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最終章 (領地での生活編)
閑話 私のために <sideルドガー>
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ルドガーとレオンの続きをぜひに……と仰っていただけたので、忘れないうちに入れることにしました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
読みたいと仰ってくださった方、ありがとうございます!
* * *
「其方の部屋はここか?」
「あ、はい。そうですが……あの、ちょっと待って、ください……私には何がなんだか……」
「きちんと説明はする。だからとりあえず部屋に入れてもらえぬか? 頼む」
こんなにも逞しく美しいお方にそんなふうに言われては断ることもできない。
しかも私は抱きかかえられたままだし……。
とりあえず話を聞かなければ。
きっとなにか勘違いなさっているに違いない。
部屋を開け中に入ると、彼は嬉しそうな表情で
「其方の匂いに溢れているな」
と恥ずかしいことを言ってくる。
「あの、すぐに窓を……」
「いや、その必要はない。其方の声を他の者には聞かせたくはないからな」
「私の、声……ですか?」
言っている意味がわからなくて、首を傾げると彼は
「ふふっ。わからないのか。純粋で可愛らしいな」
とにっこりと笑顔を見せてくる。
もう、一体なんなんだ?
「そこに座っても?」
「あ、はい。どうぞ」
彼は壁につけるように置いている二人がけのソファーに私を抱きかかえたまま、腰をおろした。
「あの、そろそろ下ろしていただいても……」
「離れたくないのだが、まぁいい。このソファーなら下ろしてもピッタリとくっついていられるな」
私だけなら余裕でゆっくりと寛げるこのソファーも彼と一緒に座るとどうしたって触れてしまう。
抱きかかえられているのとあまり変わらない気もしてきた。
「ルドガー、このソファーに座ったことのある者はいるのか?」
「えっ? このソファーに? いえ、あの……私だけですが……それが何か?」
「そうか、ならいい。このソファーは座り心地がいいな」
「はい。旦那さまが我々使用人にも良いお品をご用意してくださったので、とてもありがたいです」
「そうか……フレデリックさまが……。さすがだな」
旦那さまをお名前でお呼びになるなんて……。
そんなにも親しい間柄なのだろうか。
「あの、それで……この状況なんですが……」
「ああ、そうだったな。その前に其方は私のことを知っているか?」
「えっ? それは、はい。もちろん。騎士団長のレオンさま、でいらっしゃいますよね?」
「知ってくれているのだな」
「レオンさまを知らない者など、このオランディアにはおりませんよ」
「他の者はどうだっていい。其方に知っていてもらえただけで嬉しいのだ」
「私に? それは……」
「まだわからぬか? 私は其方に惹かれたのだ。ひと目あったあの瞬間に……」
惹かれた……って、うそだっ。
そんなこと、あるはずない。
あのレオンさまが私のような貧乏男爵の三男に惹かれるなど到底起こりうることではない。
やはりレオンさまは勘違いなさっておられるのだ。
「ルドガー、私の想いを受け入れてはくれぬか?」
「いや、そんなの……有り得ません。レオンさまが私のような身分の低い者に惹かれるなどあってはならないことです」
「ルドガー、私の想い人をそのように言わないでくれ」
「レオンさま……」
「身分などどうでもいい。そもそも私はもう騎士団長ではないのだ。ただの護衛騎士だぞ」
えっ?
レオンさまが……騎士団長じゃない?
「それは、どういう……?」
「フレデリックさまの奥方さまの専属護衛に任命されてな。騎士団長の職を辞し、ここで奥方さまをお護りすることに決めたのだ」
「奥方さまのために、騎士団長の職を?」
「ああ。だが、今思えば、ルドガー。其方と出会うためだったのかもしれないな。きっとフレデリックさまは何か予感めいたものをお感じになったのかもしれない。なんせ、アンドリュー王の生まれ変わりのお方なのだからな」
「私と出会うために……わざわざここまで……」
「ルドガー、正直に言ってくれ。其方は私を見た時に何も感じなかったか?」
そんなこと……。
何も感じないなんてあるはずない。
レオンさまに抱きしめていただいたあの瞬間に、もう恋に落ちてしまっていたのだから……。
「レオンさま……私もあなたに惹かれています」
「ああっ、ルドガー!!」
「んんっ……んっ」
あっという間に私の唇にレオンさまの肉厚な唇が重なってきて何度も何度も啄んでくる。
口づけとはこんなにもドキドキするものなのだな……。
知らなかった。
しばらく重なっていた唇がゆっくりと離れていくのをぼーっと見つめていると、
「ルドガー、このまま寝室に連れて行ってもいいか?」
と耳元で囁かれる。
しん、しつ……?
さっきの口づけでぼーっとしたまま訳もわからずに頷くとレオンさまは嬉しそうに私を抱きかかえて寝室へと向かった。
寝室の意味に気づいたのは素早く裸にされてしまった後だった。
* * *
フレッド視点の合間にレオンsideの閑話を入れる予定です♡
どうぞお楽しみに♡
楽しんでいただけると嬉しいです♡
読みたいと仰ってくださった方、ありがとうございます!
