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さよならの挨拶を
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<sideセオドア>
ラミロとサヤマも無事にうまくまとまったようだ。
それにしてもラミロのあの変わりよう。
人のことは言えないが、やはり本当に愛しいものができると変わるのだな。
アキラとナルセの了承も得て、嬉しそうに見つめあっている二人の姿を見ると友人として嬉しくなる。
私もマモルをこのまま自宅に連れ帰ることをラミロに伝えると、ニヤリと笑顔を浮かべたがきっと同じ気持ちなのだとわかったのだろう。
それにしてもラミロとサヤマはこれから遠距離になるのか……。
私なら到底我慢できないが、ラミロはどうする気なのだろうな。
元々国に帰るつもりはないようだから、どこででも仕事はできるだろうが、このまま日本で暮らすつもりなのかもしれない。
その辺のことも話したくてサヤマを連れ帰るのだろうな。
すっかり仲睦まじい二人に声を掛けづらそうにしながらもジャスティンが声をかける。
マモルを襲ったあの従兄弟とやらの話ではなく、あの店の従業員の奴の話だ。
今までにもマモルと同じような手口で犯罪を行っていたようで、もうすでに逮捕されているという。
更なる被害者を生まないために早急に逮捕してもらって本当に良かった。
マモルを怖がらせたくなくて、ジャスティンにはマモルには伝えないようにさせたがちょうど話を終えた頃、荷物をまとめたマモルが戻ってきた。
片手に大きなものを抱えて、もう片方の手にはたくさんの荷物を持っている。
ああ、こんなに持ってはマモルの小さな手を痛めてしまう。
私は急いでマモルに駆け寄って荷物をもった。
マモルが大事そうに抱えている大きな物を見て驚いたが、どうやらぬいぐるみのようだ。
『マモル、これは?』
『あの、僕の宝物なんです。父からの最後の贈り物で……』
マモルの腕に大切そうに抱きしめられているそのクマに思わず嫉妬してしまいそうになったが、亡き父からの贈り物だと言われれば大人げないことなどできない。
『そうか。これほど大事にしてもらえて父上も喜んでいると思うぞ』
『このクマさんが僕の命を救ってくれた恩人、ふふっ、恩クマかな、なんですよ』
『恩クマ? そうか。それは大切にしなければな』
マモルが事故に遭ったという話はアキラから聞いていた。
それで両親が亡くなり、マモルだけが生き残ったのだと。
辛い思い出を一緒に乗り越えてきたクマなのだろうな。
マモルがこうして笑顔でその時の話をできるまでに元気になれたのもきっとこのクマの存在が大きかったことだろう。
『実は私の家にも大きなクマのぬいぐるみがあるのだ。その隣に一緒に座らせよう』
『えっ? セオドアのお家にもクマさんがいるんですか? わぁ、すごく楽しみです!!』
実は私が生まれたのを記念して、イギリスで最も古いテディベアの会社が私の顔に似せて作った世界に一体だけのテディベアが屋敷に飾ってある。
これまであまり人に見せることはなかったが、こんなにも喜んでもらえると見せ甲斐があるというものだ。
よく見れば、マモルによく似たこのクマと、生まれたばかりの私に似せて作ったあのクマなら並べても楽しいかもしれない。
ふふっ。
主人と同じく、あのクマにも伴侶ができるというわけだな。
それはそれでまた運命なのかもしれない。
『ではマモル、行こうか』
『あ、あの……僕、アロンにも挨拶をして行きたくて……』
『ああ、そうだな。悪い、マモルを早く自宅に連れて行きたくて大事なことを忘れてしまっていた。では私も一緒に行こう。私もアロンに挨拶をしたい』
『セオドア……』
『ああ、それではアロンをこの部屋に呼びましょう。ジョージ、アロンを呼んで来てくれ』
アキラの声に、きっとアロンの部屋に私をいかせたくないのだとすぐにわかった。
私もマモルの部屋に他の男を入れるつもりがないのだから当然だ。
アキラもまた私やラミロとよく似ているのだろう。
だからこそ、こんなにも仲良く慣れたのだろうな。
考えてみればアキラはマモルの養父なのだからこれから、親戚のように付き合えるということか。
ラミロとも親戚になるのだし、一気に親戚が増えたな。
そのどれもが気のおけない友人で助かる。
『マモルっ! ここから出ていくって本当?』
寂しそうな声をあげながら、アロンが部屋の中に入ってくる。
『うん。これからセオドアさまと一緒に暮らすことになったんだ』
『えーっ、そんなの寂しいよ』
『アロン……ごめんね。でも、僕……』
『マモル……』
まるで永遠の別れのように抱き合う二人の姿に思わず私も可哀想に思えてくるが、決して今生の別れというわけではない。
『アロン、マモル。私の屋敷はそう離れていないし、いつだって会えるから心配しなくていい。マモルのことを絶対に幸せにするから、許してくれないか?』
そう声をかけると、アロンは小さく頷きながら、
『マモルをお願いします』
と言ってくれた。
『ああ、任せておいてくれ。近いうちに我が家に招待するからアキラと一緒に遊びに来てくれ』
