ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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最終章 (領地での生活編)

花村 柊   52−2※

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「ああっ……んっ、ふれ、っどぉ……んんっ……す、きぃ」

「シュウ……私も愛してるよ」

もう何度このやり取りをやっただろう……。
それでもあまりの幸せに抑えきれないフレッドへの愛が口からこぼれ出てしまう。
けれど、フレッドは嫌な顔ひとつせず、いつも優しく甘い声でぼくへの深い愛の言葉を囁き返してくれる。
なんて幸せなんだろう……。

行為の間中、身体中をフレッドの唇が這い回りいろんな場所にチクっとした痛みを感じた。
きっとフレッドの所有の証をつけてくれているんだ。

首筋も、鎖骨も、胸も、腕も、足もつけられていないところがないくらい、ぼくの身体には紅い花が咲き乱れているはずだ。
あまりにもたくさんつけられる紅い花をフレッドと共有したくて

「ふれ、っどぉ……、ぼくも、つけたい……」

とねだると、フレッドは嬉しそうに微笑んで、

「ああ、シュウの好きなところにつけてくれ」

とベッドに寝転ぶ。

力のないぼくはフレッドの上に乗ったまま、フレッドの耳たぶにちゅっと吸い付いた。

フレッドの耳を彩るぼくの宝石いしの隣に、紅い花がついた。

「ふふっ。かわいい……っ」

「ああ、もうっ! 可愛いのはシュウだろう」

そういうと、フレッドは身体を起こして、そのままぼくをベッドに押し倒した。
そして、もう何度も挿入いれられて柔らかくなったぼくの後孔にフレッドの大きなモノをググッと押し込んだ。

「ああっ……んっ」

「ふふっ。とろとろになってるな。シュウの中が吸い付いてくるぞ」

フレッドがもう何度もぼくの奥に出した蜜でフレッドが動くたびに中でグチュグチュといやらしい音が響く。
汗をかいているフレッドの濃い匂いと甘い蜜の香りにぼくは興奮して、あっという間に何度目かの蜜を放った。

フレッドはそれを嬉しそうに指で掬い取り、ペロリと舐めとる。

「シュウの蜜は交わるたびにどんどん甘く美味しくなっていくな」

「やぁ――っ、そんなこと、はずかしぃ……」

「ふふっ。恥ずかしがることはないよ。それはシュウが私との交わりを満足してくれている証拠だからな」

「まん、ぞく……?」

「ああ。もっと満足させてやる。シュウ……愛してるよ」

ちゅっと優しくキスしてくれたフレッドの唇からは、フレッドのとは違う甘い蜜の味がした。
ああ、これ……ぼくの蜜の味だ。
嫌な味ではないけれど、甘ったるくて不思議な味。

やっぱりぼくはフレッドの蜜の愛が好きだな。

「シュウ……私の愛は後にも先にもシュウだけだ」

「ああ……っん、ぼ、くも……ふ、れっど、だけぇ……」

「シュウ……っ、シュウ……っ!」

フレッドがぼくの腰をがっしりと掴み、ぼくの一番奥をゴリゴリと擦るように激しく腰を動かした。

「ひゃぁぁーーーっん!!!!」

グチュンっ!! と一番奥の奥までフレッドの先端が差し込まれた瞬間、頭から足の先まで電流が流れたような衝撃に襲われ、身体がピクピクと痙攣してしまった。

「ああっ! シュウっ!!!」

これ以上ないほど最奥に温かな感触が広がっていく。
多分、もうフレッドしか挿入りこめない場所にはまり込んだんだろう。
フレッドとひとりの人間になったようなそんな感覚を味わいながら、ぼくはそのまま意識を失った。

