じないとみなして、告訴します。言っておきますが告訴しても多少の増減はありますが慰謝料の支払いはありますのでご了承くださいね」
「ちょっと待ってくれ! 一週間でそんな大金。用意できるわけないだろう!」
「親御さんに頭を下げたらいかがですか? 土地家屋を売ればそれくらいの金額は可能でしょう。ああ、ついでにご実家の方にも内容証明郵便をお送りしておりますので、すぐにご対応いただけると思いますよ」
「はぁ? うちの実家に? なんでだよ!」
「楠田さんは今ご実家暮らしですよね? ご家族の方と一緒に検討いただく必要がございますので、ご連絡差し上げました」
その弁護士がにこりと笑ったと同時に俺のスマホが鳴り始める。
父親の名前が書かれたその表示に背筋が凍る。
通話ボタンを押すとこちらが声をかける前にすぐに帰ってこい! と聞いたこともない大声で怒鳴られた。慌てて自宅に帰れば、家の扉を開けるや否や、父親の鉄拳が飛んできて、顔中血まみれになるほど殴られた。
結局、奴らへの慰謝料の支払いに実家の土地家屋全てを売り払った。
なんとかそれで支払えたものの、親からは勘当され、親のコネで入った会社もクビになり、俺は両親への借金を返すために昼夜問わず仕事の毎日。
どこで歯車が狂ってしまったのか……。
後悔はただひとつ。
あの、砂川くんを手に入れられなかったこと。
あの時あの子を俺のものにできていたら、俺は最高に幸せだったのに。
彼は今どこで何をしているんだろう。
そっと電話をかけてみたが、<お客様のおかけになった番号へはお繋ぎできません>と無機質な言葉が聞こえるだけ。
いつの間にか、俺が撮った写真もフォルダから消えてしまっていた。
もしかしたら、あれは全て夢だったのかもしれないと思うほど、俺の中から彼の記憶が消えていく。
彼一体なんだったのか……。
俺には手が負えない人だったのかもしれない。
* * *
このお話の優一視点需要あります?
宮古島旅行編がようやく終わったところで、思いついたお話は真琴がOB訪問に行こうとしていた相手視点のお話です。
ちなみに楠田→クズだから名前つけてます(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです。
* * *
総務に呼び出され、仕事で必要な資格を取るのに大学の卒業証明書がいると面倒なことを言われ、仕方なく俺は久しぶりに母校である桜城大学に足を踏み入れた。
入学するときもギリギリだったが、留年を重ねなんとか七年で卒業できた大学は、俺にとってはかなり居心地が悪い。
なんせ、周りにいる奴らはみんなエリート。
在学中に司法試験に合格するような奴らがゴロゴロいるし、卒業後は会社社長や官僚、医師や弁護士などかなりハイスペックな職業についている。
ハイスペックなくせに金持ちで、しかもイケメン。
そんな奴らの陰に隠れるように俺は生きてきた。
だが、底辺であってもあいつらと同じ桜城大学卒業生に変わりはない。
卒業後は社長でも官僚でもない、ただの会社員だけれど父親のコネでかなり有名な会社に就職できた。
俺の勤める会社は桜城大学の学生からも人気は高く、OB訪問の依頼は後をたたない。その中でも俺好みのやつを狙って、OB訪問を受けてやる。
もちろん狙いはそいつの身体。
男でも女でも可愛ければ問題ない。
ただ、しっかりと吟味するのはそいつが口を割らないやつかどうかだけ。
気が弱く、俺にどんなことをされても誰にも相談できなさそうなやつで、俺好みのやつとなると、なかなかぴったりなものはいないが、でもそれなりにここ数年楽しんできた。
案の上、誰にも相談できなかったらしい奴らのおかげで、俺は今もこうして楽しい日々を過ごしている。
「さっさと証明書取って帰ろう」
郵送でもよかったが、すぐに必要だと言われたから仕方がない。
さっさと取って帰りかけていたとき、遠くの方で俺好みの可愛い子が通ったことに俺のセンサーが発動した。
あの子、なんだ?
すっげぇ好み!!