そういうと目を輝かせてくれた。
ああ、本当にマモルはこの家で大切にされてきたのだな。
ラミロとサヤマも無事にうまくまとまったようだ。
それにしてもラミロのあの変わりよう。
人のことは言えないが、やはり本当に愛しいものができると変わるのだな。
アキラとナルセの了承も得て、嬉しそうに見つめあっている二人の姿を見ると友人として嬉しくなる。
私もマモルをこのまま自宅に連れ帰ることをラミロに伝えると、ニヤリと笑顔を浮かべたがきっと同じ気持ちなのだとわかったのだろう。
それにしてもラミロとサヤマはこれから遠距離になるのか……。
私なら到底我慢できないが、ラミロはどうする気なのだろうな。
元々国に帰るつもりはないようだから、どこででも仕事はできるだろうが、このまま日本で暮らすつもりなのかもしれない。
その辺のことも話したくてサヤマを連れ帰るのだろうな。
すっかり仲睦まじい二人に声を掛けづらそうにしながらもジャスティンが声をかける。
マモルを襲ったあの従兄弟とやらの話ではなく、あの店の従業員の奴の話だ。
今までにもマモルと同じような手口で犯罪を行っていたようで、もうすでに逮捕されているという。
更なる被害者を生まないために早急に逮捕してもらって本当に良かった。
マモルを怖がらせたくなくて、ジャスティンにはマモルには伝えないようにさせたがちょうど話を終えた頃、荷物をまとめたマモルが戻ってきた。
片手に大きなものを抱えて、もう片方の手にはたくさんの荷物を持っている。
ああ、こんなに持ってはマモルの小さな手を痛めてしまう。
私は急いでマモルに駆け寄って荷物をもった。
マモルが大事そうに抱えている大きな物を見て驚いたが、どうやらぬいぐるみのようだ。
『マモル、これは?』
『あの、僕の宝物なんです。父からの最後の贈り物で……』
マモルの腕に大切そうに抱きしめられているそのクマに思わず嫉妬してしまいそうになったが、亡き父からの贈り物だと言われれば大人げないことなどできない。
『そうか。これほど大事にしてもらえて父上も喜んでいると思うぞ』
『このクマさんが僕の命を救ってくれた恩人、ふふっ、恩クマかな、なんですよ』
『恩クマ? そうか。それは大切にしなければな』
マモルが事故に遭ったという話はアキラから聞いていた。
それで両親が亡くなり、マモルだけが生き残ったのだと。
辛い思い出を一緒に乗り越えてきたクマなのだろうな。
マモルがこうして笑顔でその時の話をできるまでに元気になれたのもきっとこのクマの存在が大きかったことだろう。
『実は私の家にも大きなクマのぬいぐるみがあるのだ。その隣に一緒に座らせよう』
『えっ? セオドアのお家にもクマさんがいるんですか? わぁ、すごく楽しみです!!』
実は私が生まれたのを記念して、イギリスで最も古いテディベアの会社が私の顔に似せて作った世界に一体だけのテディベアが屋敷に飾ってある。
これまであまり人に見せることはなかったが、こんなにも喜んでもらえると見せ甲斐があるというものだ。
よく見れば、マモルによく似たこのクマと、生まれたばかりの私に似せて作ったあのクマなら並べても楽しいかもしれない。
ふふっ。
主人と同じく、あのクマにも伴侶ができるというわけだな。
それはそれでまた運命なのかもしれない。
『ではマモル、行こうか』
『あ、あの……僕、アロンにも挨拶をして行きたくて……』
『ああ、そうだな。悪い、マモルを早く自宅に連れて行きたくて大事なことを忘れてしまっていた。では私も一緒に行こう。私もアロンに挨拶をしたい』
『セオドア……』
『ああ、それではアロンをこの部屋に呼びましょう。ジョージ、アロンを呼んで来てくれ』
アキラの声に、きっとアロンの部屋に私をいかせたくないのだとすぐにわかった。
私もマモルの部屋に他の男を入れるつもりがないのだから当然だ。
アキラもまた私やラミロとよく似ているのだろう。
だからこそ、こんなにも仲良く慣れたのだろうな。
考えてみればアキラはマモルの養父なのだからこれから、親戚のように付き合えるということか。
ラミロとも親戚になるのだし、一気に親戚が増えたな。
そのどれもが気のおけない友人で助かる。
『マモルっ! ここから出ていくって本当?』
寂しそうな声をあげながら、アロンが部屋の中に入ってくる。
『うん。これからセオドアさまと一緒に暮らすことになったんだ』
『えーっ、そんなの寂しいよ』
『アロン……ごめんね。でも、僕……』
『マモル……』
まるで永遠の別れのように抱き合う二人の姿に思わず私も可哀想に思えてくるが、決して今生の別れというわけではない。
『アロン、マモル。私の屋敷はそう離れていないし、いつだって会えるから心配しなくていい。マモルのことを絶対に幸せにするから、許してくれないか?』
そう声をかけると、アロンは小さく頷きながら、
『マモルをお願いします』
と言ってくれた。
『ああ、任せておいてくれ。近いうちに我が家に招待するからアキラと一緒に遊びに来てくれ』
そういうと目を輝かせてくれた。
ああ、本当にマモルはこの家で大切にされてきたのだな。
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