「うーん」

ほわほわと不思議な感覚がする。
でもあったかくて気持ちがいい。

ふふっ。
フレッドの匂いがする。

あまりの気持ちよさに目を覚ますと、

「んっ? シュウ、起きたのか?」

とフレッドがぼくの顔を優しく覗き込んだ。
ちゃぷっと水の音が聞こえて、ここがお風呂だと気づく。

「ふ、れっどぉ……」

すりすりとフレッドの逞しい身体にくっつくと、

「ふふっ。甘えん坊だな」

と抱きしめてくれる。

「あまえるの、いや?」

「そんなことあるわけないだろう。シュウが甘えてくれるのは私の幸せだ」

「ふふっ。じゃあ、ぎゅってして」

「ああ。喜んで」

いつも抱きかかえられているけれど、お風呂の中で抱きかかえられるのはなんか違う気がする。
裸だし、ぬくぬくしてるし、すごく気持ちがいい。

「ねっ、きょう……ふれっどと、このままねるぅ……」

「んっ? いつも一緒に寝てるだろう?」

「ちがう…っ、はだかで、ねるっていったぁ……」

「――っ、そ、そうだったな。じゃあ、このままシュウの肌に触れたままで寝よう」

「んっ。うれしぃ……」

フレッドの首に手を回して抱きつくと、フレッドはそのまま立ち上がり、ぼくをお風呂場から出してくれた。
どうやってやったのかわからないけれど、ぼくは抱きかかえられたままフレッドに身体も髪も綺麗に乾かされて、そのままベッドへと連れて行かれた。

いつの間にかベッドは綺麗に整えられていて、フレッドはベッド脇のテーブルに置かれたレモン水を口に含むとそのまま僕に飲ませてくれた。

「ふふっ。おいしっ」

「長旅から帰ってきたばかりだからな。明日はゆっくりと部屋で過ごそう。シュウは何もしなくていい。私が全て世話をするからな」

「んっ、ありがと……。ふれっどぉ、だいすきぃ……」

「ああ、私もシュウを愛してるよ」

何度となく交わされた言葉を聞きながら、ぼくはフレッドに抱きしめられて深い眠りに落ちた。


それからどれくらい眠っただろう。

「シュウ……起きられるか?」

フレッドの心配そうな声で目が覚めた。

「んっ? ふれ、っど……どう、したの……?」

「シュウ、気づいていないのか? 少し熱が出ている」

「ね、つ……?」

「ああ、長旅で疲れていたのに私が無理をさせすぎたせいだ。悪い」

そうか、少し身体が重怠く感じるのは熱が出てるからか。
でもフレッドが謝ることなんて何もないのに。
だって、ぼくは昨夜はずっと幸せだったもん。

「あやま、らないで……ふれっど……すこしの、ねつくらい、だいじょうぶ、だから……しんぱい、しないで……」

「――っ、シュウ……わかった。ありがとう。薬を飲ませるからちょっと抱き起こすぞ」

フレッドはぼくの身体を軽々と抱き上げて、小さなグラスを見せた。

「これに薬を溶かしているからな」

そういってまずは自分の口に含んでその薬をぼくの口内に流し込んでくれた。

常温のはずなのに冷たく感じるのは、ぼくの身体が熱い証拠なんだろう。

「飲めたか?」

その言葉に小さく頷いて口をあーんと開けると、

「――っ、よかった。少し休んだら熱も下がるはずだからな」

と優しくベッドに寝かせてくれた。

「シュウ、何か欲しいものはないか?」

「ほし、いもの……?」

「ああ、何か果物でも持ってこようか? それとも何か食べられそうか?」

そう言ってベッドから離れようとするフレッドの服の裾を掴んだ。

「いい、なにもいらない……ここに、いてぇ……」

「シュウ……ああ、わかった。ここにいる。ずっと抱きしめているから」

「うれしぃ……」

そういえば、裸で寝ていたはずだけど、ぼくはいつの間にかローブを着ていた。
きっと熱が出て汗をかいてたから服を着せてくれたんだろうな。
全然気づかなかった。

「シュウ、ゆっくりおやすみ。熱が下がったら、二人であの中庭に行ってみよう」

優しい声と一緒にちゅっとぼくの唇にフレッドの柔らかな唇の感触が重なる。
ああ、あの懐かしい中庭……早く行きたいな。


次に目を開けたときはさっきの重怠い身体が嘘のように軽くすっきりとしていた。
あの薬が効いたのかな?
いや、それもあるだろうけど、きっとフレッドがずっとついててくれたからだ。
見れば、ぼくの身体はギュッとフレッドに抱きしめられたままで、フレッドは眠っているようだった。