* * *
「其方の部屋はここか?」
「あ、はい。そうですが……あの、ちょっと待って、ください……私には何がなんだか……」
「きちんと説明はする。だからとりあえず部屋に入れてもらえぬか? 頼む」
こんなにも逞しく美しいお方にそんなふうに言われては断ることもできない。
しかも私は抱きかかえられたままだし……。
とりあえず話を聞かなければ。
きっとなにか勘違いなさっているに違いない。
部屋を開け中に入ると、彼は嬉しそうな表情で
「其方の匂いに溢れているな」
と恥ずかしいことを言ってくる。
「あの、すぐに窓を……」
「いや、その必要はない。其方の声を他の者には聞かせたくはないからな」
「私の、声……ですか?」
言っている意味がわからなくて、首を傾げると彼は
「ふふっ。わからないのか。純粋で可愛らしいな」
とにっこりと笑顔を見せてくる。
もう、一体なんなんだ?
「そこに座っても?」
「あ、はい。どうぞ」
彼は壁につけるように置いている二人がけのソファーに私を抱きかかえたまま、腰をおろした。
「あの、そろそろ下ろしていただいても……」
「離れたくないのだが、まぁいい。このソファーなら下ろしてもピッタリとくっついていられるな」
私だけなら余裕でゆっくりと寛げるこのソファーも彼と一緒に座るとどうしたって触れてしまう。
抱きかかえられているのとあまり変わらない気もしてきた。
「ルドガー、このソファーに座ったことのある者はいるのか?」
「えっ? このソファーに? いえ、あの……私だけですが……それが何か?」
「そうか、ならいい。このソファーは座り心地がいいな」
「はい。旦那さまが我々使用人にも良いお品をご用意してくださったので、とてもありがたいです」
「そうか……フレデリックさまが……。さすがだな」
旦那さまをお名前でお呼びになるなんて……。
そんなにも親しい間柄なのだろうか。
「あの、それで……この状況なんですが……」
「ああ、そうだったな。その前に其方は私のことを知っているか?」
「えっ? それは、はい。もちろん。騎士団長のレオンさま、でいらっしゃいますよね?」
「知ってくれているのだな」
「レオンさまを知らない者など、このオランディアにはおりませんよ」
「他の者はどうだっていい。其方に知っていてもらえただけで嬉しいのだ」
「私に? それは……」
「まだわからぬか? 私は其方に惹かれたのだ。ひと目あったあの瞬間に……」
惹かれた……って、うそだっ。
そんなこと、あるはずない。
あのレオンさまが私のような貧乏男爵の三男に惹かれるなど到底起こりうることではない。
やはりレオンさまは勘違いなさっておられるのだ。
「ルドガー、私の想いを受け入れてはくれぬか?」
「いや、そんなの……有り得ません。レオンさまが私のような身分の低い者に惹かれるなどあってはならないことです」
「ルドガー、私の想い人をそのように言わないでくれ」
「レオンさま……」
「身分などどうでもいい。そもそも私はもう騎士団長ではないのだ。ただの護衛騎士だぞ」
えっ?
レオンさまが……騎士団長じゃない?
「それは、どういう……?」
「フレデリックさまの奥方さまの専属護衛に任命されてな。騎士団長の職を辞し、ここで奥方さまをお護りすることに決めたのだ」
「奥方さまのために、騎士団長の職を?」
「ああ。だが、今思えば、ルドガー。其方と出会うためだったのかもしれないな。きっとフレデリックさまは何か予感めいたものをお感じになったのかもしれない。なんせ、アンドリュー王の生まれ変わりのお方なのだからな」
「私と出会うために……わざわざここまで……」
「ルドガー、正直に言ってくれ。其方は私を見た時に何も感じなかったか?」
そんなこと……。
何も感じないなんてあるはずない。
レオンさまに抱きしめていただいたあの瞬間に、もう恋に落ちてしまっていたのだから……。
「レオンさま……私もあなたに惹かれています」
「ああっ、ルドガー!!」
「んんっ……んっ」
あっという間に私の唇にレオンさまの肉厚な唇が重なってきて何度も何度も啄んでくる。
口づけとはこんなにもドキドキするものなのだな……。
知らなかった。
しばらく重なっていた唇がゆっくりと離れていくのをぼーっと見つめていると、
「ルドガー、このまま寝室に連れて行ってもいいか?」
と耳元で囁かれる。
しん、しつ……?
さっきの口づけでぼーっとしたまま訳もわからずに頷くとレオンさまは嬉しそうに私を抱きかかえて寝室へと向かった。
寝室の意味に気づいたのは素早く裸にされてしまった後だった。
* * *
フレッド視点の合間にレオンsideの閑話を入れる予定です♡
どうぞお楽しみに♡
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