近くには教授らしき姿があり、さすがに近くには寄れない。
しばらくその辺りをうろうろしたが、会社からさっさと帰ってこい! とスマホに連絡が入ってしまった。
仕方なく俺はスマホで最大限アップにして、その子の写真を撮り、後ろ髪を引かれる思いでその場を立ち去った。
それからというもの、気づけばその写真を見つめてしまっている。
あの子を俺のでっかいのでヒィヒィ言わせてやりたいと思い続けていると、写真を見るだけで興奮するようになっていた。
今日も喫煙室で写真を見つめていると、
「どうしたんだよ、そんなしけたツラして」
と声が聞こえた。
見上げれば、同じ大学の先輩で今は上司の男が立っていた。
「いや、なんでもないですよ」
さっとスマホを隠そうとしたら、その前に画面を覗き込まれてしまった。
「あっ、ちょっーー」
「あれ? この子……」
「えっ? 知り合いですか?」
「いや、知り合いっていうこともないが、俺の後輩が彼と同じゼミにいて、うちの会社が気になっているみたいな話をされたって。まだOB訪問するほどじゃないらしいけど、いくつか聞かれたことをその後輩経由で教えてやったんだよ」
「っ、あ、あの! その後輩の連絡先、教えてください!」
「えっ? なんで?」
いきなり何言ってんだ、こいつ……って顔をされるが、彼とのつながりを失いたくない。
「い、いや。うちの会社気になってるなら、先輩として話をしてあげたいんで、後輩の連絡先教えるのがダメなら、後輩に俺の連絡先教えて、その子から連絡もらうんでもいいんで。お願いします」
「なんだよ、お前、そんな後輩思いだったか? まぁ、OB訪問やらは熱心にやってるみたいだったが」
「そ、そうなんですよ。いい人材の確保は早めがいいですからね」
「にしては、お前が対応する学生、誰も就職試験を受けにこないけどな」
「ぐっ――! い、今の子は気合いが足りないんですよ」
「わかった。わかった。じゃあ、俺の後輩にお前の連絡先教えとくよ、連絡が来るか来ないかはわからないけどな」
「はい。それで大丈夫です」
そう言いつつも、俺は絶対に返事が来ると確証していた。
あの子は絶対に人への礼儀を欠かさない子だ。
そうして、一秒たりともスマホから手放さない生活を過ごして三日目。
見慣れない番号から電話が来た。
ーあ、あの……楠田さんのお電話でお間違えないでしょうか?
ーはい。楠田です。
ー私、桜城大学に通っています砂川と申します。OB訪問の件でご連絡させていただきました。
ビンゴっ!!!
ああ、なんて可愛い声なんだ。
まるで小鳥の囀りのように美しい。
ー砂川くんだね。初めまして。いやぁ、君がうちの会社を気になってくれていると人伝てに聞いてね、ぜひ私が案内してあげようと思って連絡先を渡したんだ。連絡をくれて嬉しいよ。
ーわざわざありがとうございます。ですが、まだ検討段階で貴社に入ってどうこうというところまでは考えていないので、そんな私のためにお時間を頂戴するのは申し訳なくて……
ーそんなこと気にしないでいいよ。学生時代は大いに悩むものさ。今回訪問したからといって必ずうちに入らなければいけないといったこともないし、実際に見学することは悪いことではないよ。どうだろう? 試しに一度来ないか?
ーえっ、でも……ご迷惑では?
ー迷惑なら最初から連絡先を伝えたりしないよ。私は君たち後輩のために力を貸したいだけなんだ。来てくれるだろう?
ーは、はい。じゃあ、一度お伺いして、お話を聞かせていただきたいです。
よしっ!!!!!
作戦成功だ!!!!
ーじゃあ……
日にちを言おうとして、スケジュールを思い出す。
タイミングの悪いことに長期出張が入っている。
ー少し間が開くが二週間後の金曜日でも大丈夫かな?
ーはい。それでは予定を入れておきます。ありがとうございます。
ーなにかあったらいつでも連絡をくれ。
そういうとわかりましたと言って電話はきれた。
ああ、もう最高だ!
金曜日、適当に会社訪問を終わらせて食事に誘ってそのままホテルに連れ込むか。いつもの睡眠薬使えばあっという間だろう。
それからの出張中、かなり興奮しまくっていたが、彼・砂川くんとの楽しい時間のために自家発電もやめて溜め続けた。
そして、ようやく約束の前日を迎えた。
すると、手の中のスマホがブルブルと震える。
見れば砂川くんの表示。
喜び勇んで電話をとるが、
ー楠田さん、申し訳ありません。明日のお約束ですが、どうしてもいけない用事ができてしまって……キャンセルさせてください。
と、そんな言葉が聞こえてきた。
ーはぁ? なんで?