きっと熱が出ている間、ずっと寝ずに看病してくれていたんだろうな。
フレッドの頬にそっと触れると、髭が伸びてきているのか、じょりじょりとした感触がする。
ぼくがそばにいてって言ったから髭を手入れする時間もなかったんだろうな。
ふふっ。優しい。

いつものツルツルとした触り心地も好きだけど、このじょりじょりとした感触も実は好きなんだ。
だって、他の誰も知らないぼくだけのフレッドの姿だから。

嬉しくって撫でていると、フレッドが目を覚ました。

「ああ、シュウ……大丈夫か?」

「うん、もう熱は下がったみたい。フレッドのおかげだよ。看病してくれてありがとう。フレッドがずっとそばについててくれたから、ぼく……早く治ったんだよ」

「シュウ……っ。熱が下がって本当によかった。愛してるよ……」

フレッドは満面の笑みでぼくを抱きしめ、唇にキスをしてくれた。
頬に微かにあたる髭の感触にぼくは嬉しさが隠せなかった。


「シュウ、食べられそうなら食事をしようか」

「うん。そういえばお腹空いてる」

「シュウは丸二日寝ていたから腹も空いてて当然だな」

「えっ? 二日? そんなに?」

「ああ、時々薬と栄養剤を飲ませていたんだが、食事を摂れるようになってよかった」

まさかそんなに日が経ってるなんて思わなかった。
よっぽどぐっすり寝てたんだな。

「シュウ、食事を持ってくるから一人で待っていられるか?」

「ふふっ。大丈夫。ちゃんと待ってる」

「ああ、良い子だ」

フレッドはちゅっと軽く唇にキスをし寝室を出ていったかと思えば数分もしないうちに戻ってきた。

「あれ? 早かったね」

「ああ、シュウにいつでも食事が出せるように準備しておいてくれたようだ」

「そうなんだ。マクベスさんに感謝だね」

「ふふっ。感謝するのはまだ早いぞ」

「えっ?」

フレッドは意味深に笑いながら、ベッドにテーブルを置き、その上に食事が乗ったトレイをおいてくれた。
一人用の蓋付きの土鍋のようなものを

「ほら、シュウ。見てごらん」

とフレッドが開けると、そこにはキラキラと輝く美味しそうなお粥が入っていた。


「わぁーっ、お粥だ!」

「これなら体調が優れない時も食べられるのだろう?」

「ねぇ、これ……どうしたの?」

「ふふっ。マクベスがアレクから教えてもらったらしい」

「えっ? アレクお兄さまから……? なんで?」

思っても見ない人の名前が出てきてぼくはびっくりしてしまった。
だって、アレクお兄さまとお粥って……全然想像つかないんだけど……。

「アンドリュー王の書かれた予言書があっただろう? それには私の伴侶についてマクベスが知っておいた方がいいことがたくさん書かれていたようでな……アレクがその予言書を、城を出る前にマクベスに見せたようだ」

「ぼくについてって……アンドリューさまの予言書に、何が書かれていたの?」

「想像していたとおり、あの予言書はアンドリュー王ひとりで書かれたものではなく、トーマ王妃やブルーノの意見も反映されていたようだ。アンドリュー王の生まれ変わりとなるものの伴侶として現れるトーマ王妃の子……シュウのことだが、シュウが健やかに、そして幸せに過ごせるように、食事や身の回りにものについても事細かく指示がなされていたようだ」

「ぼくが幸せに過ごせるように……?」

「ああ。その中にシュウが体調を崩した時にでも食べられるものが書かれていて、それにこの『お粥』のことが書かれていたようだ」

「じゃあ、これは……」

「おそらく……いや、絶対に、トーマ王妃のレシピだろう。我々の時代には米が食べられるようになっているとわかっていたから、この『お粥』の作り方を残してくれたのだろうな。マクベスはそれを忠実に再現するようにシェフのローリーに伝えたようだ」

