溺愛弁護士の裏の顔 〜僕はあなたを信じます

波木真帆

文字の大きさ
上 下
74 / 88
番外編

宮古島旅行  22

しおりを挟む
真琴を胸に抱いたまま、しばらくみんなと酒を酌み交わす。
もちろん、安慶名には真琴のかわいい寝顔は見えないように。

「成瀬さん、真琴がいたら重いんじゃない? 部屋に寝かせてきたらどう?」

「いえ、真琴一人くらい大した重さではないですよ。それに一人で寝かせておくのは可哀想ですから」

「ふふっ。真琴は悠真と年も離れて生まれたものだから、みんなで可愛がって育てて…すっかり甘えん坊になってしまったの。だから、真琴が女性を守るなんてできるかしらと不安だったのだけど、成瀬さんのような頼りがいのある人と出会えて本当に良かったわ」

「いえ、真琴は強いですよ。少し前にも友人が困っているところを助けて守っていましたし。私はそんな真琴の姿も好きになったんです」

「あら、そうなの? 真琴も東京で逞しくなったのね」

お義母さんは嬉しそうに俺の腕の中の真琴を見つめる。

「うーん……ゆ、いちさん……っ、すきぃ……」

そのタイミングで真琴の口から可愛い声が漏れる。

「ふふっ。夢の中まで成瀬さんのことなのね」

「こんなに好いた人に、愛してもらえる真琴は本当に幸せだよ。ねぇ、成瀬さん」

「いえ、私の方こそ、真琴に好きになってもらえて幸せです。今までずっと人に好かれることも好きになることも興味はなかったですから」

「そんな二人だから、引き合ったのかもしれないねぇ。今頃、正崇も正篤さんも喜んでいるよ。ねぇシズさん」

「ええ。そうですね、お義母さん。それに悠真も。あんたはずっと真琴のことばかり優先していたから、幸せを逃すんじゃないかって心配していたのよ。でも、二人とも同じタイミングで運命の相手に出会えて安心したよ」