ー申し訳ありません。実はバイト先の休みをお願いしていたんですが、休日返上で働くように言われてしまって……
ーそんなの断ればいいだろう? ただのバイトなんだから。
ーでも、バイトでも仕事には変わりありませんし。
ーふざけるなよ、今日のためにどれだけ時間を調整したと思ってんだ?
ー本当に申し訳ありません。もし、よければ次の機会にでもお願いします。
そう言ってきたが、残念ながら、週明けからまた出張が入っている。その終わりがまだいつになるか判断がつかない。
ーわかったよ。じゃあ、また連絡するから、今度は必ずだからな。
ーはい。本当に申し訳ありません。
そう言って電話は切れた。
くそっ!!!
これまで死ぬほど待ってたのに!!!
全ての計画が丸潰れだ!
今度あったら、この分もたっぷり遊んでやらないとな。
覚えとけよ!!
それからしばらくして、ようやく仕事も落ち着く見通しがつき、砂川くんに連絡をしようと思っていた矢先……
「楠田さんですね、少しお時間いいですか?」
仕事から帰ろうとする俺の前に、見るからに高級そうなスーツに身を包んだ男が突然現れた。
「なんだ、お前? 誰だ?」
「弁護士の成瀬、と申します。被害者の方からの依頼、と言ったらわかるでしょうか?」
「っ、な、なんだよ。被害者って。俺は何もしてない!」
「そうですか? あなたがその態度なら、こちらはすぐに出るところに出ますが……」
そう言って上着のポケットから出してきたのは今までOB訪問できていた奴らとのホテルでの写真。
「な、なんで、これが……」
「あなたが、このことをバラしたら写真をばら撒くぞと脅した音声データもありますよ。これをもって警察に行きますか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 助けてくれ! どうしたらいいんだ?」
「被害者の皆さまの希望は慰謝料、一人五百万。あなたが今までに無理やり手を出した学生全員からの依頼ですので、七千五百万をお支払い頂いたら、警察には届けないと仰っていますが、どうされますか?」
「な、ななせん、ごひゃくまん? そ、そんな大金払えるわけないだろう! ふざけんな!」
「ふざけてませんよ。正当な金額です。恨むなら、今まで自分勝手に行動していた自分を恨んでください。期間は一週間。その間に支払いがなければ、示談に応じないとみなして、告訴します。言っておきますが告訴しても多少の増減はありますが慰謝料の支払いはありますのでご了承くださいね」
「ちょっと待ってくれ! 一週間でそんな大金。用意できるわけないだろう!」
「親御さんに頭を下げたらいかがですか? 土地家屋を売ればそれくらいの金額は可能でしょう。ああ、ついでにご実家の方にも内容証明郵便をお送りしておりますので、すぐにご対応いただけると思いますよ」
「はぁ? うちの実家に? なんでだよ!」
「楠田さんは今ご実家暮らしですよね? ご家族の方と一緒に検討いただく必要がございますので、ご連絡差し上げました」
その弁護士がにこりと笑ったと同時に俺のスマホが鳴り始める。
父親の名前が書かれたその表示に背筋が凍る。
通話ボタンを押すとこちらが声をかける前にすぐに帰ってこい! と聞いたこともない大声で怒鳴られた。慌てて自宅に帰れば、家の扉を開けるや否や、父親の鉄拳が飛んできて、顔中血まみれになるほど殴られた。
結局、奴らへの慰謝料の支払いに実家の土地家屋全てを売り払った。
なんとかそれで支払えたものの、親からは勘当され、親のコネで入った会社もクビになり、俺は両親への借金を返すために昼夜問わず仕事の毎日。
どこで歯車が狂ってしまったのか……。
後悔はただひとつ。
あの、砂川くんを手に入れられなかったこと。
あの時あの子を俺のものにできていたら、俺は最高に幸せだったのに。
彼は今どこで何をしているんだろう。
そっと電話をかけてみたが、<お客様のおかけになった番号へはお繋ぎできません>と無機質な言葉が聞こえるだけ。
いつの間にか、俺が撮った写真もフォルダから消えてしまっていた。
もしかしたら、あれは全て夢だったのかもしれないと思うほど、俺の中から彼の記憶が消えていく。
彼一体なんだったのか……。
俺には手が負えない人だったのかもしれない。
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このお話の優一視点需要あります?
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