「そっか。じゃあ、この『お粥』……お父さんの味なんだ……」

「そういうことだな。シュウ……せっかくだから温かいうちに食べてみよう」

そう言うと、フレッドはレンゲのような小さなスプーンでそっとお粥を掬い、ふーっふーっと冷ましてからぼくの口へと運んでくれた。

ほんのり塩味のついたお粥は、熱を出して汗をかいていたぼくの舌にはとてつもなく美味しく感じる。
さすが、お父さんのレシピだ。
これから体調を崩すたびにお父さんの味でぼくは元気になるんだな。
なんだか体調崩すのが楽しみになっちゃいそう……ってフレッドに知られたら怒られちゃうな。ふふっ。

「どうだ?」

「うん、美味しい……。これなら、全部食べられそう」

「そうか。よかった。ちょうどリューイが頼んでくれていた業者が昨日、米を屋敷に運んでくれたんだ。だからこうしてシュウにお粥を作ることができた」

「ふふっ。そうなんだ、すごいね」

「ああ。シュウのために全てがうまく回っているようだな」

ぼくはこのお粥がぼくの元に届くまでに関係してくれた全ての人に感謝しながら、美味しいお粥を全て食べ終えた。

「ふぅーっ、お腹いっぱい」

「全部食べられてよかった。さぁ、この薬も飲もうか」

「えっ、でももう熱も下がったよ」

「だが、まだ体調は万全じゃないだろう?」

そういうと、フレッドは薬が入った小さなグラスを口に含み、そのままぼくの口内に流し込んだ。

記憶にあった薬はとても冷たく感じたけれど、今の薬はフレッドの心地良い温度に変わっていて、自分の熱がすっかり下がったことを身をもって知ることができた。

「少し眠って動けそうなら、中庭に行ってみようか」

「うん。じゃあ、少し休むね」

フレッドはベッドの上に置かれたテーブルをさっと片付けて、ぼくをゆっくりベッドに寝かせてくれた。

それからしばらく経って目を覚ますと、身体がものすごく軽くなっている。
ああ、本当にすっかり良くなったみたいだ。

あれ?
そういえばフレッドがいないな。

どこに行ったんだろう?

ゆっくりと身体を起こし、ベッドから下りようとしたところで寝室の扉が開いた。

「シュウ、起きていたのか?」

「うん、今目が覚めた。フレッドがいなかったから、探しに行こうかと思ってた」

「そうか、急いで帰ってきてよかった」

「どこに行っていたの?」

「いや……その、レオンのところに……」

「えっ? レオンさんのところ? どうして?」

そういうと、フレッドはちょっと言おうかどうしようかと迷っている様子だったけれど、ぼくがじっと見つめながら待っていると言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。


「ルドガーにうまく話が伝わらなかったようでな……レオンがどうしていいかわからなくなっていると知らせが来たんだ」

「うまく話が伝わらないってどういうこと?」

「その……レオンとルドガーが唯一だろうという話をしたのは覚えているか?」

「うん。ここに来た時、そう言ってたよね? えっ、違ったの?」

「いや、それはもちろん間違いなく合っていた。それを確認したと言っていたよ。レオンもすごく嬉しそうだった」

確認したって……あれを舐めたってことだよね?
うーん、喜ばしいことなんだろうけど、どうしても聞いちゃいけないこと聞いちゃった気がするのはやっぱりぼくだけなんだろうな……。

「でも、それだったら何も問題なんか起きなさそうだけど……。何かいけないことがあったの?」

「実はな、レオンが唯一には嘘偽りなく正直に話しておきたいからとルイの頃からの記憶も含めて、ルドガーに話をしたようだ」

「えっ? ルイくんの時の記憶もって……まさか……」

どこまで話したんだろう?
もしかして……ずっとぼくを思い続けてたってことまで?
でもそんなこと話したら……

「ああ、そのまさかだ。その話を聞いてルドガーは今でもレオンはシュウのことを好きなのではないかと不安になったようでな。ルドガーが泣いて部屋に閉じこもってしまったらしくて……」