「母さん……」

悠真さんは少し涙を潤ませながら、小さく頷いた。

「安慶名さん、悠真は我慢しすぎるところがあるから心配だったのだけど、あなたの前ではそうではないのでしょう?」

「はい。最近は可愛いわがままも言ってくれます」

「伊織さん――っ」

「ふふっ。悠真、それでいいのよ。全てを曝け出せる相手がいるって幸せなことよ」

さすが母親だな。悠真さんと真琴と、ちゃんと二人の性格も全てもわかっている。

「安慶名さん、成瀬さん。これからもうちの息子たちをお願いしますね」

「「はい。一生大切にします」」

「ふふっ。仲良しなのね」

安慶名と言葉が被ってしまったことに驚いたが、お義母さんに笑顔を向けられて俺たちも笑ってしまった。

「明日は飛行機だから、そろそろお開きにしましょうか」

そう言いつつも、出された泡盛は全て空になっていた。
真っ赤な悠真さんと違って、お祖母さんもお義母さんも全く変わらないままだ。

さすが宮古島の女性は強いな。


翌日、目を覚ますと真琴はまだ俺の腕の中で幸せそうに眠っていた。

ふふっ。
本当に可愛い。

幸せが溢れて抑えられなくて、真琴の唇を奪うと

「ん? んん……っ」

寝ぼけながらも俺のキスに応えてくれる。

しばらく唇を堪能してゆっくりと唇を離すと、真琴の恍惚とした目が俺を見つめる。

「ゆ、いちさん……」

「ふふっ。おはよう」

「もう、あさ?」

「ああ、昨日泡盛飲んで寝てしまっただろう?」

「ん……そう、かも」

「覚えてないのか?」

「ぼく、なにかしちゃった?」

ああ、記憶がないのか。
あんなに可愛くキスを強請ってきたのにな。

「いや、何もしてないよ。何杯か飲んで俺に倒れてきただけだ」

「ごめんなさい……」

「いいよ。可愛かったから。だが、俺のいないところで飲むのはダメだぞ」

「はーい」

「よし、いい子だな」

しばらく真琴と布団の中で戯れて、身支度を整えた。
どうやら頭痛を起こすまではなかったようで安心した。

きっとその前に眠くなるのだろうな。

「なんだかすっごく楽しかったから、帰るの寂しいなぁ」

持ってきたキャリーケースを出して荷物を詰め込んでいると、真琴がそんなことを言ってくる。

「そうだな。だが、これから年に2回は必ず帰ろう。その時は安慶名とお兄さんも誘おう」

「うん。それならばあちゃんも母さんも楽しいね」

すっかりご機嫌になった真琴を連れて荷物を部屋から運び出す。

先に車に荷物を運んで戻ってくると、安慶名とすれ違った。

「安慶名、鍵」

ポンと手渡すと、それを器用に受け取り車の中に運び入れていた。

「あっという間だったな」

「ああ。だが、かなり濃密で楽しかったよ。俺たちだけこんな楽しんだって氷室が聞いたらずるいって言いそうだな」

「ははっ。確かに。東京に帰ったら、氷室にも紹介しないとな」

「ああ、お前のことはまだ何も話してないから驚くぞ」

「そうだな。じゃあ、思いっきり驚かせてやろうか」

「それはいいな」

大学時代にもなかったような、そんな企みに今更ながら楽しくなる。

「お前たちは今日はこのまま石垣か?」

「ああ、だから空港で別れることになるな」

「そうか。気をつけて帰れよ」

「お前たちもな」

お互いに顔を見合わせて笑いながら、部屋に戻ると真琴と悠真さんがキッチンから出てくるのが見えた。

「朝食にしましょう」

二人が持っている皿には美味しそうなポークおにぎりが並んでいる。

「美味しそうだな」

「僕が作ったんですよ」

得意げな顔を見せる真琴を可愛いなと思いながら、さっと真琴の隣に向かう。

そのほかにも美味しそうなオムレツとサラダも並んでいる。

「そっちは兄さんが作ったんです」

「そうか、それも楽しみだな」

そう言いつつも、まずは真琴の作ってくれたポークおにぎりに手を伸ばす。

「どう、ですか?」

「ああ、最高に美味しいな」

「ふふっ。良かったぁ」

嬉しそうな真琴の表情に、周りを見ればみんなも笑顔になっている。

本当に真琴がいるだけで明るくなるんだな。

安慶名も悠真さんが作ったオムレツを嬉しそうに食べ、幸せな朝食はあっという間にお腹の中に消えてしまった。

「もう空港に向かいますか?」

「ああ、その前にやっておくことがある」

「なんですか?」

「真琴たちの写真とビデオをうちと安慶名の家に送るんだ」

これは絶対に忘れるわけにはいかない。
安慶名と手分けして、綺麗に梱包しそれも車に詰め込んだ。

「出来上がりましたら、こちらにもお届けしますから」

「ええ。楽しみにしているわ」

「気をつけて帰るんだよ」

「はい。おせわになりました」

「ばあちゃん、母さん。また優一さんと一緒に来るからね」

「ええ、待ってるわ」

ギュッと抱き合う真琴をしばらく見守って、車に乗せた。

車が見えなくなるまで見送ってもらいながら、俺たちは一路空港へ向かった。

「安慶名、あのダビング。完成したら連絡してくれ」

「ああ、成瀬の方も頼むぞ」

真琴と悠真さんの可愛い映像と写真だ。
お互いにあれだけは絶対に失敗するわけにはいかない。



「真琴、また東京で会おうね」

「うん。連絡待ってる」

そんな可愛らしい会話をする兄弟を見守りつつ、空港で厳重に梱包したものを発送し、石垣空港行きの飛行機に乗り込む安慶名たちと別れた。

「さぁ、俺たちも帰ろうか」

「うん」

そうして、俺たちの楽しい宮古島旅行は終わりを告げた。


<おまけ>

ー安慶名、ダビング終わったか?

ーああ。とりあえず終わらせて映像を見てるんだが、これは本当にお宝だぞ。

ーそっちもか。こっちのもすごいぞ!!

ーこれは厳重に保管が必要だな。実は倉橋さんに頼んで最高の管理ソフトを開発してもらったんだよ。そのアプリを後で送るからそれを使え。

ーさすがだな。倉橋さん。だが、このことを話したのか?

ーいや、詳しくは話していないが、悠真の実家に行ったのは知ってるから大体わかってるはずだよ。

ーああ、そうだな。そういう人だ。これから彼の頼みは断れないな。

ーははっ。そうだな。まぁ、俺も協力するから。

ーああ、その時は頼むよ。

そういうと電話は切れた。

そしてすぐにアプリの詳細が送られてきた。
このアプリがこれから半永久的に、俺が手に入れた秘蔵映像を守ってくれることになるのだった。


  *   *   *


ようやく終わりました。
長々とお付き合いいただきありがとうございます!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...