そりゃあそうだよね。
ぼくだってフレッドにそんなこと言われたら不安になるし、泣いちゃうかも。

「それでフレッドに声がかかったってこと?」

「ああ、そうなんだ。ルドガーに閉め出されてレオンが半ばパニックになっていたところに騒ぎを聞きつけたルーカスが私を呼びにきたんだ。まぁようやく出会えた唯一に閉め出されればパニックにもなるだろうな」

「フレッドがここに戻ってきたってことは誤解は解けたの?」

「いや、それがまだなんだ。私はシュウが気になって一度戻ってきたんだよ。そろそろ起きる頃だと思ってな」

「じゃあ、ぼくも一緒に行く!」

「えっ? シュウが?」

「だってルドガーさんはぼくのことを気にしているんだよね? ぼくがちゃんと話して不安をとり除ければ心配もなくなるんじゃないかな?」

「それはそうだろうが……」

フレッドは少し悩みながらもこのままじゃどうしようもないと思ったのだろう。

「シュウだけには行かせないぞ。私も一緒に行く」

「ふふっ。うん、じゃあ行こう」

そういうと、フレッドはすぐにぼくを着替えさせてくれて、病み上がりだからとぼくを抱きかかえて部屋を出た。
部屋の前には心配そうにしているマクベスさんと、その隣にいるのは……ルーカスさんだ!
ここにきた時には気が付かなかった。

「マクベス、レオンたちの様子はどうだ?」

「まだルドガーが部屋から出てこないようです。申し訳ありません、ルドガーが旦那さまにご迷惑をおかけしてしまいまして……」

「そんな、迷惑だなんて! ルドガーさんのことを思えば、閉じ籠っちゃっても仕方ないよ。だって、唯一の人に好きな人がいるかもしれないって思っちゃったんでしょう? ぼくなら悲しすぎておかしくなっちゃうかも」

「シュウっ! 私はそんなことは絶対にないからな!! シュウを悲しませたりなんか絶対にしないよ」

フレッドはぼくを抱きかかえたまま、ぎゅっと抱きしめる。
その力強さに一瞬苦しくなったけれど、

「旦那さま。シュウさまは病み上がりでございますよ。もう少しお優しくなさったほうがよろしいかと……」

とマクベスさんが言ってくれてホッとした。

「ああ、悪い。シュウ。大丈夫か?」

「ふふっ。大丈夫だよ。早くルドガーさんたちのところに行こう」

ぼくの言葉に動き出そうとしたフレッドに、

「あ、そうだ、ちょっと待って」

と声をかけ、

「ルーカスさん。挨拶が遅くなりましたけど、これからよろしくお願いしますね」

と挨拶すると、

「――っ! は、はい。こちらこそご挨拶が遅れまして大変失礼いたしました。警備隊長のルーカスでございます。これから精一杯お護りいたしますのでどうぞよろしくお願い致します」

と直立不動で挨拶してくれた。

ふふっ。
以前と同じすごく優しいままだ。

「さぁ、挨拶はそのくらいにして行くぞ。レオンが待っている」

フレッドはスタスタと廊下を歩き階段を下り、ルドガーさんが閉じ籠っている部屋に向かった。

ここは使用人さんたちの部屋がある棟らしい。
この奥にマクベスさんやルーカスさんのお部屋もあるんだって。

4人で部屋に向かうと、レオンさんドアを叩きながら

「ルドガー、もう一度きちんと話をさせてもらえないか?」

と必死に声をかけているのが見えた。

「オランディア王国騎士団最強の騎士団長も唯一にかかれば形無しだな」

「フレデリックさま……それに、シュウさままで。申し訳ありません」

「ルドガーはまだ部屋の中にいるのか?」

「はい。すべては私のせいなのです。ルドガーは何も……」

「わかっている。ルドガーに何かしようという気はさらさらない。シュウがルドガーと話をしたいと言っておってな。いいか?」

「ですが、ルドガーが開けてくれるかどうか……」

心配そうに固く閉められたままの扉を見つめるレオンさんの表情は本当に愛しい人を見る、そんな表情だった。
ああ、やっぱりぼくへの思いは恋愛感情ではなかったな。
そのことだけは今、はっきりとわかった。
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